異世界セカイの広場の扉前にて。
そこには7人の人影があった。
杏「えっと…なんだろ、ここ」
そう呟いたのは、橙色のつり目に青のグラデーションが入った黒髪ロングの少女【白石杏】だった。
彰人「草原…だけじゃなく噴水とかベンチもあるから、どっかの広場って感じか?」
オレンジ色に黄色のメッシュが入った髪をしている青年、【東雲彰人】が言葉を零す。
燦々と照らす太陽、それでいて暑すぎない温度。強すぎない心地よい風、遠くから聞こえる水が流れる音。それらの要素が快適な温度を作り出していた。
ミク「とっても心地いい場所だね」
レン「そうだね!それにとっても広いし、なんだかワクワクしちゃうや!」
メイコ「ここは……私たちのセカイとは、別のセカイみたいね」
彼らのセカイのミクが感想を言い、レンがこのセカイの広さに心を躍らせていた。単純に見渡すだけでもこのセカイの広さが相当の者であることは確かであり、好奇心が勝ったのだろう。
そして、メイコがここが自分たちのセカイではないということに気付く。
冬弥「とりあえず、この場所がどういったものなのか、聞き込みをしてみないか?」
こはね「そうだね!お家もあるから、誰かいるかもしれないし!」
そう提案したのは、濃紺と暗めな水色の半分に分かれた短髪に灰色の瞳を持った青年【青柳冬弥】とクリーム色の短めの髪を2つ結びにしている少女【小豆沢こはね】だった。
するとそこへ――、
??「おや?君たちこんなところでなにをしてるんだい?だイヌ」
彰人「うん?―――うお!!」
彰人が振り向くとそこにいたのは―――スクーターのハンドルがはえた青色の星に乗った二足歩行の犬型生物だった。
その犬の背中には釣り竿があり、その足元には魚の入ったバケツ。どうやら釣りの帰りらしい。
??「どうしたんだい?ボクの顔になにかついているのかい?だイヌ」
彰人「い、いや、別になにも…」
無意識に彰人は冬弥の後ろに隠れた。ちなみに、彰人は大の犬嫌いである。それゆえに犬型生物を見ただけで驚いた。
だが、二足歩行の犬が釣り竿持って星に乗っているというだけで他のメンバーたちも驚くには十分すぎる要素だった。
杏「い、犬が二足歩行で、喋ってる…」
??「このセカイじゃ普通のことだよ?だイヌ。…もしかしてキミたち、他のセカイからのお客さんかな?だイヌ」
冬弥「あの、すみませんが、ここは…?」
冬弥からの質問に犬は星から降りると、笑顔でその質問に答えた。
??「初めての人なら驚くのも無理はないね、だイヌ。ここは【異世界セカイ】。ボクたちの住むセカイだよ。だイヌ。」
こはね「異世界、セカイ…?それが、このセカイの名前…」
杏「異世界がモチーフのセカイってことかな?確かに喋る動物って異世界っぽいし!」
彰人「異世界…?」
冬弥「どうしたんだ?彰人?」
彰人「いや、なんでもねぇ…」
その時、彰人の脳裏に浮かんだのはとある喫茶店での出来事。白猫?の耳拳?に潰されて回復魔法らしきもので体を癒していた自分と同年代―――後で聞いたが姉と同い年――らしき青年がこちらを認識した途端に記憶を消しにかかった出来事を、思い出した。
その青年は今から4年前に交通事故に遇い、その際に意識だけ“異世界エクスハバマル”へと転移・転生した。その際に神?から力を授かりその結果魔法が使えるようになったという話だ。そしてカー○ィプレイヤーである。
もし、この【異世界セカイ】の想いの持ち主が、あの人ならば…と考えていた。
??「それに、違うセカイから来たっていうなら納得だよ、だイヌ!ミクさんも、レンさんも、メイコさんも、いつもと違う恰好してるから、不思議に思ってたんだ。だイヌ!」
杏「このセカイにも、ミクたちがいるの?」
??「もちろん、だイヌ!ミクさんは自由気ままにボクたちと遊んだりしてくれてるし、ルカさんは美味しい食事を食べさせてくれるし、カイトさん、レンさん、リンさんはこのセカイの安全を守ってくれるし、メイコさんは絵がとっても上手なんだ!だイヌ!」
メイコ「へぇ、こっちの私は絵が上手なのね」
レン「こっちの世界じゃ、ルカが料理が得意なんだね」
自信満々に、まるで自分のことを語るように笑顔で語る犬。それだけでも、住民たちとバーチャルシンガーたちの仲が良いことが伺える。
