それと、書いている途中で思ったんだよね。ただでさえ今回だけで35000字なのに、その他のシーンまで一話でまとめてたら“ヤベー!”ことになるって…。読者も着いていけねぇよ…。
と言うワケで元々一話で完結させる予定でしたが予想以上に長くなったので複数話に分けることにしました。
大体3~4話くらいになるかな?
エイプリルフール企画と言っているのに約半年後(10月)に上書きするという…
まぁダイジョブだもん。原本()自体は4月1日の23:59分に投稿してるから。ギリエイプリルフールよ。はっはっは。
それじゃあ、ごめんあそばせ。
改稿の予告も特にしてないから、何人気付くか…。
それは、本来起こり得ないことのはずだった。
本来、戦いとは無縁のはずのこの世界で、それは現れた。
とある平日の昼。
シブヤに――日本に存在している高校のたった一部。そこでは生徒たちが通常通りの授業を受けていた。
その通常は、他の場所でも変わりない。ショッピングモール、センター街、スクランブル交差点、フェニックスワンダーランド、シブヤの至る所で“いつも通り”が過ぎていた。
それはシブヤだけではない。この日本で、世界中で。“いつも通り”の毎日がただただ過ぎていく。
そんな日々――だった。
そして、“いつも通り”の日常への、異変に最初に気付いたのは―――
その喫茶店では、二つの影があった。カウンター席に座る一人の客と、その奥に立つこの喫茶店のマスター。二人は知り合いというにはあまりにも深く、仲間と言うにはまたズレた関係―――言うなれば助けられた側と助けた側、恩人という間柄だ。
そんな二人が、何かを話していた。
陽介「それじゃあ、この日に洋服の青○で礼服を買いにいくってことですね」
介人「正確にはサイズを測りにね。あとはオーダー通りに仕立ててくれるし」
陽介「それにしても、まさかこんな服に袖を通す日が来るとはなぁ…。」
介人「いつかは来ることだよ。ていうか異世界でもあったでしょ」
陽介「……あ、そうだった」
介人「ま、陽介の場合、年齢的にも本当は学校の制服が礼服替わりになるんだけど。通ってる学校なんてないから、新しく仕立てなきゃ」
陽介「これ、お金とかって…」
介人「全部経費で落ちるから大丈夫。それに陽介はまだ成長期だから、遅れがある分たくさん食べて身長も伸びるわけだし、それぞれ2着くらいあってもよさそうだね」
陽介「おお…すげぇ…これが大人の力…」
介人「誉め言葉として受け取っておくよ。どうせ支払うのはマホロ――」
そのとき、マスターである介人の手が止まった。その視線は、喫茶どんぶらの外――入口の方へと注がれていた。
陽介「マスター?どうし――」
その時、陽介も違和感に気付く。だが、彼はその違和感を自らの力で気づいたのではない。外部の存在――精霊によってその違和感に気付く。
陽介「これは…間隙の精霊がざわついている…。空間に異変?…え?」
介人「なにか…くる」
陽介「なにか…くる?」
それの、ほぼ同時刻。
宮益坂女子学園にて
女子生徒「なんだろ、アレ…」
窓際の席にいた一人の女子生徒の声で、次々に教室内の生徒たちが窓に視線を向け――異変に気付く。
それは他のクラスでも同様のことが起きていた。
同じく神山高校にて。
男子生徒「穴…?」
見つけたのは、穴だった。
空中で渦を巻いて広がっている紫色の穴。そのあまりの非現実的な光景に、誰もが黒板から視線を外し、教師もそれを咎めなかった。
学校だけではない。ありとあらゆるシブヤの場所で、同様の状況が起きていた。
そして―――その穴から、ナニカが、降って来た。
そのナニカは着地と同時に衝撃でアスファルトの地面を破壊し、衝撃波を伝播させ周りの人間や車などと言ったものを吹き飛ばし、それだけで大きな被害を生み出した。
そして、その衝撃で生まれた音は遠くにあるはずの宮女や神高にも大きく響いた。震度4~5に相当する振動がほんの一瞬だけ訪れた。両校で生徒たちの悲鳴が響く。
??「聞け、人間ども。見ろ、私の姿を」
突如として謎の声が性別、地域、国。ありとあらゆる垣根を越えて全員の頭に聞こえた。やがて、その全員の脳内に、まるでビジョンを見ているかのように、声の語り手の姿がハッキリと鮮明に浮かんできた。
体の全体を白で構成し、機械的な外見を持ち、上半身は鋭角的な突起を各所から伸ばした細身の魔人の様な姿に、右肩には馬の首を模した体の一部があった。
だが、異常なのは下半身の方であり、その存在の下半身は馬の体――さながらケンタウロスを彷彿とさせるものだった。さらにその馬の下半身に肉は存在せず、ただの骨だった。
そして頭部――不気味に光る赤い単眼に、黄金の冠。その左手には禍々しい弓。上弦、下弦が刃で出来ており、それがより一層その存在を不気味さを際立たせる。
ティラニス「我が名は【支配のティラニス】。下等生物共…これより貴様らは私の一部となるのだ…。その魂…全て差し出せぇええ!!」
ティラニスが弓の弦を引き絞ると、なにもなかったはずの弦の周りに紫色のエネルギーのようなものが集中し、一本の矢が形成される。それを上空に向かって放つと、やがてその矢は空中で無数に枝分かれし――世界各地へと散らばった。
――そこで、千里眼とも呼べる光景は途切れた。
咲希「―――ハアッ…!」
遥「なに、今、の…!?」
視界が元に戻った瞬間の、宮女の1ーCクラス。
そこで咲希や遥を始め、クラスの全員、そして教師でさえも今起きた現象に理解ができず蹲り、その体には精神的疲労から来る汗を流していた。
そして、そのクラスの一員である一歌も同様に体中から汗を流していた。だが、一歌は他の誰よりも立ち上がると、まず親友の咲希に駆け寄っていた。
このあまりの非現実的な現象に誰もが困惑し動けない中、一歌は真っ先に動けていた。一歌は家族関係で最近よく非現実的な光景を目にすることが多々あったため、他の誰よりも、ほんのわずかではあるが現実を受け入れるのが早かった。
一歌「咲希、大丈夫!?」
咲希「いっちゃん…今の、って…?」
一歌「分からない。でも、なにか良くないものだってことは確かだと思う。それに、あの何かが空に撃った矢……あれが降ってくるかもしれないし、早く逃げ――」
ゴーミン(海賊戦隊ゴーカイジャー)「ゴー!」
賊兵ヤートット(星獣戦隊ギンガマン)「ヤートットォ~ッ!」
冥府兵ゾビル(魔法戦隊マジレンジャー)「ガァーッ!」
女子生徒「キャアアアアア!!」
その瞬間、教室の窓ガラスが割れ、そこから数々の異形――かつてあらゆる世界で【スーパー戦隊】と呼ばれるものたちに牙を向けた悪の組織の戦闘員の姿を模した厄災、その名を【モリス】たち――が教室に侵入し、各々が持つ武器を持ってして人間に牙を向けた。
一歌「え、なにあれ!?モンスター…!?」
咲希「そんな!だってここ異世界じゃないよ!?」
遥「星乃さん!天馬さん!早く逃げよう!」
実際には異世界は異世界なのだが、彼女らの知る異世界のモンスターではない。だがこんなパニック状態でそんなことを考えている暇はなく逃げようとするが、教室にいる全員が同じことを考えており二つの狭い出口を求めてごった返すこととなった。
だが、モリスたちは彼女らの逃亡など許すはずもなく後方にいる女子生徒を捕まえ、攻撃を仕掛けた。
女子生徒「キャァアアアア!!」
女子生徒「痛い!!」
一歌「――ッ!エイッ!!」
賊兵ヤートット(星獣戦隊ギンガマン)「ヤットォ~ッ!?」
後方にいた一歌たちはモリスたちの餌食になる立ち位置だったが、負け時と、そして襲われているクラスメイトを助けるため近くの机を持ち上げて、それを非力な細腕で投げ飛ばす。
投げられた机は、女子生徒を襲っていた一匹のモリスに当たって潰された。
遥「ヤッ!」
それを見た遥は、続けてその隣の机を投げて他のモリスに投げつけた。
ゾロー(超新星フラッシュマン)「ゾーッ!?」
モリスたちが少し怯んだところで、一歌たちは襲われた女子生徒の手を引く。
一歌「大丈夫!?」
女子生徒「星乃さん…ありがとう…」
一歌「早く逃げよう!」
少しの時間が経っていたため、扉から廊下に出る余裕ができ、残った全員で廊下に飛び出すと――
アノーニ(暴太郎戦隊ドンブラザーズ)「アノーニ!」
インダベー(宇宙戦隊キュウレンジャー)「ダベー!」
マシンマン(太陽戦隊サンバルカン)「ガーッ!」
女子生徒「イヤァアアア!」
教師「ヒィイイ!!」
女子生徒「助けてェ!」
そこは教室となんら変わらない惨劇の絵図だった。
当然だ。あのティラニスと名乗ったケンタウロスのような化け物が自分たちのところだけに怪物を嗾けたなんて都合のいいことあるはずがない。この学校、いや、この土地を含めた全てが対象なのだ。
大量のモリスと生徒と教師がごった返し、前に進むことすら困難な状況に直面し、全員の思考が停止する。
そして、その硬直が命取りとなった。
魔虫兵ビービ(天装戦隊ゴセイジャー)「ビーッ!!」
遥「え――」
遥の後ろから、モリスの一人がガンブレードを遥に向けて振り下ろ―
みのり「遥ちゃん危ない!!」
魔虫兵ビービ(天装戦隊ゴセイジャー)「ビーッ!!??」
されそうになった瞬間、前からみのりが走ってモリスに対し強烈なタックルを繰り出した。
前のめりになって倒れたモリスに、逆に尻もちをついて体を痛めながら立つみのり。推しへの愛情による力は強大だった。
遥「みのり!!」
みのり「いてて…遥ちゃん、大丈夫だった?」
遥「それはこっちの台詞だよ!こんな無茶…でも、ありがとう」
みのりの大胆とも無謀とも言える行動に叱責しながらも、深くは責められなかった。元は、自分のピンチを助けようとした完全な善意だからだ。
みのり「はわわ…遥ちゃんに褒められちゃった…!もしかして、私今日が命日…!?」
志保「いや、この状況でそれは洒落にならないからね。みのり」
こはね「みんな、無事だったんだね!」
咲希「しほちゃん!それにこはねちゃんも!無事だったんだね!」
みのりとともに姿を表したのは、志保とこはねだった。志保はその手に箒を持っており、周囲への警戒を怠っていない。箒も、無防備よりも断然いいという判断だろう。
志保「まぁね。でも感傷に浸るのはあと。あとは穂波を見つけないと…!」
志保は目の前の光景を睨みつけ箒を強く握り締めた。
仲間や友達と次々に合流することはできたが、今この廊下は危険地帯であることには変わりない。こうやって普通に喋っていられるのも、他のモリスの注意が他の生徒や教師に向かっているからに過ぎない。だが、それらを見ていてもも全員を助けることなど到底不可能。全員が、自分の無力さをはゆがんだ。
咲希「そうだった!ほなちゃんを探さないと!」
遥「それに、愛莉と雫の安否も確認しないと…!」
