結局あのあと、単純な技術の差でボコボコに殴られた。神の送還がなんとか、絶対悪がなんとかで戦いは中断されてしまったが、あのままいっても殴られっぱなしだっただろう。あの場にいた助けられそうな人は医療を受けられそうなところまで運んだが、どうなったのだろうか。
「そんなことより筋肉だ」
そう、筋肉。使用後はやはり腹が減り、栄養を求める。村からオラリオまで朝から日が落ちるまで疾走。そしていきなりの戦士との戦闘。少年の筋肉は栄養を求めていた。
「なぁ。飯、ないか?」
少年は間違いなくこの瞬間は英雄ではなく乞食だった。図々しく道行く人に尋ねる少年を慰めるように、炊き出しが行われていた。
「あったけ〜!!やっぱ心の温かさは沁みるなぁ!戦ってよかったぁ!」
調子のいいガキである。
「アナタ、大丈夫?怪我してるみたいだけど」
赤い髪をした女が話しかけてきた。
「飯食えば治る。それに、筋肉は傷ついて成長する」
この筋肉、実はオラリオに来てから数分で一周し、その時に闇派閥を蹴散らしたり、自爆兵に巻き込まれたりしている。
自爆兵は子供だったので助けたがまともに爆発を喰らった状態で戦士と戦い、そこでも骨を折ったり内臓が潰れたりの重症を負っている。
本来飯を食うどころではないはずだが、村での過酷な修行、神の食べ物「プロテイン」、本人の回復力などの要素が重なり、なんか人か怪しいほどの超回復を果たしていた。
さらには瓦礫の撤去や怪我人の移送などで動いていた筋肉達に、黄金時間が訪れる。
「フン!」
戦士に殴られた痣や疲労が回復する。少年の筋肉はまた一歩高みに近づいた。
「あ、そうだ。俺、人を探してんだけど」
危ない。筋肉に気を取られて肝心なことを忘れるところだった。
俺の本来の目的はあくまでベルの叔母を連れてくること。戦いはついでにすぎない。
「フフン!この美少女探偵アリーゼに任せなさい!それで、どんな恰好なの?」
「……あー、いや、うーん」
そういえばベルの叔母がどんな姿なのか知らない。しょうがない、想像で行くか。
「多分、白い髪で、赤い眼だ。きっととても優しい人で、病弱らしいんだ。俺の友達の叔母さんで、名前はアルフィアっていうらしい」
ベルの叔母ってことはベルみたいな白い髪で赤い眼で、とても優しい人なんだろう。ジジイは女王とか言っていたが、セクハラジジイの言うことは当てにならない。
「私も探しておくわ!アナタもあまり無茶しちゃダメよ」
「あんたもな。あんた誰かのために動いて死にそうだぜ」