??→ロビ「そうだ。自己紹介がまだだったね!だイヌ。ボクは【ロビ】、よろしくね、だイヌ!」
こはね「初めまして!【小豆沢こはね】です。よろしくね、ロビくん」
杏「私は【白石杏】。よろしく」
冬弥【青柳冬弥】だ。よろしく頼む」
彰人「し、【東雲彰人】…」
ミク「知ってるだろうけど、【初音ミク】だよ。この子たちのセカイからやってきたんだ」
レン「同じく、【鏡音レン】だよ!」
メイコ「【メイコ】よ。よろしくね」
全員(一名弱めに)自己紹介を済ませると、ロビがなにかに気付いたように顔を上げた。
ロビ「みんなせっかく来たからさ、いろいろ見ていくといいよ!このセカイは楽しいからさ!ワクワクもドキドキハラハラもあるよ!」
ミク「ワクワクはともかく、ドキドキハラハラって一体――」
こはね「きゃあ!!」
レン「な、なに!?」
彰人「おい、なんだアレ…!?」
突然聞こえた轟音――と言うよりは咆哮に近い音。それに全員が悲鳴を上げたり困惑したりと混乱する中、彰人が指さした方向を、全員が見た。
それを一言で言い現わすならば、それは“光”だった。
ここから離れた場所にある山。そこにその“光”はあった。光を再現する上で欠かせない色、“黄色”に輝く光の群。その巨大なまでの光は、“竜”を形どっていた。さらにその“竜”はまるで生きているかのように目、口、腕、尻尾を動かし、その巨大な身を起こしていた。
今いる場所と、山からはかなりの距離がありながらも、まるで近距離で見た際にガ○ダムのプラモデル並みの大きさがあった。離れた距離でもその大きさ、実際の体長は想像できないほどに巨大だろう。
ロビ「ああ。アレは【傲慢竜】プライドドラゴンだね、だイヌ」
ミク「【傲慢竜】…プライドドラゴン…?」
ロビ「7体存在している【大罪竜】の、“光”を司るドラゴンだイヌ。ブレス一発で大都市を破壊できるトンデモドラゴンなんだ、だイヌ」
杏「いやいやいや!冷静に説明してるけどアレ普通にヤバくない!?逃げないと不味くない!?」
ロビ「心配ないだイヌ。こんなのこのセカイじゃ日常茶飯事だイヌ」
彰人「世紀末すぎんだろこのセカイ!!」
冬弥「あんな危険な生物が日常的に…?」
穏やかな見た目と雰囲気に完全に騙された。こんなのが日常茶飯事のセカイなんて楽園どころか地獄以外のなんでもない。
今すぐにでもこのセカイから脱出しなければ、そう考えたその時――、
??「やれやれ…。またか」
ロビ「あ、カイトさん!お疲れ様だイヌ!」
ミク「え、カイト?……て、え、カイト?」
ロビがカイトの名前を呼んだことで、全員がその方向へと向いた。だが、そこにいたのは自分たちの知るカイトではなかった。
自分たちの知るカイトはフレンドリーな優しい人物であるはずなのに、目の前のカイトは切れ目で人を寄せ付けない雰囲気を漂わせていた。黒いタキシードに黒い小手などの軽い装備、その上には黒いマントと言う漆黒の騎士を思わせる恰好をしたカイトがこちらに向かって歩いてきていた。
カイト「お前たちは……別のセカイのミクたちと、その想いの持ち主たちか?」
こはね「あ、は、はい…。えっと、あの、カイトさん、ですよ、ね?」
カイト「そうだ。俺がこのセカイのカイトだ。……悪いが、問答をしている時間はあまりない。急がなくてはならないからな」
会話をバッサリと切ったカイトは、全員の前に出ると【傲慢竜】を睨みつけた。
カイト「速攻で終わらせる。闇剣顕現。闇剣顕現。耐光護身―――疾風駆送。烈駆!!」
カイトが呪文のようなものを唱えると、その両手に漆黒の剣が握られ一瞬カイトの体に眩い光が纏われた。さらにカイトの周りに強烈な突風が発生し、全員が咄嗟に服や目を抑えた。
誰にも見られない中、カイトが一直線にプライドドラゴンへと直行し――、
カイト『烈斬!!』
次に全員が目にしたのは、豆粒ほどに小さく見えるほど遠くへ飛んだカイトと、細切れにされる【傲慢竜】プライドドラゴンの姿だった―――。
彰人「……マジかよ」
* * * * * * * *
