異世界セカイ   作:龍狐

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17 そういや俺、『暗殺』されかけたことあるな

兄「ただいまー」

 

 

 玄関からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。時間は18時、少し遅い時間だけど、打倒なのかな。

 

 

一歌「お帰り、お兄ちゃん」

 

兄「おー、一歌、帰ったぞ~!はは~!」

 

一歌「お、お兄ちゃん仕事でなにかあったの?すごくご機嫌だけど…」

 

 

 今日――というか昨日からお兄ちゃんは家を空けていた。と言うのも初の出勤――仕事に行っていたからだ。初の仕事が一泊二日って聞いたことないけどお兄ちゃんの仕事先っていろいろおかしいしこれくらいじゃ不思議には想わないけど、そんなお兄ちゃんが今日帰って来た。とってもウキウキで。

 

 

兄「ふっふ~ん、見ろ!」

 

 

 収納魔法の穴を空けてそこに手を入れると、そこから引っ張り出されたのは、なんか見覚えのあるロゴの入った大きな箱だった。

 アレは…

 

 

兄「じゃじゃ~ん!Ni○tendоニ○テンドー S○itchス○ッチだ!」

 

 

 3年前に大ブームを引き起こしたあのゲーム機だった。

 

 

兄「初給で買ったんだ!」

 

一歌「初給って…仕事始めたの昨日の今日だよね?もしかして日給払い?」

 

兄「いやそうじゃないんだが…仕事の方で臨時収入が合ってだな。現金手渡しでもらった」

 

一歌「臨時収入?なにがあったの?」

 

兄「ちょっと、仕事の後の“接待野球”でな」

 

一歌「接待野球」

 

 

 接待ゴルフなら聞いたことあるけど接待野球なんて初めて聞いたな。

 

 

一歌「接待野球って…接待ゴルフと原理は同じなのかな?」

 

兄「まぁそうだな。俺、学校の体育でソフトボールしかやったことないからほとんど役に立たなかったけど。でも二ヤリさんと琴音さん…それにゴンさんも参加してたからね。それに、S○itchス○ッチ買えるくらいもらえたからマジ良かったわ」

 

一歌「接待で臨時収入が入るなんて…本当にいい仕事なんだね」

 

兄「あぁ、味方側から殺されかけることがよくあるが良い場所なんだ!」

 

 

……なんて?

 え、ころされ…え、味方側から?

 

 

兄「さっき言った接待野球のときも一人*1が何回か死んでな」

 

一歌「何回か死んだ」

 

兄「まぁその人はこういうのに参加するタイプじゃないからベンチにいたんだけどさ、バッターの流れ弾に何度も直撃してコンテニューしてさ」

 

一歌「コンテニュー」

 

兄「で、それだけじゃ飽き足らずに人一人殺すような殺人魔球に自ら突っ込んでいく人*2もいてさ。でもそれに直撃してもほぼ無傷っていうかメチャクチャよろこんでるだよね。あれは正直引いたね」

 

一歌(お兄ちゃんが引くって一体どんな人なんだろう。知りたくないけど気になるな…)

 

 

 あの鈍感クソ野郎の女の子泣かせのお兄ちゃんがドン引きするって一体どんな――いや話を聞く限りとんでもないドエm――これ以上はよそう。

 

 

兄「まぁ最終的にキレたメンバーが騒乱起こして味方全員巻き込んだ生死を掛けたバトルロイヤルに発展したんだけどね」

 

一歌「その最終的に至るまでの経緯がすっごく気になるんだけど」

 

兄「あ、やっぱり気になる?でもごめんな、規約云々で観せられないんだ。口頭でしか話せないけど…。あ、ちなみに結果は30ー0で終わったよ。続けられたらもっと伸びたんだろうけどなー」

 

一歌「30ー0って…。圧倒しすぎじゃない?接待ってもっと僅差で敗けるものだと思ってたんだけど…。流石に手抜きしすぎじゃない?」

 

兄「いや30は星の箱舟俺たちの方だけど」

 

一歌「接待の意味知ってる?」

 

 

 自分たちが圧倒したら接待の意味ないじゃん!!まぁ確かに私が知る限りのあのメンバーたちと聞いたメンバーたちじゃ八百長試合とかしなさそうだけどさ!仕事じゃん!?