志保「あっ、そうだった。お姉ちゃんも見つけないと…」
こはね「志保ちゃん…?」
実の姉をついで扱いという、志保がさらっと毒を吐いたが、全員に突っ込む余裕などなかった。
ただでさえ目的地に一番近いはずの1ーB教室ですらこの惨状でまともに近づくことすらできない。そもそも、非力な自分たちでは階の違う二年生の教室に辿り着くことすら絶望的だ。結局は振り出しに戻るしかなかった。
一歌「こんなとき、お兄ちゃんがいたら…」
一歌は、この状況を打開できるであろう唯一の可能性がこの場にいないことに歯噛みする。
あの兄であればこの状況でもあらゆる可能性を開拓できたであろう。だが、ここにはいない。
咲希「あ!でもお兄さんになら、精霊さん経由でこのこともう伝わってるんじゃ…!」
志保「伝わってたらもう来ててもおかしくない。あの人の最大加速、北海道まで5分でしょ!シブヤ内だったら秒単位で来れるはずなのに…」
こはね「え、一歌ちゃんのお兄さん?北海道まで五分…?」
一歌「えっと、こはね、その話はまた今度…。とにかく、今は穂波たちを助けよう!お兄ちゃんが来るまでに!」
いないものはどうしようもない。ともかく兄が助けに来るまでに穂波を探さなければならないといけない。意を決して1-B教室へと向かおうとした、その時――、
穂波「キャァ!」
えむ「はわわわ…!」
バグラー(特命戦隊ゴーバスターズ)「ザージー!」
シッポ兵(科学戦隊ダイナマン)「テール!」
1-Bの教室から穂波とえむが勢いよく飛び出してきた。無事な姿に一瞬安堵の笑みを浮かべるが、それもすぐに無意味になる。モリスたちがほぼ同時に教室から飛び出し穂波とえむにその凶器を振り下ろしていた。
避けようにも転がりながら出てきたため体勢をとることもできず、ただ無情にもモリス達の魔の手が襲い掛かっていた。
一歌「穂波!鳳さん!!」
一歌は咄嗟に叫ぶが、叫んだところで現実は変わらない。
その凶刃が二人を襲おうとしたとき―――一歌たちの傍を、風が吹き抜けた。
バグラー(特命戦隊ゴーバスターズ)「ザー…ジー…」
シッポ兵(科学戦隊ダイナマン)「テー…ル…」
だが、モリスたちの動きはそこで止まった。
いや――一歌たちの視界に映っていたモリスすべてが、一斉に機能停止したように見えた。そして、実際にモリスたちの体が個体ごとに差はあれど真っ二つに断たれ、体を崩して倒れる。やがて、その体は紫の粒子となって消えた。
一歌を始め、その場にいた全員がモリス達の脅威から解放されて戸惑いを見せる中、一歌たちの視線の奥、廊下の先に生徒でも教師でもない全く別の人物の後ろ姿があった。
??「――――」
白いシャツと白いパンツを着こなし、赤いマフラーに黒い手袋と黒いブーツ。そしてなにより、その両手には青く光り輝く剣状のなにかが握られていた。その姿、その武器、知っているものからすればなにもかもが見覚えしかなく、唯一の希望が降臨した瞬間だった。
そして、その謎の人物はこちらを向くことなく、一言。
??「機動纏身」
メーバ(動物戦隊ジュウオウジャー)「チャリリィー!!」
ベチャット(魔進戦隊キラメイジャー)「ベチャー!!」
ネジレッタ(爆上戦隊ブンブンジャー)「ネジー!」
その瞬間、上の階に続く階段目掛けて線上に緑色の魔法陣が展開される。そのままその魔法陣に飛び込むと謎の人物は姿を消し、その次には上の階からモリスたちの断末魔が響き渡る。
その断末魔で、ようやく状況を受け止めきれた一歌は、膝から崩れる。
一歌「良かった、来て、くれた…。――!穂波!鳳さん!大丈夫!?」
安堵もつかの間、二人の安否を確認するために急いで立ち上がって穂波とえむに駆け寄る。それについていくかたちで他の全員も二人に駆け寄った。
穂波「一歌ちゃん…。うん、大丈夫…」
えむ「うひ~…危なかったよ~…」
咲希「ほなちゃんもえむちゃんも無事でよかった~…」
こはね「でも、今の人って…?」
志保「ふぅ…。いつもどこかでズレる人だから不安だったけど、来てくれたならもう大丈夫、なはず…」
遥「そこは、断言してあげようよ…」
みのり「でも、陽介さんが来てくれたから、愛莉ちゃんも雫ちゃんも助かるよね…。ホントに良かった…」
一同が事態の収束の目途が立ち安堵して、自分の知る情報を口から決壊させていた。当然、事情を知らないこはねとえむは首を傾げていた。
こはね「陽介さん…?今の人って、陽介さんって言うの…?」
えむ「え~!陽介くんって、一歌ちゃんのお兄さ……あれ?あ、あたし…似たようなの、見たことが…」
こはね「え、えむちゃん!?鼻血出てるよ!?やっぱりさっきどこかで怪我しちゃったの!?」
志保(あ、記憶が…)
一歌(お兄ちゃんに消された記憶が戻ってる…!)
えむが鼻血を流し、自身の消された記憶を思い出しているその頃――、
??「風の精霊よ、我が敵を斬り裂け!」
クローズ(烈車戦隊トッキュウジャー)「クロー!」
ワンパー(激走戦隊カーレンジャー)「チース!」
校舎の外にて。
風魔法でモリスを切り裂いて粒子へと還し周りを確認した後、地面に手を着けて詠唱を開始する。
??「大地の精霊よ、在るもの全てを我が認知の下へ』
その瞬間、回路のようなものが地面を通して全体に広がり、回路は青く光り周りを照らす。
??「射ち漏らしナシ…。ゲートの位置は…――屋上!!機動纏身!!」
再び魔法を駆使し、一瞬で屋上よりも高い位置へと飛んだ彼は、そこで目的のものを目にする。
紫色の渦。それを一言で表すならそれだった。それはゲートのようにも見え、それを証明するかのようにその渦から次々にモリスが現れる。
??「見つけた」
魔法で一瞬で近づいたあと、周りのモリスを一掃し、左手に持っていた光の剣を解除して闇の剣を発動させる詠唱を唱えた後、ゲートに向けて二本の剣を接触させる。その瞬間、剣が接触した部分から強力なレーザービームが放たれ、ゲートへとぶつかり、やがて崩壊した。
??「よし、最後に…退兇護域・烈兇!!」
地面に手を着けて詠唱を唱えた瞬間、彼を中心に宮女を囲むように半透明の結界のようなものが覆い尽くした。
その様子を確認した彼は、風魔法で自身の体を浮かして屋上から飛び、地面に着地する。
??「…これで、ここは大丈夫…」
結界に覆われた学校を見上げて、そう呟く。
一歌「いた…!」
そうしていると、一歌たちを中心に彼に向かって駆け寄って来た。靴は上履きのままであり、外履きに履き替える時間などないため当然なのだが。
他の生徒や教師たちも、突然襲った悪夢の化身のような怪物たちが一瞬にして倒され、そしてその手下人であろう彼を不安げに見つめていた。ちなみに、その中には愛莉や雫の姿も確認できた。二人は彼の姿を確認すると、窓際から姿を消していた。
そして、少しの沈黙のあと、ゆっくりと振り向きながら向口を開いた。
??「悪い、遅くなって。ここに来る途中襲われてる人助けながら来たから、遅れた」
一歌「ううん…来てくれて、本当に良かった。ありが―――」
だが、一歌の言葉は途切れた。完全にこちらを振り向いたときに見せた、顔を見たことで。
その顔にはカー○ィのお面が付けられていた。
一歌「不審者!!」
カー○ィ仮面「不審者じゃない!カー○ィ仮面だ!」
カー○ィのお面のインパクトが強すぎるあまり、咄嗟に叫んでしまった。が、その叫びを打ち消すかのように名乗った謎の男性、【カー○ィ仮面】。言わずもがな一歌の兄こと陽介である。
一歌「いやお面付けてる時点で不審者だよ!」
陽介「いやこのお面は身バレ防止のためであって…“国のなんかエンド”回避のためには必要なことなんだ」
一歌「だからなんなの“国のなんかエンド”って!?お兄ちゃん毎回それ言ってるけどもうちょっと別の表現の仕方ないの!?」
陽介「お兄ちゃんじゃないカー○ィ仮面だ!」
一歌「そこはもういいよ!!」
一触即発の雰囲気から一転、正直どうでもいい兄妹ゲンカが勃発した。
こはね「え、この人って一歌ちゃんのお兄さんなの…?」
えむ「やっぱり陽介くん、魔法使いだったんだ…!でもなんでさっきまで忘れちゃってたんだろう…」
そしてその周りもざわついていた。突然現れた正体不明の力で助けてくれた謎の男性が在校生やクラスメイトと言う認識の生徒の実の兄だという情報に、周りも騒然としていた。
するとそこへ――、
雫「しぃちゃん!無事で良かったぁ!」
志保「ぐぇっ」
雫が群衆の中から出てきて、志保に勢いよく抱き着いてきた。
雫「しぃちゃん、怪我とかしてない?」
志保「してないから!とりあえず離れて…!」
愛莉「雫、志保ちゃんたちが無事なのは喜ぶことだけど、あっちもなんとかしないと…!」
遅れて入って来た愛莉が雫を制すると、力が抜けた瞬間を狙って志保は自分から姉を剥がした。
とりあえずそこで、収集が付かなくなりそうなので兄妹ゲンカを事情を知っているメンバーで止めに入った。
穂波「一歌ちゃん!こんなことしてる場合じゃないよ!」
咲希「そうだよいっちゃん!ストップストップ!」
遥「それに今の喧嘩でこの人が星乃さんのお兄さんだって、周りにバレちゃったよ?どうするの…?」
一歌「―――あ」
陽介「……全部終わったら一人一人の記憶、しっかり消しとかないと…」
みのり「それはどうかやめてください!」
志保「いや!!正体バレのことはもうこの際どうでもいいから!」
陽介「いや良くない!それじゃあ俺の人生“国のなんかエンド”になる!」
志保「“国のなんかエンド”だろうがなんだろうがどうでもいいので!!まずはこの状況について説明してください!!」
志保の大声で、流石の陽介も押し黙った。
すると、陽介はバツが悪そうにカー○ィのお面越しの顔を掻いた。
陽介「あ~…実は俺も詳しく知っているわけじゃなくて…」
みのり「え~!?分からないんですか!?」
陽介「いや、説明もなにも聞く暇なかったし…。せいぜい知っているのは、あのティラミスみたいな名前のヤツが放った矢が、攻撃技じゃなくてあの戦闘員みたいなやつらを呼び出すゲートを発生させる技だってことと、その矢が世界中に放たれたってことくらいだよ」
陽介の知っている限りの情報。それだけでも爆弾としては十分だった。
自分たちを恐怖に陥れたあの怪物たちを発生させるゲートが、世界中に出現した。それはつまり、逃げ場などないということを意味していた。
愛莉「世界中って、そんな…」
陽介「一応ここは結界張ったから安全だけど、他はそうはいかない。それにこのレベルの結界は精霊の力を酷使するから、そう何度も使えない」
咲希「そんな……じゃ、じゃあ!!お母さんとお父さん、お兄ちゃんは…!?」
陽介「……無事でいることを祈るしかない。流石に俺一人で全世界カバーするのは無理がある」
こはね「そ、それじゃあ、どうすれば…」
