異世界セカイ   作:龍狐

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10 奴隷販売を生業としている犯罪組織に売られた

一歌「――――」

 

咲希「――――」

 

穂波「――――」

 

志保「――――」

 

みのり「――――」

 

遥「――――」

 

愛莉「――――」

 

雫「――――」

 

 

 私たちは今、【喫茶どんぶら】でみのりたちと対面になるように座っていた。

 事の発端は約十日ほど前。謎の機械の鳥――セッちゃんに渡された雇用通知書をお兄ちゃんが見た瞬間、その内容に驚いて変身魔法が解除され、とんでもない顔となりみのりは気絶、桐谷さんは混乱し、桃井先輩は絶叫、雫先輩は気絶、ついでにお兄ちゃんも気絶という大惨事が起きた。お兄ちゃんはその後【ルパンレンジャー】の皆様にふすまの奥に連れていかれ、次の日4人は学校を休んだことで、学校でもプチ騒動が起きた。

 

 だが以外にも四人は次の日には復帰していた。流石にアイドルやってるからかメンタルが強すぎる。で、案の定だったけどクラスに入って来た桐谷さんに私と咲希は真っ先に問い詰められた。その場では何とか濁し、お昼休憩に屋上で事情説明をすることになった。

 

 正直お兄ちゃんの秘密を勝手にバラすのは気が引けるが、当の本人は当時まだ気絶中で目覚めておらず、セッちゃんに相談(あの後LI○E交換した。自身に通信機能がついていると説明された*1。改めてハイテクすぎる)したところ、説明は自分と介人(マスターの名前らしい)でやるから話していいとのことなので話すことにした。

 

 

一歌『お兄ちゃんは、魔法使いなんです…』

 

みのり『魔法使い~!?魔法って、本当にあったの!?』

 

雫『それじゃあ、この前のアレも…?』

 

志保『うん…。お兄さんが変身魔法で変身した姿…。で、魔法が解除されてあんなことに…』

 

遥『ま、魔法…!?そんな、非現実な…』

 

愛莉『でもあの光景は未だに脳裏にこびりついてるし…。否定しきれないわね…』

 

 

 お兄ちゃんが魔法使いだということをカミングアウトしたときは、みのりと雫先輩はすんなり受け入れてくれたけど、桐谷さんと桃井先輩は当然困惑していた。これが当然の反応なんだろうけどなぁ…。

 

 

咲希『あの!このことって、誰にも話してないですか?』

 

みのり『私は、お父さんとお母さんに話したよ。でも「疲れてる」とか「休みなさい」って言われた…』

 

遥『私はよく覚えてないって誤魔化したけど…』

 

愛莉『私も同じね…。言っても信じてくれないと思ったし』

 

雫『私の方は、寝込んでる間にしぃちゃんがお父さんとお母さんに説明してくれたわ。ありがとう。しぃちゃん』

 

志保『お姉ちゃんじゃ誤魔化しきれないでしょ…。本当に苦労したんだから。それで、誰にも言ってないよね、お姉ちゃん』

 

雫『えぇ。誰にも言っていないわ』

 

穂波『できれば、そのまま黙っていてくれると助かります…。花里さんも、御両親にはなんとか誤魔化していただけると…』

 

みのり『う、うん!分かった!』

 

 

 みのりの両親への説明はみのりがなんとかするとして、問題はみのりたちの方にある。それはお兄ちゃんが目覚めたあとのことである。

 

 

一歌『それでまず、結論から話すとお兄ちゃんは『記憶消去』の魔法が使えまして……』

 

みのり『記憶消去!?』

 

遥『そんな魔法もあるの!?』

 

穂波『それで、お兄さんは自分の秘密を知った人には容赦なく記憶消去を実行しようとするんです』

 

志保『私たちもされる寸前で、一歌がなんとか止めてくれて…。一歌の幼馴染と言うことで信用してくれて、記憶消去はやめてくれたんだけど…』

 