 

 

一歌「それ相手の機嫌悪くしなかったの…?」

 

兄「大丈夫大丈夫!そのあと二ヤリさんの巨大戦力の【ゴッドキ○グオージャーZERO*3】でグラウンド事吹き飛ばして俺が相手側全員の記憶消しといたから!」

 

一歌「もうどこから突っ込めばいいの?」

 

 

 もうなにがなんだかさっぱりなんだけど…。考えるのがバカらしく思えてくる…。

 

 

兄「一歌が気にする必要はないさ。それじゃあ俺はさっそくス○ッチの設定してくるから!それじゃ!!」

 

 

 と、二階まで駆け上がるお兄ちゃん。すっごくうれしそうだったな…。まぁ念願の新作ゲーム機(兄基準)を手に入れられたんだし喜ぶのも当然か…。

 私は先ほどの接待野球のことを頭の片隅に追いやりながら、お兄ちゃんを追うように二階へと上がった。

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

兄「―――って、ことがあったんだよ」

 

父「そ、そうか…」

 

兄「いや~よく味方から殺されかけるけどそのおかげで給料もいいし。ほんと天職だよ」

 

母「えっと、陽介は辛くないの?流石に殺されかける職場なんてやめた方が良い気が…」

 

兄「大丈夫だよ。異世界で死にかけることなんてよくあったし。慣れっこ慣れっこ」

 

 

 いやそれ慣れちゃだめなんだけど。私は心の中で突っ込みを入れた。

 時間は少し過ぎて夜ご飯。家族4人で食卓を囲んで、お父さんがお兄ちゃんに対して仕事の話を切り出してきたのがきっかけだ。仕事の内容自体は規約云々で話せないということで接待野球の話になったけど、案の定というか空気が重くなった。やっぱり止めるべきだったかな…。

 

 

父・母「「――――」」

 

兄「あ、ところでさ。今回の接待野球で知ったんだけどさ。野球って物騒な用語が多いよね」

 

一歌「そうなの?例えばどんなのがあるの?」

 

兄「『死球』とか『刺す』とか。『捕殺』とか『併殺』とか…。それ聞いたときは「何事!?」って思ったね」

 

父「確かにそれは物騒だな…」

 

母「テレビとかでは聞いたことないわね…コンプライアンスに引っ掛かるからかしら?」

 

 

 と、ようやく雰囲気が少し和やかになった。

 単語自体は物騒だけど普通の野球の話になったのはよかった。

 

 

兄「―――あ。そういや俺、『暗殺』されかけたことあるな」

 

父「急にすごいのきたな!?」

 

母「暗殺!?」

 

一歌「え、暗殺!?誰から!?」

 

 

 お兄ちゃんが暗殺って…!確かに日々オークの亜種として狩られて魔法が一般的じゃない世界で魔法が使えてエルミリアさんを泣かせてるけど……うん、される理由しか思いつかないや。

 

 

兄「気になる?」

 

一歌「うん!」

 

兄「じゃあまずは食べちゃおっか。流石に暗殺されかける場面を食事中には見せたくないからな…」

 

母「そ、そうね…。まずは食べ終わってからね」

 

 

 と、言うわけで食事が終わるまで暗殺の件はお預けだった。ていうかこれ以降ほんと無言で終わった。暗殺の件が気になりすぎて食事することだけに没頭してしまった故だ。

 

 で、食事が終わって――、

 

 

兄「確か大体一年前…記憶再生イキュラス・エルラン

 

 

 お兄ちゃんの記憶上映会が始まった。

 映像は森の中少しフラフラになりながら歩いているお兄ちゃんの姿から始まった。

 

 

兄「この日はダンジョン攻略を終えてヘトヘトだったんだが…」

 

 

 すると、お兄ちゃん視点の映像の先に、猫耳フードを被った女の人が立っていた。

 

 

兄「このフードのがね…」

 

父「本物の暗殺者か…」

 

母「小柄の女の子、かしら…」

 

 

??『見つけた…!!』

 

 

 そして突然、女の子から氷が発生してお兄ちゃんの足元を凍らせた。負け時とお兄ちゃんが背中のナイフを抜こうとした瞬間に布で覆っていた武器――鎌をお兄ちゃんに向けて振るう暗殺者の女の子の姿。

 

 そして暗殺者に馬乗りにされたお兄ちゃんにその刃が――顔の擦れ擦れのところで地面に突き刺さった。

 ていうか、その拍子にフードが外れてるけど、この人って…!

