『正義』の使徒たちは、対峙していた。
「漸くリオンを見つけたと思ったが、別の眷属を引き当ててしまったか。··········まあいい」
これなるは神エレボス。地下世界の神であり、この大抗争を始めた黒幕。『絶対悪』を名乗りし者。
「─────お前たちの『正義』とはなんだ?」
「············知れたこと。大義名分たるための武器であり、言動の暴力を正当化するための色のない旗。そして最善を目指して摩耗していく過程そのものだ」
『正義』の使徒、輝夜は答える。それは彼女が人間の闇を見てきたが故の答え。人の悪性を知り、それでも『正義』を信じる者の答え。
「失格」
「なっ!?」
『絶対悪』は切り捨てる。
「何を冷めたふりをしている?それは自分を偽るための鎧か?気取った真似をするお前が一番つまらない。お前の正義とは『未練』。現実にひどく裏切られた子供がそれでも手放さないでいる幻想だ」
『超越存在』である『絶対悪』は
「そして答えを出さない、小人族。お前は会話を引き伸ばし俺からわずかでも情報を引き出そうと考えているな?」
「お前の正義は『毒』───と見せかけた『知恵』。あるいは劣等感を隠すための隠れ蓑か?
『絶対悪』は嘲笑う。
「何でもかんでもお見通しってか、これだから神は嫌なんだ!!」
「はは、両者ともに実に不完全で下界らしい、お前たちはまさに迷える子羊だな」
『絶対悪』は『正義』の使徒達を憐れんで───
「では私はどうでしょう」
『正義』が、現れた。
「来たか、『正義』の体現者。ちょうど良い。お前の『正義』とは、なんだ?」
漆黒の男神は『正義』に問う。
「言っておくが、誤魔化さないでくれよ。ちゃんと本音を言ってくれ」
「いいでしょう。私の『正義』は◾️◾️ ◾️◾️ ……おっと」
「…………は?」
「危ない危ない。ギリギリセーフです」
「気を取り直して。私の『正義』は、『慈悲』です」
「……ふうん?」
突然聞こえなくなったことは気になるが、今答えた『正義』も気になる。
「私は強く、他者は脆い。だからこそ、私は彼らを守らなければなりません」
「───ハッ」
『絶対悪』は嗤う。
「お前の『正義』は自分以外の全てを下に見る『傲慢』。『悪』よりも悍ましく、醜いものだ」
『絶対悪』は、『正義』を嗤い───
「───駄目ですか?」
だからこそ、その返答は予想外だった。
「───は?」
「そんなに駄目ですか?私は良いと思うのですが……」
それは『正義』と呼ぶにはあまりにも……
「私は、『偽善』を肯定します」
「私は、『心の中の悪』を否定しません」
「心の中でどんなことを思っていても、成したことが『善』ならば、私はそれを『正義』と認めます」
「これは、駄目なのでしょうか?」
「……お前は、異常だ。その視点は下界の子供のものではない。『
下界の子供達は脆く、弱い。だからこそ、結果だけを見て信じることなどできない。
彼は何を考えているんだろう。あの人はどうしてこんなことをしたんだろう。
そんなことを考えてしまう。それは下界の子供としての当然。
神ですら、時としてその思考に囚われる。
「……お前は、意外と
「だとしても。『正義』を諦める理由にはなりません」