ビビバス一同はあの後、傲慢竜を一瞬で倒して一瞬で戻って来たカイトに「……付いてこい」と一言だけ言われビクビクしながらも彰人と冬弥が先頭に立ちカイトに付いて行った。ちなみにロビとはあの場で別れた。
ロビは「カイトさんと一緒に居るなら安心だね、だイヌ。じゃあボクは帰るよ、だイヌ」と言って青い星に乗ってその場から立ち去ってしまった。
ほぼ強制同然についていく形になったが、明らかに危険な傲慢竜を一瞬で倒したカイトの力を危惧したのもあるが、ロビのカイトに対する信頼度から「悪人と言うワケではない」と一部の納得と自分たちのセカイのカイトとの齟齬が激し過ぎて物凄く困惑したが、根の部分は変わってないのだという安心もあった。
そのままカイトに付いて行くと、家屋の数がどんどん増えていき、その中で一際目立ったのは二階建ての家屋だった。今まで見てきた家屋は全て平屋だったのに対しあの家だけ二階建て。目につくのは必然だった。
近づくと、その家――店の看板の名前が見えてきた。
カイト「ここだ」
メイコ「たこルカフェ…?」
ミク「名前的に、ルカのお店だよね…」
杏「ねぇ、カイト。さっきからずっと気になってたんだけど、なんで私たちをここに…」
カイト「…そうだな。手下人に合わせるため、だな」
こはね「手下人…?」
杏の質問に答えたあと、たこルカフェの入口の扉をスライドして開ける。するとそこには――、
ルカ「――――」ゴゴゴゴゴ
異世界メイコ「…………」
笑っているが笑顔ではないルカが両腕を組み、目の前の石床に正座しているメイコの姿だった。
メイコの姿は一言で言えば【画家】と言うべきものだった。画家のイメージが強いベレー帽に茶色のズボン、簡素なシャツにエプロンと言う極めて質素で、画家として正当な服装。その服やエプロンは所々が絵具で汚れており、少しカラフルだ。そしてなぜかボロボロで穴も多かった。
そんな彼女が今、正座させられている。その原因であろう圧倒的な気迫をもったルカの威圧がもうすごかった。なんて言うか彼女の後ろに毘沙門天でもいるのかってくらいにすごかった。
ビビバス一同「「「「「「「――――」」」」」」」
カイト「アレが今回の手下人。俺たちのセカイのメイコだ」
ルカ「あらカイト。お疲れ様。随分と遅かったわね……って、お客さん?」
カイト「あぁ。違うセカイから来たミクたちだ。傲慢竜の出現に巻き込まれてな」
ルカ「まぁ、それは申し訳ないことを…。ごめんね、みんな、お座敷に座って待ってて。飲み物用意するから」
カイトたちの来店によりルカの後ろに光臨していた毘沙門天は消え去り、こはねたちにニッコリと笑顔を向ける。だがあの恐ろしい笑顔を見た以上全員が苦笑いしかできなかった。
そして促されるままお座敷に着席する一同だったが、その視線は常に石床に正座させられているメイコへと注がれていた。特に気まずさを見せているのはビビバスのメイコだ。違うセカイのとはいえ自分が正座させられている光景を見て何も思わないはずがない。
そして、この光景の理由を問うたのは、冬弥だった。
冬弥「あの、何故このセカイのメイコさんは正座を…?」
カイト「さっきも言ったように、あの傲慢竜発生の元凶がメイコだからだ」
こはめ「め、メイコさんがアレを…!?」
杏「え、いやでもどうやって!?」
ルカ「メイコはね、描いたものを実体化する能力があるの」
杏の質問に答えるように、全員分のお茶(冷)をグラスに注いでお盆に乗せたルカが戻って来た。
ルカが全員にお茶を配り続ける中、“描いたものを実体化する能力”と言う事実を知った一同は驚きを隠せなかった。
レン「それってつまり、魔法ってこと!?さっきカイトが使ってたみたいな!」
レンが“魔法”と聞いて目を輝かせた。ちなみにレンはカイトが魔法を使う場面を見たときも目を輝かせていたが、自分の知るカイトと印象が違い過ぎたため聞くことができなかった。
で、今度は物腰が柔らかそうなルカから出たためにすぐに聞くことができた。
ルカ「う~ん。それとはちょっと…いえ、かなり違うわね。詳しいことは言えないけど…そうね。説明するとしたら…私たちって、カー○ィなの」
ミク「え?」
彰人「カー○ィ…」
ルカの突然の意味不明な説明にほとんどのメンバーがクエスチョンマークを浮かべた。が、その中で唯一彰人がこの【異世界セカイ】を創った想いの持ち主の特定に至った。絶対にアイツだ、と。