 

 

兄(16歳)『クレイリア』

 

 

父「え、この子って…!」

 

母「この前の子よね、なんで…!?」

 

 

兄(16歳)『どうした?』

 

クレイリア『――――。――――。』

 

 

 暗殺者の正体は、まさかのクレイリアさんだった。なんで、家に帰ったんじゃ…。

 クレイリアさんはしばらく無言のまま細目でお兄ちゃんを見つめた後――、

 

 

クレイリア『貴方が暴食竜を!!凍神剣で凍結封印せずに!倒してくれたおかげさまでぇ~!!約400年も続く“剣を護り次代に繋ぐ”…私!!そんなしょうもない義務から解放されました!!やったあああ!』

 

兄(16歳)『おっ、おお…!そうかよかったなクレイリア!俺も頑張った甲斐があったよ!イエス!イエェ~ス!

 

 

一歌(お兄ちゃんのせいでクレイリアさんの人生がバグり始めてる…!!)

 

父(目が完全にガンギマってる…!)

 

母(皮肉一切通じてないの強すぎるでしょ…!)

 

 

 ていうかお兄ちゃんこんな顔のクレイリアさんの顔をほぼ至近距離で叫ばれてるのに平然としすぎでしょ!

 そのままクレイリアさんは鎌を振り上げて攻撃体勢に入った。これって不味いんじゃ…。

 

 

クレイリア『どうして武器を抜かなかったの…。貴方なら…』

 

兄(16歳)『俺は、しょっちゅうここの住民にアニカビのカー○ィに対するデ○デ陛下並みの殺意を込めて襲われてるから分かる…。お前からは殺意を全く感じなかった。今も。防御する必要ないだろ。それよりなんか…顔色悪いぞお前…ちゃんと食べてる?』

 

 

 こんな状態で普通に対応できるのすごすぎるでしょ…。

 そしたら、クレイリアさんは泣きそうな表情になると、鎌の刃先がバキンッと音を立てて折れた。アレ、よく見れば全部が氷でできてる…凍神剣の応用ってこと?

 そのまま凍神剣を放り出すと、クレイリアさんが、泣きだした。涙がお兄ちゃんの頬に零れ落ちた。

 

 

クレイリア『くうううう…分かってる…貴方は村を助けてくれたのよ…』

 

 

 その言葉とともに、クレイリアさんは意識を失った。

 

 

兄「こうしてクレイリアに命を狙われたわけだが、とりあえず宿に連れて行ったんだ」

 

 

えりを持ってクレイリアを引き摺る映像】

 

 

一歌・父・母(((運び方!!!)))

 

 

 これが気絶した女の子に対する対応って嘘でしょ…!?

 

 

父「陽介、お前…もっとましな運び方なかったのか…?」

 

兄「いや疲れてたから…」

 

母「だからって引きずるのはないわよ…」

 

 

 ……ところで、なんでクレイリアさんがお兄ちゃんのところに…。お兄ちゃんが竜を倒した後村に戻って引きこもりになったはずなのに…。

 で、映像が宿屋のベットでクレイリアさんを寝かせた後服についた土とかを拭いてあげてるのは優しさを感じるんだけどなぁ…。その優しさを運ぶときにも発揮してほしかった。

 

 すると、クレイリアさんが目を覚ました。

 

 

クレイリア『ここは…』

 

兄(16歳)『宿屋だよ。ほら』

 

 

 クレイリアさんがお兄ちゃんから保存食のパンかなにかを受け取ると、それを少しずつ咀嚼し始める。

 

 

兄(16歳)『で、なにがあったんだ?実家で引きこもるんじゃなかったのか?』

 

クレイリア『帰ったら、おうちが薪にされてて』

 

 

一歌・父・母(((!!??)))