えむ「お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、司くん、寧々ちゃん、類くんも、どうしちゃってるんだろ…」
陽介「―――一応、神山高校の方は大丈夫なはずだよ」
陽介の言葉に、全員の顔が上がった。
神山高校。咲希の兄にしてえむのショーメンバーの司を始め、寧々や類、こはねのユニットメンバーである杏、彰人、冬弥が通っている学校。そこが大丈夫であると陽介が言うと、少しだけではあるが顔の暗さが晴れたように見えた。
一歌「それって、どういうこと?」
陽介「あっちには今頃―――」
彰人「くっそ、なんなんだよこいつら!?」
神山高校、一年生教室廊下にて。今やここでも宮女同様にモリスたちの襲撃を受けていた。
下忍 マゲラッパ(忍風戦隊ハリケンジャー)「ゲラッパ!」
バーロ兵(超力戦隊オーレンジャー)「バロー!」
冬弥「くっ…!」
杏「冬弥!――やぁ!」
カース(轟轟戦隊ボウケンジャー)「カスー!」
下忍 マゲラッパ(忍風戦隊ハリケンジャー)「ゲラッパ~!」
バーロ兵(超力戦隊オーレンジャー)「バロ~!」
冬弥は武器である箒の持ち手でモリスたちの攻撃を防ぐが、二人分の力ですぐに押されていく。
逃げながらも少しでも応戦し、杏は途中でモリス(バーミア兵 (爆竜戦隊アバレンジャー))から奪ったスティックでモリスを殴る。殴られたモリスが他のモリスを巻き込んで倒れたところを、すかさず彰人は同じくモリス(クダック(機界戦隊ゼンカイジャー))から奪ったコンセントプラグを模した二股の槍で薙ぎ払った。
彰人「クッソ!!キリもねぇし逃げ場もねぇ!このままじゃジリ貧だぞ!?」
冬弥「モリスと生徒がごった返して、前にも進めないな…。司先輩は無事だろうか…」
寧々「せめて大声の一つでも挙げてくれれば分かるんだけど…こんな状況じゃ、アイツの声も聞こえない…」
3人とともに行動をしている寧々が悔しそうにそう呟く。
寧々と冬弥は同じクラスで、モリスの襲撃を受けた際に共に彰人と杏と合流したため行動を共にしている。というより、この状況で一人で動くのは危険なことは明白だ。
彰人「そういえば、暁山のヤツはどうしたんだ?」
杏「瑞希は今日学校来てない!…から無事とは言えないのが現状だよね…」
寧々「明らかにラスボスみたいなのがいるからそうだろうけど…」
今この場にいないからと言ってその人物が安全というわけがない。むしろ、一番ヤバイのがこのシブヤだと言っていい。モリスたちを発生させている元凶、【支配のティラニス】が今いるのがこのシブヤなのだ。どこも安全な場所などないと考えるのが自然だった。
彰人(クソッ、こんなときに陽介がいれば…!)
彰人は心の中で悪態をつく。だが陽介に妹がいることを知っている彰人は、まず確実にその妹や両親の元へ向かっているだろうと推測した。事実陽介はこの時間帯には宮女に向かいながら道行くモリスたちを倒していた。
だからだろう、彼は一瞬スキだらけになった。
冬弥「彰人ッ!危ない!」
彰人「エッ――」
冬弥の叫び、そしてその視線。自分を見ているようで、見ていない。その視線が後ろに向けられているのが分かった。後ろを振り向くと、そこにはモリス(バグラー(特命戦隊ゴーバスターズ))がハンドガンを自身に向けている姿だった。その瞬間は、彰人にとってとてもゆっくりに、スローモーションに見えた。
彰人(あれ、これって走馬t―――)
バグラー(特命戦隊ゴーバスターズ)「ザ!?…ジー…」
彰人「――は?」
寧々「え…なに、あれ…?」
だがその凶弾が彰人の体を貫くことはなかった。発砲される前に、モリスの体をなにかが貫いた。それは、不思議な形をした剣だった。そして、ただの剣というにはあまりにも禍々しかった。
その剣がモリスの体から抜かれると、モリスは地面に伏して粒子となって消滅する。
杏「え、これって…?」
冬弥「剣が、浮いている…?」
モリスの体を貫いた剣、それは誰かによって使用されているのではなく、一人でに宙に浮いていた。
彰人(あれ、あの剣どっかで…?)
彰人や3人の混乱を余所に、謎の剣は自由自在に浮きながら、周囲のモリスを襲われている生徒を傷つけないように確実に殲滅していた。
他のモリスたちも最大の脅威を認識し、襲っていた生徒たちを無視して剣に襲い掛かるが悉く地に伏し粒子に変わっていく。
その光景を唖然として見ている生徒や教師は、文字通り開いた口が塞がらなかった。
やがて一年フロアのモリスたちを見渡す限り掃討すると、その剣は彰人たちの前に回転しながら近づいてくる。
杏「え!?なんかこっちに来てない!?」
困惑する一同だったが、剣は最終的に自分たちの目の前で止まると、剣を中心に紫色の渦が発生していく。やがて、それは人の形を作っていた。
DON MURASAME!!
斬リ捨テ Sorry!!
そこに現れたのは、とても厳つい大きなサングラスを付けた謎の紫色の存在。またモリスと同じようなものかと構える一同だったが、彰人は―――
彰人「あんた…!」
杏「え、彰人知ってるの?」
彰人「知ってるもなにも…あんた、喫茶どんぶらの店員!?なんでここに!?」
彰人の叫びに、一同が呆ける。店員?このいかにも人間じゃないナニカが喫茶店の店員?あまりの情報量にフリーズが次々に周りで起こる。
??→ムラサメ「【ドンムラサメ】です。その質問に回答しますと、有害な敵の殲滅もアルバイトの業務範囲内だからです」
彰人「そんなアルバイトあってたまるか…」
杏「彰人、こんな人と知り合いだったんだ…。いや、人じゃないじゃん、良く考えれば」
少なくとも刀から出現する人間なんているはずがない。
だがムラサメはそのことを気にする様子はなく、ここに来た目的を遂行する。
ムラサメ「それでは、僕は行きます」
ムラサメは壁に向かって視線を送ると、おのずと壁を背に陣取っていた冬弥たちが避ける。そのまま背中に背負っていた自身の武器にして本体――【ニンジャークソード】を握ると――。
ムラサメ「ハァッ!!」
刹那。全く肉眼で捉えることのできない速さで、ムラサメはその壁を正方形に切り落とし蹴りで廊下に穴を空けた。
その一連の行動と爆音で、周りで再び悲鳴が上がる。ムラサメはその壁の穴から外を除くと、ある一点を見つめていた。
彰人「おいおい、嘘だろ…?」
冬弥「こんなことが…?」
ムラサメ「発見しました、マザー」
壁の穴から外を見る者たちが見たもの――それは学校の外でごった返すモリスたちの群れだった。その光景はさながらゾンビハザード。そのあまりにも絶望的な光景に、杏や寧々は息を飲んで青ざめていた。
そして、そのモリスの群れの中心にある紫色の渦。そこから次々にモリスが湧き出てきていた。
マザー『ムラサメ、まずはあのゲートを破壊しましょう。そうすれば、これ以上この地点でモリスが発生することはありません。それはこの場の者たちや、あなたの安全に直結します』
ムラサメ「はい、僕も同じ考えです。マザー」
ムラサメはゲートに視点を合わせると、ニンジャークソードの鍔のギアディスクを4回転させトリガーを引く。
ムラサメ「ハァアアアア……ハァー!!」
ニンジャークソードの刀身にエネルギーがチャージされ、構えを取り、巨大な斬撃を放った。
その斬撃はかすっただけでモリスたちを文字通り塵と化し、狙ったゲートと斬撃が衝突。そのまま大爆発を起こし、周辺のモリスたちを巻き込んで消滅した。
寧々「い、一瞬で…」
杏「ヤバすぎでしょ…」
ムラサメ「…これより、残りのモリスを掃討します」
* * * * * * * *
陽介「――ムラサメさんが行ってるから、神山高校の方は心配ない」
一歌「ムラサメさんって…あのムラサメさん?」
陽介「そう。どんぶらでアルバイトしているあのムラサメさん。結構強いから、あっちはなんとかなる。……あ、噂をすれば」
すると、陽介の懐から着信音が鳴り携帯を取り出し画面をタップすると、その画面から映像が飛び出す――いわゆるホログラム――が映し出され、そこにはムラサメとムラサメがいる神山高校の景色とムラサメの背後に集まっている生徒と教師が映し出されていた。
当然のように披露されたホログラムと言うオーバーテクノロジーに誰もが唖然としている中、陽介とムラサメの二人は当然のように取り交わしをした。
ムラサメ『こちらムラサメです。神山高校のモリスの掃討を完了しました』
陽介「こっちも終わらせましたよ。とりあえずゲート壊して結界張ったんで、コッチの方は安全です」
陽介『そっちは外側からモリノリス?だっけ?まぁいいや。入ってこない?』
ムラサメ「その懸念はありますが、そこは流石にカバーしきれません。今現在は校舎内にいますが、建物が戦闘で著しく破損したため、いつまで持つか…」
杏(ホログラムの人、なんでカー○ィのお面付けてるんだろう…?)
寧々(不気味すぎるんだけど…。…あれ、なんかカー○ィで思い当たる人が…いや、流石にないか…)
冬弥(喫茶どんぶらは、仮面をつけるのが作法なのだろうか…?彰人からそういう話は聞いたことはなかったが…)
彰人(絶対アイツだなこれ…あの適当具合、間違いねぇ。ていうかカー○ィのお面の時点で絶対そうだろ…)
ムラサメ『それと、モリノリスではありません。モリスです』
陽介「あ、すいません」
ムラサメ『ところで、そのお面は一体…?』
陽介「あぁ、伝え忘れてましたね。今の俺はあなたの知っている存在ではない。いわば、そう…今の俺は……カー○ィ仮面だ!!」
「「「「「「「「「―――――」」」」」」」」」
『『『『――――』』』』
今、世界中がモリスの襲撃で混乱の最中、この瞬間だけとても静かだった。
そしてその沈黙を破ったのは――、
寧々『――ダサッ』
陽介「え?」
寧々だった。ほぼノータイムで、思ったことを口にしていた。陽介はその悪口を聞き逃さず、呆けた声を上げていた。
そして、さらにここで追い打ちがかかる。
ムラサメ『…お面を着けることは、ダサいのですか?』
寧々『えっ、いや、その……お面がダサイって言うか…名前の方が…』
陽介「ヴッ」
寧々が人見知りを発動ししどろもどろになりながら答えると、陽介の心がさらに削れていく。異世界で培った(あるいは最初から持っていた)鋼メンタルもカー○ィのこととなると途端にクソザコメンタルになる。寧々の言葉は、陽介の心を抉るのに十分な破壊力を持っていた。
ムラサメ『そうなんですね。しかし、彼がカー○ィ仮面と名乗っている以上、そう呼ぶべきですね。彼もそう言ったことは承知の上でしょう。では、カー○ィ仮面さ――』
陽介「いや、もう陽介でいいよ…」
陽介は、自分からカー○ィのお面を外して神山高校の面々にも顔を晒した。
一歌(お面取った…!?)