愛莉『じゃあなに!?私たちの記憶も消されるかもしれないってこと!?』

 

雫『そんな…!どうにかできないの?』

 

咲希『そうならないように説明はマスターとセッちゃんがしてくれるそうなんです。それにお兄さんは未だに気絶から目覚めていなくて…。どんぶらで預かってくれているらしいです』

 

 

 記憶消去の部分を説明したら当然驚かれたが、とりあえず今だけは安心してほしいという旨は伝えた。

 

 

一歌『それで本題なんですけど、そこら辺の詳しい説明のためにお兄ちゃんが目覚めた後に私たちと皆さんの予定が合う時に、【喫茶どんぶら】で集まりたいんですけど、いいですか?』

 

志保『みのりたちも、お兄さんの口から「記憶消去はしない」って聞いた方が安心できると思うし…』

 

みのり『わ、分かった!私は行くよ!』

 

雫『もちろん、私も行くわ』

 

遥『それじゃあ、私も…』

 

愛莉『私も、本人の口から聞かないと安心できないわ…』

 

 

―――と言う経緯でこの会談が組み込まれ、本日は喫茶どんぶらを貸し切って集まっている。正直言って前回の時点で貸し切りにしていて欲しかったがすでに起きた過去にどうこう言っても仕方がない。

 あれから一週間以上過ぎて、ようやくお兄ちゃんが目覚めた。このまま目覚めずまた異世界に逆戻りでもしてたらどうしようとも思ったが、杞憂だった。

 

 だが、肝心のお兄ちゃんが全然来なくて沈黙のみが訪れている。セッちゃんから聞いた話では既に目覚めており体の回復を待つだけとのことで、今日がその日らしいんだけど…。お兄ちゃんが来ることを、全員が今か今かと待って、緊張が走る。

 だけど、沈黙している理由はそれだけではない。

 

 

???「お待たせいたしました」

 

一歌「あ、ありがとうございます…」

 

???「こちら、お先にご注文のドリンクをお持ちしました」

 

みのり「はい…」

 

 

 私たちが先ほど注文したドリンクが運ばれてくる。ドリンク自体は普通のジュースや飲み物でなんの問題もない。だが、問題はそれを運んできた人……人?にある。

 その人はよく分からないコスプレをした人で、紫でサングラスのような赤い眼をした【ルパンレンジャー】の人たちと似たものを感じるし、ご丁寧にエプロンを掛けている。

 

 この人は【ドンムラサメ*2】と言うらしい。言いずらいからムラサメさんって呼ぶことにした。

 

 

???→ドンムラサメ「それでは、お料理の方はもうしばらくお待ちください」

 

マザー*3『よくできましたね。ムラサメ』

 

ドンムラサメ「ありがとうございます。マザー」

 

 

 と、突如独り言をつぶやいてそのままキッチンの奥へと消えていった。

 ルパンレンジャーのみなさんと言い、ムラサメさんと言い、この店の店員は変な人しかいないのだろうか。ムラサメさん、独り言多い※し派手な日本刀*4みたいなの背負っているし。

 

※マザーの声はムラサメにしか聞こえません。

 

 

セッちゃん「チューン!!」

 

全員「「「「「「「「わっ(きゃぁ)!!」」」」」」」」

 

 

 すると突然、あのお座敷のところからセッちゃんが飛び出してきて全員で驚いてしまった。

 

 

セッちゃん「みんなー!お待たせチュンー!」

 

咲希「セッちゃん!」

 

セッちゃん「陽介が、完全復活チューン!!ライト!!セットアップ!!」

 

 

 お兄ちゃんが完全復活したという知らせを聞いた瞬間、畳が消えて地下室に繋がりっぱなしのお座敷にスポットライトが当てられる。

 ―――上を見て、確かにスポットライトがあるけど…。さっき見たとき、あんなのなかったよね…?

