異世界セカイ   作:龍狐

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 【次世代狼】さん。最大評価ありがとうございました。


9 【星のカー○ィ】は人生の役に立つんだ…!

咲希「えええええええ!!お兄さんが行った異世界って、魔法が存在してないんですか!?」

 

エルミリア(兄)「いや、ココも言っていたが魔法的なものは凍神剣や結界として実在している。完全にないわけじゃないんだが……現物として残ってるのは全部【大罪竜】が由来のものだからなぁ…。だから【大罪竜】関係なしに魔法が使える俺は異世界でも異質でな」

 

 

 お兄ちゃんのその言葉に、全員が固まった。

 咲希が私たちの言葉を代弁してくれたけど、お兄ちゃんは淡々と答えるだけだった。

 

 

志保「魔法が一般的じゃない異世界で魔法使いって……かなり苦労してきたんですね…」

 

エルミリア(兄)「あぁ。異世界では俺が魔法使ってるところ見た異世界人が、わけわからんもの見る眼で見てきてな。当時はメッチャ心に来たけど、もうこの時点では慣れてたな」

 

 

 それは慣れと言うより記憶消去で精神の均衡を保ってるんじゃない?と思ったけれどお兄ちゃんのために口に出すことはしなかった。

 

 

穂波「人前で魔法を使わないっていう選択肢はなかったんですか?」

 

エルミリア(兄)「魔法を使おうが使わまいが俺が“オークの亜種”として狩られることには何の変わりもないからな。使えるものは最大限使わないと」

 

咲希・穂波・志保

(((お兄さん…!!)))

 

 

 お兄ちゃん…!!悲しすぎる…!!

 そして、咲希がその気分を打ち消すように大きな声を上げた。

 

 

咲希「はいはーい!!じゃあ、お兄さんはなんで魔法が使えるんですか!?」

 

エルミリア(兄)「精霊から力を借りてるんだって。最初に説明したじゃん」

 

穂波「それは、そうですけど…」

 

一歌「でも精霊から力を借りて魔法を発動するってこと自体、今までの話だと異世界ではお兄ちゃんしかできなかったんでしょ?なにか理由があるんじゃ…」

 

エルミリア(兄)「あぁ。理由ならあるぞ」

 

一歌「あるの!?」

 

志保「ソレ先に行ってくださいよ…」

 

 

 本当にそれを先に言ってほしかった。お兄ちゃんってどこかズレてるからなぁ…。

 

 

エルミリア(兄)「えっと、この映像からかなり先の16歳の時に、俺が魔法を使えるようになった理由が判明するんだが…」

 

一歌「16歳って、かなり先だね…。ていうかその時まで魔法が使えるようになった理由とかって気にならなかったの?」

 

エルミリア(兄)「魔法の力自体、精霊から力を借りて使えるものって認識だったし、日々狩られかけてそんなこと気にする余裕なかったし

 

一歌「よし!映像の続き見よっかお兄ちゃん!!」

 

エルミリア(兄)「おっ、そうだな」

 

 

 これ以上お兄ちゃんの闇に触れるのは私たちの精神が持たないため、強制的に中断した。咲希たちも物凄く気まずい顔してるし、私の判断は間違ってないと思っている。

 お兄ちゃんが記憶映像の再生を再開すると、私たちの視線はそれに集中する。

 

 

兄(15歳)『とりあえず服を乾かさなきゃな…。さっきの魔法で服を濡らしてしまったし…』

 

ヴィヴィ『あ、そうだった…』

 

赤髪の女性『認識したら急に寒くなってきたぞ…』

 

ココ『大丈夫、ロロ?早く着替えないと…』

 

赤髪の女性→ロロ『う~、ココ、ヴィヴィ~、私を温めて~』

 

ヴィヴィ『わっ、ロロお姉ちゃん、冷たいよ…』

 

ココ『ちょ、ロロ…』

 

 

 ロロと呼ばれた赤髪の女性が濡れた体でヴィヴィさんとココさんに抱き着いた。仲いいんだなぁ…。すると、その横でお兄ちゃんが収納魔法に手を入れて何かを取り出して――

 

 

兄(15歳)『おいしょと』

 

ロロ『わっ!?なにを――って、服が乾いた…?』

 

兄(15歳)『数日前ダンジョンで見つけた古代魔道具だ。服や髪の水分を乾かしてくれる便利グッツでな』

 

 

一歌「お兄ちゃんちょっと待って!!」

 

エルミリア(兄)「ん、どした?」

 

 

 私は、お兄ちゃんが持っている古代魔道具と呼ばれたものの形状を見て咄嗟に映像を止めさせた。

 驚いているのは咲希たちも同じで矢次にお兄ちゃんに言葉を投げかけた。

 

 

志保「いや、どうしたもなにも…!」

 

咲希「この古代魔道具って呼んでるの、完全に【ドライヤー】ですよね…!?

 

穂波「なんで異世界に【ドライヤー】があるんですか!?」

 

 

 お兄ちゃんが持っている古代魔道具―――それは完全にドライヤーの見た目をしていた。コードとかはないけど、見た目そのものは完全にドライヤーで、それ以外の者には見えなかった。

 なんで異世界に現代機器が…!?