 

 

 クレイリアさんの衝撃発言とともに映ったのは、いつか見た巨大なツリーハウスが解体されている光景だった。

 噓でしょあれ解体されちゃってたの!?あんな立派なツリーハウスを!?

 

 

クレイリア『村長が「今後は凍神剣はやめて堅実に働いて自分の食い扶持は自分で稼げ」って…』

 

 

 引きこもり対策に強行策に出たな村人…!!

 

 

クレイリア『それが嫌なら今後は村で共同で“飼育”することになると…犬のマヌの小屋の隣に私の小屋と首輪が…』

 

 

父(やっばいな異世界…!!)

 

母(人権が全然仕事してない…!)

 

一歌(これずっと氷の一族に鬱憤うっぷん溜まってたやつだ…!!)

 

 

兄(16歳)『それで、どっちを選んだんだ?』

 

 

クレイリア『凍神剣で全村人の足元固めて首筋に水滴垂らして逃げてきた…』

 

 

 やることショボ!でも地味に嫌だな…

 

 

兄(16歳)『え、全?』

 

クレイリア『全。32戸…』

 

兄(16歳)『すげぇ。執念がすげぇ。垂らすのも一苦労だろ…』

 

クレイリア『もう帰れないよう…!』

 

兄(16歳)『…働くのはそんなに嫌なのか?』

 

クレイリア『そうね…花屋さんで季節のお花に囲まれたり…ケーキ屋さんで美味しいケーキを味見したり…お人形屋さんで可愛いぬいぐるみをモフモフしたり…私にはそんな過酷な重労働、耐えられないよ…!!

 

 

 今のどこに過酷要素が!?想定している労働が温すぎるでしょ!!

 

 

父「これは筋金入りだな…」

 

母「現代社会で生きて行けなさそう…」

 

 

兄(16歳)『分かるよ…毎日九時五時の会社勤め…夜家に帰ったらクロス君たちをモフモフして、休日は全員でお散歩しながら遊んで皆でベットイン。それ以外の時間は他のメンバーと飲み食いしたり遊園地で遊びに行ったりとか、やれる気しねぇもん…。モフモフはいいんだけどさ…』

 

 

父(あれ、すっごくホワイト…!?)

 

母(充実しているようにしか聞こえないんだけど…)

 

 

 私でも分かる。それすっごく労働環境いいじゃん。まぁこれだけ聞くと、って枕詞が入るけど…。ていうか誰かの言葉をそのまま言ったような感じだけどクロス君の名前が出てきた時点で絶対二ヤリ君のルーティーンだよねコレ。

 

 

兄(16歳)『俺は今冒険者として暮らしている。元の世界に戻るための手がかりを得るには持ってこいの転職だ』

 

クレイリア『…すごいね…私もそういうのアレば…』

 

兄(16歳)『え、すごい?ああ、ふふ…まぁこれでも俺は元の世界では【星のカー○ィ 20周年スペシャルコレクション】の【ス○ブラデスマッチEX】で1分も残した男だからな…

 

クレイリア『?……すごいの?』

 

兄(16歳)『ああ!3:25秒と言う制限時間でボスラッシュ、ザコ敵、ウィ○ピーウッズと連戦を繰り広げるステージなんだが、これがまた難しくてな…。まぁ、見ての通り俺はそれらのゲームで培ったテクニックを駆使して冒険者をやっている…』

 

クレイリア『強さにそんな秘密が…』

 

 

母「…それってホントなの」ヒソヒソ

 

一歌「お兄ちゃんの主観では」ヒソヒソ

 

母「あぁ…」

 

 

 なおこの前のスピアコピターと鬼殺し火炎ハンマーは全く役に立ってなかったけどね。

 

 

クレイリア『元の世界…?』

 

兄(16歳)『クレイリアも。ずっと凍神剣の護り手をやてきたんならもうそれで食っていく方向で考えた方がいいんじゃないのか?』

 

 

 そのお兄ちゃんの言葉に、クレイリアさんは呆気に取られた表情を見せた。

 

 

兄(16歳)『さっきの凍結技は正直避けられなかったしなかなかのもんだったぞ』

 

クレイリア『え…護り手の私が凍神剣を振るう?考えたこともなかった…でも一族は400年もの間――』

 