 

 だけど、すぐに意識を地下室の方に戻す。あそこから、お兄ちゃんが出てくるのかな…。あの地下室、セッちゃんが入ることが前提に設計されてるのか梯子も何もなく深い地下が続いているだけで、地上からじゃ中がどうなっているのか全然見えないのが欠点だ。

 そんな場所から出てくるとなると、風魔法で空を飛んでくるんじゃ―――、

 

 

兄「ふ~すっきr――」

 

 

【普通にふすまから出てくるお兄さんの光景】

 

 

レオニ「「「「そっちから!?」」」」

 

 

兄「―――えっ、ああぁああー!」

 

 

【地下室に落ちるお兄さんの光景】

 

 

セッちゃん「陽介ェー!!」

 

モモジャン「「「「陽介さ(く)ーん!?」」」」

 

 

 お兄ちゃんが普通にふすまの奥から出てきたら地下室に落ちた!!

 すぐに駆け寄ろうとする私たちだったが――、

 

 

兄「あっぶな!!え、なんで畳ないの!?」

 

 

 お兄ちゃんが風魔法で空を飛んで地下室から出てきた。そのまま私たちとみのりたちの間のところで着地すると、周りをキョロキョロと見てセッちゃんに視線を固定していた。

 

 

兄「ちょっとセッちゃん!なんで畳空いてるんだよ。危うく落ちるところだったじゃないか」

 

一歌「落ちるところっていうか完全に落ちてたよね?」

 

セッちゃん「なんでって、陽介はさっきまで地下室にいたはずチュン!なんでそっちから出てくるチュン!?」

 

兄「あぁ…。ちょっとトイレ行きたくなってな…。セッちゃん充電中だったし、急に俺がいなくなったら驚くだろうなと思ったから、“幻影”置いてきたんだった…」

 

セッちゃん「幻影…。それであの陽介、全然喋らなかったのかチュン…」

 

 

 どうやらこの事故、とんでもないすれ違いが原因だった。

 私たちが呆れていると――、

 

 

みのり「すごーい!!遥ちゃん!今の見た!?空を飛んでたよ!」

 

遥「本当に、魔法なんだ…!」

 

雫「すごいわ~。魔法を本当に見られるなんて~」

 

愛莉「ほとんど信じてはいたけど、改めて見ると信じざる負えないわね…」

 

兄「あっ…どうも初めまして。【星乃陽介】です」

 

 

 お兄ちゃんがみのりたちに気付くと、綺麗なお辞儀をした。よかった、開幕記憶消去に走らなくて。お兄ちゃんはお父さんとお母さんにも記憶消去を即断即決するからすごく不安だったけど、杞憂だった。

 

 

愛莉「あ、ご丁寧にどうも…。私の名前は【桃井愛莉】です。MOREMOREJUMPって言うアイドルのメンバーをしています」

 

遥「私は【桐谷遥】。よろしくお願いします」

 

みのり「あっ!私の名前は【花里みのり】です!よろしくお願いします!」

 

雫「【日野森雫】です。よろしくお願いします」

 

兄「桃井さん、桐谷さん、花里さんに日野森さんですね。よろしくお願いいたします」

 

 

 自己紹介が終わった後、私は即座にお兄ちゃんに詰め寄った。

 

 

一歌「お兄ちゃん、マスターさんとセッちゃんから説明はされてるっては聞いてはいるけど…みのりたちの記憶、消さないよね!?」

 

兄「あぁ、消さないぞ?」

 

咲希「よかったー!」

 

穂波「よかったですね!みなさん!」

 

志保「ふぅ……これでようやく一安心――」

 

兄「俺が気絶して一週間以上経ってるだろ?そんなに前の記憶消しちゃったら人格に影響でるし、消さないよ」

 

全員「「「「「「「「―――――」」」」」」」」

 

 

 なんで、お兄ちゃんはこう余計なことを言うのかな…!?

