「おい爺。本当にこんなところに医者がいるのか?」
灰色の髪をした女が老人に問う。
「居るに決まっとるじゃろ。わざわざこんな田舎までお主達を連れてきたんじゃぞ」
「こんな田舎だから疑わしいんだが·········」
黒い大男も老人を疑う。ここは山奥。自分達の病や毒を癒すほどの医者がいるとは思えない。
「そら、この中に奴がおる。お前達も
「これは·········『結界』?」
山奥の村の片隅に、その建物はあった。
「さっさと入れ。開けっ放しにしてるとまたあのガキがキレる」
「·········これは」
中に入ると、少しずつ身体が楽になっている。
「前に話してた奴らじゃ。連れてきたぞ」
「ああ、ベルの伯母さんと毒を喰った人ね。準備はしてた」
「私をおばさんと呼ぶな」
建物の中には子供が居た。しかし、ただの子供では無い。
「お前だな、この『結界』を維持しているのは」
「そうだ。【
「で、本日はどのようなご用件で?」
「まずはこっちの病気じゃな。ベルと同じ生まれつきの病で、かなり症状が酷くなっておる」
老人が医者に説明をする。
「じゃあ診ますね。背中に手を当てます」
その言葉の通りに医者は女の背中に手を当てる。
「じゃあ俺の言ったように息をしてください。ゆっくり吸って·········吐いて」
「·················」
女は未だに医者を信じていないが、とりあえず言うことを聞いて息をする。
「あー、そういう感じか」
「治せるか?」
「当たり前だ」
医者は女の状況を理解した。
「じゃあまず貴女の身体の状況を説明します」
「·········」
「そんな顔しないでください。大事な事です」
女はこの病気と20年以上付き合っている。今更他人に説明されることでもない。
「まず、貴女の身体は『聖域』の効果で大体治っています」
「·········ああ」
事実、女は今までの苦痛が消えていくのを感じていた。
「ですが、病気を治したわけではありません。あくまで病気によって壊された身体を治しただけです」
「だろうな」
その事実も、女は理解していた。
「なので今日から毎日この薬を飲んでもらいます」
医者が出したのは怪しい白い粉。
「おい、なんだこれは」
あまりの怪しさに女は問う。
「ベル·········貴女の姪も同じ病気でした。俺が治しましたが」
「簡単に言えば、前例があったので対処法があるということです」
「·········ベルを、知っているのか」
この怪しい医者が自分の愛した妹の子の知り合いというのは、女からすれば心配なことだった。
「知ってるっていうか、恋人です」
「────は?」
「次は貴方です」
「········アレは止めなくて良いのか」
「ベルも結構頑固なところがあるんです。ましてや、ベルの伯母さんだったら········」
「
「物は壊さないでくれ」
「ベヒーモスの毒、でしたね」
「ああ。6年ほど前にベヒーモスを喰ったことによって毒をこの身に入れた」
「貴方は運がいいですね。俺がいなければ死んでました」
「治せるのか?」
「もう『聖域』の効果で殆ど治ってます。あと3分で完治するでしょう。お大事に」
「ええ········」
こんな簡単に終わるのか········。と男は困惑した。
「どうしたジジイ。お前のその女好きは俺でも治せねえぞ」
「いきなりのクソガキ発言。やっぱ儂の息子じゃな」
「やめろマジで。あの
老人と子供が罵り合う。側から見れば祖父と孫である。
「アルフィアとザルド········さっきの二人、儂らと一緒に暮らすことになったぞ」
「········はあ?なんで?」
「アルフィアがお前とベルの交際に文句を言っとるんじゃ」
「アイツもモンペかよ!」
少年はうんざりしたという声を上げる。
「でも美人じゃぞ。良かったじゃろ」
「あのモンペババアも顔は良いが、
『ベルと結婚するですって!?そんなこと許しません!!』とか、
『ベルと交際してる身で他の女を視界に入れた!?浮気!浮気よ!その目をくり抜くわ!』とか、
挙句の果てには俺が寝てる横で
『貴方は
「うわぁ」
「うわぁじゃねえよ!お前の奥さんだろうが!なんとかしろ!」
「いや、儂ヘラには勝てんし········」
「俺もベルには勝てない。お互い様か········」
男の地位が圧倒的に低いクラネル一家