異世界メイコ「いや、カー○ィなのはミクだけよね?」
ルカ「メイコ、シャラップ」
異世界メイコ「はい…」
ミク(このセカイのメイコはルカに頭上がらないんだ…)
このセカイにおける自分たちの力関係と言う生々しいものを見て一瞬ハイライトが消えかけたミク。そこですぐさまカイトが訂正を入れた。
カイト「ルカ。それでは全員がカー○ィになる。俺はミクほど大食いではない」
ルカ「でもカイトもスイーツ限定でカー○ィレベルで食べるわよね?」
カイト「………まぁ。んん…」
ルカからの唐突なカミングアウトに誰もいない方向を向くカイト。どうやら図星のようでなにも言えないらしい。
ビビバスメンバーたちはそれを見て、「そこはウチのカイトと変わらないのか」と若干ほっこり、というか安心した。
カイト「い、今は関係ないだろう…」
ルカ「ふふ、そうね。それで、話を戻すけど。このセカイの想いの主はそれはもうカー○ィのことを心の底から愛しているの。だからその影響でね、私たちの立ち位置はカー○ィキャラがモデルになってるの」
杏「そこまでカー○ィのことが好きな人なんだ…」
ルカ「ちなみにカイトのモデルは寡黙な騎士さん。だからこんな不愛想なのよ」
カイト「不愛想は余計だ…」
冬弥「なるほど。道理で俺たちのセカイのカイトとこんなにも違いがあるわけなんですね」
このセカイのバーチャルシンガーたちの性格や立ち位置がそれぞれカー○ィキャラで反映されているという事情を知った一同はそれに納得する。
と、言うことは――、
こはね「それじゃあ、このセカイのメイコさんがトラブルメーカーなのって、カー○ィのキャラクターの影響を受けて――」
ルカ「いいえ?メイコがトラブルメーカーなのはカー○ィ関係ないわ」
彰人「ねぇのかよ!!」
カイト「むしろモデルになったキャラクターはそういうトラブルは起こさないタイプだからな。これはメイコ本人の気質だ」
ビビバスメイコ(それを聞いて私はどんな反応をすればいいのかしら…)
トラブルメーカー気質のもう一人の自分と言う厄ネタを見て反応に困るビビバスメイコ。そのためか異世界メイコを見る視線は少し冷ややかだった。
ビビバスミク「じゃあ、カイトが魔法みたいなのを使ってたのも、そのモデルのキャラクターが反映されたから、ってこと?」
ルカ「うーん……まぁそうなるわね」
ここでルカははぐらかしたが、実際カイトがエクスバハマルの魔法を使えるのは陽介の影響である。細かい説明は省く(考えてない)が。
だが、そこで違和感に気付いたのは彰人だけである。想いの主が魔法使いであり、似たような詠唱を唱えていたことを考えると、反映先はキャラクターではなく想いの主の方であると気づけた。
ルカ「まぁそんなわけで…メイコ」
異世界メイコ「――」ビクッ
ルカ「私、何度も言ってるわよね。【傲慢竜】だけはやめてって。【暴食竜】だろうが【憤怒竜】だろうが【色欲竜】だろうが、それならまだ構わないわ」
彰人(構わねぇのかよ)
名前だけでも今ルカが挙げた三体の竜は先ほど見た【傲慢竜】と同等の存在であると言えるだろう。それを出されても構わないってどれだけ日常化してるんだと心の中で呆れた。
そして、ルカが次に口を開く。
ルカ「【傲慢竜】は食べれないからやめてっていつも言ってるでしょ?」
ミク「…食べる?」
ルカの口から出た予想外の言葉に、ビビバスメンバー全員が硬直する。
聞き間違いでなければ、今このルカは「竜を食べる」と口にした。嫌々、あんな巨大生物食べるってそんなわけ――、
ルカ「出すならせめて、【嫉妬竜】とか【怠惰竜】とかにして。そしたら料理できるのに…」
聞き間違いじゃなかった。
レン「え、竜って、食べれるの…?」
ルカ「もちろん。【嫉妬竜】は白身魚みたいに柔らかいし、【怠惰竜】は大トロみたいにすぐ解けるし…とにかく素材としては最高なのよね」
ミク「食べれるんだ…」
ルカ「でも【傲慢竜】は実体が存在しないからそもそも食べれないのよ」
カイト「それにだ。メイコ、お前また徹夜したな」
異世界メイコ「う、それは…」