 

 

みのり「えっ、人格に影響…?」

 

兄「うん。古い記憶を消すと整合性が取れなくなってそうなってしまうんだ。だから、人の記憶を消すにしても古い記憶は消さないよう心掛けてる。まぁ――」

 

 

 お兄ちゃんは右手を胸の部分まで掲げて――

 

 

兄「こういう場合人格変化リスク覚悟で強行する必要があったけど…精霊もマスターもあなたたちのこと“いい人”だって言ってるし、する必要がなくて本当によかったです」

 

モモジャン((((やっぱりこの人怖い…!))))

 

一歌「すみませんすみません!!うちの兄が本当にすみません!!」

 

 

 みのりたちにこれでもかと言うくらいに頭を下げて謝る。これ、マスターさんとセッちゃんがお兄ちゃんのこと説得してなかったらみのりたちが確実に記憶消去されていたと思うと、本当に危なかったと実感する。

 あと精霊さんもみのりたちのこと庇ってくれてありがとうございます。

 

 そんな私を横にお兄ちゃんは私たちが座っているテーブル席の奥に座ると、みんなも座るように促す。いろいろ戸惑いながらも座った。

 

 

兄「それで、マスターとセッちゃんから話を聞いたんだけど、皆さん倒れたんですって?大丈夫でしたか?最近暑くなってきたから、熱中症とかには気を付けないと…」

 

みのり「え、あ、はい…」

 

遥「体調の方は、特に問題はないです…」

 

愛莉(いや、みんなが倒れたの陽介さんのせいなんだけど…この人わざと言ってるの?それとも本気で…?)

 

雫「ご心配してくれて、ありがとうございます…。陽介くんの方は、大丈夫なの?」

 

兄「俺の方も問題ないです。変身魔法の影響も時間経って回復しましたし」

 

一歌「……ところでさ、結局あの雇用契約書の内容。なんだったの?一体、なにが書かれてたの?」

 

 

 みのりたちが倒れる原因となったのはお兄ちゃんの変身魔法が解除される瞬間を目撃したから。で、その変身魔法が解除される原因となったのは雇用契約書の内容。変身魔法が解除されるほどのことが書かれていたはずだけど、一体なにが書かれてたんだろうと、今までずっと気になっていた。

 

 

兄「ソレに関しては規約云々で全て言うことはできないんだが…そうだな。仕事内容自体は食材の調達とか護衛とかなんだけど、俺が驚いた理由は“移動手段”だなあの船に足を踏み入れた時、俺は“俺ここで死んでもいい”って思ったさ。でもあの船を俺なんかの死体で穢す訳にはいかないから、心臓を止めないようにするのに必死だった」

 

穂波「思想が過激すぎませんか?」

 

セッちゃん「元々、介人が陽介に変身した状態で来るように言っていたのは、こうなる事態を避けるためだったチュン。素の陽介にアレを見せたら最低でも気絶、最悪の場合心臓停止で死亡が想定されていたチュン」

 

咲希「内容見ただけで!?」

 

セッちゃん「でも、変身対象に精神支配されかけていたあの状態でも、陽介の精神は介人の想定以上に揺さぶられて、変身魔法が解除されてしまったチュン…」

 

 

 セッちゃんの説明に誰もが口を噤んだ。まさかマスターにそんな意図があったなんて…。でも、そのせいでみのりたちに魔法のことバレちゃってるんだよな…。

 

 

遥「ていうか、陽介さんの今の話だとその“移動手段”にすでに行ってきたような言い方でしたけど…」

 

兄「あぁ、行ってきたよ」

 

一歌「いつのまに!?」

 

兄「目覚めてすぐ、車椅子に乗せられてマスターとセッちゃんに連れられたんだ。あれはもう、人生最高の瞬間だったよ…」

 

志保「目覚めてすぐって…急ぎすぎじゃないですか?」

 

セッちゃん「陽介が目覚めてすぐは、変身魔法の影響が少し残ってた状態だったチュン。だから、その合間に見せる必要があったチュン。でもあの後船内紹介する度に死んでその度に心肺蘇生して正直案内どころじゃなかったチュン」

