席順や位置関係
となってます。
記憶映像の視聴を再開し、12歳のお兄ちゃんは山の山頂に連れてこられると、そこには光り輝く一つの建物があった。
一歌「……犯罪組織にしては、目立つ場所にあるんだね」
兄「ここは組織の支部の一つに過ぎない。この場所の表向きの顔は、珍しいモンスターなんかを売りにしている見世物小屋だからな。で、裏では攫った人間を別大陸に売ったりする犯罪組織ってわけだ」
みのり「異世界怖すぎるよ…」
穂波「地球じゃ絶対にありえないことだもんね…」
映像が続くと、受付にいる店主らしき人とお兄ちゃんを連れ去った傭兵たちが言い争いをしていた。
――お兄ちゃんがボロ雑巾のように捨てられているところも含めて、みのりたちもすっごい顔を青ざめている。
傭兵1『銅貨3枚って…!』
傭兵2『ここまで運んだのにそれは安すぎだろう!』
傭兵3『肩いてぇ…』
店主『こんな瀕死の生子オーク、使い道がなさすぎる』
傭兵4『いや喋ったらすげぇんだって!』
傭兵の人たちが抗議しても、店主さんはお兄ちゃんの値段をこれ以上上げようとはしなかった。
傭兵4『くそ…!……あ、さっき拾ったたわしなんだけど、これ値段つくか?』
店主『チッ…汚ねぇなぁ…。………銅貨120枚だな』
一歌(桁…!!)
咲希(え、お兄さんたわしより…!?)
みのり(陽介さん安すぎる…!?)
遥(銅貨一枚10円くらいだと思ってのに…もしかして3円!?)
銅貨3枚は安いと思ってたけど、そこら辺で拾ったたわしが120枚って…!お兄ちゃん安すぎるでしょ!?
………あれ、これ、なんか、みた、こと、あ―――
兄「……え、俺、たわしより安く…?」
咲希「えっ、なんで当事者のお兄さんが驚いて……って、え!?」
穂波「お兄さん!?それに一歌ちゃんも!!鼻血!鼻血が出てるよ!!」
雫「大変!えっと、ティッシュ、ティッシュは…」
その時、私とお兄ちゃんから鼻血が出てくる。近くにいた咲希と桐谷さんからティッシュを受け取って鼻血を抑える。
そうだ、思い出した…!あの病室で、私は―――!!
兄「アレだ…。忘却魔法だ。“思い出した”」
一歌「私も…そのページ読んだ記憶を“思い出した”」
咲希「どういうこと…?」
兄「えっと…花里さん。この手帳の一番最初を読んでみてくれ」
みのり「え、はい…」
収納魔法から手帳を取り出してみのりに渡すと、みのりはページをペラペラとめくり始める。それを見て、私とお兄ちゃんは一斉に声を上げた。
兄・一歌「「最初だけだぞ(よ)!?」」
みのり「ひゃ、ひゃい!!えっと……「たわしより安い値段で売られる」……」
兄・一歌「「あ~~~~~!!」」
それを聞いた瞬間、お兄ちゃんと同時に頭を抱えた。
兄「忘却魔法覚えてから一番最初に消したつらい記憶だな…」
志保「お兄さんでもたわしより安いのはショックだったんですね…」
遥「いや、これは普通にショックだよ…」
一歌「消した記憶も、こうやって再認識すると戻っちゃうんだね…」
兄「あぁ…。まず鼻血が出てこれ以上思考を進めるのはヤバいと記憶の精霊が警告してくれるんだが、今回みたいにダイレクトに記憶を見てしまうとどうしようもないな…」
愛莉(もう少しマトモな警告のしかたないのかしら…?)
雫(記憶の精霊…。精霊さんが近くにいるのかしら?)