彰人(正体隠してたんじゃねぇのかよ!?あっさり外しやがった!どんだけメンタル弱ぇんだよ!?)
元々宮女の生徒や教師たちにも一歌の兄であるということはバレていたため、もう踏んだり蹴ったりと思ったのか、自暴自棄ぽかった。
そして、カー○ィ仮面の正体が自分の知り合いだと知った寧々は、さらに気まずくなった。
寧々『あ…』
陽介「いや、うん。その…草薙さん、貴重な意見、ありがとう…」
寧々『あ、いや、こちらこそごめんなさい…』
杏『え、草薙さん、この人と知り合―――「陽介!?陽介ではないか!」…この声は…』
画面越しで突如聞こえた大きな声に、一同は咄嗟に耳を塞ぐ。だがこの声に慣れているメンバーからすれば声の主に心当たりしかなく――
案の定、ムラサメの横から一人の男子生徒――司が割り込んで来た。
ムラサメ『えっ…』
司『陽介!お前、どうしたんだ!?カー○ィのお面をした何者かの正体が、まさかお前だったなんて!』
陽介「あぁ司君…無事で良かったよ。こっちも、一歌たちは全員無事だよ」
咲希「お、お兄ちゃん!!」
えむ「司くん!!」
司『その声は咲希!えむ!そうか無事だったか…!やや、よく見れば後ろには一歌たちも!みんな無事なようで安心したぞ!……って、そちらの方も大事だが!!……う~~む……聞きたいことが多すぎて、なにから聞けばいいのか分からん!!』
彰人『司センパイ!あんたただでさえ声がデカイんだから、外のヤツらが寄ってくるかもしれねぇし、声抑えてくれません!?』
こはね「東雲くん…!」
と、終始クソデカボイスで話していると、彰人が横から入ってきた。その彰人の様子を見てこはねは安堵していた。仲間が無事だったから。それにこの調子なら、杏と冬弥も無事かもしれない。それがこはねの心にほんの少しだが、安寧をもたらしていた。
司『む、そうだな…。すまなかった』
類『司くん。確かに聞きたいことは山のようにあるけど、まず一番最初に確認しなければならないことがあるだろう?』
そしてさらに司の反対側の横から類が顔を出してくる。この時点でムラサメの姿は7割方映っていなかった。
類は真剣な表情で、ホログラム越しの陽介に視線を合わせる。
類『陽介くん。キミたちが【モリス】と呼んでいた先ほどの怪物…そしてその怪物を放ったであろう【支配のティラニス】と名乗っていたあのケンタウロスのようなものは、一体なんなんだい?』
陽介「それについては、俺も詳しく知ってるわけじゃない。でも、セッちゃんが調べてくれているから、そろそろなにか連絡が――」
セッちゃん『陽介―!ムラマサ―!お待たせッチュンー!』
すると、まるで狙っていたかのような都合のいいタイミングで、通信が入った。通信には声だけで、その姿を確認することはできなかったが、知っている者からすればそれは待ち望んでいた声だった。
雫「この声、セッちゃんね!」
愛莉「とてつもないタイミングね…。でも、これで知りたいことも知れる…」
陽介「セッちゃん。敵がなんなのか、分かった?」
セッちゃん『もちろんッチュン!ティラニス、それはかつて【ゴジュウトピア】と呼ばれる世界の次元の狭間で、“ユニバース大戦”と呼ばれる戦争の引き金となった存在――深淵なる厄災クラディスの残党の一人ッチュン!』
“ゴジュウトピア”“ユニバース大戦”“クラディス”。初めて聞く単語の羅列にほとんどのものは会話についていけず、ただ首を傾げ不安を募らせるばかりだった。
そして、陽介もその一人である。
陽介「ゴジュウ…ユニバース…クラディス…?わっかんねぇ…」
ムラマサ『残党ということは、そのクラディスはすでに壊滅しているのですか?』
セッちゃん『そうっチュン!ティラニスの目的は、本人も言っていたようにこの世界の人間の魂を全て自分が吸収することッチュン!そうすることで封印されたクラディスのボスを超える力を手にしようと思われてるッチュン!』
陽介「なるほど、マ○ロアみたいなパターンか…」
一歌「いや、その例え知ってる人にしか分からないからね?」
セッちゃん『ちなみに一歌に分かりやすく説明すると、初音ミクに成り代わろうとしている重音テトッチュン』
一歌「なるほど…確かにそれは一大事だね…」
みのり「一歌ちゃん!?」
愛莉「あの、特定の人に分かる説明じゃなくて、もっと全体に分かる例えをしてくれない…?」
と、一部ではちょっとしたギャグ空間ができているが、他の人間からすれば気が気でなかった。
ほとんどの人間には説明の意味が分からなかったが、あの怪物が自分たちの命を刈り取ろうと画策していると言うことだけは、はっきりと分かった。ティラニス本人の宣言では未だに現実味を持てなかった生徒たちも、次々に恐怖が伝染していっていた。
だが、そんな空気などお構いなしに陽介たちの会話は続いた。
ムラサメ『それで、対抗策はあるのですか?僕と陽介さんでティラニスと闘えばいいと思いますが…』
セッちゃん『確かに、ティラニスを倒せば召喚されたモリスは消滅するはずッチュン。ただティラニスは曲がりなりにも“ユニバース大戦”を生き残った猛者ッチュン。二人だけじゃ絶対に勝てる確証はないッチュン』
陽介「確かに、マスターも助っ人連れてくるって言ってたしな…。うん、分かった。とりあえず俺はここを出て敵ブッ倒してくる。マスターが来るまでティラミスとの戦闘は避けるよ」
セッちゃん『ティラミスじゃなくてティラニス、チュン…。そんな美味しそうな名前じゃないッチュン』
陽介「あ、ごめん」
ムラサメ『それでは、僕も神山高校外のモリスを掃討します』
陽介「分かった。ムラサメさんも気を付けて」
杏『あ、ちょっとこはねは無j――』
通信を切ったその直後、向こうで誰かが叫んでいたが陽介はそれに気づくことはなかった。
陽介「それじゃあ俺はもういくわ。近くの人助けたら、ここに来るよう言っておくからそこはお願い」
一歌「お兄ちゃん、大丈夫なの?動き回るってことは、アレに…」
陽介が人を助けてモリスを討伐する以上、あらゆる場所に出向くだろう。だが、それは【支配のティラニス】とはち合う可能性が高くなることを示す。ただでさえティラニスはこのシブヤに降り立っている。遭遇する可能性は十分にあった。
陽介「いや、このくらいのことは異世界でもよくあったし…。森で迷子になった村の子供を村の大人たちに追われながら探したことあるし、そんな感じの似たような経験ならしたことあるから、任せとけ!」
穂波「お兄さん、それただ単に不安です…」
遥「どこに安心できる要素を見出したんですか?」
全く不安を払拭させない、むしろ増大させる例え話をされて不安がさらに募る一同。
陽介「それじゃあ、行ってk――」
それとほぼ同時に、結界外にて弓の弦を引き絞る存在がいた。
そして陽介は、精霊経由でその存在に気付いた
陽介「ヤベッ――!雷の精霊よ!汝槍となりて我が敵を貫け!そしてより大きく!!!」
陽介は突然とある方向――正門の方――に手を向けて巨大な雷の槍を発射した。突然の出来事に一歌たちは悲鳴を上げながら、頭を抑えてかがんでいた。
その時、全員の耳に鳴り響いた。ガシャンと、ガラスかなにかが割れるような音がした。その音で、ほぼ全員の脳裏に最悪な可能性が徐々に過り始めていた。いや、一歌を始めとした4人は、知っていた。このガラスが割れたような音のことを。実際に聞くのは初めてでも、聞いたのは、これで二回目だ。これは――
陽介「強化した魔法でようやく相殺って…マジかよ。にしてもまさか、ラスボスが自分から出向いてくるとかアリかよ…。結界も壊されるし、こういうのは冒頭のムービーだけってのが定番なはずなんだけどなぁ」
空を見上げる。その先に映った景色は、宮女周辺を覆っていたはずの結界が、ひび割れて破壊されている光景だった。
それと同時に、体中に悪寒が走る。正門の方から、来るなにかに、体が、心が、本能が怯えている。
陽介「ティラミス、だっけ?こっちから行くまで待ってほしかったんだけど」
ティラニス「…【ティラニス】だ。下等生物が…。我が名を間違えるなど、死んでも償えんぞ…」
校門からゆっくりと歩いてくる、禍々しい弓を持った大きな怪物――【支配のティラニス】。この騒動の元凶たるケンタウロス怪物が、モリスを引き攣れ、自らこの場所に足を運んでやってきた。
一歌「あ、あ…」
ティラニスを一目、直接視た瞬間、最早誰もが言葉を失い悲鳴を上げることすらできない重圧感に襲われた。遠目で見ただけで一瞬過呼吸になったほどだ。直接見た場合の威圧感には、天と地ほどの差があった。
ティラニス「…差し向けたモリスとゲートが2カ所、ほぼ同時に消滅した。さらには一カ所結界のようなものが張られているではないか。何事かと思ってきてみれば…下等生物、お前がこの世界の最大戦力だな」
ティラニスは淡々とここへ来た目的を告げる。結界は確かに半透明で目立ちはするが、自身の部下とゲートの所在を知れるということは流石に予想外だった。そういった敵は、陽介のカー○ィの敵キャラにはない。
陽介「最大戦力?いや、俺より強い人なんてまだまだいるけど?」
ティラニス「フフ、ならばそれは行幸。貴様も、そいつらも、その魂すべて私が喰らい、我が力としてくれようぞ…」
陽介「いやぁ…無理だと思うけど」
ティラニス「ほざけ。であればまず、貴様の魂を喰らうとしよう…。だが、その前に――」
ティラニスが弓を持たない左手を頭上に上げる。それと同時に、後ろのモリスたちが各々の武器を構えていた。
それを見て、この場の全員に嫌な予感が駆け巡る。あれは――進行の前振り。
ティラニス「まずはお前の後ろのゴミを処分するとしよう。行け」
ティラニスが腕を振り下ろしたと同時に、無数のモリスが侵攻を開始した。
女子生徒「キャアアアアア!!」
誰かの悲鳴。それが皮切りとなり大勢の生徒がモリスから逃げようと一声に踵を返した。ある程度の人数が校舎に残っているとはいえ、外には大勢の生徒と教師がいる。宮女もかなり大きな学校で、女子高とは言え生徒の数は数百人に渡る。そんな人数が一斉に動けば、将棋倒しになり数少なくとも誰かが圧死するのは眼に視えていた。
一歌「お兄ちゃん!!」
陽介「一歌!お前も逃げろ!光の精霊よ、汝―――」
陽介が詠唱を開始したその時――、光が、全てを満たした。
地面から、床から、教室から、あらゆるところから光が渦巻き、この場にいる全てのものたちを照らした。
