轟音が鳴り響く。
下界最高の才能と下界最高の筋肉がぶつかり合っている。
「フン!」
「フッ!」
力と技がぶつかる。下界において比類ないと言えるほどの、『史上最強』達。
惜しむらくは片方は病気が、もう片方は年齢が、強さにブレーキをかけている。全盛期は遠い。しかし、それでも十分過ぎるほどこの二人は強い。
「俺についてきてもらうぞ!アルフィアァァァァァ!」
「五月蠅い。【福音───サタナス・ヴェーリオン】」
マジでこの人がベルの叔母さんなのか。まさかジジイの言葉が正しいなんて思わなかったぞ。
というかマジで強い。筋肉の差は大きく開いていて、技術はそこまで差はない。だというのに、攻めきれない。これは──
「積み重ねた経験の差だろう。アルフィアには今まで戦ってきた『経験』があり、あの筋肉の塊みたいなやつにはそれがない。」
『絶対悪』を名乗った神の全知は二人の英雄の差を看破した。
「急に落ちてきた時はビビったが、この調子じゃアルフィアに勝つのはかなり時間がかかる。確かに病気の影響でいつかはアルフィアが負けるだろう。」
『絶対悪』は冷静に状況を判断する。
「しかし、その前に『大最悪』がダンジョンを突破し、バベルを、オラリオを壊す」
「チッ!しょうがねえ!アルフィアはあの筋肉野郎に任せて、あたしたちはモンスターをどうにかすんぞ!」
正義の使徒は、己のやるべきことを理解して──
「おっと。そうはさせないよ」
『絶対悪』は『大最悪』の誘導のために『神威』を解放した。
ダンジョンは、怒っていた。度重なるダンジョンでの『神威』の解放、『大最悪』と筋肉によるダンジョンの大破壊。
『大最悪』はあと少しで外に出る。しかし、冒険者どもが邪魔だ。仮に外に出たとしても、数年で必ず倒されるだろう。故に、もっと強い『使徒』が必要だ。あの『最強の英雄』が現れるまでダンジョンの上に居座っていた『黒竜』の様な、強いモンスターが。
ダンジョンが、『哭く』
怪物が、生み出された。
それは、『蛇』だった。
山と見間違えるほど大きく、その黒い表皮はどんな魔法も寄せ付けないだろう。蛇は手足がない故に、全身を動かして移動する。すなわち、全身が筋肉なのである。さらには、超極太の骨は、この蛇の体を作る支えになっており、大樹を思わせる生命の偉大さが感じられる。
他にも角、牙 毒など、さまざまな『危険』がこの蛇に搭載されている。『隻眼の黒竜』には遠く及ばないだろう。『海の覇王リヴァイアサン』というには足りないだろう。名付けるなら『リヴァイアサン劣化個体』だろうか。
しかし、いかに劣化しているとしても怪物である。
かつての『三大冒険者依頼』の一角が、蘇った。