正義と悪が戦っている。
「『福音』」
「ウオオオオォォォォォォ!!」
たった一言だけで、耐久に優れたレベル6が抑えられる。
「ガレスおじさま!!」
爆発的な音の塊が放たれ、また攻めきれない。
「輝夜!」
「ポンコツエルフ、合わせろ!」
近接戦闘に優れた冒険者が、灰色の女に近づき······
「『炸響』」
また、一言でひっくり返される。これだけの準備をして、これだけの人数を集めて、これほどの努力をしても、この「英雄」には届かない。
「強すぎんだろ······!」
「この程度か?小娘ども。ならばここで果てよ。《冒険者》」
下界最高の才能を持った英雄が、その力を遺憾なく発揮しようとして·····
「■■■■■■ーーーッ!!」
筋肉が、現れた。
なぜ俺があの黒い戦士に殴られたのか。
腕力の差であれば完全に俺が上回っていた。
速さの差であれば俺が上回っていた。
だと言うのに、なぜーーー
答えはわかる。あの老人が筋トレの最中に話していた「技術の差」というやつだろう。
曰く、『真に強い冒険者は自分と比べて圧倒的に強い怪物と渡り合うほどの技術を持っているもの』らしい
理屈はわかる。技術を否定することはない。俺のせっかく身につけた筋肉も上手く扱えない様ではまだまだだ。すなわち、筋肉の補助としての技術が足りない。故に、技術を磨くことにした。
戦士の拳を受け流したあの技。あれは村の老人が話していたものを参考にしたものだ。あの技は戦士も驚いていた。あの技を応用すればいいのではないだろうか。
試行錯誤の日々だった。瓦礫の撤去、民間人の避難、襲ってくる闇派閥の対処。生活の中に技術を意識することで、『流れ』の様なものを捉えることができる様になった。
筋繊維の一つ一つが、流れている。貧弱な筋肉であれば全身がズタズタになって死ぬだろう。しかし、これをしているのは下界最高の筋肉。かなりの疲労は溜まるが、慣れればどうと言うことはない。
「俺の勘が下に向かえと言っている」
最近、勘がいい。瓦礫の中に埋まった人を助ける時や闇派閥の襲撃の際に良く勘が働く。言語化はできない。ただなんとなくという理由だが、今のところ外れたことはない。近いものを挙げるとしたら、神々が持つという勘だろうか。
「さて、行くか」
冒険者達はなんか作戦を立てて戦っているらしいが、別に干渉しなくていいだろう。したい様にするのが一番だ。
「で、あんたはどうしたんだ?」
ダンジョンの入り口、バベルの根本に女神がいた。