みのり「な、なにこれ!?」
えむ「地面がピカーって…!?」
こはね「うわっ!!」
やがて、光は全てを照らし、誰もが目を閉じた。
目を開ける。ゆっくりと。強烈な光で視界がクラクラするが、やがて少しずつ慣れてくる。なにがあったのかと、周りの景色を見渡せば――、
一歌「あ、あれ…?みんな、いなくなってる…?」
周りを見渡せば、先ほどまで我先へ逃げ出そうとしていた生徒や教師のほとんどがこの場から姿を消していた。咄嗟に校舎内でこちらの様子を見ていた生徒たちがいた窓際も見てみるが、誰もいない。モリスの再襲撃寸前で逃げたにしては、静かすぎる。
志保「あれ、こはねは…?」
穂波「えむちゃんも、どこに行っちゃったの…?」
志保と穂波の声で気づいた。つい先ほどまで近くにいたはずのこはねとえむの姿がどこにも見当たらない。咲希、穂波、志保、みのり、遥、愛莉、雫を始めとした既知の人物含めても、たったの数十人しかこの場にいなかった。
愛莉「一体なにが起きたのよ…!?もしかして、アイツらが…?」
ティラニスたちの仕業かとそちらの方を見るが、ティラニスやモリスたちでさえ目の前の出来事に困惑し、キョロキョロと周囲を見渡していた。
ティラニス「今のは、空間転移…?このような大規模なもの、一体何者が…」
??「みんなはそれぞれ別の場所に飛ばしただけさ。だから死んでるとかじゃない」
突如、一人の男性の声がどこからか響き渡る。すると、再びあの光がなにもない空間から突如として発生し、やがて渦を巻き始めゲートを形成する。そして、そこから一人の男性が、白と赤を基準としたカラフルな鳥型の機械を抱えて現れた。
黒い長袖のトップスに白い蝶ネクタイ。胸ポケットにツートンカラーのハンカチを携え下半身には白いエプロンを巻いている男性だ。
その男性に、陽介と一歌は見覚えがあった。
陽介「マスター…!セッちゃん…!」
??→介人「…ヒーローは遅れてやってくるって言うけど、流石に遅刻するわけにはいかなかったよ。あのままじゃ死人が出そうだったからね。全員別々の場所に飛ばしたよ。仲のいい友達だったり、仲間だったり、家族だったりの元へね」
」
ティラニス「…貴様か。まさか、あの空間転移を一瞬で行うとは…」
介人「まぁね。俺はヒーローとして生まれたもの。ヒーローである以上、あの程度のことはできないとね。まぁセッちゃんの力もあったけど」
ゲートを閉じ、陽介の隣に並ぶと、ティラニスとモリスたちを前に立つ。その瞳からはティラニスたちを恐れる恐怖の感情など一切ない。焦りもない。それが、ティラニスの癪に障ったのだろうか。ティラニスは挑発するかのように介人に言った。
ティラニス「無駄なことを…いくら別の場所に飛ばしたところで、安全な場所などない。すでにもう一カ所の方にもモリスを向かわせている。貴様らの死の運命は、変わらない」
咲希「そん、な…!」
遥「どう、すれば…」
この場に残った数十名の生徒たちに、絶望が拡散されていく。神山高校の方にもモリスが向かっている以上、確実に誰か犠牲になる。どれだけ強靭な精神を持っていようと、今まで“ありえなかったこと”に対して対応するには力も、勇気も足りなかった。
ティラニス「受け入れろ。己の運命を。最早貴様らに明日はない」
??「いいや、あるさ。明日も、そのまた明日も」
突如聞こえた、壮言な声。どこからか聞こえたその力強い声は、絶望しかけた一歌たちの顔を上げるまでの力を秘めていた。
そして、その声を聴いたティラニスは、あからさまに声に力が入り、右手の弓を強く握り締めていた。
ティラニス「この忌々しい声は…!!【テガソード】…!!」
【テガソード】。その何者かの名を呼んだとき、介人の腕にいたセッちゃんがゆっくりと空を飛ぶ。
雫「セッちゃん…?」
志保「え、今の声、セッちゃんから…?でも、テガソードって…?」
普段のセッちゃんを知るものからすれば、全然違う男の声が発せられて困惑を隠せない。
すると、その謎に答えるようにテガソードと呼ばれたセッちゃんが動いた。
セッちゃん(テガソード)「私の名は【テガソード】。今はこの者の体を借りて話しかけている」
介人「テガソードは、かつて“ユニバース大戦”を終わらせた立役者にして、本物の神様だよ」
一歌「えっ!?神様って……あの中国語の録音の!?」
セッちゃん(テガソード)「いや違うそれ。私はそんな適当な仕事はしないしちゃんと直接対話で契約している。エクスバハマルの神とは別物だ」
威厳ある声から一転、一歌の言葉にツッコミを入れ一瞬コミカルな雰囲気になる。
ティラニス「テガソード…まさかここで貴様に相まみえることになるとは…ちょうどいい。貴様も喰らい、私の一部としてくれようぞ…」
セッちゃん(テガソード)「ンンッ!……ティラニス、と言ったか。彼から【支配の厄災】…レクスの称号を名乗るものが現れたと聞いて駆け付けたが…、貴様、この世界の人間を喰らい、厄災の新たな頂点として君臨する気か?」
ティラニス「そうだ!!あのお方――いや、レクスが封じられた今!厄災を私が率い、全ての世界を支配し!!滅ぼしてくれようぞ…!!」
そこでティラニスは己の目的を語った。自分たちの魂を喰らい、力を蓄え封印されたボスを超える力を手に入れやがて組織の新たなボスに成り代わろうとしているのだ。
ボスの称号であるはずの【支配の厄災】を名乗ったのも、そのつもりだったからだ。
セッちゃん(テガソード)「いいや、そんなことはさせない。貴様に、この世界の人間を、滅ぼさせない」
ティラニス「ほざけ!!キサマになにができる!?すでにモリスの魔の手は世界中へ広がっている!最早手遅れなのだよ!!」
セッちゃん(テガソード)「いいや、まだ間に合うさ。そのために――」
介人「助っ人を連れてきたんだからね。まぁメンツがメンツだから、あの程度しか集まらなかったけど。まぁ十分だよ」
ティラニス「なに…?…なっ!?モリス共が、一度に大量に破壊されていく…!?いや違う!今まで信号を遮断されていたのか…?私に気付かれず!?」
陽介「言ったじゃん?無理だと思うって」
* * * * * * * *
??「おらぁ!!」
冥府伍長ハイゾビル(魔法戦隊マジレンジャー)「ぎゃー!!」
親衛隊ドゴーミン(海賊戦隊ゴーカイジャー)「ドゴー!」
??「ぶっ飛べェ!!」
ノサカマタ(侍戦隊シンケンジャー)「アガーッ!」
クダイター(機界戦隊ゼンカイジャー)「うぎゃぁー!」
神山高校では、大量のモリスたちに襲撃される寸前だったが二つの人影が横入りし、男の声を響かせた影は両手に持った二振りの漆黒と青竹色で構成された剣*1。女の声を響かせた影は漆黒と黄金に輝く剣*2と、謎のレーザー銃*3を両手に、銃と剣(レイルガンの役割を兼ねる)でモリスたちを撃ち抜く。
その二人の人物は前衛のモリスを全て斬り伏せ、撃ち抜くと、神高の生徒たちの前に出ていたムラサメの隣に並んだ。
司「な、なんだぁ!?」
ムラサメ「お二人とも…来てくれたんですね」
男「まぁね。それにしても、あんた相変わらず声デケェな、司さん」
男の方が背中側にいる生徒たちの方を振り向き、司の名を呼ぶ。
司は、男の顔を見た瞬間肩が少し上がり、体が硬直した。その男の左目、そこにはまっすぐに彫られた痛々しい傷痕があったからだ。周りの生徒も、その傷痕に戸惑いや驚きを隠せずにいた。そして左側の髪も青竹色のメッシュが施されているが、豪快に挙げられてその傷が露わになっている。
女「ま、こういう胆力があるからゴンさんとも仲良くなれたんじゃね?」
そして、女の方。こちらもこちらで異常だった。全体的に剣と同じで黒と金色で全身が統一されている女だが、男のように左目の傷痕――といった分類での異常さではない。耳としっぽが、生えていた。頭の上には大きな狐の耳と、臀部の当たりから生えているしっぽ。確実に人間ではない、ファンタージで言うところの“獣人”と呼ぶべき存在だった。
司「何故俺のことを…しかもゴンのことを知っているとは、お前たちは…!?」
男「ありゃ、まだ気づかないか。んーとねぇ…あ、おーい彰人くーん!スイーツ大好き東雲くーん!」
彰人「やめろその呼び方!!…って、俺のことも知ってんのかよ、アンタ!?」
司に続いて、彰人の名前が出たことで視線がそちらの方に行く。視線にはストリートライブで慣れている彰人でも、この類の視線には慣れてなかった。
男「やだなー。ゴンさんが着ぐるみに向けてジャジャン拳ぶっ放そうとしてなんとかしろって言ったヤツのこと忘れたの?」
彰人「着ぐるみ…ジャジャン拳…?…あ!!お前、その武器……!!」
そこで彰人は、男が持っている二振りの黒と青竹色で構成された武器に目が行き、そこで気が付いた。この武器を使っている人間を、彰人は、司は、そして冬弥、類、寧々もその人物のことを知っていた。
類「キミ、もしかして…黒竹くんかい?」
男→ニヤリ「ピンポーン!あったりー!でもまぁ今は【二ヤリ】って名乗ってるから、そっちで通してね!」
冬弥「では、その隣の女性は…?」
女→琴音「あー…俺は【黒竹 琴音】。ま、久しぶり、ってな」
黒竹――改めニヤリと名乗った男性と、黒竹琴音と名乗った狐の耳としっぽを持つ女性は、剣を肩にかけながら挨拶を交わす。
寧々「苗字が同じ…ってことは、家族ってこと…?」
ニヤリ「いや、どちらかと言うと“奴隷”だな
琴音「誰が奴隷だぶっ殺すぞ!!」
奴隷と言われた瞬間にレーザー銃(レーザーレイズライザー)を投げ捨てた琴音が青筋を浮かべてニヤリの胸倉を掴み上げた。
ニヤリ「いや、半分くらい事実じゃね?だってお前俺ナシじゃ生きられねぇ体じゃん」
琴音「その条件だったらお前も同じだろうが!!お前も俺がいなくなったら生きられねぇだろ!お前が頭パッパラパーになって『この世の全ての狐は人間年齢換算でランドセル背負った幼女からハロンパス背負ったババァまで全部俺んだ~!』って言ってたとき、お前をフォローしてやったのは誰だと思ってんだ!!」
ニヤリ「おいやめろ!ソレ俺の黒歴史!狐は確かに大好きだが性的な目で見るほど狂っちゃいねぇよ!」
琴音「一時期はそうだっただろうが!!」
バグゾード(特命戦隊ゴーバスターズ)「ザ、ジー…?」
イーガロイド(特捜戦隊デカレンジャー)「なにやってんだ、こいつら」
寧々(なにやってんのこの人たち…?助けに来てくれた、んだよね…?)
