田舎の村。
どれほど田舎かと言うと、おおよそ商人達すらも通り掛からないような、山に囲まれた田舎。
白い髪と赤い目を持つ少女、ベル・クラネルには祖父と母がいる。
ベルは優しく、自由な祖父と、厳しく、しかし強く優しい母のことが好きだった。
自由すぎていつも女の人に声をかけている祖父と、優しいとは言えない拳骨を繰り出す母だったが、それでも好きだ。
ベルは、祖父と、母と、自分。この三人で生きていくのだと、子供ながらにそう思っていた。
思って、いたのだ。
「やあ、ベル。俺はアルケイデス」
「アルフィア·······お母さんのお姉さんの父親だ」
「つまり、君のお爺ちゃんだ」
「───えええええええ!?!?」
新しくお爺ちゃんが生えてきた!?
「·········来たのか」
「ああ。やらなきゃいけないことがあるからな」
「········何の用だ。今更礼でもしろと言うのか?」
灰の女と黒い男が話をしている。
女は女性にしては高い170cほどの身長。
対して男は165c以上だが女には届かないほど。
「違う。俺はお前の父親として、娘のお前に会いにきた」
「·········お前のままごとに付き合うつもりはない」
女は男を突き放すように言う。
「お前も分かっているだろう。互いの血によって、俺たちは繋がっている」
「
「お前は『正義』として、
「だと言うのに、あろうことか
息を、吸って。
「お前に助けられ、ダンジョンを抜け、オラリオから脱出し、この村にやってきた」
「妹と同じ、白い髪の娘が、私を見ていた·········」
「思わず抱きしめたよ。私にこんな感情が残っていたとは、自分でも驚いた」
「·········だが、すぐに冷静になった。今までの自分の
息を、吐いて。
「なあ。その時私がどう思ったか、お前に分かるか、
「自分の過ちを思い出して、あの娘に触れることが苦痛になった」
「あの娘を汚してしまうような気がしたんだ。私はあの娘をほったらかしにして、悪となった」
「妹の娘より、世界を優先した。そして、世界のためと言い訳をして、悪を為した」
「穢れた、愚かな私の手があの娘の手に触れるたび、吐き気がした。何度も何度も、自分を呪った」
「私は、あの娘の母に相応しくないんだ」
それは、哀れな罪人の懺悔だった。
「まったく。ほら、こっち来い」
「おい!何を────」
男が女を抱き締める。
「確かに、お前は悪い事をした。謝っても許されないような、重い罪だ」
「──………ッ!」
分かっていたこととは言え、男に言われたのは女にとってショックがあった。
「だがな。娘の罪は親の責任でもある」
「………は?」
「当たり前だろう。確かに本人の意思でやったことではあるが、それは親の管理の責任にもなる」
「何を、言って………」
「一緒に償おう、アルフィア」
「─────」
「いいかアルフィア。『今』相応しくないなら、『いつか』相応しくなれば良いんだ」
「親になるっていうのは大変だけど、頑張って一つ一つ進むしかないんだ」
「生きるって言うのは、そういうことだ」
「一緒に生きよう、アルフィア」
「………私のせいで、人が死んだ」
「そうだな」
残酷だが、事実だ。
「………私のせいで、妹は死んだ」
「………」
本当に、そうだろうか。
「私のせいで、ベルが───」
「それはあり得ない」
それは、絶対に違う。
「お前はもう誰も死なせることはない」
「お前はもう何も失わない」
なぜなら。
「お前は、俺の娘だ」
「·········というわけで、俺は君のお爺ちゃんだ」
「で、でも───」
「若すぎる?」
「う、うん···············」
精々兄弟かそこらだろう。自分の父親ですら、もう少し歳をとっているはずだ。
「でもなぁ。俺はアルフィアの父親だし·········」
「ほんとに?お母さんに聞いてもいい?」
「ああ。これでアルフィアが父親として認めてくれなかったら悲しいが·········」
じゃあ聞こう。
「アルフィアお母さん」
「··················どうした、ベル」
·········?
「お母さん、泣いてるの?悲しいこと、あったの?」
強い母が泣くところを見るのは、初めて会った時以来だ。
「いや·········いや。なんでもないよ。それで、どうした?」
そうだった。
「アルケイデスさんがお母さんのお父さんって、ほんと?ほんとに僕のお爺ちゃんなの?」
「··················」
·········?何にも言わない。迷って、る?
アルケイデスさんは·········ソワソワしてる。不安、なのかな?
「·········
「ほ、ほんと!?」
「本当だ。くだらない嘘は言わん」
やった!新しい家族だ!
「··················もう、行くのか」
「もともとすぐ会いに来るつもりで予定を立ててたんだが、色々あって遅れてな。ロイマンとの約束を破るわけにはいかないし、帰らなきゃいけない」
「··················そう、か」
「·········そんな顔するな。また会いに来る」
「·············ああ」
「じゃあ、行ってきます」
「·········行ってらっしゃい、父さん」
一番書きたかったのがこの場面。
このためだけにこのIFを書いた。