我ら愛情三銃士!
クラネル一家IF
親の顔は知らない。
どんな人だったのかも、知らない。
それでも……
「アル、ベル。幸せになってね」
優しい声だったのは、今でも覚えている。
「兄さん。ご飯出来たよ」
「わかった。今行く」
その二人は、対極だった。
話しかけた少女は『白』。穢れを知らぬ神聖さを感じさせる。
兄さんと呼ばれた少年は『黒』。何者にも染まらない我の強さを感じさせた。
彼らは兄妹。更に言えば双子である。
「やっぱりベルの料理はうまい。ずっと作って欲しい」
「もう、兄さんったら」
二人は、いつも一緒だ。
「兄さん。あっちの畑はもう実ってるよ」
「ベル。花の冠作った。あげる」
「兄さん」
「ベル」
「……お前達、少し距離が近過ぎないか?」
「……そうかな?」
「いや、家族なら普通だろう」
二人の義母であるアルフィアは、抱き合っている二人に問う。
「近過ぎだ。いくら家族といっても、限度が……」
「お母さんもぎゅってする?」
「ほら、母さんも」
「……わかった」
母は、子に弱いのだ。
初めて会った時、母さんは泣いていた。
「あ、あああっ!アル、ベル……!」
今では信じられないだろう、母の涙。
「……もしかして、お母さん?」
ベルは一目見て彼女を母親だと思った。
俺は────
「お母さん!こっちこっち!」
「ベル。そんなに急ぐな。転んだら危ないぞ」
「大丈夫!兄さんもいるんだから!」
ベルは、すぐに彼女と仲良くなった。本当の親子のように。
俺は────
「俺は、貴女の息子でいいんでしょうか」
「────」
彼女が驚いているのがわかる。俺が彼女に懐いていない事は彼女自身、わかっていただろう。
「……いきなりどうした?」
「ベルは、優しい娘です。兄妹という視点でなくても、良い子です」
「貴女は、優しい人です。ベルと同じくらい、良い人です」
「……俺は、違う」
彼女は灰の髪を。ベルは白い髪を持っている。二人は、似ている。
……俺は、黒い。俺だけ、違う。
「俺は、貴女達のようにはなれない」
俺は、家族にはなれない。
「……来い」
彼女が、呼ぶ。
「…………」
彼女に近づく。
「……は!?ちょっ!?」
いきなり、抱き締められた。
「い、いきなり何を……」
「お前は、私に似ている」
「────」
突然、彼女はそう言った。
「ベルはメーテリア……お前達の実の母に似ている。メーテリアも、白く、優しい娘だった」
「お前は、私に似ている。妹より強く、妹と違う髪を持ち、それを気にしている」
「まったく。そんなところまで私に似なくて良いのに……」
俺が、彼女に似ている?そんなはずはない。
「似ていません。俺は、貴女のように優しくありません」
「私も、メーテリアほど優しくはない。やはり似ているな」
似ているはずがない。俺は、家族では……
「お前は、私の息子だ」
「───ぁ」
強く、抱き締められる。
「お前は私の息子で、メーテリアの息子で、ベルの兄だ」
「お、おれ、おれは」
「ベルとは違う!俺はベルより強い!俺とベルは、違い過ぎる!」
「ベルのほうが優しい!ベルのほうが暖かい!俺は、ベルのようには、なれない!」
「良いんだよ、アル」
「───」
名前を、呼ばれた。
「違くていいんだ。ベルのようにならなくていいんだ」
「違っていても、私達は家族だ」
優しい、声だった。
「───かあ、さん」
「私にも、心残りがある」
「心残り?」
母さんは、懺悔するように言った。
「本来なら、私は『最後の英雄』の礎として死ぬはずだった」
「───」
頭が沸騰する。母さんが、死ぬ?
そんな事、許せるはずが───!
「落ち着け。もうそんなつもりはない。お前達に、会ったからな」
「俺たち?」
「一目見るだけの筈だった。だが、妹と同じ白い髪と、かつての自分のようなお前を見てしまった」
「もう、私は礎にはなれない。私のせいで、『英雄』は生まれないかもしれない」
それが母さんの心残り。いつまでも心から笑えない原因。
「───俺が英雄になる」
なら、これは当然だ。俺は、強いのだから。
「母さんも、ベルも。俺が守るよ」
「───ああ、良かった」
「ジジイ。『最後の英雄』ってなんだ」
ジジイなら知ってるだろ。
「なんじゃ急に。英雄譚とか興味無かったじゃろ」
「いいから。話せ」
「はあ。───『最後の英雄』は、下界を救う者。『黒き終末』に打ち勝つ者じゃ」
「············??わからん。ちゃんと話せ」
具体的に何をすればいいか言えよ。
「まず、黒竜というモンスターがいる」
「ほん。で?」
「コイツが激ヤバで、暴れたら下界が終わる」
「······ふーん?」
「あと10年もしないうちに、黒竜の封印は解ける」
「───は?」
「封印が解けたら、黒竜は下界を滅ぼす」
「───へえ。ふーん」
下界を、滅ぼす?俺の家族を、殺す?
「───ソイツは、どこにいるんだ?」
「北の大地の果てじゃ。めちゃくちゃ遠いぞ」
それで、十分だ。
「ちょっと外に出る。夜には戻るから」
「あんまり遠くには行くなよ」
「───ああ」
「あれ?兄さんは?」
「ああ、ちょっと散歩じゃ。夜には戻ってくる」
「·······おい、爺。まさか───」
「いや、違うじゃろ。確かに黒竜の話はしたけど、流石に·······」
「ただいま!」
「兄さん!おかえり!」
「帰ってきたな不良息子。何処へ行っていた。何をしていた。隠さず話せ」
「いや、大した事ないよ母さん。ちょっと黒竜を殺しただけだし。あ、お土産持ってきたほうが良かった?」
「───全部話せ!」
12時間で黒竜討伐。
たぶんこれが一番早いと思います。