筋肉の化身   作:アーっr

28 / 81
プレゼントは────


出発

 

 

 「フッ!」

 「あっぶね」

 

 下界最高の技を持つ者たちが組み手をしている。

 

 「ふー。結構強いな」

 

 「なにが強いだ。汗ひとつ掻いていないくせに」

 

 「そりゃあ俺最強だし。お前には負けないぞ」

 

 「本当にイラつくなお前は」

 

 「事実だろ」

 

 「クソガキが」

 

 男と女が言い合っている。

 男は200cはある長身かつ鍛え上げた筋肉を備えた超人。

 女は170cあるかどうかという、女性にしては背が高いが、男と比べると子供のようである。

 

 「───本当に、行くのか?」

 

 「行くよ。行かなきゃいけない」

 

 「お前はまだ14だ。肉体の全盛期はまだまだ先だ。お前はまだ強くなれる。なのに、行くのか?」

 

 責めるような声で、女は言う。

 

 「『黒竜』は待たない。約束の時間が来た。これ以上は無理だ」

 

 諭すように、男が言う。

 

 「·····ベルを泣かせたら殺すぞ」

 

 「分かってる。絶対勝つ」

 

 

 

 

 

 

 

 「アル!誕生日おめでとう!」

 

 「ありがとう、ベル」

 

 今日は俺の誕生日。この『聖夜』に俺は生まれた。今年もベルが俺のためにケーキを用意してくれている。

 

 「うおでっか」

 

 年々ケーキは大きくなっている。今では広さだけでなく高さもある。

 ゼウスは『ウェディングケーキ』とか言っていたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日、俺は『黒竜』と戦いに行く。

 負ければ俺は死に、誕生日と命日が同じ日になる。祝う時に便利かも。みんな覚えてくれそうだし。

 なんて、くだらないことを考えていたら。

 

 「アル」

 

 「················」

 

 気まずい。ベルがなにを言いたいかわかる。

 俺に、行って欲しくないんだろう。

 

 

 「帰ってきて」

 

  ────。

 

 「待ってるから。信じてるから。だから、帰ってきて」

 

  ────。

 

 「アルは、絶対勝てるから、行かないでとは言わないよ。でも」

 

 「でも、帰ってきてね。絶対、帰ってきて」

 

 ────ああ、本当にいい女だ。俺を信じてくれている。俺の勝利を疑っていない。俺を『英雄』だと思っている。

 

 俺は、ベルの『英雄』になれていた。ああ、本当に────

 

 「────ありがとう」

 

 

 

 

 

 「それで、その、プレゼントが、あるんだけど」

 

 「プレゼント?なになに?」

 

 「み、耳貸して」

 

 「ん?」

 

 ────。

 

 「帰ってきたら、もっとあげるよ」

 

 ────。────。

 

 「僕、アルのこと、好き!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『竜』は目覚めた。

 己を縛っていた風の大精霊の封印も、もはや止めることはできない。

 元々封印などいつでも突破出来たが、わざわざ約束の時間まで待った。

 時は来た。『英雄』は現れた。

 今こそ、下界の終末を告げよう。

 

 「行くぞ。これが、最後だ──」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。