 

 

エルミリア(兄)「そんなに驚くことか?」

 

一歌「驚くに決まってるよ!!」

 

咲希「むしろなんでお兄さんは驚いてないんですか!?」

 

エルミリア(兄)「いやだって、【星のカー○ィ 洞窟大冒険】にも、何故か“こばん”とか“まねきねこ”とか“じゅうえんだま”とかがあるんだから、異世界にも地球のものがあっても不思議じゃないだろ?」

 

穂波「いや不思議ですよそれは…」

 

志保「ゲーム感覚…!?」

 

 

 ゲームと異世界でのことを一緒にしてるって、どれだけ…!!

 気にしなきゃいけないところだよコレ…!!

 

 

ロロ『ダンジョン…?って、なんだ?初めて聞いたが…』

 

兄(15歳)『―――《古代魔道具ドライヤー使用中》。森とか山とかにある地下迷宮のことだ。そこの最深部守ってるモンスター倒せば宝物とかがこういう古代魔道具が手に入るんだ。俺はそうやって冒険者として生計を立ててる』

 

ロロ『初耳だな…。ココ、なにか知ってるか?』

 

ココ『いや、私も初耳』

 

ヴィヴィ『私も初めて聞いた…』

 

 

穂波「ダンジョンもあんまり知られてないんですね…」

 

エルミリア(兄)「あぁ。ダンジョンは入口が岩や土とかで埋まって偽装されてるからな…。俺みたいに魔法が使えないと普通の人じゃまず気付けない」

 

 

 エルミリアさんに送った(即売却した)指輪とかもダンジョンで入手したみたいだし、ダンジョンがお兄ちゃんの異世界での生活基盤になってたんだ…。

 再び映像に視点を戻すと、お兄ちゃんの目線が男の人たちに向いていた。

 

 

兄(15歳)『お前たちも使うか?夜に濡れた体は風邪ひくぞ?』

 

ロロ『お前たちも使ってみろ。大丈夫!私も大丈夫だったし、心配ないさ』

 

部下男7『あ、姐さんがいうなら…』

 

部下男8『使って、みるか…』

 

 

 男の人たちも初めて見るものに戸惑っていたけれど、ロロさんの一言でぎこちない形だけど受け入れて、彼らの服が全て乾いた。

 

 

部下男9『すげぇ…!本当に服が一瞬で乾きやがった…!』

 

ロロ『なにからなにまで済まない…。本当にありがとう』

 

兄(15歳)『体調不良は冒険の天敵だからな。健康は大事だ。それじゃあな』

 

 

 お兄ちゃんがドライヤーを仕舞うと、そのまま体を回転させて歩いてその場を去ろうとしてる。

 え、もしかしてこれで終わり――?

 

 

ロロ『あー待て待て!待ってほしい!!』

 

兄(15歳)『まだなにかあるのか?』

 

ロロ『……えっと、その、だな…。烏滸がましい頼みであるのは承知なんだが、あなたに、私たちの護衛を頼みたい!もちろん報酬は弾ませてもらいます!!』

 

 

 護衛依頼!?

 驚いていると、ココさんたちが勢いよくロロさんに迫って小声で話した。

 

 

ココ『ちょ、ロロ…正気!?さっきまで殺そうとしてた相手に護衛依頼なんて!』

 

部下男10『考え直してください姐さん!』

 

ロロ『分かってはいるが…。ここまで準備してきた弾は全部アイツに使い果たして、銃自体もさっきの轟水でほとんどオシャカになっちゃったし…。安全には替えられないだろ?』

 

部下男11『アイツが最も安全とはかけ離れてるじゃないですか!絶対復讐の機会狙ってますよアイツ!』

 

部下男12『モンスターじゃないにしても、限りなくモンスターに近い存在ですよアレ!』

 

 

兄(15歳)『――――』

 

 

 酷い言われ様だな、本当に…。

 

 

ヴィヴィ『私は、いいと思ってる』

 

ココ『ヴィヴィ…』

 

部下男13『ヴィヴィちゃん、でも…』

 

ヴィヴィ『ロロお姉ちゃんが信じたのなら、私も信じるよ』

 

ココ『はぁ……二人がそういうのなら、私も頷くしかないな…』

 

ロロ『皆…!』

 

 

 あちらの方の話し合いも終わって、ロロさんがお兄ちゃんに向き直った。

 

 

ロロ『……えっと、それで、どうでしょうか…?』

 

兄(15歳)『いいぞ』

 

ロロ『もちろん報酬は通常の――え?』

 

兄(15歳)『対価を払ってくれるのなら俺も文句はない』

 

ロロ『あ、ありがとう…』

 

 

エルミリア(兄)「こうして俺は、少しの間ロロたちと行動を共にすることになった」

 

一歌「なんだか、ギクシャクした感じだけど、落ち着いたのかな…?」

 

志保「ていうかお兄さん、よく殺そうとした相手の護衛依頼なんて受けましたね…」

 

穂波「器がお広いんですね。改めてすごいです…」

 

エルミリア(兄)「まぁ、カー○ィも敵を吸い込んでコ○ー能力にした後ヘルパーとして仲間にしてるからな。その経験が活きたんだろう」

 

咲希「それって経験って呼べるものなんですか?」

 

志保「活かせる要素どこにもないですよねソレ…」

 

穂波(やっぱりカー○ィ…)

 

 

 ゲームのシステムと現実を一緒くたにしないでほしい…。

 行動が開始されて、ロロさんたちが乗る馬車の隣をお兄ちゃんが歩いて、その周りに男の人たちが歩いている。

 

 

ロロ『そうだ。まず始めに言っておかないといけないことがあるんだ』

 

兄(15歳)『なんだ?』

 

