「───っ!」
10歳に満たないであろう少女が、モンスターに追い詰められていた。長時間戦い続けていたのだろう、魔石やドロップアイテムがそこらじゅうに散らばっている。
「わたしは、こんな、ところで·······!」
少女は一人だ。助ける者など───
「────ふっ!」
「───ぁ」
いるのだ、『正義』が。未だ若き、しかし力ある『正義』が。
「───怪我は、無いですか?」
なんか
「·········どうすれば、そんなに強くなれるの?」
「強く、ですか」
そんな事を言われてもな。俺は生まれた時から強かったし。
「·····なぜ、強さを求めるのですか?」
適当にはぐらかせばいいだろ。ガキだし。
「·········強くならなきゃ、みんなモンスターに奪われる。また、失っちゃう」
「みんな奪われる、ですか·········」
めんどくさ。
「········何を、守りたいのですか?」
「なに、を················?」
「例えば物だったら、鍵の掛かった棚に入れておけば安全でしょう?そのように、守る時には守るものに応じて対応をするほうが効果的です」
「貴女は、何を守りたいのですか?」
良い感じの問いを投げれば勝手に考えるだろ。
後は自分で考えとけ。
「わたし、は········」
「アイズ!」
なんか来た。緑の········エルフ、だったか?
「君は········」
「アルケイデスと申します。現在はアストレア・ファミリアに所属しております」
「私はロキ・ファミリア副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ。この娘········アイズの教育係でもある」
母親か。ガキは何するか分かんねえんだからちゃんと側に居ろよ。
「君がアイズを保護してくれていたのか」
「はい。とは言っても、モンスターを多少追い払った程度ですが」
「それでも、助かった。正式に謝辞を述べよう」
いらん。さっさとガキを連れて帰れ。
「········まだ、帰らない」
「アイズ!この期に及んで········」
「まだ!ランクアップできてない!」
「········アイズ」
うるさ。ガキは感情をそのまま表に出すから会話がうまくできねえんだよな。
「『英雄』なんて、わたしには表れない!だからわたしは、強くならなくちゃいけないの!邪魔、しないで!」
「アイズ、私は········」
········しょうがねえか。
「アイズさん。食べる事は、好きですか?」
「················え?」
「好きな食べ物とか、ありますか?」
ガキは好物で考えさせりゃ良いだろ。
「········ジャガ丸くん」
なんだそれ。
「じゃあ、ジャガ丸くんの事を守りたいですか?」
「········守りたい」
「じゃあ分かりますね。貴女が守りたいものとは、貴女が好きだと思っているものなのです」
「好きな、もの········」
ガキって単純だよな。ちょっと合ってるなとか思ったら全部信じちまう。
「大切なものとも言えるでしょう。貴女の大切なものは、なんですか?無くなって嫌なものは、なんですか?」
「········たい、せつ」
「気付いていないだけで、貴女の大切なものはすぐ近くにあるかもしれません。もしかしたら、大切なものなんて無いかもしれません」
俺みたいにな。
「重要なのは、周りです」
「···········自分じゃなくて?」
「迷った時には自分すら信じられなくなります。その時に大事なのは、貴女の側で支えてくれる人です」
「わたしを···········?」
なんだこのガキ。自分一人で生きてるつもりか?
「貴女を支えてくれる人は大勢います。貴女にジャガ丸くんを提供する店員さん。貴女の武器を作ってくれる鍛冶屋さん。それに、貴女を心配してくれる仲間の皆さん」
「あ···········」
「そういう人たちは、大切にしたほうがいいです。彼らは得難い存在ですよ」
特に、俺みたいなやつにとってはな。
「今まで生きてきた過程の中に、彼らはいます。考えれば考えるほどその数は増すでしょう。それこそ、星の数ほどいるかもしれません」
「それでも。彼らは『英雄』よりも身近で、『英雄』より自分を助けてくれます」
「···········『英雄』、より········」
いつ来るか分かんない奴よりは助けてくれるだろ。
「貴女の本当に大切なものは、『日常』。普通に笑い、普通に生きる『日常』こそ、貴女が守るものなのです」
知らんけど、決めつけていいだろ。
「さあ、貴女の守るもの。『日常』の中に、誰が居て欲しいですか?」
「···········わたしは────!」
ふう。また一人救ってしまった。『正義』を為すっていうのも楽じゃ無いな。
「アルケイデス。ジャガ丸くん、食べる?」
あ、女じゃん。ジャガ丸くんってなんだよ。
「アストレア様。ジャガ丸くんとは········?」
『正義』に飽きたら中身が表に出る。