杏(ていうかこの2人、さらっととんでもないこと暴露してない…?互いがないと生きられないとか、狐を性的な目でとか…)
突如として始まった二人の痴話喧嘩に、生徒たちが冷めた目をし、モリスたちでさえも突然の状況に戸惑いを隠せず突撃していいのか迷い始めている。
そこで、一つの影――ムラサメが仲介に入った。
ムラサメ「二人とも。落ち着いてください。琴音さん。貴方は奴隷でもないし、ニヤリさんはもう狐を性的な目で見ない常識人です。僕にとってあなた達二人は――ただの“マダオ”です」
ニヤリ・琴音「「誰がマダオだゴラァ!!」」
ところがどっこい、ムラサメはこの場を収めるどころかさらにガソリンを注いだだけであった。
もう収集が付きそうにない――そんなときだった。
えむ「うひゃぁ!!」
こはね「うわっ!」
突然、なにもないところからえむとこはねが姿を表し、二人はバランスを崩して司をクッションにして倒れた。
司「ぐはぁ!!」
冬弥「司先輩!?……あ、小豆沢?」
寧々「えむ!?」
えむ「うへぇ~頭がクラクラするよ~」
こはね「あ、杏ちゃん!青柳君に東雲君!?」
二人は眼を開けたら突如として周りの景色が変わり、神山高校にいるはずの仲間たちが目の前にいることに驚いていた。
よく見れば、えむとこはねの他にも宮女の生徒たちが十数名ほどこの場所へ転送されていた。彼女たちも、自分たちが突然ここへ転送されていたことに驚きを隠せなかったが、そのすぐ近くにいた仲間や親友、恋人の姿を目撃すると、一目散に駆けていた。
杏「こはね!良かった~無事だったんだね!」
こはね「う、うん。でも、これって…?」
類「えむくん。一体なにがあったんだい?」
えむ「えっとね!地面が急にピカーって光ったら、いつのまにかここにいたの!」
司「えむ…!小豆沢…!いい加減、どいてくれ…!」
えむ「あわわ!司くん!?ご、ごめんなさい!」
こはね「司さん!?す、すみません!!」
ここでようやく二人は司を下敷きにしていることに気付き、立ち上がって司の手を引いて起き上がらせる。
ニヤリ「お、この2人が来たってマスターがやったってことだな」
琴音「ま、そうみたいだな。…この決着はまた今度にしておいてやる」
えむ「…え。え~~~!?あ、頭に耳と、しっぽが生えてる~!?」
すると今度はえむが琴音たちの方に気付くと、真っ先に頭の耳と後ろのしっぽに反応を示した。初見では当然の反応であるが。
琴音「そういう仕様だと思っとけ」
こはね「し、仕様なんですか…?」
ニヤリ「お二人も久しぶり~。そっちの子とはほんのちょっとしか会ってないけど、俺のこと覚えてる?」
こはね「え、え!?え~と…」
こはねは混乱しながら目の前の人物をなんとか思い出そうとする。しかしどう思い出しても、青竹色のメッシュに左目に傷痕を付けた自分と年が近そうな男性など知り合いにいなかった。
ニヤリ「まぁ覚えてないのも無理ないか。いろいろ変わったし。俺だよ、俺、二か月くらい前にゴンさんと一緒にいた、黒竹くんだよ」
こはね「え…え~~!!?」
えむ「く、黒竹くん!?」
目の前の厳つい人物の正体があの黒竹であると聞いた二人は大声で驚く。二か月前までこんな見た目じゃなかったし、そもそも身長伸びすぎだし。13歳という話なはずなのにたった二か月で成長しすぎて成長とかそういうレベルの話じゃなかった。
司「そ、そうだ!さっきはついていけなかったが、たった二か月でその成長スピードはあり得ないだろう!」
二ヤリ「いや、そういう仕様だから」
司「仕様で説明できるものなのか、それは!?」
琴音「飲み込むんだよ、アンタらが」
あまりにも横暴な結論に、開いた口が塞がらないとは正にこのことだった。
琴音「それに、あんましくっちゃべってるから、お相手さんもそろそろ限界みたいだぜ?」
琴音が右手の剣を向けると、目の前にいたモリスたちが見てすぐにわかるくらいに燻っており、今にでも突撃してきそうな勢いだった。
ここで一同たちは自分たちが置かれている現状を再確認する。ここは安全な場所などではない。えむとこはねなど、宮女の生徒たちにとても、ただ、危険地帯から危険地帯へ移動しただけなのだ。
先ほどまでのギャグ空間から一転し、緊迫した空気が辺り一帯を支配する。
ニヤリ「だがまぁ、これくらい時間が経ってれば…ほら、来た」
二ヤリが上空を見上げればそこには―――流星が、降り注いでいた
* * * * * * * *
瑞希「ウワァ!!」
絵名「あーもう!こっち来るんじゃないわよー!」
下忍 マゲラッパ(忍風戦隊ハリケンジャー)「マゲマゲ!!」
ベチャット(魔進戦隊キラメイジャー)「ベチャー!」
センター街。ここでも世界中の例に漏れず、モリスたちが人間を襲っていた。
その襲われている数多くの人間の中にうちの二人、絵名と瑞希はモリスたちから必死に逃げていた。二人は元々別々の場所にいたが、モリスから逃げている最中に合流。こうして二人で逃げている。
だが、全方位にモリスと襲われている人間たちがいる状況、逃げることでさえ精いっぱいだった。
絵名は周りのものを投げたりしてモリスたちの足を遅らせるが、周りから追加のモリスが来て足止めはなんの意味もなさなかった。
絵名「あーもう!こんなときにアイツがいれば…!!」
瑞希「アイツ?もしかしてなんとかできそうな人知ってるの!?」
絵名「えっ!?あーその…」
絵名は咄嗟に漏らしたその人物に対して、しどろもどろになる。あの男――【星乃陽介】。魔法使いにしてあのバーサーカーの巣窟の一員。あの人物ならなんとかなりそうだが、彼には妹がいると聞いている。ならまず真っ先にその妹や家族の元へ駆けつけているはずだろう。それに、この事態が世界中で発生しているのなら、彼一人でどうにかなる状況ではないが、絵名はそう叫ばざる負えなかった。
瑞希「もしかして、あの髪の長い人――ゴンさんのことだったりする!?」
絵名「えっ」
瑞希「確かにあの人ならなんとかできそうだけど、あの人が来る前に僕らが持たないよ!」
が、瑞希にもこの事態をなんとかできそうな人物が一人思い浮かんでいた。そう、まごうことなきゴンさんである。彼は一度ならず、何度もこの世界へ来訪し、前回の二か月前に瑞希と初邂逅を果たしている。だからこそ、陽介のことを知らない瑞希からすればまず真っ先にゴンさんが思い浮かぶのは当然のことだった。
思いがけずになんとか誤魔化せた絵名は、友人が記憶消去されないことに安堵していた。
――が、そんな場合ではなかった。
ポーダマン(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)「チャカ!」
ポーダマン(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)「テポ!」
前方からモリスが襲い掛かり、二枚刃のナイフを持って突進してくる。走りながらの会話で前方の注意が疎かだった二人は急ブレーキを掛けようとした結果、転んでしまう。
そのまま前からも、後ろからも来るモリスに良いようにされる未来が想像でき、ギュッと目を閉じた。
絵名・瑞希「「―――ッ!!」」
??「危ない!!」
ポーダマン(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)「チャカ~!」
ポーダマン(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)「テポ~!」
??「ハァ!!」
下忍 マゲラッパ(忍風戦隊ハリケンジャー)「ゲラッパー!?」
ベチャット(魔進戦隊キラメイジャー)「ベチャー!?」
突如、誰かの声が聞こえ、独特な音が鳴ったと当時にモリスが悲鳴を上げた。
そのままその誰かは絵名と瑞希の横を通り過ぎると、殴る蹴るなどの打撃音が響いた。
二人はゆっくりと目を開ける。
するとそこには、折り紙のような見た目をした謎の赤スーツを来た変人がいた。
絵名「…不審者?」
??「い、いえ!!僕は不審者などでは…!――!すみません!その談義はあとで!」
謎の赤い不審者が絵名との会話を中断し、折り紙のような剣を構える。その人物の周り、そして絵名と瑞希の周りから、モリスたちが一斉に突撃していた。この中で、この不審者を一番の脅威とみなしたようだ。
??→オリガレッド「真っ赤な太陽燃えてる限り!必ず眩しい朝が来る!!夢と希望の明日を願う!折リジナル戦隊、【オリガレッド】!厄災…!この世界の人たちに危害を加えるのは、この僕が許さない!!」
謎の不審者――オリガレッドが振るう剣は、独特な斬撃音を鳴らしながら次々に襲い掛かるモリスたちをなぎ倒していく。
斬撃、打撃、打撃、斬撃、斬撃。繰り出される攻撃に周辺のモリスたちは次々に数を減らしていく。
オリガレッド「『山折りスラッシュ』!」
最後にΛ字の緑の斬撃を飛ばし、モリスたちを一掃した。モリスたちが爆発し、剣を収めると、倒れた状態の瑞希と絵名に手を差し伸べた。
オリガレッド「お二人とも、大丈夫ですか?」
瑞希「え、えっと…ありがとう…」
瑞希はその人物の手を取り、ゆっくりと起き上がった。絵名も続けて立ち上がった。
よく見ると、オリガレッドを中心にモリスに襲われた人々が集まってきている。人々にとって彼は、自分たちを救った救世主であると同時に、得体のしれない存在。様々な視線がオリガレッドに注がれる中、絵名が最も気になっていた質問をした。
絵名「それで…助けてくれたことは感謝するけど、貴方一体何者なの…」
オリガレッド「先ほども名乗りましたが、僕は【オリガレッド】。この世界とは違う世界の存在です。ですが、少し前のことでした。【喫茶どんぶら】のマスターにして、ゼンカイザーブラックの【五色田介人】さんが僕の前に現れ、協力を要請してきました。僕はその要請を受け、この世界へやってきたのです」
絵名「なんであの人の名前がそこで出てくるのかも、違う世界とかも訳分かんないけど、この状況自体意味不明だし、どう飲み込めばいいのよ、これ…?」
瑞希「たしか喫茶どんぶらって、この前絵名が言ってたお店だよね…?」
瑞希は少し前のチャット会議でオリガレッドの会話に出てきた【喫茶どんぶら】のことについて思い出していた。確か常連限定メニューのパフェを食べれたと自慢していたが、同時にゴンさんが所属する組織と提携している謎多き喫茶店だと聞いて少し身震いしたのを覚えている。