穂波「ていうかお兄さん、異世界でもこの記憶見たんですよね…?なんでまた鼻血を…?」
兄「観終わった後にまた消したんだよ…。辛い異世界じゃこういう心労の原因に成り得る記憶は消しといたほうがいいからな…」
咲希「思い出したあとにまた消すって…それこそ人格に影響でないですか?」
兄「だいじょぶっしょ。特に変化が起きた感じはしなかったし」
みのり「本当に大丈夫なんですか…?」
志保(お兄さんが認識してないだけで絶対影響でてるでしょソレ…)
お兄ちゃんの人格の影響を気にしながらも鼻血を拭いてゴミ箱に捨てて記憶映像に視線を戻すと、傭兵の男たちが帰っていく様子が映し出されていた。
傭兵1『肩いてぇよ…』
傭兵2『大丈夫か?』
傭兵3『もう嫌だ…』
傭兵4『今日はもう寝ようぜ…』
兄「……で」
すると今度は縄に繋がれたお兄ちゃんが地下に連れていかれて、その合間に様々なモンスターたちが檻に閉じ込められているのが確認できた。
志保「こうしてみると、いろんなモンスターがいるんだね」
穂波「私たちが知ってるモンスターなんて、3種類しかないからね…」
咲希「可愛いモンスターもいっぱいいる、けど…」
1つは海沿いの村外れの姉弟たちを襲ってたモンスター、もう一つはゴブリン、最後はワイバーン。今まで見てきたモンスターが少なすぎるから、一種の新鮮さを感じる。
でも、血だらけのお兄ちゃんが拙い足で檻に入れられる光景を見てその言葉は止まる。
兄「こうして俺は地下にある檻にぶち込まれたんだが…」
雫「酷いわ…」
遥「……ていうか、ここって犯罪組織で人身売買してるんですよね?お兄さんが入れられた場所って地下の最奥っぽいですけど、今までいたのはモンスターだけで人はいなかったですよね?」
志保「そうだった。もしかして他にもまだ地下があったり…?」
兄「あぁ、それはだな、まぁ続き見て貰えば分かる。じゃあ、1週間飛ばすぞ?」
一歌「えっ、なんで?」
イチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィイチカカー○ィ イ チ カ
カ
エ
ル
兄「店主に完全に忘れ去られた」
一歌「ヒッ」
咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫
「「「「「「「―――――」」」」」」」
そこには言語化できない――いやしたくない光景が映っていた。
壁には七つの線(一つの線で一日経過を表しているのだろう)と、無数に刻まれた私の名前とカー○ィ、そして“カエル”の文字。12歳のお兄ちゃんは壁に背中を預けて全然動かず光源は天井の隙間から漏れる一筋の光だけ。
一言で言ってホラーだった。無意識で声が漏れ出た。
兄「2日目で暇になったから、一番最初に思い浮かんだ言葉から“しりとり”を始めようとして、気付いたら同じ言葉を連続で書き続けてな…。渾身の一言を書いて終わった。それと3日目の雨で雨漏りの水飲めなかったら普通に死んでたな。まぁたわし以下だからな…俺…。こんなもんだよ…。…アレ、一歌とカー○ィ……どっちの言葉が先に思い浮かんだんだっけ…。もう思い出せねぇわ…」
しみじみと語らないでほしい。私とカー○ィの名前、どっちが先に思い浮かんだとかどうでもいいくらいに酷いからこれ…。
兄(12歳)『オ……。一条の光…。コ○ー能力の“レーザー”を思い出すな。レーザーって知ってる?すっげぇ光線のことなんだけどさ星のカー○ィのコ○ー能力の一つでもあって初登場の【夢の泉の物語】では手からビームを出すだけのシンプルなものなんだけど【参上!ドロ○チェ団】ではすっげぇかっけぇメガネから発射するんだぜでも【トリプルデラ○クス】までしか知らないけど再登場が全然なくてさー知ってる?“レーザー”の光線って坂道に発射すると反射するんだぜ?それを使って遠くの敵とか絶対に届かない場所にあるギミックを解除したりしてすげぇんだ。あんなにかっけぇコ○ー能力なのにさ、技が“レーザー”と“貫通レーザー”しかないのがもったいないと思っててさ、それで俺が考えたカッコいい技を聞いてくれよ“回転レーザー”って言って空中で回転しながらレーザーを発射する技で左右の敵にも当てられるっていうかっけぇ技今は俺の妄想でしかないけどいつか絶対出てくるよ“レーザー”の新しい技。だってあんなにかっけぇ見た目もしてる技も持ってるだぜ?でも別に“レーザー”のことが悪いとか決してそんなことはないんだ。ステージギミックの一つにこんな感じの真っ暗な部屋にろうそくがあるんだけどなんとレーザー光線でろうそくに火をつけることができるんだ普通なら“ファイア”とか使うのが自然だけど敢えてレーザーで火をつけるってカッコイイだろすげぇよなぁ』
みのり「ヒィ…!」
咲希「あ、お兄さんが…壊れた…」
愛莉「ついに……」
穂波「“レーザー”について永遠と語ってるのが…」
兄「いや違う違う!その日は天井の隙間から漏れる月の光がとても綺麗でな…。正気を保つためにその月明かりに話しかけてたんだ」
いや、目が異様なくらいに輝いてるけど?正常の人が出せない表情してるけど?