ロロ『そろそろ今日泊まる予定のドルド村があるんだが、実はそのドルド村付近でモンスターがよく発生しててな…。空を飛ぶモンスターも確認されているから、村に傭兵たちも在中しているがもしものときはお願いしたい』

 

兄(15歳)『空を飛ぶ敵か…。よし、任せろ』

 

 

 お兄ちゃんは自信満々に答えてるけど、本当に大丈夫なのかな…。お兄ちゃんたちは谷沿いを歩いて目的地まで歩いていた。

 

 

ロロ『そういえば、あの時私たちの傷を癒したのも、魔法なのか?』

 

兄(15歳)『“回復の呪符”のことか?アレは魔法が込められた札を使っただけだ。俺は回復魔法使えないから、重宝してる』

 

ココ『魔法が込められた札…。アンタが作ってるの?』

 

兄(15歳)『いや、購入してる』

 

ヴィヴィ『購入って……どこで?』

 

兄(15歳)『秘密』

 

ココ『そこまで言ったら秘密の意味ないじゃないか…。購入してるってことはアンタ以外にも魔法が使える人がいるってこと…?』

 

 

 あ、そうだ。お兄ちゃんの呪符の入手経路が未だ不明なままだった。買っていたということは前に聞いていたけど、どこで買っているのかは聞いてないし、なんならエクスバハマルには魔法自体がないに等しいから、お兄ちゃんは一体どこで呪符を買っているんだろう。

 

 

穂波「どういうことなんだろう…?」

 

志保「魔法がない世界で魔法が込められた札を買えるって、おかしいですよね…?」

 

咲希「お兄さん!呪符ってどこで買ってるんですか!?」

 

エルミリア(兄)「あぁ、それは―――」

 

 

 

部下男7『大変だ姉さん!!皆!』

 

部下男6『モンスターが群れを成して襲ってきやがった!!』

 

 

 呪符の購入経路を聴こうとした途端、お兄ちゃんの最初の話の通り、モンスターたちが大群で後ろの方からやってきていた。

 緑色の肌を持ったモンスターに、翼を持ったモンスターたちがお兄ちゃんたちの目の前に立ちはだかった。松明の数も異常で、とても危険な状態だということが分かる。

 

 

咲希「えっ、モンスターの数多くない!?これ、大丈夫なんですか!?」

 

穂波「だ、大丈夫だよきっと!お兄さんもいるんですから!」

 

志保「お兄さん強いし、きっとなんとかなりますよね?」

 

エルミリア(兄)「あぁ。ここで俺は星のカー○ィで得た知識を活かして、モンスターたちを全て撃退したんだ」

 

一歌「よかった、無事に倒せるんだね。それを聞いて、安心したよ」

 

 

 カー○ィの部分はどうでもいいとしても、私たちは結末の方を聞いたから安心できたけれど、映像では現在進行形でピンチに陥っている彼らはとても混乱していた。

 

 

ココ『数が多い…!こんなに大量発生してるなんて情報なかったのに…!?』

 

ヴィヴィ『どうしよう…!ゴブリンに、ワイバーンもいる…!』

 

ロロ『落ち着け皆!こういうときのために依頼したんだ!』

 

兄(15歳)『……お前たち、地上のモンスターは任せた。俺は空のモンスターの相手をする』

 

部下男3『いや、地上のモンスターだけっつっても、俺たちだけじゃあの数はどうしようもねぇぞ!?』

 

兄(15歳)『任せろ。空のモンスターを倒したらすぐに加勢する。そして……こういった状況のために、俺が3年かけて習得した技を使う!』

 

 

 お兄ちゃんが一番前に立つと、呪文を唱えた。

 

 

兄(15歳)『光槍顕現キライド・ザスト・リオルラン!!』

 

ロロ『魔法の槍…!?そんなこともできるのか!?』

 

ココ『私たちとの闘いでアレを使わなかったってことは、手加減してたのか…』

 

ヴィヴィ『一体、どうするんだろう…』

 

兄(15歳)『はぁあああああ!!』

 

 

 光の槍を持ったお兄ちゃんは、自分の頭の上で槍を回し始めた。

 

 

ロロ・ココ・ヴィヴィ・部下たち

『『『『『――――?』』』』』

 

一歌・咲希・穂波・志保

「「「「――――?」」」」

 

 

 なんでこんなときに武芸なんか…?モンスターたちがどんどん近づいてきてるのに――、

 

 

兄(15歳)『えっ、ちょ待ってまだ回転が――ゲホッ!グフッ!』

 

 

 地上と空のモンスターに集団で殴られ始めた。

 

 

 

―――?

 

 

 

穂波「あの……お兄さん、これなにを?」

 

エルミリア(兄)「槍を回転させて空を飛ぼうとしていたんだが…」

 

志保「槍を回して空を飛ぶってなんですか?そんなことできるわけないですよね?」

 

エルミリア(兄)「いや、バンダナワド○ディもスピアカー○ィも①ボタンを長押しすれば槍で空を飛んで空中の敵を巻き込んで倒すという“スピアコプター”が使えるんだ」

 

咲希「それゲームの話ですよね?」

 

エルミリア(兄)「だがこの時俺は致命的なミスを犯していた」

 

一歌「そうだよね。一応自覚はあったんd―――」

 

エルミリア(兄)「魔法の槍で練習したことが一度もなかったということだ…」

 

一歌「そこじゃないよね!?」

 

 

 そもそも槍で空を飛ぼうって言う発想自体が間違っていることに気付いてないこの人!

