それは、『怒り』だった。
「お、おい、これって···········」
「もうこの時期か!?またかよ···········!」
ゼウス・ファミリアのホームは静まり返っている。いつもならばゼウスがセクハラをしてヘラに追われたりするこの場所に、『それ』は居た。
「◾️◾️◾️────!!!」
圧倒的な怒気を放ち、音にならない『叫び』を上げる姿はまさに《獣》そのもの。
「『爆発期』だ···········!」
『爆発期』。それはあまりにも負けが続いたため怒りが蓄積した後、その怒りが表面に出た姿。
夢の『英雄』に届かない自分への怒りが今の彼を形作っている。
あくまで自分への怒りなので彼が他者にその怒りをぶつけることはしない。
しかし、少しのきっかけさえあれば、この怒りは容易く引火するだろう。
殆どの者が引火を恐れて彼に接触することを控える。
「アルケイデス。息抜きに行くぞい」
しかしそこは大神。いつもヘラで鍛えられている修羅場への耐性が、息抜きに誘うというこの場における最適解を導き出した。
「ゼ、ゼウス···········!」
「毎日セクハラするだけのことはある!」
この時ばかりはいつも主神をただのエロジジイだと思っているゼウス・ファミリアの団員達も主神を尊敬した。
「と言うわけで、コイツは頼んだぞ」
「全く意味がわからないんだが!?」
正直言ってこんな危険物を預かりたくはない。
「儂が側で口出してなんとか被害を抑える。お前はコイツを制御出来るようにしてくれ」
「無理だろう!どうすれば制御なんて出来るんだ!」
「なんかこう、愛の力で··········」
「どうにもならん!」
『狩猟』の女神であって育児や家庭の女神ではないのだ。制御など夢のまた夢である。
「というか、他に適任がいただろう!ヘラに任せなかったのか!?」
結婚と貞淑、母性を司る女神であり自身の母であるヘラの名前を出したアルテミスだったが··········
「今ちょっと修羅場になっとってな。コイツをオラリオに置いておくわけにはいかんのじゃ」
修羅場。
ヘラが持っていたタオルを作ったのがアルケイデスだと気づいたアルフィアは今激怒している。
自分にあれほど言い寄ったのに、ヘラにまで手を出していたのだ。
「とにかく、今日からよろしく頼むぞ」
「ど、どうしてこんなことに··········」