兄(12歳)『“レーザー”って知ってるか?“レーザー”ってすっげぇ光線のことなんだけどさ――』
志保(眼も完全にイってるし…また同じこと繰り返し言ってる…)
遥(12歳の男の子が経験していいことじゃないよコレ…)
兄「顔みりゃわかるだろ?まだまだ全然正気だよ!」
一歌「うん…うん…そうだね…」
雫「はい…」
兄(12歳)『“レーザー”…そう、ちょうどこんな感じのまっすぐで力強くて綺麗な光…。ん、「ありがとう」って…いやお礼を言うのはこっちの方さ。コ○ー能力“ライト”ってあるんだけどさ、部屋を明るくする能力なんだけどそれしか使い道がなくてな、不遇とか散々呼ばれていたが、光って言うのは心をも照らしてくれるいわば親友なんだ。それに気づけたよ、ありがとう…。むしろお礼を言うのは俺の方なんだ。え、「でも褒めてくれたからお礼は言いたい?」いやお礼を言われるほどのことはしていない、思ったことを口にしただけだ。この世界にきて一番美しい――』
そこで、おかしかったお兄ちゃんの瞳に、生気が宿った。
兄(12歳)『え!?だ、誰!?誰だー!?』
一歌(誰かと、喋ってた…?)
愛莉(檻の中には陽介さん以外誰もいないのに…)
お兄ちゃんの目線―――月明かりに、一歩ずつ近づいていく。
兄(12歳)『ハァ、ハァ、ハァ…。光そのものに、意思…?光の精霊…?唱える?古言語?』
お兄ちゃんが、月明かりに手を伸ばして――掴んだ。
兄(12歳)『光剣顕現』
――掴んで、取った。取った際の一振りでエサ入れが真っ二つになった。
穂波「これって…」
兄「光の剣…。一歌と父さん、母さんには実物を見せたことがあるが覚えてるか?俺が一番最初に使った魔法で、コレのおかげで脱出できたんだ」
一歌「お兄ちゃん…・今、ブツブツ話してた相手って、もしかして…」
兄「あぁ、【光の精霊】だな。他にも風とか火とかいっぱいいるんだ」
雫「なんで急に精霊さんと話せるようになったのかしら…?」
志保「これ、『翻訳』だ!!」
遥「そっか、そういうことか…!」
志保の叫びで、桐谷さんが気づいて、私もお兄ちゃんだけが魔法が使えるようになった理由に気が付いた。
一歌「神様からもらった『翻訳』能力で精霊と話してたってこと…!?」
志保「だから精霊さんから力を借りることができたんだ…」
兄「そうみたいなんだよなぁ…。俺が精霊と話せて、尚且つ魔法を使えるのは神からもらった『翻訳』の能力のおかげらしい」
愛莉「らしいって……。陽介さん、急に異世界の人の言葉分かるようになったり魔法が使えるようになったのに、16歳のときにシエラって人に言われるまで気づかなかったんですか?」
兄「いやぁ、一歌たちには話したけど、日々オークの亜種として狩られかけてたからそんなこと気にする余裕なかったんですよ」
愛莉「……すみません」
兄「え、謝る必要ないですけど…?」
桃井先輩は普通に気になって質問したんだろうけど、前回私が質問したときと同じ返答をして微妙な空気が漂う。さっきの狩られ過ぎな映像、12~13歳の時点でのお兄ちゃんだったし、アレは全体のごく一部に過ぎないのだろう。それを考えると、日々を生き抜くために気にしている余裕は本当になかったはず。
一歌「で、このあとどうなったの?」
兄「あ、うん…。普通に光の剣を使って地下から脱出して…ついでに囚われていた小型モンスターも逃がしたんだけど……」
お兄ちゃんが檻を斬っていき、モンスターたちが地上に逃げていくと、突然男の人の声が響く。
男1『おい!モンスターどもが逃げてるぞ!!』
男2『見張りはなにやってんだ!?』
兄(12歳)『外に人がいたのか…!』
兄「当時の俺は、この小屋にいた人間を店主しか知らなかったし、あんまり頭が回らなかったから、他の人間がいることに気付けなかったんだ」
雫「このままじゃ、せっかく逃がした子たちが危ないわ!」
兄「俺もそう思って、すぐに地上に上がろうとしたんだけど…」
お兄ちゃんが地上の方に駆けて行こうとしたとき――なぜか、お兄ちゃんの
男3『さっさとしろ!モンスターに逃げられるぞ!最悪殺しちまって構わねぇ!』