 

雫「それってお体とかに悪いんじゃ…?」

 

兄「聖域に足を踏み入れることができたんだ。それが死因だとしても悔いはない」

 

一歌「それほんとやめてね?」

 

 

 死因が“船に足を踏み入れて喜びすぎてショック死”なんて末代までの恥過ぎるから。

 

 

咲希「お兄さんがそこまで言うって、どんな場所なんですか…!?」

 

穂波「お兄さんのことですから、やっぱりカー○ィ関連…。もしかして任○堂本社…?」

 

志保「いや任○堂はゲーム会社だし…。食材調達なんて食品会社のすることでしょ。それに護衛の仕事って…関連性がないでしょ…」

 

 

 お兄ちゃんの執着具合から考えてカー○ィ以外のことしか考えられないが、関係性が見つからず困惑するしかない。

 そんなとき、横からセッちゃんの声は響いた。

 

 

セッちゃん「みんな!そろそろこの会談の本題に入るチュン!」

 

みのり「本題?」

 

一歌「今日はお兄ちゃんの事情説明のために集まったけど…他になにかあるの?」

 

兄「ほら、エクスバハマルでは魔法は一般的じゃないだろ?でも俺が魔法を使えるのには理由があって、その理由が16歳の時に判明したってのは話しただろ?それを今説明しようと思ってだな」

 

穂波「え、確かに気にはなってましたけど…」

 

志保「それ今する必要あります…?」

 

セッちゃん「陽介のことを話すのなら、陽介が魔法を使えるようになった理由は知っておくべきチュン」

 

遥「まぁ、理にはかなってるのかな…?」

 

セッちゃん「ちなみにオイラは一度見せてもらったから口出しはしないチュン。その間、オイラは秘密基地で仕事をしてるチュン」

 

 

 そう言うとセッちゃんが空を飛んで、そのまま空いたままのお座敷の地下へと消えていって、再び畳が押し上がって平常状態に戻った。

 

 

愛莉「セッちゃんも仕事してるのね…」

 

雫「一体、どんなお仕事してるのかしら…?」

 

兄「食材とかの仕入れ発注だって言ってたよ」

 

志保「それセッちゃんの管轄なんだ…」

 

 

 普通そういうのって店長がやるものじゃないのかな…?あ、でも私のバイト先で発注作業してるの店長じゃないし、別におかしくはないか…。

 

 

兄「それじゃあ行くぞ。記憶再生イキュラス・エルラン

 

みのり「うわぁ!なにか出てきた!」

 

遥「これが一歌たちの話に出てきてた、『記憶再生』の魔法…?」

 

雫「すごいわ~!こんなこともできるなんて…」

 

愛莉「本当になんでもありなのね…」

 

 

 お兄ちゃんが記憶再生の魔法を使ってみのりたちが驚くという一連のパターンが終わったのを確認すると、私たちの視線は記憶映像に釘付けになる。魔法がない世界で魔法が使える理由、一体、どんな―――、

 

 

 

 

農業主『糞オークが!!うちの大事な牛を食うつもりだな!』

 

 

 

 

【縛られて頭から血を流してるお兄さんの映像】

 

 

 

モモジャン「「「「―――え??」」」」

 

一歌「違うってお兄ちゃん!別件別件!!」

 

兄「あれおかしいな…。こっちか」

 

 

 お兄ちゃんがスクロールバーを操作すると、別の映像に切り替わる。

 

 

 

村長『教義に反する邪悪なオークを「善化」せよ!!』

 

村人『『『『『「善化」せよ!!!』』』』』

 

 

 

【邪教徒たちに吊るされているお兄さんの映像】

 

 

 

 

一歌「これは「水の湧き出る壺」の時だよ!!」

 

兄「えーこれ?」

 

 

 

【木に吊るされてるお兄さんの映像】

 

 

一歌「違…」

 

兄「こっちか?」

 

 

【縛られて逆さ吊りにされてるお兄さんの映像】

 

 

一歌「ちょ」

 

兄「これだったような…?」

 

 

【首から下が埋められているお兄さんの映像】

 

 

 

一歌「お兄ちゃん狩られすぎでしょ!!」

 

 

 いくらなんでも酷すぎるって!なんで!?