カイト「大方そのせいで判断能力が狂って【傲慢竜】を描いたんだろうが…。雑に描いたせいだろうな。斬ったときの手応えから考えてあの【傲慢竜】はサイズも強さもオリジナルの10%程度しかなかった。単純に弱すぎだ」
彰人「本物はどんなバケモンなんだよ!!??」
そう叫ばずにはいられなかった。ただでさえ遠目で見ただけで絶望と恐怖が一気に襲ってきたあの化け物レベルの竜がサイズも強さもオリジナルの10%しかないと聞けば普通にこうなる。逆に本物はどれほどの化け物なのだろうか。
ルカ「安心してちょうだい。本物はすでに討伐済みだから」
こはね「えっとそれ、逆にどうやって倒したんですか…?」
カイト「闇の剣でひたすら、だな…。闇の力は不可視世界を司る力。だからこそ実体を持たない【傲慢竜】にも攻撃が通る。と言っても、【傲慢竜】が討伐されたのは俺がこのセカイに来る前の話だからな。一番最初にこのセカイにいたミクも詳しくは知らない。詳しい話はこのセカイを創った本人に聞くのが一番だろうが…アイツにマトモな答えを期待するだけ無駄だな」
杏「どんだけ無碍にされてんのその人…」
冬弥「話を聞く限り、壮絶なことだったからあまり憶えていないのだろうか?きっと、自分のセカイを守るために奮闘した人なんだろう」
彰人(実際はただのカー○ィ狂いのアタオカ魔法使いだけどな…)
レン「じゃあこのセカイを創った人って、カイトと同じ魔法が使えるってこと!?」
カイト「―――」
レンの指摘に、カイトの動きが一瞬止まる。今までの話の流れからして【傲慢竜】を倒したのはバーチャルシンガー以外の誰か。つまりこのセカイを創り上げた張本人だけだろう。
どう答えるか、カイトが一瞬悩んだが――、
ルカ「いいえ?確か私が聞いた話だと討伐にゴンさんたち【星の箱舟】のメンバーたちが関わってるわ」
彰人「あの人が関わってんのかよ……ていうか、たちって?」
ルカ「その言葉の通りよ。ゴンさんに黒竹くん…今は二ヤリくんだったわね。■■ロアさんが首魁の【星の箱舟】…要するに商会メンバーたち数人が【傲慢竜】や他の“大罪竜”を討伐したの」
ミク「あんなのを数人で倒せちゃうなんて、その人たち本当に人間…?」
実際に見た【傲慢竜】の10倍の強さの本来の【傲慢竜】とそれと同等の竜をすべて倒したという【星の箱舟】メンバーたちの強さに驚きで言葉も出ない。
しかもロビの説明で大罪竜は7体いることが確定している。それを数人程度で倒すなんて一体どんな化け物の集まりなのか。
ルカ「本当に助かったわ。そのおかげで、今このセカイがあるんだもの。今でもたまに【星の箱舟】メンバーがこのセカイに来るのよ」
カイト「異世界セカイのトラブルの1~2割の元凶でもあるけどな」
ここでも騒動を起こしているのか…と、ビビバス一同は遠い目をした。まぁゴンさんの時点で女性を公衆の面前な殴り蹴ったりしてるところを知っている4人からすればどこか納得している面もあるが。
同時に、でも8~9割の原因はメイコなんだなと改めて実感した。
ビビバスメイコ「えっとそれって、その人たちも来れるってことは、このセカイの想いの主が来訪を認めているってことよね?大丈夫なの?そんなトラブルメーカーを招き入れて…」
カイト「――――(別人とはいえ、メイコの口からそんな言葉を聞くことになるとはな…)」
ビビバスメイコ「カイト?」
カイト「ん、あぁ。すまない。それで答えだが、今やアイツも【星の箱舟】のメンバーの一員なんだ。頭のネジが外れている者同士仲良くやっているから、俺たちは口出しできん」
ミク(さらっとディスってる…)
自分の世界のバーチャルシンガーにここまでボロクソに言われるなんて本当にどんな人物なのかと気になる一同(彰人は既に知っているため苦笑い)であったが、その時――、
異世界ミク「ルカ~~!!大変だよ~~!!」
桃色の髪に青い瞳、星で彩った織姫イメージの洋服を纏った異世界ミクが“たこルカフェ”に大急ぎで入って来た。
ビビバスミク「このセカイの私…」
ルカ「あら、どうしたのミク?」
異世界ミク「えっとね、あのね!!野菜の……ブロッコリーの人がね!!来たんだよ!!」
ビビバスメンバー(((((((ブロッコリー…?)))))))
