筋肉の化身   作:アーっr

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光を掲げる者。『救世主』を名乗る者。
しかし、その本質は悪魔。
ツーアウトってとこか?


悪魔(正義)

 

 

 

 「神よ······何故············!」

 

 男は苦しそうに神への恨みを語る。

 男の名はヴィトー。

 彼は魂の欠陥により、世界が灰色に見えている。

 唯一の例外は、他者の血。それも、負の感情が多く含まれているもの。

 

 「············これから、どうすれば········!」

 

 他者とは違う存在、この世界の欠陥。

 彼は自身をそのように考え、この欠陥を正すために今の世界を壊そうとした。

 しかし闇派閥は敗北し、彼は慕っていた神『エレボス』を失った。

 未来に希望が見えない。

 子供の頃に憧れた英雄も、今や自分の敵だ。

 

 「どうして、私は···········!」

 

 彼は英雄に憧れていた。

 自分の視界は灰色で。それでも、英雄は輝かしく映った。

 だが、英雄は自分を助けてくれなかった。

 いつしか、英雄を憎むようになった。

 

 「許されないのですか?私のような者は、望む事すら···········!」

 

 ああ、神よ。正義に敗れ、天に帰った神よ。

 貴方が私を助けないなら。

 私は────

 

 「────俺(・)と来い、ヴィトー」

 

 ────悪魔に助けてもらいます。

 

 

 

 

 

 

 彼(・)は、悪魔的だった。

 

 「俺が『正義』をやってるのは仕事だ」

 

 「別に、心の底から他人を助けたいなんて思ったことはない」

 

 「正直言って、つまらん。初めてやった時はそこそこ面白かったが、最早苦痛になっている」

 

 「俺は何よりも強い。人よりも、怪物よりも、神よりも俺の方が強い」

 

 「本来、俺は何よりも優先されるべきなのだ!」

 

 「嗚呼、だが············」

 

 「社会とは、秩序とは、我慢が大事なのだ」

 

 「俺は悲しい。ふざけた話だ」

 

 「俺は、この箱庭を壊さないように手加減せねばならない」

 

 「他の············『普通』を名乗る者どもと同じように生きるには、そうしなければいけない」

 

 「それでも(・・・・)。そう、それでも」

 

 「少し。そう、少し工夫すれば良い」

 

 「その少しの工夫で、俺のような者は社会で生きられる」

 

 「俺は、光の中で生きることが出来る」

 

 信じられない言葉の数々だった。

 彼のことは当然知っていた。

 『正義』の体現者、『闇派閥』の天敵。

 『暗黒期』を終わらせた『英雄』。

 そんな彼が、『正義』をつまらない(・・・・・)?

 

 「その、工夫とは、どのような············」

 

 目の前の、正義を名乗った悪魔に縋る。

 この悪魔の智慧があれば、自分でも。

 光の中で、生きられる············!

 

 「隠せば良い」

 

 「隠してしまえば、無いのと同じだ」

 

 ············は?

 

 「確かに、心根は変わらない」

 

 「正義はつまらないし、他者を助けようとは思わない」

 

 っ!ならば············

 

 「そんなことはどうでも良いんだよ、ヴィトー」

 

 !!

 

 「正しいことをすれば誰も文句を言えない」

 

 「だって、『正義』に文句を言うことになる」

 

 それ、は

 

 「『正義(俺)』を否定した時点で、それは『悪』だ」

 

 ············ふざけた話だ。

 

 「そうか?」

 

 そもそも、そんなもの、続かない。

 やりたくも無いことをするなんて············

 

 「考え方を変えれば良い」

 

 「確か、血以外が灰色に見えるんだったよな?」

 

 そうだ、それこそ私の欠陥。

 だからこそ私は、私を生んだ世界を、その欠陥を破壊するために············!

 

 「ならば喜べ、ヴィトー」

 

 「『救世主(俺)』の前には、傷付いた者がいる」

 

 「彼らは苦しみ、悲しみ、助けを求める」

 

 「多くの血を流している(・・・・・・・・・・)者達が、誰かの助けを待っている」

 

 ············まさか、そんな············!

 

 「彼らはどれほど美しく見えるんだろうな」

 

 「負の感情を含んだ血を流している彼らは、お前にとってどれほど美しく見えるんだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴方は、悪魔だ············!」

 

 「おっと、俺を糾弾するのか?無駄だ」

 

 「結果として、俺は多くの人を助けた」

 

 「俺は間違いなく『正義』だ」

 

 「俺を糾弾したいのなら、俺以上に人を助けてから来い」

 

 「その時は、俺が間違っていたと認めよう」

 

 「············くっ」

 

 「それで、どうする?俺と来るのか?」

 

 「············ええ、分かりました」

 

 「悪魔(貴方)に、助けてもらいます」

 

 

 




ヴィトーにとってはどストライクだった。
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