筋肉の化身   作:アーっr

49 / 81
口の上手い男と、それに流される女


特訓

 

 

 『英雄』の一撃。弓で再現したあの一撃は女神の補助があったからこそ出来た。

 つまり、神を超える『技』があれば『英雄』の一撃は再現できるのだ。

 

 「頼む、アルフィア。特訓に付き合ってくれ」

 

 「············あの女神に頼めば良いだろう」

 

 女神アルテミスとは週に何度か弓で勝負をしている。今の所俺の37勝0敗だ。

 

 「それでは駄目なんだ。確かにアルテミス様の弓術は優れている。しかし、真に俺が求めるものは別にある」

 

 全能神の技。それこそが俺に必要なものなのだ。

 

 「······私に、なんの得がある」

 

 「なんでもしてやる。お前が必要なんだ」

 

 

 

 

 

  「そら、始めるぞ」

 

 「··········よろしく。

 《余は人ならざるもの。全知全能なりし神々の王。全ての父、天空を統べる者。すなわち、至高なる神である》【英雄変神(イーリオス・ゼウス)】」

 

 『神』の動きは緩慢で、アルフィアの目ならば十分に見切れる速度だった。

 

 「───」

 

 「フッ!」

 

 だからこそ、その異常が際立っていた。

 

 「───ぐっ!?」

 

 剣を合わせた瞬間、アルフィアの体が宙を舞う。

 

 「……これが、『神』の技……!」

 

 『神』の技の前では、ありとあらゆる『勢い』は『神』の手中にある。

 先程アルフィアを飛ばしたのも、その一端である。

 

 「──ふ、ふふ」

 

 超常的技量。それを下界最高の才能の持ち主であるアルフィアが真似をする。

 

 「ふはッ──」

 

 「──────」

 

 しかし、届かない。『神』の御技を再現することは困難を極める。

 

 「────ふはははっ!」

 

 女は、笑う。初めての経験。自分が真似すら出来ないなんて、今までなかった。

 楽しいのだ。この『未知』は、退屈しない。

 

 

 

 

 

 「───ん」

 

 「ようやく戻ったか。休憩は終わったぞ」

 

 「悪い。じゃあ始めるか」

 

 

 

 

 

 

 「───フッ!」

 

 「そのまま手首を捻る。振れ」

 

 何回も繰り返すうちに、どんどん『技』は発展していった。

 常人ならば一生かけても到達出来ないだろう境地を、この二人の天才は一日で更新し続ける。

 

 

 

 「それで、報酬のことだが」

 

 「ああ、なんでも良い。遠慮せず言ってくれ」

 

 「───私と、戦え」

 

 「オッケー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「フッ!」

 

 「ヌン!」

 

 下界最高の技と力がぶつかる。

 魔法は互いに使わない。それに意味はないのだ。

 

 「ハッ!」

 

 「セイ!」

 

 『勢い』を掌握する『神』の技を、二人の怪物は部分的ではあるが再現していた。

 研鑽は、真似程度では終わらない。

 

 「───」

 

 『静寂』はその二つ名の通りに、音を消した(・・・・・)

 

 「うお!」

 

 全てのエネルギーを威力に変換。

 力で劣っていても無駄を極限まで削ったことにより、もう一人の怪物に並び立て───

 

 「えい」

 

 ───るわけがない。単純な筋力で『空』を支える怪物に力で勝てるはずもないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「········チッ」

 

 「悪いね強くて」

 

 「本当にイラつくなお前は」

 

 「でも俺の方が強いし」

 

 「クソガキが」

 

 決着は女の敗北。肉体のスペックが違うのだ。

 

 「まあ、お前が俺と同じ筋力だったら負けてるだろうな」

 

 「当然だ!お前は筋力に頼りすぎている!」

 

 「これも俺の才能だし」

 

 「特訓の時は抑えろよ」

 

 「はいはい」

 

 思えば、遠くまで来た。『英雄』に届くなんて、嘗ての俺では考えられないことだった。

 あともう少しだ。あともう少しなら慣れてる。

 それに、今は一人じゃない。

 

 「アルフィア」

 

 「なんだ」

 

 

 「───ありがとう」

 

 これ(二人)なら、『英雄』にも勝てる。

 

 

 




男は本心から女が必要だと思っている
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。