何故ここでブロッコリーが出てくるのだろうか。野菜で例えられるから、相当な天然パーマな人物なのだろうか。
それを聞いて、カイトは頭を抑えてルカは軽く苦笑いをした。
ルカ「分かったわ…とりあえず100人前作れば満足してもらえるわね」
彰人「いやどんだけ食うんだよソイツ!?」
カイト「あのブロッコリーの胃袋は最早カー○ィレベルだ。ミクとタメを張れるレベルだ」
異世界ミク「ちょっとカイト!確かに私がよく食べるのはそうだけど!!」
こはね(認めちゃうんだ…)
異世界ミク「私はもっと綺麗に食べるし!!…って、こんなこと言ってる場合じゃなかったんだった!!問題はそうじゃないんだよ!あの人ドラえ、青狸さんを一緒に連れてきちゃって…!」
ミクの言葉に、カイトとルカが硬直する。
そして、彰人たちもミクが言いかけたその“連れてきた”人物の言いかけの名前に疑問を持った。
杏「ドラえ…ミク、それって…」
彰人「誰もが知ってる国民的キャラクターだよな?」
こはね「で、でも流石に架空のキャラクターがいるなんてことは――」
???「いやぁ~~ネズミ~~!!【銀河破壊爆弾】~~!!」
異世界セカイのミク・ルカ・カイト・メイコ「「「「――――」」」」
ビビバス「「「「「「「――――」」」」」」」
屋内越しでも響いた、とてもよく聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。ついでになんかとんでもないモノポケットから取り出しているのも聞こえた。
冬弥「い、今の声は、ドラえ――」
ルカ「いいえ。ただのネズミ嫌いの青い狸型ロボットよ」
彰人「いやそれ完全にドラえ――」
異世界ミク「あわわわ…!ネズミの住民さんと鉢合っちゃった!今はリンとレンがいるから大丈夫だけど、やっぱりカイトがいないと不安だよ!今すぐ来て!」
カイト「分かった!ルカ、俺はレンとリンの方に行ってくる。メイコも連れて行くからな」
異世界メイコ「え、私も!?わ、私はここで…」
カイト「お前を野放しにする方が危ない!戦闘痕を補修する役割もあるからな、ついてきてもらうぞ!」
異世界メイコ「で、でも私石の上に正座して、足が痺れて…」
カイト「…仕方ない」
足が痺れて動けないと主張するメイコに対し、カイトが近づくと―――メイコに対して“お姫様だっこ”をした。
こはね「……//」
杏「わぁお、大胆…」
ビビバスミク「すごい、ウチのカイトとは大違い…」
カイト「これで問題ないだろう。ミク、案内を頼む」
異世界ミク「まっかせて!」
カイト「それでは行ってくる。ルカ、客人たちを頼んだぞ」
ルカ「ええ、任せて」
異世界メイコ「待って今動かれたら足がいやあああああ!!痛いいいい!ジーンて!ジ~ンてぇええ!!」
異世界メイコの叫びも虚しく、ミクとともにカイトに連れられたメイコは姿を消した。
全員が嵐のように去っていったミクたちを硬直したまま呆けていると、ルカが全員の前を通り過ぎ、パシャンと扉を閉める。
ルカ「…さて、と」
ビビバスミク「―――?」
ルカ「私も調理を始めないと」
冬弥「調理…さっき言ってた大食いの人のですか?だったら、俺たちは一旦外に出た方が――」
ルカ「いえそっちも大事だけれど。その前に――」
ルカは厨房に移動しながら喋り、特徴的な刃の包丁を手に取った。そして、上の棚から砥石を取り出し――目に見えないスピードで、包丁研ぎを終わらせた。
そのあまりにも人智を超えたスピードに、全員はすでに終わっているということにすら気づかず、顔を顰めていた。
レン「ルカ、包丁、研がなくていいの?」
ルカ「大丈夫よ。もう研ぎ終わったから」
杏「え、今の一瞬で…?」
ルカ「……ところで、私。貴方たちに料理人だってことは話したわよね」
メイコ「まぁ、そうだけど…」
なんか急に雲行きが怪しなって来たが、気付かないのか気づきたくないのか話を続ける一同。だが、この場合の正しい選択は、ただちに逃げることだった。まぁ、逃げれる確率は0%だが。