 

 

エルミリア(兄)「俺は3年間実物の槍でしか練習してこなかった…。だからぶっつけ本番で魔法の槍を使っても成功するはずなかったんだ」

 

志保「そこの違い関係ないですよね?」

 

穂波「そもそも、練習の時点で空は飛べたんですか…?」

 

エルミリア(兄)「いや、今まで一度も成功したことがない。槍を頭の上で回すということ自体上級者向けのテクニックだからな…」

 

咲希「なんでそれを実戦で使おうと思ったんですか?」

 

エルミリア(兄)「いや、いけるかなって」

 

一歌「その根拠のない自信はどこからきてるの?」

 

 

 お兄ちゃん……せめてゲームと現実の区別くらいしっかりつけようよ。

 モザイク処理されてるとはいえ血反吐吐くほど殴られてるけど全然同情できない…。

 

 

エルミリア(兄)「だが、ここからだ。【星のカー○ィ Wii】にはデ○デ大王が使える“おにごろしデ○デハンマー”、ハンマーカー○ィが使える“おにごろし火炎ハンマー”と言う上ボタン+①ボタンで出せる大ダメージ技があるんだ。当てるのが難しい技だが…」

 

 

兄(15歳)『耐炎護身バライブート・ザルシェリオン!!炎鎚顕現バライブート・ゴレット・リオルラン!!』

 

 

 お兄ちゃんが光の槍で周りのモンスターたちを薙ぎ払った後、二つの魔法を唱えて巨大な炎のハンマーがその手に握られた。そのまま炎のハンマーを構えてジリジリとモンスターたちに近寄って―――お兄ちゃんの体が炎上した。

 

 

ロロ『はっ!?燃えた!?』

 

ココ『え、アレ生きてる?アレで生きてるの?』

 

ヴィヴィ『ゴブリンにジリジリ寄ってる…。アレも魔法なんだ…』

 

 

一歌「えっ!?これ、燃えてる!?」

 

志保「お兄さん、これ大丈夫なんですか!?」

 

エルミリア(兄)「ダイジョブダイジョブ。最初の唱えた魔法で対策してるから」

 

穂波「そういえば、魔法を二つ唱えてましたけど…。なんの魔法なんですか?」

 

エルミリア(兄)「炎耐性を付与する魔法だな。光と闇の魔法と違って、炎とか氷とかの武器はこういう対策しないと普通に火傷したりするから。メッチャ痛かったよ」

 

咲希「経験談なんですね…」

 

 

 過去に試して火傷したんだ、お兄ちゃん…。

 すると、ゴブリンに近づいたお兄ちゃんは炎のハンマーを下から上にかけて勢いよく振り上げた。

 

―――ゴブリンが後ろに避けてカラぶった。

 

 再び構えて燃えて、振り上げて、空振り。

 再び構えて燃えて、振り上げて、空振り。

 

 

一歌「お兄ちゃん、全然当たってないけど…」

 

エルミリア(兄)「あぁ。当てるのが難しい技だし、ボス戦で重宝する一撃必殺技だからな。そう簡単に当てられたら苦労しない」

 

穂波「集団戦で使うような技ではないですよね?」

 

志保「そもそも明らかな選択ミスですよね?」

 

咲希「これ普通に戦った方が早いですよ絶対…」

 

エルミリア(兄)「――――」

 

 

 

兄(15歳)『はぁ……はぁ…嵐槍殲滅ワーグレント・ザスト・バストール

 

 

 

エルミリア(兄)「あれ?」

 

一歌「あっ」

 

咲希「あっ」

 

穂波「あっ」

 

志保「あっ」

 

 

ドガシャ

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

モンスターs『ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

 

 お兄ちゃんが放った風の魔法がモンスターを、山を貫いた。山が崩壊したことで岩の雪崩が起きて魔法が当たらなかったモンスターを纏めて押しつぶした。

 

 

ロロ『――――』

 

ココ『――――』

 

ヴィヴィ『――――』

 

部下男s『――――』

 

兄(15歳)『―――ふっ』

 

 

 そしてお兄ちゃんは爽やかな顔をしながらロロさんたちの方を振り向いた――。

 

 

エルミリア(兄)「……こうして俺は、合体協力技“せーのでソードビーム”*1を参考にした技を使い、星のカー○ィのテクニックを応用してモンスターの群れを撃退したんだ」

 

一歌「嘘つけェ!!」

 

咲希「星のカー○ィ全然役立ってなかったじゃないですか!!」

 

穂波「むしろ足引っ張ってましたよね!?」

 

志保「ていうか最後の技、協力技でもなんでもないただのゴリ押しだったじゃないですか!!」

 

 

 私たちの言葉の追撃にどんどんと下を向くお兄ちゃん。だけど、次にお兄ちゃんの喉から絞り出されたような声が出てきた。

 

 

エルミリア(兄)「みんな……見ての通り【星のカー○ィ】は人生の役に立つんだ…!!