兄(16歳)『――前にも言ったが、誰がなんと言おうと、君の、クレイリアの人生だ。自分で選んで好きにやっていいんだ』

 

 

兄(16歳)・クレイリア『『“それを貫く力が強さ”…』』

 

 

兄(16歳)『…覚えてるじゃないか』

 

 

母「すごくいい感じ…どうしちゃったの陽介…」ヒソヒソ

 

 

 お母さん…この前の見る前は「流石私の息子!」とか言ってたのに…

 すると、映像のクレイリアさんが壁に立てかけている凍神剣を見た。

 

 

クレイリア『とりあえず、凍神剣を振るうなら氷の封印を完全に解く術を探そうかな』

 

兄(16歳)『“ミスチーソ谷”の“ヒエヒエル草”は?』

 

クレイリア『――あ。あの後自分で“マルキード山”の“ポワポワの花”を摘みに行ったけど何も起きなかったよ。自分じゃ感動もなにも…』

 

兄(16歳)『そお』

 

 

 本当にRPG苦手なんだなお兄ちゃん…。一文字すらかすってないじゃん…

 

 

クレイリア『封印の氷は…私の心と連動しているから、自立して私の暗い性格を変えればなんとかなるかも…。でも、他の人の反応とかは、ちょっと怖いかな…』

 

兄(16歳)『それは仕方ないとしても…暗いか?そのくらい落ち着いた性格なら全然ありじゃないか?』

 

 

 突然の誉め言葉にクレイリアさんが少し沈黙した。

 

 

クレイリア『あ、ありじゃないよ…。め、目も腫れっぽたいし、「お前は陰気で話してると気が滅入る」って村の人にも…』

 

兄(16歳)『いやありだよ。喋ってて楽しいし。アニカビのロ○ナ王女と近衛兵ビー*4みたいな魅惑的で綺麗な目じゃないか』

 

クレイリア『いや、ちょ、なんすか?ウヒヒヒヒ…』

 

 

 ……あれ、今更だけどおかしくない?お兄ちゃんは異世界人にはオークのように醜く見えてるはずなのに、なんでまんざらでもなさそうなんだろう。容姿にあまりこだわらないのかな、クレイリアさんって…

 

 ……あとロ○ナ王女とビーって誰?

 

 

兄(16歳)『あ、そうだ。左手のそれな』

 

 

 そう、映像のお兄ちゃんが指摘した先の左手の“それ”は―――、薬指で輝く指輪だった

 

 

兄(16歳)『それでまぁ君一人は一生養えるくらいあるから。君の食い扶持を奪ってしまった俺なりの責任の取り方だ。受け取ってくれ』

 

一歌・父・母「「「――――」」」

 

クレイリア『一生養…へ!?え!?え!?』

 

 

 

父(なにやってんだ陽介ェ!?)

 

母(は、え、嘘、結婚指輪!?)

 

一歌(二度目……!!)

 

 

兄(16歳)『寝てる間にはめといた!』

 

 

 寝てる間にはめといた~じゃないよ!!本当になにやってんのこの人は!!あーでもクレイリアさんもすっごく顔赤らめてるし、でもこの後の展開が怖すぎる!!

 

 

クレイリア『え、あの、あ…』

 

 

 戸惑いながらもクレイリアさんは一礼をすると、薬指から指輪を外した。

 

 

クレイリア『ごめんなさい…貴方のこと尊敬してるけどそういう気持ちじゃなくて…これを受け取ることはできません…』

 

 

 いや凍神剣思いっきり溶けてますけど?封印解かれてますけど?

 

 

母(溶けてる溶けてる溶けてる!!)

 

父(心の氷一瞬で逝った!!)