ルカ「そのための修行で、いろんな調理ができるようになったの。調理手順を一歩でも間違えたら死ぬ食材とか、いろいろね。だから……あなた達の記憶も、調理させてもらうわね」
こはね「な、なにいって、るんですか…?」
ルカの持つ包丁が、ギラリと輝いた。その瞬間、全員の中で嫌な予感が確定した。
ルカ「大丈夫。私は陽介のように『記憶消去』の魔法が使えるわけじゃないけれど、『記憶調理』だったら人格への影響もないから…安心して?」
彰人「いやなにも安心できねぇよ!」
ルカ「ブロッコリーまでは良かった。でも流石にあの狸さんのことを知られたらそのまま返すわけにはいかないの」
杏「え、じゃあやっぱりさっきの声って本物のドラえ――」
ルカ「はい、調理完了」
これ以上言わせまいとばかりに、ルカの声と共に全員の記憶はそこで途切れた。
* * * * * * * *
こはね「……あれ?」
杏「私たち、一体なにを…」
ルカ「あら、起きた?」
冬弥「寝ていた、のか…?」
彰人「ブロッコリーがどうので…駄目だ、これ以上思い出せねぇ…」
次に全員が目を覚ましたとき、彼らはお座敷の畳の上で横になって眠らされていた。
ゆっくりと起き上がると、ルカがお冷を持ってきて傍に置いてくれた。
ルカ「あなた達、大丈夫?」
ビビバスミク「ルカ…一体、なにがあったの?」
ルカ「そうね…カイトたちが出てった後、ブロッコリーの人が空腹で暴れてね。その衝撃であなた達、気絶しちゃったのよ」
ビビバスメイコ「そうだったのね…」
レン「気絶するくらいのことだったんだ…。全然覚えてないや…」
冬弥「では、今は…?」
ルカ「あなた達が気絶している間に、私が料理100人分食べさせたから、満足して帰っていったわ」
彰人「100人前って…あれからまだ30分くらいしか経ってねぇっすよ…?」
彰人はチラリと時計を見るが、最後の記憶の時間からまだ30分程度しか経っていない。それなのに100人分の料理を作ったルカと、30分で100人前の料理を食べたというそのブロッコリーの人に戦慄せざるを得ない。どんだけ胃袋ブラックホールなんだ。
ルカ「伊達に料理人やってないわ。それじゃあみんな、お腹は空いてる?」
こはね「え?すみません…お昼ご飯、少し前に食べたばっかりなので…」
杏「私も流石に空いてないかな…」
そう。時刻は大体昼の2時。お昼の時間などとうに過ぎている。4人は既に食事を終えて集合しているため、お腹が空いている状態ではなかった。
ルカ「そう…。じゃああなた達が良ければ、私が作った料理、持って行ってくれないかしら?」
冬弥「いいんですか?流石に悪い気が…」
ルカ「それはこっちの台詞よ。お客さんを気絶させてタダで帰すのは私のポリシーに反するわ!」
ビビバスメイコ「でも、それはルカのせいじゃ…」
ルカ「そもそも気絶の原因は私だし…」
ビビバスミク「ルカ?」
ルカ「なんでもないわ」
ルカの呟きは誰にも聞かれることもなく。
気絶から目覚めて少しは経っているためいろいろと落ち着いてきたので、ルカから食事をタッパー詰めにしてもらうことになった。料理自体はブロッコリーに対して作っていた分の余りがあるとのことで、それをくれるとのことだ。
――そして、出されたのが――、
レン「わー美味しそうー!ビーフシチューだ!」
ビビバスミク「とても美味しそうだね」
ビビバスメイコ「すごい完成度…とても30分程度で仕上げたとは思えないわ…」
ルカ「ふふ。ちょっとした工夫よ*1。お腹が空いたら、ミクたちはセカイの皆と、あなた達はご家族と一緒に食べて頂戴」
ルカが大きなタッパーに一人では食べきれない量のビーフシチューを五つ、こはね、杏、彰人、冬弥、ミクに渡した。
こはね「ありがとうございます。ここまでしてくれるなんて…」
ルカ「いいのよ。何度も言うけど、私の自己満足なんだから。それじゃあ、あなた達、これからどうする?まだいるのなら、タッパーを一度預かるけれど…」
杏「いえいえ!流石にこれ以上お邪魔させてもらうわけにはいきませんよ!(またあの激ヤバドラゴンが出たらたまったもんじゃないし…)」
