──────ゼウス?
アストレアは『正義』の女神である。その出身はアルテミス、アフロディーテ、ヘスティアなどと同じであり、神々の中でも一目置かれる神格者である。
アストレアはその少年を見て、神々の王を思い出した。若かりし頃の大神は持ち前の権能で奪い、犯し、征服した。
『正義』の女神は、少年にかつての野蛮の権化とも言える神々の王の姿を重ねた。
なんか知らん姉ちゃんにジジイと間違えられたが、順調にダンジョンに潜っている。聞けばこの姉ちゃん、ダンジョンの中にいる眷属達のためにポーションなどを持っていこうとしていたらしい。
神がダンジョンに潜るのはだいぶ危険だが、こういうのは言っても聞かないんだよな。ベルもそういうところがあるからわかる。
この姉ちゃんベルに似てるし、ワンチャンこの人がアルフィアだと思ったんだが、やっぱり違うらしい。
「だいぶやばくなってきたな」
さっきからダンジョンが揺れている。下から筋肉が危険を感じている。勘も今までにない敵がいることを伝える。急がなければ。
「景気良く一気に行くかぁ!」
「え!?あ、危ないわよ!?」
ベルに似た姉ちゃんは怖がっている様だが、大丈夫だ。
「任せなって。姉ちゃんは俺が守るから」
「いや、そういう問題じゃなくて────」
「じゃあ一発行くぞ!」
「ちょ、ちょっと!待ちなさ───」
『流れ』を筋肉で感じて、思いっきり──ッ!
「■■■■■■ーーーッ!!」
やせいの きんにく があらわれた!
それまで戦っていた「正義」も「悪」も動きを止め、《落ちてきたもの》の様子を窺う。
ソレは、立ち上がった。
上を見ればダンジョンの階層を三つは無視して突っ込んできたのだろう。階層主か、それ以上。間違いなく無視できないほどの強者に違いない。
ソレは、人の形をしていた。まるで大木の様な、極太の首!腕!胴体!脚!
益荒男が多いオラリオでもこれほどのものはなかなかないだろう。
ソレは、筋肉だった。
「正座しなさい」
「まちなって姉ちゃん。今それどころじゃ」
「あなたは少し人の話を聞くということを覚えるべきです!」
「しまった。ドがつくほどの正論だ。反論の余地がない。」
ベルにも同じ様に怒られたことがある。あれは怖かった。
「ア、アストレア様!?どうしてダンジョンに!?」
「あなた達がダンジョンで必死に戦っているのに私が一人安全な場所にいるなんておかしいでしょう?」
「い、いえ。そういうことではなく、神がダンジョンに入ることは!」
「もちろんわかっているわ。それでも、私はここへ来たのよ」
「やめておけポンコツ。この方はこうと決めたら動かない。それより、そっちのやつは何者ですか」
「それは────私もよくわからないわ」
「よくわかんないやつと一緒にいたんですか!?」
「確かに、私は彼のことを知らないわ。それでも、信じてみようと思ったの」
なんか姉ちゃん達がいい感じの話をしているが、それどころじゃない。
──灰色の髪
──左右で色が違う目
──癇に障ったものは許さないという様な、いかにも女王というような雰囲気
──超がつくほどの美人
ベルとは似ても似つかないが、この特徴は──
「あんたが、アルフィアか?」