 

一歌「無理筋で擁護するの任○堂に迷惑だからやめよ?それとエルミリアさんの姿でそれやられると違和感しかないから」

 

 

 

ロロ『私たち、とんでもないヤツを相手取っていたんだな…』

 

ココ『ていうか、前半の無駄な動きはなんだったんだ…』

 

ヴィヴィ『す、すごい…。やっぱり手加減してたんだ…』

 

 

 お兄ちゃんの魔法を見てロロさんたちがそんなことを言っていた。お兄ちゃんがロロさんたちの方に歩みを進めると、男の人たちの肩がビクッと上がった。その目は恐ろしいものを見る目だった。魔法がない世界であんなの見せられたらこんな反応にもなるよね…。この時、お兄ちゃんはどんなことを思っていたんだろう。

 ロロさんたちに向かって歩いていると、突如お兄ちゃんが足を止めた。

 

 

兄(15歳)『――――え、あっちにある?』

 

ヴィヴィ『……どうかしたの?』

 

兄(15歳)『 大地走査バハマリオン・スラドラーチ

 

ヴィヴィ『わっ!』

 

 

 突如お兄ちゃんを中心に回路のようなものが大地全体に広がった。

 

 

一歌「お兄ちゃん、いきなりどうしたのコレ?」

 

エルミリア(兄)「ここら辺の精霊から、この近くに空洞があるって教えてくれてな。それでもしやと思って探索してみたんだが…」

 

 

 お兄ちゃんが向かった先は、割とすぐ近く。岩雪崩で埋まった一番近い場所の前に立った。

 

 

兄(15歳)『疾風運搬ワーグレント・セルド

 

 

 瓦礫を魔法でどかして谷底に落とすと、そこにはメルヘンチックな大きな扉のようなものがあった。

 

 

ロロ『これって…!』

 

兄(15歳)『ダンジョンだな。まさかこんなところにあったとは…』

 

ココ『本当にあったのか…』

 

ヴィヴィ『大きな扉…』

 

 

 お兄ちゃんの話にちょくちょく出ていた、ダンジョンがあった。人の身長を優に超える大きい扉のサイズに、映像越しで見ている私たちでも圧巻に見えた。

 

 

兄(15歳)『攻略したいところだが、まずはお前たちの護衛依頼が先だな』

 

ロロ『そうしてくれると助かる。流石にこのまま進むなんて言われたらついていけないぞ』

 

兄(15歳)『いや、ダンジョン攻略は護衛依頼が終わってからでも問題ない』

 

ココ『……私たちが先に入って、お宝取る、とか考えないの?聞けばこの奥には大量のお宝が眠ってるんでしょ?』

 

兄(15歳)『なんだ、やるのか?』

 

ココ『いや、やらないけど…それにこんな大きな扉、私たちじゃとても開けられないよ』

 

兄(15歳)『あぁそれはだな…』

 

 

 お兄ちゃんがダンジョンの扉に近づくと、扉の一番上からスポットライトのような青い光がお兄ちゃんを照らした後、ダンジョンの扉が自動で横開きした。

 

 

ロロ『扉が勝手に…』

 

兄(15歳)『こんな風に前に立つと、自動で開くんだ。で』

 

 

 今度はお兄ちゃんが後ろに下がると自動で扉が閉まりだした。

 

 

兄(15歳)『離れると勝手に閉じる』

 

ヴィヴィ『すごい……こんなの、見たことない…』

 

ココ『もしかしてコレ、ルバルドラムの結界と同じ時代に作られたものだったり…?じゃないと説明が付かないし…』

 

ロロ『だとしたら世紀の大発見だな!800年前の時代のものが他にも見つかるなんて…!』

 

ココ『ロロ、完全にそうだと決まったわけじゃないし、これは私のただの憶測。それに、その世紀の大発見の第一人者は彼以外にいないでしょ』

 

ロロ『あぁ、そうだったな…。もう何度も同じようなところを攻略してるんだったっけ…世界にはまだまだ不思議があるんだな。よーしお前たち!予定時間より過ぎたがドルド村に向かうぞ!」

 

 

 ロロさんが締めくくったあと、一同はドルド村に向けて出発した。

 先ほどと同じようにロロさんたちが馬車に乗ってその隣にお兄ちゃんが着いていた。だけど、男の人たちはお兄ちゃんを警戒――いや、おそらく恐怖しているんだろう。お兄ちゃんとの距離が異様に開いていた。

 

 

兄(15歳)『――――』

 

 

 すると、馬車からヴィヴィさんが降りてきてお兄ちゃんと並行して歩き始めた。

 

 

ヴィヴィ『えっと、ごめんね。みんなが……』

 

兄(15歳)『気にしてない。こういうのは日常茶飯事だ』

 

ヴィヴィ『…そっか。大変なんだね…。ねぇ、聞きたいことがあるんだけど…』

 

兄(15歳)『なんだ?』

 

ヴィヴィ『封印都市ルバルドラムの結界を再構成なおしてたよね?』

 

兄(15歳)『――――』

 

 

 

―――あ

 

 

 

咲希「あそこにヴィヴィさんたち、いたんだ…」

 

穂波「ていうか、なんか嫌な予感が…」

 

志保「奇遇だね。私もすっごいそんな予感がしてきた」

 

 

 私たち全員がこれからの展開にいやな想像を働かせながら、映像のお兄ちゃんは沈黙して、言葉を発した。

 

 

兄(15歳)『アレを、見たのか…』

 

ヴィヴィ『うん…』

 

 

 その時、私は映像のお兄ちゃんの口が不敵な笑みを浮かべていたのを見逃さなかった。

 そして、右手を掲げながらヴィヴィさんやロロさんココさんたちにゆっくりと近づいていく。

 

 

兄(15歳)『誰かに話したのか?』

 

ヴィヴィ『話したというか…ロロお姉ちゃんもココお姉ちゃんも私と一緒に見ていたから、二人も知ってるよ』

 

兄(15歳)『そうか…』

 

ロロ『ん?ルバルドラムでの話か?私もしっかりと見てたぞ?魔法が使えるって噂で聞いたときは半信半疑だったけど、結界直したところ見て、確信したよ。魔法ってすごいなって思ったさ」