 

 

兄(16歳)『まあまあいいから!えんりょするな!』

 

クレイリア『へっ、よ、よくない…!』

 

 

 クレイリアさんは抵抗とも呼べない抵抗をしながら再びお兄ちゃんによって薬指に指輪が填められた。

 

 

クレイリア『なっ、なんで!?断わっ…断ったよ断ったよね私!?断ったのに…』

 

兄(16歳)『これちょうど今日の探索で見つけたんだよ。これも何かの縁だ。天星石といってな。世界に7つしかないと言われる宝石だ。俺の気持ちだ』

 

クレイリア『ううううう…///』

 

 

 ぐいぐいと迫るお兄ちゃんに赤面するエルミリアさん。これ、この後の展開が予想できてなければ普通に私も赤面しながら見てただろうなぁ…

 

 

クレイリア『そそそそんな貴重な』

 

兄(16歳)『とりあえずもう遅いし今日は泊まっていけよ』

 

クレイリア『え…』

 

兄(16歳)『な?ベッドに二人はちと狭いだろうが…』

 

 

 いやお兄ちゃん言い方!!それもう誘ってる風にしか聞こえないから!

 

 

父「え、陽介、お前。いつの間にこんな大人に…」

 

陽介「え?俺まだ子供だけど」

 

 

兄(16歳)『アイツも同じ宿に泊まってるから頼めば…』

 

 

 あれ、急にオチが見えてきた。お兄ちゃんの言うアイツってあの人しかいないよね。

 

 

クレイリア『あ。あ。あ。あのっ』

 

兄(16歳)『?』

 

クレイリア『公衆浴場の代金を…貸してほしいの…』

 

 

母(もうこの子完全に“その気”になってる!)

 

 

クレイリア『しばらくお風呂入ってないから…』

 

兄(16歳)『臭いか?』スンスン

 

 

 直嗅ぎ!?ほんとなんでもありなのこの人!?

 

 

クレイリア『か、かぐなよぉ///』

 

兄(16歳)『?少し土の匂いはするけど臭くはないぞ?』

 

 

 それはお兄ちゃんが引きずったからでしょうが!!

 

 

兄(16歳)『ていうか風呂代なんてその指輪売れば問題ないだろ』

 

 

 

 …あ

 

 

父「は?」

 

母「え?」

 

 

クレイリア『…うる?』

 

兄(16歳)『ああ。さっきも言ったが換金して飯代にすれば一生食いっぱぐれないぞ!!

 

 

 あぁ、殴りたい。この笑顔。

 クレイリアさんは案の定真顔で指輪を見やると――

 

 後ろの凍神剣が氷の化け物に変貌した。お兄ちゃんもナイフで応戦してるけど、よくあんな化け物相手に善戦できるな―――て、あ。

 

 

エルミリア『ちょっと!オーク顔!もう夜よ!オーク特有のいやらしい本能でも目覚めたの!?ななな何なら寝付くまで一緒に――』

 

 

 絵面。絵面が最悪すぎる。凍神剣を鎖の魔法で捕縛した後クレイリアさんを押し倒して無力化するために体力を使ったせいでお兄ちゃんの息遣いもすっごく荒い。どう見ても婦女暴行の現場にしか見えない。

 しかも最悪なタイミングでエルミリアさんが…!!ていうかエルミリアさんも枕抱えて来てる時点で最終的に“そのつもり”だったんじゃ…

 

 あ、ハイライトが消えたエルミリアさんとクレイリアさんの目があった。

 

 

エルミリア『私は門前払いだったのに…』

 

兄(16歳)『あっ!お前ちょっと手伝ってれ!手が付けられん!つうか凍神剣めっちゃ強え!!』

 

 

 そこで、エルミリアさんの目線が、今度はクレイリアさんの左手の薬指に…。

 

 

エルミリア『…なるほど』

 

 

 なにが?

 エルミリアさんが手をかざし何かを掴む動作をすると同時に、その手に雷が集まって剣と化した。あの剣ってあんな感じで出し入れ可能なんだ…。って、そうじゃなくて。

 エルミリアさんがその剣で凍神剣を縛っている鎖をどんどん切り裂いていってるし。

 

 

兄(16歳)『なっ…!?ちょっ…!?お前…!!昼間のダンジョン探索で精霊酷使したから防御が…ぼ――』

 

 

 その瞬間、目にもとまらぬ速さでクレイリアさんによってお兄ちゃんが氷漬けにされた。

 宿屋の一室で沈黙が続き、やがて二人は笑顔でお互いに近づき、固い握手を交わした。

 

 

兄「……こうして俺は暗殺寸前…翌朝まで凍結封印されてたんだ…。ほんと、異世界人意味わかんねぇ…。酷くない…?」

 

一歌「うん…」

 

父「あぁ…」

 

母「そうね…」

 

 

一歌(お兄ちゃんが悪い…!!)

