黄昏の館
ロキ・ファミリアの本拠地であるその場所に、『客』が現れた。
「アストレア・ファミリア所属、アルケイデスと申します。本日はリヴェリア・リヨス・アールヴ様にお目にかかりたく存じます」
「お、お待ちください!」
アルケイデス。闇派閥の悉くに勝利し、民衆のみならず冒険者をも救い、暗黒期を終わらせた男。
ロキ・ファミリアにも救われた者が多い。
リヴェリアもそのうちの一人だ。
「本日はお忙しい中、私のために時間を割いて頂き、ありがとうございます」
「いい。お前には恩があるからな。これくらいのこと、大したことではない」
男と女が向かい合って座っている。
男は黒目黒髪。その目は強い覚悟を感じさせる。
女は翡翠の目と髪。女神のごとき神聖さがある。
「それで、今日はどうした?」
「本日は冒険者としてではなく、一人の人間としてリヴェリア様とお話ししたく存じます」
「あまりかしこまった言葉遣いをしないでくれ。お前は私達の恩人だ。それで、要件はなんだ?」
翡翠の女は黒い男に要件を聞く。
「その……この事は、他言無用でお願いします」
「いいだろう。我が誇りに誓って、他言しない」
女は堂々と誓う。
男が、話を切り出す。
「実は………娘が、出来ました」
「───は?」
娘!?
「生まれは違いますが······それでも、私の娘です」
「あ、ああ。そういうことか」
驚いたが、納得した。どのような経緯があったかわからないが、おそらく孤児か何かを娘として迎えたのだろう。
「それで、ですね。娘と、どう接すれば良いのか分からなくて········」
「それで、私に教えて欲しい、と?」
「はい。おっしゃる通りです」
「ふむ··············」
確かに
「他の者の方が適任では無いか?」
「いえ、その············」
男は言い淀む。
「確かに、アストレア様は自分にとってとても良い母では、あるのですが············」
「······自分は、良い息子では無かったので············」
「················」
良くやっていると思うが、これは本人達の問題だろう。
···········親として、か。
「私も、お前に教えられるほど親としての何たるかを知っているわけではない。だが···········」
「··········そうだな。私が知り合いに言われたのは、“自分がやってもらって嬉しかった事をする”だな」
「···········嬉し、かったこと···········」
「ああ。私は親友に髪を手入れしてもらったことが嬉しかった」
「お前は、どうだ?」
嬉しかった事。男にとって、それは···········
「───息子と、認めてもらったんです」
「抱き締められて、家族だと、言われたんです」
「あれはとても、とても嬉しかった···········」
家族と認められたこと。抱き締められたことが、男にとって一番嬉しかったことなのだ。
「なら、お前もそうしてやれ。家族の温かさを、今度はお前が娘に教える番だ」
「···········本日は、ありがとうございました」
「困ったらいつでも来ていい。子供を持つというのはダンジョンで戦うより難しいぞ」
「リヴェリア。アルケイデスと何を話していたんだい?」
小人族の『勇者』であり、ロキ・ファミリアの団長であるフィンは
「···········秘密だ。安心しろ。あくまで個人的な話し合いで、ファミリアとは何の関係もないことだ」
「···········そうか。なら、いい」
···········怪しい。
しかも、部屋から出てきた時の
あれは···········
「母親、かぁ」
この後も何回か密会(内容だけ秘密)した。