 しかも埋められてるお兄ちゃん鼻チョウチンなんか出して寝てるし!普通に起きて!?

 

 

兄「俺、一回寝ると朝まで起きないからな…。寝込み襲われると吊るされ放題なんだ…」

 

志保「よく生きて帰ってこれましたね…」

 

兄「うん。獲物が無防備すぎると折角だから手の込んだ処刑をしたくなるという人間心理が功を奏したな。『魅せるプレイ』ってやつだな」

 

穂波「そんな人間心理聞いたことないですよ…」

 

愛莉「……話には聞いてたけど、本当に壮絶ね…」

 

 

 みのりたちには、お兄ちゃんが美男美女だらけの異世界で“オークの亜種”として狩られる日々を過ごしていたというのは伝えていたけど、実際に見るのは初めてだからショックが大きすぎて固まってる…。

 

 

兄「あ、これだこれだ。ようやく見つけた…」

 

咲希「――――えっ、なにこれ…」

 

兄「俺が認識してる記憶ならすぐに表示されるはずなんだけどなぁ…。やっぱり古い記憶だとリサーチが必要なのかな…?」

 

 

 ふと、咲希の呟きが聞こえて、私たち全員が映像に視線を向けると、そこにはモザイクがはられているが、白骨標本のような――いや、これ多分、本物の骨だ。あまりの気持ち悪さに顔を引き攣らせていると、その骨がやがて肉をつけて、皮膚がはられて服が着られて――

 

 

一歌「あっ!!これ12歳のお兄ちゃんだ!」

 

兄「そうなんだよ。この映像、最初見たときはかなりショッキングでな。ヴィヴィたちも、一歌たちみたいに顔を引き攣らせてた」

 

一歌「――?」

 

 

 ――なんか今、とても大事な部分を聞き逃した気がするが、どんどん話が進むためスルーする。

 

 

雫「一から体が作られるなんて…異世界って不思議がいっぱいなのね…」

 

遥「確かに…。摩訶不思議なことも“異世界だから”で片づけられちゃうね…」

 

 

兄「――おっ」

 

 

 映像がさらに進むと、起き上がったお兄ちゃんは当たりを見渡していた。

 

 

兄(12歳)『あれ、ここどこ…。暗い…前が良く見えない』

 

兄「映像だと明るいけど、これ記憶の精霊が明るさ調整してくれててさ。実際の明るさは、これくらいかな」

 

 

 お兄ちゃんが画面をタップすると右上に出てきた歯車マーク(設定)をタップして“明るさ調整”の画面で“オート”と“デフォルト”の二択が出てきて“デフォルト”をタップすると物凄く薄暗くなってほとんど何も見えなくなった。

 本当になんでもありだな…精霊さん…

 

 

志保「暗ッ!」

 

兄「ほんと何も見えなかったから心細くてさ。とりあえず明るさ戻すね。で、怖くなって父さんたちのこと呼んだけど、当然応答があるわけもなく、手探りで周りを確認して、持ってたバック見つけたからそれをしょって、とりあえず壁伝いでゆっくり進んで――」

 

 

兄(12歳)『あれ、あっちに灯りが!人がいるのかな?おーい!』

 

ゴブリンs『グギャ?』

 

兄(12歳)『ヒッ!!化け物だぁ!!』

 

ゴブリンs『グギャァ!!グギャギャギャ!!』

 

兄(12歳)『痛い!痛い!やめて!!』

 

 

 

兄「目覚めた場所はゴブリンの巣穴だったみたいで、見つかって集団リンチにあった」

 

 

 

一歌・咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫

「「「「「「「「――――――」」」」」」」」

 