 

父・母((陽介が悪い…!!))

 

 

兄「とまあ、この日はこんな感じだったよ。じゃ、俺は【スターア○イズ】の続きやってるから!」

 

 

 記憶映像を消してそのまま席を立ったお兄ちゃんの階段を駆け上がる音をBGMにしながら、私たちは無言のまま席を立ちあがるのであった―――。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

後日、教室のセカイにて

 

 

 

兄「……てな感じで、俺は暗殺寸前…翌朝まで凍結封印されていたんだ…。酷くない?」

 

咲希「うん…」

 

穂波「はい…」

 

志保「そうですね…」

 

ルカ「ええ…」

 

メイコ「確かに…」

 

 

咲希・穂波・志保・ルカ・メイコ(((((お兄さんが悪い…!!)))))

 

 

 あれから翌日。私たちのセカイで集合した後お兄ちゃんの記憶映像を見た皆はとても気まずい表情をしていた。絶対に昨日の私と同じ感想を抱いている顔だ、あれは。

 

 

ルカ「(わ、話題変えましょう…)それにしてもお兄さん、凄いわね。制限時間3:25秒のEXステージを1分残してクリアだなんて」

 

兄「ん?ああ、ふふ…正確には1分2秒!かなりやりこんで突き詰めましたからね…。今の時代でもあの記録はなかなか出せないですよ。ふふふふ…」

 

メイコ「へぇ~…」

 

兄「まず最初のボスラッシュとウ○スピーウッズ戦ではハンマースイングを中心に他の技で繋ぐのがミソででして…俺の攻略だと技を移動の短縮のために使ったりしてできるだけ最後のスコアコインをファイナルカッターで一気取りして…」

 

志保「あ…検索したら1分30秒とかのクリア動画普通にありますけど」

 

 

 志保の宣告に、お兄ちゃんが椅子から崩れ落ちた。仰向けになりながら体を震わせてショックを表している。

 

 

兄「おのれネットめ…!!90びょうのこしぃ~…?」

 

一歌「ネットは何も悪くないよ。お兄ちゃん…」

 

 

 「暗殺されかけた」という言葉より端を発した今回のお兄ちゃんの話は――、

 

 

ミク「やっほー皆。戻ったよ」

 

リン「おっ待たせー!あれ、なんでようにい倒れてるの?」

 

穂波「そっとしておいてあげて…」

 

兄「ま、まだだ…まだ俺は先に行けるはず…」

 

咲希「お兄さん、あんまり無理しない方が…」

 

一歌「ちょっと現実逃避してるだけだから気にしないで」

 

ミク・リン「「??」」

 

 

エルミリア『どうして…?』

 

クレイリア『異世界・・・の血かな』

 

 

志保「あれ、まだなにか話してる…」

 

ルカ「あら、ほんとね…」

 

メイコ「一体なにを…」

 

 

クレイリア『多分…あの人は私たち氷の一族の先祖と同じ…異世界イレルラーズ日本の在りし処ニホンバハマルからの転移者だから…』

 

 

志保「え、ちょ……お兄さん!!これ早戻しどうやるんですか!?」

 

兄「早戻し…は!!そうか、まず過去の記録の象徴であるゴーストカー○ィで練習すれば…!」

 

志保「スコアアタックの話はどうでもいいのでこっちに集中してくださいよ!!」

 

 

 

 

 

―――つづく。

 

 

 

 

 

 

*1
【仮面ライダーエグゼイド】の登場人物【ダン黎斗クロト】。紆余曲折あってコンテニュー機能により死んでも復活できるようになった。ちなみに原典のライフ数は“99”だが【PROJECT NIYARI】における彼のライフ数は“9610クロト”である

*2
【東方project】の登場人物【比那名居ひなない天子てんし】。二次創作設定でよく“ドM”になっており【PROJECT NIYARI】でもその例に洩れず究極のドМである

*3
【王様戦隊キングオージャー】の20体合体の最強ロボ。それの黒金仕様バージョン。玩具版で再現可能

*4
正しくは【ヴィー】




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