オリガレッド「それと、今現在の状況ですが、陽介さんが“宮益坂女子学園”の方に。ムラサメさん、ニヤリさん、琴音さんは“神山高等学校”にいます。僕とあの人を含めてモリス、ひいては【支配のティラニス】とマトモに戦えるのは、介人さんを含め7人だけ…。そしてティラニスの現在地は、“宮益坂女子学園”です」
絵名「はぁ!?あの化け物が宮女に!?なんで!?」
オリガレッドから齎された、この事態の元凶たる【支配のティラニス】の現在地がまさかの宮女と言う事実に絵名はオリガレッドに詰め寄る。宮女には、サークルの仲間がいるのだ。そんな場所にラスボス級の怪物がいるとなれば、仲間の命を気に掛けるのは当然のことだった。
オリガレッド「セッちゃんさんの情報によれば、“宮益坂女子学園”のモリスが掃討され、ゲートが破壊されたからです。ティラニスが全世界に放ったモリスを召喚するゲートは、全てティラニスの認識下にある…。ゲートを破壊されたことを察知したティラニスは、最大の脅威を排除するために自ら赴いたそうです。そして、同じくゲートを破壊した“神山高等学校”も、ここら一帯とは比べ物にならない数と質のモリスを向かわせていたそうです」
瑞希「そんな…!神高まで…!?」
オリガレッド「ですが!!“宮益坂女子学園”の方には陽介さんが、“神山高等学校”の方にはニヤリさんと琴音さんが助っ人としているので、きっと大丈夫でしょう。問題はそれ以外の場所です」
オリガレッドは周辺を見渡し、周りの建物の被害などを確認する。酷い有様だ。まだ見たところ死者は出ていないが、それも時間の問題だ。だが、オリガレッドには一種の安心感があった。
オリガレッド「今、もう一人の方が周辺のモリスたちを倒しながら向かっているそうです。その方と合流できれば…」
オリガレッドがそんなことを呟いていたその時、その“人物”との邂逅は思いのほか早く叶うことになった。
一般人「え?」
一般人「え、なに…?」
一般人「は?」
突如、オリガレッドを中心としていた人の輪の一部からそんなざわめきが聞こえる。なにか、困惑している、あり得ないモノを見たかのような反応。そんな出来事があったため、少し鳴りを潜めていた混乱が再び再燃し始めていた。「まさか、またモリスが――」、そんな想像が周りで膨らんでいく中、やがて人々はモーゼの海割りのごとく道を開けていた。
そこには――、
奏「え、絵名、瑞希…!」
絵名「奏!―――?」
瑞希「良かった!無事――。――?」
そこには、腰まである銀の長い髪と青い瞳を持つ少女【宵崎 奏】がいた。そしてその隣に、ナンカいた。
それは、単純なナニカだった。
顔は丸、ただそれだけ。手も足も、体も、全てが一本の棒で形成されたただそれだけの存在。でも大きさは等身大くらいで成人男性の平均、170cmくらいある。
世間ではそれを、“棒人間(初登場*4)”と呼ぶ。
奏はそんな謎の存在、棒人間にその一本線で出来た手で引かれながら群衆の中心たるオリガレッドに近づいていく。
オリガレッド「棒人間さん!!」
オリガレッドが棒人間のことを呼ぶと、棒人間は棒で出来たプラカードを掲げて反応を示す。
やがて二人が対面すると、棒人間は奏から手を放しプラカードを会話をする。
オリガレッド「お疲れ様です。ところで、彼女は?」
オリガレッド「救助した方でしたか。それも、彼女たちと知り合いだったとは…。良かったですね!お二人とも!」
絵名「え、あ、うん。そうだけど…え、あの、コレ、なに?」
絵名は、停止した思考をなんとか使って目の前のナマモノを指さす。この明らかに人間じゃないナニカとの邂逅は、仲間と無事に合流できた喜びを吹き飛ばすのに十分だった。
オリガレッド「彼は、【棒人間】さんです。見たの通り体が棒で出来ていまして、介人さんが呼んだ助っ人の一人です」
瑞希「あ、僕らの見間違いとかじゃないんだ…。てっきり僕たちの頭がおかしくなっちゃったのかと…」
絵名「いやおかしい。全体的に。……奏、拾われたって言うけど、どこで出会ったの?」
奏「えっと、逃げてる途中にこの人?に助けられて…。その後は、ここに来るまで怪物退治に付き添う…って言うか、無理矢理連れまわされた…」
瑞希「た、大変だったんだね…」
ただでさえこんな状況だというのに、こんなナマモノに連れまわされてモリスを退治(100%棒人間が倒していた)していたというのだから、奏の精神的負荷は絵名たちよりも大きいだろう。
というか、こんな棒一本の非力そうな体、下手すればって言うか完全に奏よりも細い体でどうやってモリスたちを倒していたのだろうか。
絵名「ていうか、こんな明らかに雑魚っぽい見た目でどうやってあんなバケモンたちぶっ飛ばせんのよ。そこが不思議だわ…。いや、全身不思議の塊だけど」
奏「え、絵名…!それは…!」
絵名「なに?」
瑞希「…え?」
絵名の煽りに奏が青ざめながら止めると、突如聞こえた謎の男性の声にオリガレッドも、絵名も瑞希も奏も、周りにいた一般人も目を見開いて声の発生源――棒人間に視線を向けていた。ていうかお前喋れるんかい。わざわざ棒で出来たプラカードで会話する意味は?
その瞬間、丸で出来ているはずのその顔に二つの赤くて丸い光が浮かび上がったのは、決して気のせいではないだろう。
絵名「生意気なこと言ってすみませんでした」
その瞬間、絵名は清々しいまでに90度腰を曲げた。ここで謝らなければ、ヤられる。そう直観できてしまったからだ。
と、どうやら許してもらえたようでプラカードでそう返された。何故話さないのか…と疑問に思いながらも突っ込まないことにした。
オリガレッド「えっと…棒人間さん、一般の方を脅すのは…」
オリガレッド「それは、まぁ…。と、ともかく、急ぎましょう。僕たちができることをやらなくては」
オリガレッド「はい。それまでに、出来るだけ多くの人を助けましょう!」
インプス(救急戦隊ゴーゴーファイブ)「チキチキ!」
魔虫兵ビービ(天装戦隊ゴセイジャー)「ビービー!」
クローズ(烈車戦隊トッキュウジャー)「クロ!」
棒人間が顔――前と後ろと言う概念も存在しないが――を向けた先から、モリスたちの鳴き声が聞こえてくる。そして、その声がどんどん大きくなっていき、近づいてきている証拠だった。
オリガレッド「しまった…!一カ所に長く留まりすぎた!皆さん、逃げてください!」
一般人「キャアアアアア!!」
蜘蛛の巣を散らすかのように周りの人々が逃げていく中、オリガレッドと棒人間は向かってくるモリスたちを待ち構えた。
オリガレッド「皆さんも、ここが僕たちが抑えますのでどこかに避難を!」
オリガレッドと棒人間のすぐ近くにいた奏、絵名、瑞希は逃げる人々の群れに巻き込まれずに済んだものの、他の人々より逃げるのが遅れていたため、再度オリガレッドが叫ぶ。
瑞希「う、うん!!絵名、奏!僕たちも早く逃げよう!!」
奏「うん!!」
3人はオリガレッドと棒人間に背(何度も言うようだが棒人間に前と後ろの概念はない)を向けて逃げ出そうとしたが――、
ウーラー兵(高速戦隊ターボレンジャー)「ウーラー!」
ワンパー(激走戦隊カーレンジャー)「チース!」
ウガッツ(炎神戦隊ゴーオンジャー)「ウガッツ!」
3人の逃げ道を阻むように他のモリスたちが現れた。路地裏などからの接近で、急に現れたため急ブレーキをかけるために転んでしまう。
奏「わっ!?」
絵名「――ッ!!」
ウガッツ(炎神戦隊ゴーオンジャー)「ウガッーツ!」
オリガレッド「ッ!危ない!」
ウガッツ(炎神戦隊ゴーオンジャー)「ウガッツ!?」
ウーラー兵(高速戦隊ターボレンジャー)「ウーラー!?」
ワンパー(激走戦隊カーレンジャー)「チース!?」
モリスたちの攻撃が3人を襲う直前、いつの間にか接近していた棒人間が棒のプラカードでモリスたちを殴り飛ばす。そのままオリガレッドの方向にプラカードを投げると、ブーメランのように軌道を変えながら襲ってくるモリスをなぎ倒し、最終的に棒人間の手元に戻ってくる。
絵名「ふ、普通に強い…」
瑞希「プラカードって、ブーメランになるっけ…?」
オリガレッド「棒人間さん!ありがとうございます!」
今の一撃で周辺にいたモリスを全て倒してしまった棒人間。オリガレッドが駆け寄って瑞希たちを再び立ち上がらせる。
オリガレッド「とりあえず、この場から離れましょう!僕たちが付き添います!」
奏「う、うん…」
オリガレッドの言葉通り、この場から離れようとした、その時…。
突如、3人の隣で光が灯った。
瑞希「うわっ!!?」
絵名「な、なに!?」
強烈な光に目を閉じ、腕で顔を覆った。また敵の能力か――。そんなことを考えながらも光が収まると、腕を顔からどかしてゆっくりと目を開いてチカチカする視界のピントを合わせる。そして、目の前にいたのは…
まふゆ「…奏、絵名、瑞希?」
奏「ま、まふゆ…!?なんでここに!?」
そこにいたのは、3人のサークル仲間の【朝比奈まふゆ】だった。だが、今日は平日でありまふゆは学校のはず。その証拠に今まふゆが来ているのは学校の制服だ。そんな彼女が何故ここに、そして急に現れたのか。3人の頭は疑問符で埋め尽くされる。
まふゆ「わからない…。学校で、急に地面が光ったら、ここにいた…」
オリガレッド「それは、多分介人さんたちです。介人さんとセッちゃんさんが、貴方を――いえ、あなた方を転移させたのでしょう」
まふゆ「……誰?」
オリガレッド「僕は【オリガレッド】、この世界のピンチを救うため、別の世界からやってきました」
まふゆ「……わからない…」
流石にまふゆも、いきなり会話に入って来た赤タイツの変人と明らかな人外である棒人間を直視して、その感想しか出てこなかった。
オリガレッド「介人さんが来たということは、テガソードさんも来たということですね!」
瑞希「えっと、さっきから言ってるそのテガソードって、誰…?」
オリガレッド「テガソードさんは、かつての“ユニバース大戦”を終わらせた方です。厄災の暴虐に終止符を打ち、その親玉を封印した立役者…。今回の主犯である【支配のティラニス】は、その厄災の残党なのです」
絵名「残党って…!?残党ができる規模超えてるでしょこれ!」
オリガレッド「残党と言えど、弱い者だけではありません。あの大戦を持ってしても、【疫病のペスティス】、【戦禍のベルルム】、【飢餓のビダル】と言った幹部級の厄災が生き残っていました。それらはすべて倒されましたが、まだ他に生き残りがいたとしても不思議ではなかったんです」