 

兄「それで少ししたら傭兵の男たちがやってきて―――」

 

 

傭兵1『ゴブリンだ!てめぇらやっちまえッ!!』(エクスハバマル語) 

 

傭兵2『子オークもいるぞ!』(エクスハバマル語)

 

傭兵3『ゴブリンを優先しろ!瀕死のオークなんぞいつでも殺れる!』(エクスハバマル語)

 

傭兵4『殺せ殺せ!!』(エクスハバマル語)

 

兄(12歳)『やめて!やめて!やめゲヘッ!!』(日本語)

 

 

兄「ゴブリンのこと倒して、助けてくれたと思ったら今度は“子オークの亜種”と誤認されてさらにボコられた」

 

 

一歌・咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫

「「「「「「――――――」」」」」」

 

 

兄「言葉通じないし、カツアゲかなと思ってバックから財布取り出そうとしても、そんな暇与えてくれなくて…」

 

 

ヒイイイィイイ…ドカッ ドキッガンボコッ ボゴッにゃめ、お、お金なら…ボコッボゴッ ドカッ ゴッがっ!?たずげ――

 

 

 全体に強めのモザイクがかかってるけど、映像のお兄ちゃんがとてつもなくボコられてる。

 

 

兄「2016年1月……『お年玉でゲーム買いに行くぞー』って最高にハッピーな行きがけで事故ってこのザマだよ…。何買いに行ったんだっけ?ハハハ…4年も経つと、もう思い出せねぇ…」

 

 

みのり・遥・愛莉・雫

((((重い…!!))))

 

一歌・咲希・穂波・志保雫

((((改めて重い…!!))))

 

 

 改めて観ると12歳で経験していいような出来事じゃないよコレ…

 

 

志保「これどう見てもバットエンドルートにしか見えないんですけど…。どうやって挽回するんですか?」

 

兄「あ~それはだな。この時に、神の声らしきものが聞こえてきてな…」

 

雫「神様の声?」

 

遥「―――――あっ。確かに、なにか聞こえる…」

 

咲希「本当だ!なにか聞こえる!声が小さすぎて分かりずらいけど…」

 

一歌「ッ!お兄ちゃん、音量上げてみて!」

 

 

 遥が「なにかが聞こえる」と言った時点で、私はお兄ちゃんに指示を出した。お兄ちゃんが音量設定を上げると、聞こえてきたのは――、

 

 

 

親愛的顧客朋友 你們好

衷心歡迎您光臨

艾克斯エクス巴哈馬繭バハマル

我是一個不同世界的上帝

你是轉移的人

在這個苛刻的世界裡

我會給你一種生存的力量

 

 

一歌(えっ!?わっかんない…!!!)

 

みのり(なに語ォ!?)

 

志保(神様他国よその国と言語設定リージョンコード間違えてるでしょ…!?)

 

雫(何言ってるのか全然分からないわ…!?)

 

 

 声小さいのにプラスして中国語って―――!!

 

 

兄「酷いだろ?こんなん殴られてるときに囁かれてもなぁ…」

 

咲希「そうですね…」

 

穂波「これは本当に酷い…」

 

一歌「お兄ちゃん!翻訳するから30秒戻しお願い!!」

 

兄「任せろ」

 

 

神様の声?『チン アイダグゥ カァポン ヨウ ニィメンハオ』

 

 

一歌「これ……録音?」

 

咲希「店内放送…」

 

志保「録音感すごい…」

 

穂波「ヨド○シかな…?」

 

遥「国籍も間違えてるし、適当すぎる…。」

 

愛莉「やる気ないでしょ、異世界の神様…」

 

みのり「酷すぎる…」

 

雫「陽介くん…」

 

 

 翻訳が終わると、その翻訳内容を読み上げていく。

 

 

 

我是一個不同世界的上帝=私は異世界の神です。

 

我會給你一種生存的力量=この深刻な世界で生き残るための力を与えます。

 

 

