『英雄』の一撃。弓で再現したあの一撃は女神の補助があったからこそ出来た。
つまり、神を超える『技』があれば『英雄』の一撃は再現できるのだ。
「頼む、アルフィア。特訓に付き合ってくれ」
「············あの女神に頼めば良いだろう」
女神アルテミスとは週に何度か弓で勝負をしている。今の所俺の37勝0敗だ。
「それでは駄目なんだ。確かにアルテミス様の弓術は優れている。しかし、真に俺が求めるものは別にある」
全能神の技。それこそが俺に必要なものなのだ。
「······私に、なんの得がある」
「なんでもしてやる。お前が必要なんだ」
「そら、始めるぞ」
「··········よろしく。
《余は人ならざるもの。全知全能なりし神々の王。全ての父、天空を統べる者。すなわち、至高なる神である》【
『神』の動きは緩慢で、アルフィアの目ならば十分に見切れる速度だった。
「───」
「フッ!」
だからこそ、その異常が際立っていた。
「───ぐっ!?」
剣を合わせた瞬間、アルフィアの体が宙を舞う。
「……これが、『神』の技……!」
『神』の技の前では、ありとあらゆる『勢い』は『神』の手中にある。
先程アルフィアを飛ばしたのも、その一端である。
「──ふ、ふふ」
超常的技量。それを下界最高の才能の持ち主であるアルフィアが真似をする。
「ふはッ──」
「──────」
しかし、届かない。『神』の御技を再現することは困難を極める。
「────ふはははっ!」
女は、笑う。初めての経験。自分が真似すら出来ないなんて、今までなかった。
楽しいのだ。この『未知』は、退屈しない。
「───ん」
「ようやく戻ったか。休憩は終わったぞ」
「悪い。じゃあ始めるか」
「───フッ!」
「そのまま手首を捻る。振れ」
何回も繰り返すうちに、どんどん『技』は発展していった。
常人ならば一生かけても到達出来ないだろう境地を、この二人の天才は一日で更新し続ける。
「それで、報酬のことだが」
「ああ、なんでも良い。遠慮せず言ってくれ」
「───私と、戦え」
「オッケー」
「フッ!」
「ヌン!」
下界最高の技と力がぶつかる。
魔法は互いに使わない。それに意味はないのだ。
「ハッ!」
「セイ!」
『勢い』を掌握する『神』の技を、二人の怪物は部分的ではあるが再現していた。
研鑽は、真似程度では終わらない。
「───」
『静寂』はその二つ名の通りに、
「うお!」
全てのエネルギーを威力に変換。
力で劣っていても無駄を極限まで削ったことにより、もう一人の怪物に並び立て───
「えい」
───るわけがない。単純な筋力で『空』を支える怪物に力で勝てるはずもないのだ。
「········チッ」
「悪いね強くて」
「本当にイラつくなお前は」
「でも俺の方が強いし」
「クソガキが」
決着は女の敗北。肉体のスペックが違うのだ。
「まあ、お前が俺と同じ筋力だったら負けてるだろうな」
「当然だ!お前は筋力に頼りすぎている!」
「これも俺の才能だし」
「特訓の時は抑えろよ」
「はいはい」
思えば、遠くまで来た。『英雄』に届くなんて、嘗ての俺では考えられないことだった。
あともう少しだ。あともう少しなら慣れてる。
それに、今は一人じゃない。
「アルフィア」
「なんだ」
「───ありがとう」
男は本心から女が必要だと思っている