男4『くそがッッ!せっかく楽しんでたってのに!ほとんどが出払ってるって時に最悪だ!』
男5『あ、なんでこんなところにオークが…しかも子供じゃねぇか』
お兄ちゃんの後ろの方は最奥で行き止まりのはずなのに…。だけど、その答えはすぐに分かった。
遥「隠し扉…!?」
志保「あの壁、奥に続いてたんだ…道理で…」
行き止まりになっていたはずの壁は開いていて、その奥には空間が続いていて、複数の檻が確認できた。あの檻に捉えられているのは、もしかして…
兄「あの壁の奥に、この犯罪組織の収入源だった攫われた人々が収容されていたんだ。まさか隠し扉があるなんて思いもしなかった」
男4『なんだあの子オーク…手に剣みてぇなもん持ってやがる。それに……檻が綺麗に斬れてやがる…。あのオークがやったのか…?』
男5『バカか。オークにそんな力あるわけねぇだろ』
兄(12歳)『……おれ、は、オークじゃない』
男4『あ、今、あのオーク喋った…?』
男3『まさか、一週間前の人語を話すオークってか?そういやすっかり忘れてたな…。あれマジだったのかよ』
男5『なら確かに希少だな。アイツだけでも捕まえて売り飛ばすか…』
兄(12歳)『―――、わっ』
大人の男複数人相手に満身創痍のお兄ちゃんがどう立ち向かうのかと固唾を飲んだ時、ウサギに似たモンスターがお兄ちゃんの肩に乗っかった。それと同時にお兄ちゃんの周りに解放したモンスターたちが集まって来た。
兄(12歳)『お前たち…!』
咲希「わーかわいいー!」
みのり「すっごい懐かれるー!」
穂波「マスコットみたいで可愛いね」
遥「なるほど、このあとモンスターたちと共闘するんですね?」
兄「いや――」
兄(12歳)『ほわぁ!!』
兄「正確に頸動脈狙ってきた」
一歌・愛莉((害獣…!!))
その一匹の攻撃から、周りにいたモンスターたちが本性を表して一斉にお兄ちゃんに襲い掛かった。その際にとんでもなく出血してるけどモザイクのおかげで顔を引き攣らせる程度で済んでいる。
兄(12歳)『ヒャァー!!』
男3『バカだろあのオーク…悪鼠獣、死狼獣、狂牙鳥。その他にも東大陸選りすぐりの狂暴なモンスターに囲まれてのうのうとしてるなんて…』
男5『んなこと言ってる場合か!!早く助けるぞ!!あのままじゃあのオークが死ぬ!!』
そうして男の人たちがお兄ちゃんに張り付いているモンスターたちを薙ぎ払うとそのうちの一人がお兄ちゃんを引っ張って隠し部屋まで連れていく。
男3『そのオーク、ぜってぇに死なすんじゃねぇぞ!!』
男4『はい!』
これ、一部分だけ見たらモンスターに襲われている子供を助けている大人たちにしか見えないんだけど…。この人たち、犯罪組織の構成員なんだよね?助けに来た正義の味方とかとはかけ離れてる人たちなんだよね…。
志保「お兄さん、本来敵対する人たちに助けられてどうするんですか…」
兄「まぁ…結果的に助かったからいいじゃん?で、隠し部屋に連れられて、俺はようやくこの見世物小屋の実態を知ることになったんだ」
隠し扉が閉じられて、動けず満身創痍のお兄ちゃん。そして、隠し扉の奥がようやく露わになる―――と思いきや、隠し扉の奥の映像の牢屋部分に強めのモザイクがかかっててその内容は全然わからなかったけど、こういった配慮は正直有難い。
あれ以上に酷い光景は正直見たくない。
兄(12歳)『これ、は…?』
兄「当時の俺は言葉も出なかったよ。まさか自分がいた檻のすぐ隣にこんな空間があったんだからさ」
男4『えっと、傷薬どこだ…?』
傷薬を探している男の人を背に、お兄ちゃんがゆっくりと立ち上がった。
その視線は、モザイクの先――牢屋に囚われている人々がいるであろう先を見据えていた。
兄(12歳)『カー○ィなら…どうしてた?助ける。助ける。助ける。絶対。どんなときもカー○ィは立ち向かった。なら俺は――縛動拘鎖』
男4『は!?く、鎖…!?動けねぇ!?』
咲希「あ!この魔法って…」
兄「うん。最初咲希さんに使った魔法だな」
遥「捕縛する魔法を咲希に使ったんですか?」
