筋肉の化身   作:アーっr

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筋肉が加速する


神の血プロテイン説

 

 アルケイデスの一日は筋トレから始まる。腕や腹、脚などのメジャーな部位だけでなく、首、指、内臓に至るまでの全てを鍛えんとする過酷な、修行とも言える筋トレが彼の強さの秘訣だ。

 

 「居場所がわかったぞ」

 

 ベルの祖父が唐突に言い放つ。

 

 「なんの話だよ。今筋トレしてんだけど」

 

 全く脈絡がないため話についていけていない俺を見て

 

 「ベルの叔母の話じゃ。知りたがっておったじゃろうが」

 

 「調べたのかよ」

 

 「感謝せい!わざわざあのクソガキヘルメスに貸しを作って調べさせたんじゃぞ」

 

 このジジイは自分のことを棚に上げることがある。そのヘルメスはそこまでクソガキではないのだろうと考えながら

 

 「で、結局どこにいんの?」

 

 「かぁ〜っ。お前もなかなかのクソガキじゃのう。まぁいいわ。ベルの叔母、アルフィアは今オラリオにいる。」

 

 可愛げのないガキとでも言いたげな顔で老人は言う。

 

 「オラリオってあれだろ。ダンジョンの蓋してるっていう英雄の生まれる都市」

 

 「なんじゃ。オラリオは知っとるのか。」

 

 意外という心を隠そうともせずに言う老人だったが

 

 「あんたが散々英雄になれだの昔はオラリオにいただの聞いてもないのに話してたんだろうが」

 

 「覚えてたのか。てっきり筋トレの最中だったから聞き流しているものとばかり」

 

 このジジイ、無視されていると思っていながらあんなに絡んできていたのか。

 

 「と、こんな話をしている場合ではない」

 

 老人は急に真剣な顔をして

 

 「今アルフィアは闇派閥に加担しようとしておる。」

 

 「???わからん。最初から全部話せ」

 

 そこから語られたのは衝撃の数々。闇派閥という犯罪などを行う集団がいること、かつての最強派閥が消えたことにより闇派閥が勢いを増していること。

ベルの叔母はアルフィアといい、病弱故に余命が残り僅かであること。最後に「英雄を作る」ためにオラリオの敵として立ちはだかり、成長を促すという計画。

その全てを知って、俺は········

 

「──────くだらね。」

 

 老人は笑って

 

 「くだらない、か。まあお前はそういうじゃろう。で、どうする?」

 

 「どうするって、何がだよ。」

 

 この老人は主語を忘れたように話すことが多い。正直その喋り方は嫌いだ。

 

 「わかっているじゃろう。連れてくるなら今じゃぞ」

 

 ········この老人は、本当に。

 

 「わかってたのか」

 

 「分からんわけがないじゃろう。ベルの寂しさも、お前がその孤独を癒そうとしていることも」

 

 ああ、そうだ。ベルは時々村の親子を見て寂しそうにしている。そして、そんなベルの顔が、俺は嫌いだった。この老人に見抜かれているとは思わなかったが。

 

 「儂はベルの祖父で、お前の父親じゃ」

 

 「それだと、俺がベルの父親みたいだな」

 

 「実際そんなもんじゃろ」

 

 いや、困る。俺はベルのことが好きであり、この好きは男女の、恋人や夫婦の好きなのだ。父親扱いは困る。

 

 「しょうがないな。ここからオラリオまでどのくらいかかる?」

 

 覚悟を決めたように、少年は聞く。

 

 「普通なら何日もかかるが、お前は普通じゃないしのう。」

 

 全くもって心外である。俺は少し他人より筋肉が優れているだけなのに。

 

 「お前普通に強すぎじゃからな!?どこにモンスターを一撃で消し飛ばす6歳がおるんじゃ」

 

 そう。少年は農業の傍、村の警備もしている。ミノタウロスが出た時も少年の正拳突きによって村の平和は守られている。はっきり言って異常である。

 

 「お前でも厳しいのがオラリオじゃ。そんなお前にいいものがある。」

 

 「なんか詐欺っぽいな」

 

 「詐欺じゃないわい!神の恩恵と言ってな、これならお前の真の力が扱えるようになる!」

 

 やはり胡散臭い。というか真の力ってなんだよ。

 

 「でもまあ貰えるもんはもらうか」

 

 「よく言った!それでこそおのこじゃ。それじゃあ、ほれ。」

 

 老人急に自分に傷をつけた。

 

 「何してんだよ爺さん。ボケたか?」

 

 「ボケとらんわい!恩恵は神の血によって与えられるものなんじゃ!」

 

 先程の自分の覚悟を撤回したくなったが、しょうがない。手で黄金の血を受け止め、飲む。

 

 「うおおい!?何をしとるんじゃ!?」

 

 「いや、血によって恩恵が与えられるってことはあんたが前言ってたプロテインって奴なんだろ?」

 

 老人が以前言っていたプロテインなる神々の筋肉のための食事。いつか俺も口にしてみたいと思っていたのだが、こんなに早く叶うとは!

 

 「すごいぞ、力が溢れる。筋肉の質が上がっているのがわかる!」

 

 「なんか闇堕ちしそう」

 

 爺さんがなんか言ってるがどうでもいい。明らかにプロテインによって皮膚、筋肉、骨、内臓に至るまでの全てが補強された。全能感が満ちる。

 

 「俺はこのままオラリオに行く。ベルは任せたぞ爺さん」

 

 「最後に一つだけ」

 

 「なんだよもう」

 

 このジジイはいつも流れを無視する。この全能感のままオラリオに行きたいのに。

 

 「お前の好きにしろ。やりたいことを思いっきりやれ。それがお前の道じゃ。誰にも自分を曲げさせるな」

 

 「言われなくても、そんなこと当たり前だ。誰の息子だと思ってる」

 

 「········さすが儂の息子じゃ。アルフィア以外に気になる女の子を見つけたら連れてきてもいいんじゃぞ」

 

 「連れてくるわけねえだろスケベジジイ」

 

 

 

 

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