 

兄(15歳)『お前たちは……このことを誰かに話したのか?』

 

ココ『いいや?誰にも話してないさ。そもそも言ったところで誰も信じないしね』

 

兄(15歳)『――――』

 

ヴィヴィ『結界直したのに黙って立ち去ったり、今回だってあんなことした私たちのこと助けてくれたり、容姿はよく見れば、人間っぽいかなって、えへへ…』

 

 

 ヴィヴィさんは一呼吸置いた後、可愛らしいあの顔で、満面の笑みで―――

 

 

ヴィヴィ『本当に、ありが――』

 

兄(15歳)『記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

 

 ヴィヴィさんの記憶が、消されて―――

 

 

兄(15歳)『機動纏身レグスウィッド・ザルドーナ―――記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

 

 お兄ちゃんが一瞬で馬車との距離をゼロまで詰めると、馬の頭に手を乗せて記憶消去の魔法を唱えて馬を無力化した。ロロさんとココさんの表情が驚愕で固まっている中、今度は止まった馬車と男の人たちの中心に着地すると――、

 

 

兄(15歳)『水蛇拘縛レイ・ミバルド・スタッガ!!』

 

 

部下男s『『『『『ウワァアアアアアアアア!!』』』』』

 

 

 地面から蛇の形をしたなにかが男の人たち、ロロさんココさんを捕まえて――、

 

 

兄(15歳)『記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

部下男1『オ゛』

 

兄(15歳)『記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

部下男2『モ゛』

 

兄(15歳)『記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

部下男3『バギッ』

 

 

 次々と男の人たちの記憶が消されていって、最後――。

 

 

ロロ『な、なんで…ッ!』

 

ココ『あんたのこと、信じて――』

 

兄(15歳)『記憶忘却イキュラス・キュオラ

 

ロロ『ア゛ッ』ドサッ

 

ココ『ヴッ』ドサッ

 

 

 

一歌「――――」

 

咲希「――――」

 

穂波「――――」

 

志保「――――」

 

エルミリア(兄)「こうして―――」

 

 

 

ヴィヴィ『あれ、私たち、どうしてたんだっけ…?』

 

ココ『ヴィヴィ、起きた?さっきモンスターの群れが襲ってきたけど、急な落石でなんとか助かったんだよ。安心して眠ってたみたいだったから起こさなかったけど…もうすぐ着くよ』

 

ロロ『おはよう、ヴィヴィ。それにしても驚いたよなー。山の中から巨大な扉まで出てきたんだぞ!大発見だな!』

 

ヴィヴィ『あっ、そうだったね…。中になにがあるんだろう…』

 

ココ『気にはなるけど、とりあえずドルド村に言って、村長さんに落石のこととあの扉のことを話さないとね…』

 

 

 

エルミリア(兄)「ヴィヴィたちは俺のことを忘れ、無事にドルド村に到着することができた」

 

一歌「―――そっか」

 

エルミリア(兄)「あっ、あのあとすぐにあのダンジョン攻略したんだ。他のと比べると結構簡単だったよ」

 

咲希「そうなんですね…」

 

穂波「よかった、ですね…」

 

志保「へ、へぇ~~…」

 

 

 何とも言えない空気がこの場を支配する。なんか予想できた展開だったけれど、いざ実際に見ると気まずさが拭えない…。

 

 

ルパンブルー「―――」

 

 

 すると、まるでタイミングを狙ったかのように私たちの注文していた料理が全員分同時に机に並べられた。

 

 

エルミリア(兄)「お、料理来た。いっただっきまーす!」

 

一歌・咲希・穂波・志保「「「「………いただきます」」」」

 

エルミリア(兄)「おいしーい!」

 

 

 この日の晩御飯は、この前のクレイリアさんとの映像を見せられた時と同じような気分での食事になった。

 

 

エルミリア(兄)「実はだな、最後にやった“せーのでソードビーム”なんだけど、アレ協力プレイじゃないとできないからもう一つの【W○iリモコン】使って、足で操作して発動したなー。あ、食事中に足とかは禁句か。ごめん」

 

一歌「うん…(足で…)」

 

 

 子供のころ、お兄ちゃんと一緒に協力プレイゲームやってれば、いろいろ違ったのかな…。

 そう思いながらほぼ無言で食事が終わり、会計するところまで時間が経った。私たちはイエローさんにサイン色紙を手渡されて、そのままサインを書く。何気にこういうの初めてだから緊張するな…。

 

 

エルミリア(兄)「それはじゃあ、は先に会計してるわね!」

 

一歌「分かった………え?」

 

咲希「え、お兄さん、今…」

 

エルミリア(兄)「どうかしたの、みんな?」

 

穂波「今、私って…」

 

エルミリア(兄)「……そんなに、変かしら?」

 

志保「お兄さん、もしかして…」

 

 

 その時、私たち全員の頭にお兄ちゃんの言葉がフラッシュバックした。

 

 

エルミリア(兄)『咲希さん、簡単に言わないでほしい。肉体が変われば心もどんどん変わっていく…。自分の同一性が保てなくなってしまう危険がある。よほどのことがない限り使ってはならない禁断の魔法なんだ!!』

 

 

 まさか、長時間変身してた影響が今になって出始めて――!!