兄「不審者だと思って記憶消去しようとしたときに、逃げないように使ったんです」
咲希がとても見覚え――というか使われた魔法を見たときに声を上げて、お兄ちゃんが自己申告をした。当然突っ込まれてお兄ちゃんが説明した直後、みのりたちの苦笑いが視界に映る。本当にうちの兄が…、なんか、すみません。
兄(12歳)『光の精霊さん……。この人たちを助けてあげたい。天井に穴を空ける。どうすればいいですか?……槍、ザスト……』
お兄ちゃんが天井に手を向けると――、
兄(12歳)『光槍顕現』
光の槍が放たれて、天井を貫いて夜空を映し出した。
そのまま、お兄ちゃんが捕縛した男に近づいた。男の方は、お兄ちゃんの魔法を見て顔を恐怖に染めていた。お兄ちゃん、さっきまでモンスターに襲われたから出血して、そのせいで一部がモザイクで埋められていて、顔なんて全体的に弱めのモザイクがかかっている。それでも、顔が想像できてしまった。あの顔、完全にホラーだ。
お兄ちゃんが男の人にゾンビのような動きで近づくたび、男の人の叫びが大きくなる。
男4『や、やめろ…!近づくんじゃねぇ…!』
兄(12歳)『大丈夫ゥ!誰も死なせやしない!!アナタも逃がすから!』
男4『ヒャァアアアアアア!!』
兄(12歳)『怖くない!一瞬で、終わる。近くの街まで送る。機動纏身!!』
男4『アァアアアアアアア!!』
緑色の魔法陣が天井の穴に一直線に伸びて行って最初の魔法陣に男の人を触れさせるとすごい勢いで飛んでいった。
咲希(助けようとしているのは分かるんだけど…)
愛莉(いろいろと強引すぎる…)
雫(あの人大丈夫なのかしら…?)
兄(12歳)『さぁあ!次は君たちの番だ!!』
男奴隷『うわぁあああああ!!』
女奴隷『化け物ォ!!来ないでェ!!』
兄(12歳)『なにぃ!?化け物だってェ!?そりゃあ大変だすぐに助ける!!』
兄「彼らは長年の奴隷生活のせいか、化け物の幻覚を見るくらいに疲弊していた。「すぐに助けないと」と思った俺は彼らを助けるために檻を斬って近くの街まで精霊に送り届けてもらったんだ」
穂波「あ、そうなんですね…」
みのり「心に傷、負いますもんね…」
その化け物って十中八九お兄ちゃんのことだろうけど、本人気づいてないのが…。異世界でオーク呼ばわりされ続けたからそれ以外の呼び方に反応できなかったのかな…。だとしても考え方がポジティブすぎる。
映像のお兄ちゃんは光の剣で檻を斬って一人ずつ強引に魔法陣に突っ込んで天井の穴から脱出させていた。
少年奴隷『い、いやだ助けアアアアア!!』
男奴隷『し、死にたくなギャアアアアア!!』
女奴隷『いやぁ!近づかないでイヤァアアアアア!!』
男奴隷『く、来るな化けもnアアアアアア!!』
少女奴隷『助けて助けてお母さん!!』
兄(12歳)『大丈夫!すぐに、お母さんのところに連れてってあげるよ!!』※血まみれ顔面ドアップ
少女奴隷『お゛があ゛ざぁあああキャァアアアアア!!』
兄「こうして囚われた人たち全員助けることができたんだ」
一歌「うん、良かったね…」
兄「この人たちとはこれっきりだが、家族と無事会えただろうか…」
そうしみじみと語るお兄ちゃんだけど、絵面が完全にアウトなんだよな。やってること自体はいいことなんだけど。本当にモンスターに襲われている光景にしか見えない。やり方が強引すぎるし…。
私だけじゃなく咲希やみのりたちも言葉を失っている。絶対に私と同じ感想を抱いているはずだ。
兄「で、全員を逃がし終えたところで穴から地上に出たんだ」
捕まっていた人たちと同じ魔法で天井の穴から外に出ると、地上にいたモンスターと男の人たちがモンスターに成すすべなく襲われている光景が目に映る。そのまま魔法で高速で近寄ると、光の剣で男の人たちに群がるモンスターたちを細切れにした。
その光景にもちろんモザイクはかかっていて、よく見るとお兄ちゃんが助けたのはあの店主もいた。
兄(12歳)『機動纏身!!』
そのまま男の人たちを一カ所に集めた。
店主『た、助か――』
