黒き砂漠デダイン
不毛の大地であるその場所は、今や黒い嵐が渦巻いている。
ただの嵐ではない。近くにいるだけで猛毒を浴び、すぐに死に至るだろう。
三大冒険者依頼、その一つ。
かつての『陸の王者』が、甦り────
「グォォオオ――ッ!」
『英雄』によって、人知れず討伐された。
「まさか奴隷が国の王子だったとは。いや、王子ではないのか。」
「あまりその話をしないでくれ。誰かに聞かれれば大変なことになる」
にしても本当に驚いた。王族が奴隷に紛れるとは。
「───相席してもいいかしら?『英雄』様」
「ここの金を出しているのはアリィだ。彼女に聞け」
「だ、そうだけど?」
「は?ま、まあ、アルケイデスが良いなら私は別に·····」
アリィが戸惑いながら答える。まあ当然だろう。
「じゃあ相席しましょう!私が『英雄』様にお酌をしてあげるわ。」
「俺はまだ13だ。酒は飲まない」
「そうなの?意外だわ」
『女神』はそう言って、
「この焼肉料理、美味しいわ」
「マジ?俺も食おう」
「で、なんでいんの?」
「あら、私がいて駄目な理由があるの?」
「いいとか悪いとかじゃなくて、『目的』を聞いてんの」
「『目的』ねえ。当てのない旅をするのもいいものよ」
小娘が。絶対抜け出してきただろ。
「いいのかよ。あんたの眷族みんな心配してんぞ」
「大丈夫よ。だってあなたが私を守ってくれるんだから」
「好き勝手言いやがる」
まあ恩があるしなんかあったら助けるけど。
「でも、そうね。『目的』はあったわ。私は『恋』がしたいのよ」
うーん、めんどくさそう。恋する女は面倒だが恋をしようとする女もやばそうなんだよなぁ
「ちなみに俺は村に好きな女の子がいる。『英雄』としての仕事が終わったら告白するつもりだ」
「ならわかるでしょう。私の思っていることが。
あなたを私のものにしたい。私の『伴侶』になりなさい」
「悪いね。俺は浮気とかしないように心掛けてるんだ」
まだ付き合って無いけど。
「つれないひと」
「·····うーん。まだなんか足りないよなぁ」
「まだ盛るのか。まあそれくらいしないとお前の『試練』にはならんじゃろうしなぁ。しかし、これ以上どうするんじゃ?」
「『蛇』の残骸、『沼の王』の核、『蠍』の殻、『陸の王者』の心臓。もう一捻り欲しいよな。
なんか案ない?」
「オラリオに行ってみるのはどうじゃ。何かしらの案が出てくるじゃろ」
「オラリオ、オラリオかぁ。ダンジョンに潜ればなんか見つかるかもな。行ってみるか」
でもあの『女神』に会うかもしれないのか。
気まずっ。
『女神』が『娘』であることには気づいている。
筋肉は節穴ではなく、恩を忘れるほど恥知らずではない。