いくら残党だからと言って、弱いというルールはどこにもない。絵名はただ口を紡ぐことしかできなかった。
オリガレッド「それにティラニスは、この世界の人間を生贄に更なる力を得ようとしている…。ここで倒しておかなければ、被害は拡大するでしょう」
オリガレッド「ともかく!あとはテガソードさんがやるまでの時間を凌ぐだけです!行きましょう、皆さん!」
オリガレッドの一言で、全員がオリガレッドと棒人間に付いて行く形で駆けていく。
絵名「それで!?テガソードってやつがなにをやるまで待てばいいわけ!?」
オリガレッド「現在モリスたちは世界中に散らばっている…!それを一挙に解決する方法が、テガソードさんにはあるんです!それが叶えば、全人類が戦える!」
瑞希「全人類が戦えるってなに!?え、僕らも戦うの!?」
オリガレッド「それは――、……あれ、長い銀髪の方と、紫髪の方はどこに…?」
オリガレッドが振り返ってその質問に答えようとしたそのとき、奏とまふゆの姿がないことに気付いた。
それに絵名と瑞希が気づくと、大慌てで二人の名前を呼んだ。ちなみに棒人間は静観していた。
瑞希「奏!?まふゆ!?どこいったの!?」
絵名「最初はいたわよね!?も、もしかして…」
最悪の可能性が頭によぎるが、それはすぐに杞憂であったということが分かる。
まふゆ「大丈夫。ちょっと遅れただけ…」
遅れてまふゆの声が聞こえてきた。そこで安心感で胸をなでおろす。
建物の角からまふゆが小走りで姿を表した。奏をおんぶしながら
絵名・瑞希「「――――」」
奏「ハァ…ハァ…」
まふゆ「奏を背負ってたから、少し遅れた…」
オリガレッド「だ、大丈夫ですか…?」
二人は忘れていた。奏は基本外に出ないため運動不足で走ることすらままならないことに。
まふゆにおぶられながら追いついた奏は、切れた息をなんとか整えながら二人の方に謝罪をした。
奏「ふ、二人とも、ごめん…」
絵名「奏…あんた、どうやってここまで来たのよ…」
ちなみに、奏の家からこのセンター街はそれなりに距離がある。体力ミジンコ以下の奏がどうやってここまで――棒人間と一緒だったとはいえ――来たのか不思議である。
奏「あの、人?…が、乗り物に、変わったりしてた、から…それに、乗せてもらってた…」
絵名「は?乗り物?変わる?」
3人はゆっくりと棒人間の方を見る。明らかに既存の常識が通用しないこの存在は、乗り物に変形すると言う。正直言ってなんのこっちゃであるが、奏がそういった嘘を付くタイプの人間ではないと知っているため、目の前の存在の謎がさらに増えただけだった。
瑞希「あ、すみません…」
オリガレッド「棒人間さん、暴言は良くありません!えっと…まふゆさん、でしたよね。その方、変わりに持ちましょうか?」
まふゆ「…大丈夫。そんなに重くない…」
オリガレッド「そうですか…」
少しの沈黙が訪れる。
すると、棒人間が一つのプラカードを掲げた。
絵名「きたって…なにが?」
瑞希「――あ!絵名!まふゆ!奏!空だよ、空!!」
奏「空…?」
まふゆ「あれって…?」
オリガレッド「間に合った…!やってくれたんですね、テガソードさん…!」
全員が空を見上げると、真昼の空に流星が、降り注いでいた
* * * * * * * *
ティラニス「一体、どうしたというのだ!?まだ、これほどまでの戦力が…!?」
セッちゃん(テガソード)「この世界の緊急事態に、私だけではない。彼は可能な限りの戦力を集めてくれた」
介人「本当はゴンさんも呼びたかったんだけどね。通信が繋がらないから、多分なんかの理由で壊してると思う」
モリスの数が減っていく現状にティラニスが混乱していると、テガソードが事実を淡々と述べた。
ティラニス「―――だが、お前に全てを救えぬことには変わりはない!結局貴様はなにも変えることなどできないのだ!」
セッちゃん(テガソード)「救ってみせるさ…。例え違う世界だろうと、私は人間を、愛している!!」
その言葉とともに、セッちゃん(テガソード)が上空に浮遊し、赤いオーラのようなものを放つ。
ティラニス「その力の波動は…あの大戦のときの…!」
セッちゃん(テガソード)「人類よ…私は、どうしようもなくお前たちを愛している!!だから生きる希望を!力を!捧げよう!!」
セッちゃん(テガソード)が大きく口を開けると、そこから流星が噴き出し、世界中に降り注ぐ。
その神秘的な光景を介人も、陽介も、一歌も、この場に残った全員が空を見上げ目を釘付けにされていた。
やがてその流星は、ゆっくりと全員の右手の人差し指に落ちていき、黄金の指輪を形作っていた。
一歌「これって…?」
一歌は己の人差し指に填められた黄金の指輪――センタイリング(ギンガマン)をまじまじと見る。身に着けているだけで、言語化できないがとてつもない力を感じる。そして、勇気も。目の前にいる【支配のティラニス】という怪物への恐怖心が、嘘のようになくなっていた。
咲希「すっごーい!」
穂波「なんだか、心の高ぶりが、抑えられない…」
志保「さっきまでの恐怖が、嘘のように…」
そしてその力と勇気は、他の者もしっかりと感じ取っていた。
みのり「なんだか、すっごいなにかを感じるよ…!」
みのりは、同じく人差し指に填められたセンタイリング(ゴセイジャー)を見て、そんな漠然とした感想を口にした。だが、みのりたちはこの力の源流を細部まで言語化することなどできない。ゆえにある意味的を得ていた。
遥「これが、力ってこと…?」
愛莉「これで、アイツらをぶっ飛ばせばいいってことね。アイドルになにやらせようとしてんだか…」
雫「ふふっ。なんだか、心がポカポカするわね」
センタイリングは、彼女ら一般人だけではなく、超常の力を持つ者にも均等に与えられた。
陽介「アレ、俺も?」
介人「俺は既に持ってるんだけどなぁ…。まぁ、いいか」
この恩恵を受けているのは、この場の人間だけではない。
こはね「なんなんだろう、これ…」
神山高等学校にて。介人によってこの場所へ飛ばされたこはねは自身の指にあるセンタイリング(ジュウオウジャー)を見て首を傾げる。だが、その指輪から溢れる途轍もない力は、なんとなく感じ取れていた。
杏「すっごいよこれ!なんかよく分かんないけど…」
彰人「だが、コレでアイツ等をぶっ飛ばせるって言うのは、なんとなくわかるぜ…」
冬弥「これで、俺たちも戦えるということか…」
あるものは困惑しながら覚悟を決めた。
司「おおおぉおおおお!?なんだこれはぁあああ!?」
司は己の指にはめられたセンタイリング(ドンブラザーズ)を天に掲げながら大声で叫ぶ。
えむ「すっごいよ!!心がキラキラわんだほいだよ!!」
寧々「司うるさい…!でも、確かにすごい、かも…」
類「これは、面白くなってきたんじゃないかな…?」
ニヤリ「あれ、俺たちもか」
琴音「俺らには本来の力があるんだけどな…。まぁ、今回はこのノリで行くか」
ムラサメ「はい。僕たちも行きましょう」
二ヤリ「…ていうか、なんでお前だけ指じゃなくて手のひらに落ちてきたの?」
ムラサメ「さぁ…僕にはわかりません」
そしてまた、別の場所にも。
奏「体の疲れが、とれた…」
まふゆ「…そうなの?」
奏「うん。背負ってくれて、ありがとう」
まふゆにおんぶしてもらっていた奏だったが、自身の指にセンタイリング(ルパンレンジャー)が填められたと同時に、体力が回復して力も漲って来た。その不思議な恩恵に戸惑いながらも、奏はまふゆの腕から降りる。
まふゆ「確かに…よく分からないけど…なにか、凄いのは、分かる…」
絵名「全人類で戦うって、こういうこと…?まぁ確かに力は感じるけども…」
瑞希「よぉーし!いっくぞー!」
オリガレッド「テガソードさん…!ありがとうございます…!」
オリガレッドは自身の手の平に落ちてきたセンタイリング(キングオージャー)を握り締める。そしてこの場にいないテガソードに感謝の言葉を述べた。
オリガレッド「棒人間さん、どうかしまし…た、か…?」
なお、棒人間はなぜかセンタイリング(??)が指(そもそも棒人間に指の概念はない)ではなく腰の方に填められていた。そして当然指輪サイズではないので他の者たちよりもセンタイリング(??)のサイズが大きかった。
オリガレッド「えっと…棒人間さんに、指がないからですかね…?」
オリガレッド「な、なんででしょうか…?」
こんな些細なトラブルがありながらも、やがて全ての人類に指輪がいきわたる。
一歌「それじゃあ、皆…!行こう!私たちの日常を、取り戻すために!」
みのり「うん!!絶対負けないぞー!!」
こはね「私たちの未来…私たちで守ろう!」
司「はーはっはっは!!主役が満を持して登場だ!!」
奏「誰かを救う曲を作り続けるためにも…こんなところで、死ねない!」
右手のセンタイリングを、左手の指で掴んで―――宣言する。それは、覚悟の証でもある。
指輪を回転させ、エンゲージ。そうすることで誰もがその姿を変えていく。なお、棒人間は宣言ではなく顔の部分に“エンゲージ”と書かれていた。
世界中で、エンゲージが広がる。誰もが指輪を持ち、誰もが力を手に入れ、厄災に立ち向かう。
やがて世界は、赤一色に染まった。
マジレッド(陽介)『魔法使いか…いつもと対して変わらないな、コレ』
ゼンカイザー『それを言うなら、俺はすでに持ってるから意味ないんだけどね』
マジレッド(陽介)『いやでも、いつものヤツと比べたらカラフルじゃないですか』
ゼンカイザー『まぁそうだけど。でもやっぱり…。陽介、灰化を俺にかけて』
マジレッド(陽介)『灰化?なんすかそれ?』
ゼンカイザー『その指輪の固有能力。いつも詠唱唱えるようにして俺に唱えればいいから』
マジレッド(陽介)『あ、そうですか。それじゃあ…灰化』
マジレッド(陽介)が灰化をゼンカイザーに向けて唱えると、ゼンカイザーの体は色あせるように色素が抜け落ち、灰色になった。
マジレッド(陽介)『いつものヤツになった』
ゼンカイザーブラック『うん。やっぱりこっちの方がしっくりくる』
ゼンカイザー改めゼンカイザーブラックはティラニスの方を向くと、ティラニスは怒りのせいかワナワナと体を震えさせていた。
ティラニス「おのれぇ…!テガソードォ……!!お前たち!!ゆけー!!」
モリス「「「「「おー!!!」」」」」
ゼンカイザーブラック『みんな…出撃だ!』
ユニバース戦士「「「「「はい!!」」」」」
そして、決戦の火ぶたが切られる。