兄(12歳)『よく頑張りましたねぇ…!!』※血まみれ顔面
店主『ヒギャアアアー!!』
男1『化け物ー!!』
男2『あぁあー!!』
男3『助けてー!』
男5『来るな来るなー!!』
兄(12歳)『大丈夫…もう安心していいんだ!機動纏身!!』
店主&男s『『『『『あああああぁぁぁぁー!!』』』』』
案の定店主たちを強引に逃がすと、モンスターたちの目が一斉にお兄ちゃんと合った
兄(12歳)『ウ゜ル゛ル゛…』
モンスターs『グルル…』
互いに涎を垂らしながら、お兄ちゃんが光の剣を持って先ほどの魔法陣を全身に纏った。そして、互いに突撃していった。
兄「こうして一晩中戦い続けたんだ」
そこからは、映像のほとんどにモザイクがかかるくらいにスプラッタでバイオレンスな光景が映し出された。これ、モザイクがなかったら絶対に吐いていた。それでも、私を含め全員が顔を青ざめたいた。穂波や雫先輩は口を手で抑えている人もいる。
兄「そして戦いが終わって―――」
草原での戦闘を終えたお兄ちゃんは、光の剣でモンスターの死体を串刺しにして、魔法で火を熾したあと、岩を風魔法で動かして鉄板替わりにした後モンスターを解体してその肉を焼き始めた。
最終的に全ての肉を平らげた後、仰向けになって太陽の光を浴びるお兄ちゃんの顔はとても満足そうにしていた。
一歌・咲希・穂波・志保・みのり・遥・愛莉・雫
「「「「「「「「――――――」」」」」」」」
兄「死にかけてた俺の血や肉になってくれたモンスターたちに感謝だな…。このあと、墓立てたよ…」
お兄ちゃんは体の向きを記憶映像から私たちの方へ戻すと、ゆっくりと目を閉じて――、
兄「まぁなんというか…。4年間辛いことだらけの異世界生活だったけど―――」
兄「見ての通り俺…最初はかなりいいスタートを切れたんだ」
一歌(はぁあ!?いいスタート!?)
みのり(えぇええええええ!?)
咲希(コレうまくいった部類に入るの!?)
遥(確実にスタートダッシュ失敗してるんですけど!?)
穂波(今までのどこに“いい”要素が!?)
愛莉(これ以上碌でもないことがこの先あるの!?)
志保(お兄さんやっぱ頭おかしいでしょ…!?)
雫(陽介さん、しっかり休んだ方がいいんじゃ…?)
兄「たわしより高かったらさらに言うことなしだったんだけど…」
不満そこ?もっと言うところあるよね?
兄「まぁ俺が魔法を使えるようになった経緯は、これで以上だな…」
お兄ちゃんが記憶映像を停止すると、机に置いたままの水を口に着ける。
あんなの見返して、良く喉にものが通ると思う。ただ見ただけの私達ですらダメージがデカイのに経験した本人があっけらかんとしすぎていて温度差が…。
お兄ちゃんの強さと魔法の力の由来は、自覚なしで得た翻訳スキルと容赦なく牙を剥く異世界の過酷な環境によるものだった。確かにアレは強くならざる負えない…。
愛莉「ど、怒涛の展開で疲れたわ…」
遥「なんか、胃もたれが…」
みのり「うん。私もちょっと、気分悪い…」
雫「ちょっと、お水飲みましょっか」
初めてお兄ちゃんの記憶映像を見たみのりたちは案の定気分を悪くしてお冷を喉に通していた。
兄「大丈夫?まぁモザイク多い内容だったし無理ないか…。このあとはろくでもないことあったし、話さなくて大丈夫か…。端折ろ」
その言葉に、全員の動きが止まる。みのりたちもグラスから手を放してお兄ちゃんを凝視していた。
愛莉「え、これよりろくでもない…?」
兄「次はじゅh――え、うん」
遥「一応聞きますけど、なにがあったんですか…?」
兄「いや、まぁ別に―――」
お兄ちゃんがスクロールバーを操作して――そこには、衣服が破れ皮膚が焼け爛れたエルミリアさんの姿があった。
兄「エルミリアを竜から助けただけだよ」
志保「ちょ…」
穂波「え、あの…」
兄「まったく…。助けたのに罵詈雑言吐かれて最悪だっ――」
咲希「すごく大事な話じゃないですか!!」
一歌「今回の話よりそっちが気になるよ!」
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