 

 

咲希「お兄さん!!今すぐ!!変身魔法、解除して!!」

 

エルミリア(兄)「えっ、変身魔法…?」

 

志保「ヤバイ!!変身のことすっかり忘れてる!」

 

穂波「お兄さん!自分の名前言えますか!?」

 

エルミリア(兄)「名前って…私の名前はエル―――」

 

一歌「お兄ちゃんの名前は【星乃陽介】だよ!ほら思い出して!小2から小6までのカー○ィと過ごした時間を!!」

 

エルミリア(兄)「カー○ィ……カー○ィ…ハッ!!そうだ、私は【星乃陽介】!」

 

一歌「よかった、戻った!でもまだ一人称が“私”のままだ!早く、変身魔法解除して!!」

 

エルミリア(兄)「分かったわ!今すぐにもど―――」

 

 

 

???「ここよ。ようやく着いたわね…」

 

???「ごめんなさい、みんな。私が迷子になったばっかりに…」

 

???「雫は悪くないよ。ここ、結構入り組んでて分かりずらいし…」

 

???「わぁ~!ここが、【喫茶どんぶら】かぁ~!」

 

 

 

 その時、最悪のタイミングで新たな来客が訪れた。

 しかも、その来客たちはとても身に憶えがあって、私たちと同じ制服を来た―――、

 

 

???「あら、しぃちゃん!偶然ね~。今日はご飯食べてくるって言ってたけど、まさかここのことだったなんて~」

 

志保「お、お姉ちゃん…!!」

 

 

 入口から入って来たのは、同じ学校に通っている新興アイドルユニット【MORE MORE JUMP!】のメンバー、【花里 みのり】、【桐谷 遥】さん、【桃井 愛莉】さん、【日野森 雫】さんの四人だった。

 

 なんでこんなときに…!!

 

 

???→雫「あら、それに一歌ちゃん、咲希ちゃん、穂波ちゃんも…。こんばんわ~」

 

一歌「こ、こんばんわ…」

 

咲希「す、すごい偶然ですね…」

 

穂波「み、みなさんはどうしてここに…?」

 

???→みのり「実はね!ここは、あのかりん*2さんが下積み時代バイトしてたって言う場所なんだって!」

 

???→遥「ここのことは前々から紹介されていたんだ。それで、皆の予定も空いてる今日来たんだけど…」

 

???→愛莉「途中雫とはぐれちゃって…気づいたらこんな時間に」

 

志保「う、うちの姉がご迷惑を…」

 

 

 そう志保が言うが、志保の目線はチラチラとお兄ちゃんに向いていた。とりあえず、なにがなんでもお兄ちゃんをみんなの視界から外して変身魔法を解除させないと…!

 

 

雫「えっと、ところでそちらの方は、どなたかしら…?」

 

みのり「うわ~!すっごい美人さんだぁ~!」

 

エルミリア(兄)「どうも初めまして星乃一歌の兄の【星乃陽介】と申しますどうぞよろしく」※早口

 

愛莉「えっ、兄…?」

 

遥「よう、すけ…?」

 

一歌「あーいや!あの、この人は兄の知り合いでしてもう何年もの付き合いにもなるのでその、なんというか――」

 

咲希「好きな人の名前言いたくなるみたいな!?」

 

穂波「そう!それだよ咲希ちゃん!」

 

志保「そ、そうだね!!きっとそこら辺の境目が曖昧になってるんだよエルミリアさんは!!」

 

 

 自分でもメチャクチャだと思うくらいに支離滅裂な言い訳※を咲希たちと展開していく。

 多分お兄ちゃんは自分を見失わないために本来の自分の名前で自己紹介したんだろうけど、案の定首を傾げる遥たちに私たちは咄嗟に話を合わせた。

 

 ※半分くらいは事実と言っても過言ではない。

 

 

愛莉「えっ、それって大丈夫なの…?」

 

雫「でもしぃちゃん。確か一歌ちゃんのお兄さんは4年前から昏睡状態で先月目覚めたばかりって言ってたわよね?」

 

みのり「えっ、昏睡状態!?」

 

志保(お姉ちゃん…!今それ言わなくていいから…!)

 

一歌「えっと、それは、あの、あれですよ、ほら!夢の中で出会って恋したみたいな、そんな感じのなにかが起きたんですよ!きっと!」

 

遥「なんかメチャクチャになってきてない?大丈夫、みんな…?」

 

咲希「あ、あ~!エルミリアさん!さっきお手洗いに行きたいって言ってませんでした!?」

 

エルミリア(兄)「えっ、言ってな――」

 

穂波「我慢は体に毒ですよ!早く行ってください!」

 

志保「イエローさん!イエローさん!お手洗いの場所教えてください!」

 

 

 慌ててイエローさん(あの3人の中で唯一の女性)を呼ぶと、イエローさんが厨房から出てきてお座敷の奥に扉を指さした。

 

 

ルパンイエロー「―――」スッ

 

愛莉「えっ、誰この人。店員さん!?」

 

遥「なんか、独特な人が出てきた…」

 

雫「ここの店員さんって、皆ああいう風なのかしら…?色々変わってて楽しそうな場所ね~」

 

みのり「あのフォルム、怪盗さんかなにかかな…?」

 

 

 とりあえず私はお兄ちゃんの腕を掴んでお座敷に向かって早歩きする。

 そしてお座敷に手をかけて靴を脱ぐ動作をし始めて―――、

 

 

機械の鳥「ガガガガピー!チュンチュンチュン!」

 

機械の鳥「充電完了チュン!」

 

 

 突如、テレビの横に置いてあったカラフルな見た目をした鳥のロボットが喋り出し、自由自在にお店の天井を飛び回った。

 

 

