新月の夜。
月の光がない、暗い夜。
そこに彼らはいた。
蠍のモンスター。
大小様々な蠍が、犇き、蠢いていた。
「アルテミス様!」
「··········くっ!」
狩猟の女神とその眷属達は、濁流とも言うべきその大群に押されていた。
「【我が名を讃えよ】。───【光在れ】」
光が、溢れた。
夜を掻き消すような、眩い光。
しかし、温かい優しさがそこにあった。
「───貴方、は··········」
それはまるで、月光のようで───
「良い父親とは何か、か」
「はい。私には両親が居なかったので、何が『良い』のか分からないのです」
男と女神達が話し合っている。
議題は『良い父親とは』
「·········正直に言おう。私にも、分からない」
「··················そう、ですか」
女神は、男の問いに答えられなかった。
「だが、悪い父親は分かる」
「
「それでも、まあ、手を出した責任を取るならまだ許せたのだが········」
「父は、そういうことをしなかった」
「あれは夫としても、父としても、『悪い』例だ。ああいうふうにはなるな」
「·········なるほど」
悪い例。こういうふうにはなるなという手本。
「親としての責任、ですか·········」
「難しいな。だが、こういうものはパートナーと共にやっていくものだろう?君は結婚するつもりはないのか?」
「········結婚、ですか··············」
男は悩む。
「君なら相手は多そうだが········」
「いえ、しかし········。私が結婚するとなると、娘に会わせなければいけないでしょう?ちゃんと、上手くいくのでしょうか」
「それに妻となる人も、自分が産んだ訳でもない娘が一緒では、迷惑ではないでしょうか」
「私は、その妻を、愛せるのでしょうか」
娘は、家族だった。血が繋がっていた。
だが、妻は?
血が繋がっていない、その女を、愛せるのか?
それに、妻と娘はうまくいくのか?
血が繋がっていないのに。
未だ子供で、しかし親にならんとする男の苦悩。
「はあ?愛せるに決まってるでしょ?」
馬鹿じゃないの?という雰囲気を隠そうともしないその女神は、続けて言う。
「だって貴方、
「·········えぇ、いや、うーん」
「アフロディーテ。アルケイデスが困っている」
「何よ!私を愛してないの?!」
ぐわー、と
「そもそも!愛せるかどうかなんて考える必要ないでしょう!」
「·········え?」
「妻だから愛するんじゃなくて、愛してるから妻にするんでしょう!」
「··················!」
まさに正論。普段頭の軽い色ボケなどと呼ばれているアフロディーテだが、時として誰もが驚くような一言が出る。
「アンタは考えすぎ!アルテミスは恋もしたことがないような喪女神だけど、アンタももっと楽しむべきよ!」
「アフロディーテ!余計な事を言うな!」
「何よ!ホントのことでしょ!」
「「うぐぐぐ」」
「·········たの、しむ」
愛。楽しむ。未だ、分からない事は多い。
だが───
「お二方。ありがとう、ございます」
「いや、良いんだ。助けてもらったし、むしろこんな助言で良かったのか不安だ」
「ふん!三千世界が泣いてひれ伏す私の美と愛を受けたんだから、もっと感謝しなさい!」
「本当に感謝しています。何か困ったことがあったら言ってください。大体の事はなんとかします」
「───言ったわね。じゃあ協力しなさい。オリンピアにある『天上の神焔』をなんとかしたいの」
「はい。なんとかします」
頑張って、前へ進もう。
このあとめちゃくちゃなんとかした。