今回、アルケイデス死す。デュエルスタンバイ!
黒い『死』が放たれる。そばにある植物、動物、無機物ですら『死んで』いく。
「雄々々々々々――――圧々々々々々々々――――ッッッ!!」
その全てを無視して『英雄』は拳を振るう。
「───」
しかし、黒い呪詛に阻まれ『死』には届かない。
「拳の威力を『殺して』いるのか!とうとう本当の『死』になってきている!」
『死』
それは、生きとし生けるもの全てに訪れる最大にして最後の異常。全てのものがいつかは『死』に襲われ、敗北し、死ぬ。
これは自然の摂理。生きている限り、『死』に勝つことは出来ず───
「それを捻じ曲げるのが『英雄』だ!」
この『英雄』はそれを乗り越えようとしている。
「フンッ!」
再び『死』を殴る。同じように、拳の勢いは『殺され』───
「――ゥゥウウウォォオオオ――!!」
次の一撃を、『殺し』きれなかった。
ダンジョンが破壊される。上も、下も、横も、ありとあらゆる方向が無差別に戦いの余波で壊され、『殺され』る。
『英雄』が『死』を殴り、さらに下へ落ちて行く。落ちて行く『死』を『英雄』が追う。
『死』は、迎撃の呪詛を放ち──
「――――ウゥゥウオオオオォォォォォッッッ!!」
拳が放たれる。『死』は拳の勢いを『殺し』きれず、ダメージが蓄積する。だが········
「――ガッ……ッ、グ……」
『死』の呪詛は、確実に『英雄』を苦しませている。
今までの試練で一番『死』を近くに感じる。
しかし、『火』を使えば呪詛を浄化し、簡単に勝てるだろう。
「───それは『甘え』だ!」
真の『試練』は超えられないものを超えることなのだ!それを簡単な方法で進めば『試練』ではなくなる!
『死』も、『英雄』も、わかっていた。このまま行っても蓄積したダメージが理由で倒れるだけだ、と。
故に、決着は一撃。言葉がなくとも、両者はわかっていた。
「────────」
『死』が一つに纏まる。それはさながら、死神の鎌のようで────
「がァァアァ嗚呼亜阿猗婀亞――!」
『英雄』は『死』に立ち向かう。自らの命を賭けて。
「「────────────」」
二つが、ぶつかった。
「初めてまして、僕の名前はベル。君は?」
おれ、は。
「じゃあ、アルって呼んでいい?」
『骨』は『英雄』の亡骸を見ていた。
強者だった。死してなお膝を付かないその姿は『英雄』だった。
間違いなく、『神の力』が無ければ勝負にもならなかったほどの、最強と呼べる『英雄』だった。
このまま、外へ出よう。『神の力』はかなり消耗してしまいほとんど使えそうにもないが、『英雄』ほどの敵はもういないだろう。
「アル!一緒に遊ぼう!」
「アル!一緒に食べよう!」
「アル、一緒に寝よう!」
アル、アル、アル───
「なんでお前は俺に構うんだ」
「え?」
「俺は強い。村のやつも、モンスターも俺には勝てない。俺はお前を殺せる。なんで俺に構う」
「───だって、一人は寂しいよ」
「───」
「僕も親がどっちもいなくて、時々寂しいんだ。
おじいちゃんがいるし、村の人も、僕に優しくしてくれる。でも、村の親子を見てると、『どうして僕には親がいないんだ』とか考えて、寂しくなっちゃうんだ」
こいつは······
「だから、アルが寂しくないようにしてあげたいんだ。わがまま、かな」
白い少女は、そう言って笑った。
「───」
『骨』は違和感を感じた。何かが、おかしい。
何か取り返しの付かないことが起ころうとしている。
そんなはずがない。『英雄』を超える存在など、あるはずが·····
「·····オ」
「·····オオオ」
「オオオオオ」
「オオオオオオォォォォォォッ!」
『英雄』が『骨』に掴みかかる。
ありえない!『英雄』はすでに死んだ!動くはずがない!
「ベル、ベル、ベル、ベル!」
「お前に、助けられた!」
「お前のためなら、俺は!」
「『死』すらも、乗り越えてみせよう!」
『骨』と『英雄』は取っ組み合いになり、そして·····
「ッ……ゥ、ゥウ――ッ……――ゥゥウウウォォオオオ――!!」
『英雄』は『死』を打ち砕いた。