一歌「『力を与える』…」

 

咲希「言ってるね…」

 

穂波「『我會給われかいきゅー』で『与える』かな?」

 

みのり「じゃあ、この時に陽介さんは力を願って魔法の力を得たんですか!?」

 

兄「いや、俺がこの時願ったのが…――」

 

 

 

兄(12歳)『言葉さえ通じればわかり合えるのに…』

 

 

 

兄「これ」

 

 

 

我批准了

我實現了你的願望

如果你去多爾多山頂部

您可以在知識聖地

獲得最低限度的知識

 

 

一歌「――承認しました。私はあなたの願いを叶えました。なおドルド山の頂上に行けばあなたは知識の聖地で最低限の知識を得ることができます。だって」

 

咲希「じゃあお兄さんの能力って…」

 

穂波「『翻訳』…?」

 

志保(しょっぱいな…)

 

兄「うん。急に異世界人の話してることが分かるようになったんだけど、これが転移ボーナスだったんだよ。いやーシエラに言われるまで、全然気づかなかったよ…」

 

愛莉「シエラって誰ですか?」

 

 

 知らない人の名前急に出さないでほしい。普通に困るから。

 

 

一歌「本当はこの『ドルド山』ってところで異世界後も習得できたのかな…?(ドルド……なんか、最近聞いたことあるような…。なんだったっけ…?)」

 

みのり「そう思うと、なんか勿体なかったね…」

 

遥「そもそも神様がちゃんと日本語で対応してくれればよかった話なんだけどね」

 

咲希「でも、『翻訳』の能力と魔法の力って、全然関係ないじゃ――」

 

 

 

兄(12歳)『ア、ア、アア…ッザットイルグ!!』

 

兄(12歳)『ミルドジャイネ ザットイルグ(俺はオークじゃありません)!!』

 

傭兵s『『『『―――ッ!?』』』』

 

 

 お兄ちゃんが異世界の言葉を…!

 ていうか今回吹替じゃなくて字幕なんだ…。

 

 

雫「こうやって誤解が解けて分かり合えたのね…!」

 

志保「まぁ、お兄さんらしいというかなんというか…」

 

 

 

 

兄「いや―――」

 

 

 

 

【縛られて連れ去られるお兄さんの映像】

 

 

 

 

 

兄「人語を解する希少オークとして奴隷販売を生業としている犯罪組織に売られた」

 

 

 

 

一歌・咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫

「「「「「「「「――――――」」」」」」」」

 

 

 

 

兄「銅貨3枚だったよ」

 

 

 

 

一歌・咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫

「「「「「「「「――――――」」」」」」」」

 

 

 

 

ムラサメ「お待たせしました。ご注文の品です」

 

一歌「あ、それこっちにお願いします」

 

ムラサメ「《料理配膳中》……ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」

 

みのり「はい…」

 

ムラサメ「それでは失礼します。ごゆっくりどうぞ」

 

志保「……それじゃあ、冷めないうちに食べよっか」

 

遥「そうだね…」

 

 

 

―――一旦、ランチタイム、入ります。

 

 

 

 

 

 

*1
原典のセッちゃんにはそんな機能ない。普段は地下の秘密基地で通信できるから

*2
【暴太郎戦隊ドンブラザーズ】の登場人物。CVは【村瀬歩】さんだぞ!最終回後は【喫茶どんぶら】で店員として働いている

*3
ムラサメに指示を出す謎の存在。その正体はムラサメに組み込まれていた育成プログラムである。

*4
ニンジャークソード




 評価:感想お願いします。

 結局、お兄さんが配属されるという場所はどこなんでしょうかね?一体、移動手段の船は一体、■■ロアのロ○アなんだろう…?

 ちなみに読者の皆さんは異世界でお兄さんがこの記憶を見たときに「異世界じゃ中国語翻訳できねぇだろ!」と思うでしょうが、ちゃんと理由もあるのでそれが明かされるまで気長にお待ちください。
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