一歌「えっ、動いた!?」

 

咲希「ていうか、浮いてる!」

 

穂波「この場合は飛んでるだよ…」

 

志保「いや、ツッコむところはそこじゃないでしょ…!?」

 

みのり「わー!鳥さんが空を飛んでる!」

 

遥「いや、どう見ても普通の鳥じゃないよ…」

 

愛莉「機械の鳥が、飛んで、喋った…!?」

 

雫「まぁ…すごいわぁ~…」

 

 

エルミリア(兄)「あ、【セッちゃん*3!」

 

機械の鳥→セッちゃん「陽介!こんばんわっチュン!!」

 

 

 セッちゃんと呼ばれた機械の鳥は、お兄ちゃんのことを認識するとそのすぐ近くまで寄ってお兄ちゃんの周りを飛び周る。

 

 

セッちゃん「陽介!この前の返事を界人かいとから預かってるっチュン!」

 

エルミリア(兄)「マスターから?ついに来たのね!」

 

セッちゃん「………あ゛ぁー!遅すぎたっチュン!今すぐ持ってくるッチュン!!」

 

 

 お兄ちゃんの口調を聞いた途端に大声を上げたセッちゃんは天井をグルグル回った後、そのまますごい勢いでお座敷の畳に突撃して――同時に畳が落ちてそのままセッちゃんは畳の下に消えていってしまった。

 それを見て一同がそこまで駆け寄った。

 

 

一歌「畳が落ちた!?」

 

みのり「え~!どういうこと~!?」

 

エルミリア(兄)「えっ、地下の入口ってそこだったの!?」

 

咲希「えっ、この店って地下あるんですか!?」

 

穂波「畳一枚の奥に、こんなに深い地下が…」

 

志保「ていうかお兄さんも知らなかったんだ…」

 

エルミリア(兄)「地下があることは知っていたけれど、入口があそこだったことは初めて知ったわ…」

 

 

 あぁ…お兄ちゃんの口調がどんどん女性よりに…!早く戻さないといけないのに…!

 

 

遥「えっ、なに?これ、なにが起きてるの?」

 

愛莉「変な店員さんに機械の鳥が動いて飛んで喋ったら、今度は地下…!?どうなってるのこの店!?」

 

 

 事情を知らないみのりたちはとても戸惑ってる…。どうしよう、これ、どう収集つければいいんだろう…。

 固まっていると、セッちゃんが地下室から出てきた。それと同時に畳が押し上がるように定位置に戻った。ハイテクすぎる…。入る前と違う点は、そのかぎ爪に一枚の封筒があったということだ。どうやって持ってるんだろう…

 

 

セッちゃん「陽介!その中には陽介が行く最初の勤務先が書かれてるチュン!これで晴れて陽介も【■■ロア商会】の一員っチュン!!」

 

 

 ここで会社の名前が【ロア商会】という名前であることを初めて知ったけど、今はそんなことしてる場合じゃないのに…!

 お兄ちゃんは封筒を開けて、中の紙を取り出した瞬間―――その動きが止まった。

 

 

 

 

 

 

エルミリア→兄「マジ、かよ…」

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、なぜか変身魔法が解けた。それによってお兄ちゃんとエルミリアさんの顔が混ざったような中途半端な顔と言うとんでもない光景が目の前に映った。

 衝撃的過ぎる光景に、硬直だけで済んだ私たちだったけど…

 

 

 

みのり「――――」バタンッ

 

雫「――――」バタンッ

 

遥「――――」ドサッ※尻もち

 

 

愛莉「ウワァアアアアア!!キモイ顔が出た!!キモイキモイキモイキモイ!!」

 

 

 

―――その日、喫茶どんぶらは地獄絵図と化した。

 

 

 

みのり「――――」※気絶

 

遥「お姉さんがおじさん……おじさんが、お姉さん…ブツブツ」※混乱

 

穂波「花里さん!桐谷さん!しっかりしてください!」

 

愛莉「イヤァアアアアアアアア!!」※混乱

 

咲希「あいり先輩!気を、気を確かに!!」

 

雫「――――」※気絶

 

志保「お姉ちゃん!お姉ちゃん目を覚まして!!」

 

 

一歌「―――」※硬直

 

エルミリア→兄(戻りかけ)「―――――」※気絶

 

 

セッちゃん「あ゛ぁああー!大惨事ッチューン!!」

 

 

 

―――これ、どうすればいいんだろう

 

 

 

次の日、四人は学校を休んだ

 

*1
【星のカービィ Wii】の要素

*2
暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン12話『つきはウソつき』の登場人物。雑誌の表紙を飾るほどの人気アイドルである

*3
【機界戦隊ゼンカイジャー】の登場キャラである紅白の鳥型ロボット。この作品では“ドンブラ界人”のペット兼相棒的な立ち位置だ!




評価:感想お願いします。

 今回、不意打ち的な形で“モモジャン”メンバーがお兄さんの秘密を知ることとなりました。
 PROJECT NIYARIでは唯一黒竹一同と出会わなかったメンバー。耐性ができてなかったんだな…。


今回出てきた謎。
・何故お兄さんは魔法が使えるのか
・何故古代魔道具(ドライヤー)が異世界に存在しているのか
・ダンジョン
・雇用通知書の内容


セっちゃん「【■■ロア商会】の一員チュン!」

レオニ&モモジャン(【ロア商会】って言うんだ…)


喫茶ドンブラの謎
・機械の鳥【セッちゃん】の存在
・お座敷の下に存在する地下室


 
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