ルカ「……そう。残念だけれど、あなた達にも都合があるものね。でも、来たくなったらいつでも来ていいわよ」
ビビバスミク「う、うん。暇が出来たらみんなと行くね」
と、全員もどかしくなりながらもルカに対してそう答えた。
だが全員の本心は「こんな危険なセカイあんまり来たくない」である。普通に考えてそうである。誰が好き好んで弱体版だとしてもドラゴンなんてのが出現するセカイに行きたがるだろうか。
異世界セカイ。一見平和なセカイではあるがその実態は【星の箱舟】メンバーから“簡易版米花町*2”やら“簡易版キヴォトス*3”と呼ばれるほどである。
ルカ「それじゃあ、あなた達のセカイと繋げるわね」
冬弥「繋げる…?」
ルカが懐から鍵を取り出し、“たこルカフェ”の入口に挿入――そもそも何故内側に鍵穴があるのか、たぶんこのためだろう――して扉を開けると、その先に広がっていたのは異世界セカイの景色ではなく、入って来た時と同じ光だけの空間だった。
ルカ「私たち異世界セカイのバーチャルシンガーたちは、持っている鍵でどこからでもセカイの扉を繋げることが出きるの。ここを通れば、元のセカイに戻れるわよ」
彰人「あ、ありがとうございます…」
ルカ「いいのよ。気にしないで」
と、彰人の前まで歩いて止まると、ルカはものすっごい笑顔で――、
ルカ「分かっているとは思うけど、陽介のこと勝手に他人にバラしたらタダじゃすまないからね」
彰人「……ウス」
彰人にしか聞こえない声量で、真っ向から脅してきた。
このメンバーの中で唯一彰人だけがこの異世界セカイの想いの主とその正体を知っている人間だ。それゆえに真っ向から釘を刺してきた。
流石に自分のセカイの主の秘密を知っている人間のことは把握していたようだ。
ルカ「それじゃあ皆、またね」
こはね「は、はい!」
ビビバスミク「じゃあね…」
こうして、波乱過ぎたVividBADSQUADたちによる異世界セカイの訪問は終わった。
* * * * * * * *
陽介「ルカさんこんにちわー」
ルカ「あら、陽介。いらっしゃい」
陽介「早速なんですけど、なにか食べ物ありません?お腹ペコペコで…夜飯に間に合うくらいの少々で大丈夫なんですけど」
ルカ「それなら、さっき作ったシチューがあるけれど…それでいい?」
陽介「はい!それで!」
ルカ「分かったわ。温めるからちょっと待っててね」
陽介「はい。………ところで、来る途中あちこちボロボロでしたけど、なにがあったんですか?」
ルカ「……さっき、ブ○リーさんとドラ○もんさんが来てね…。ブ○リーさんがドラ○もんさんを無理やり連れてきたのだけれど…ネズミの住民を見たドラ○もんさんが【銀河破壊爆弾】を取り出して騒然となって、それに便乗したブ○リーさんが暴れ出してで大変だったわ」
陽介「そっか。大変だったんですね」
ルカ「一応セカイ滅亡の危機だったのだけれど、相変わらずの平常運転ね。流石“かちわりメガトンパンチ”を最大スコアまで極めた男ね」
陽介「フフッ…。褒めても何も出ないですよ。まぁ、かちわりメガトンパンチって最大まで溜めるとポッ○スターも真っ二つにするのは基本ですけど、最低だとしても地面にヒビ入れるくらいは力あるから本当にカー○ィキャラってすごいですよね。ちなみになんですけどこの“かちわりメガトンパンチ”から“バンダナワド○ディ”っていう今では誰もが知る有名キャラクターの初登場で――」
ルカ「はいこれ。シチューできたわよ」
陽介「ありがとうございます。それじゃ、いっただきます!!―――――。うっま!!肉が厚いのにやっわらか!これ、何の肉なんですか?」
ルカ「【暴食竜】グラトニードラゴンよ。あの後メイコが描いたのをカイトが狩ったの」
陽介「あ、なるほど!道理でなんか周りが焦げてて、覚えのある味だったわけだ」
ルカ「まだまだ余ってるから、良かったら家族の分も持って帰る?」
陽介「え、いいんですか!?ありがとうございます!」
ちなみに、ビビバスメンバーが帰ってから30分後の話である。
ロビ モデル:ロビン
原典:とびだせどうぶつの森
とびだせどうぶつの森の登場キャラ【ロビン】とほぼ同じ見た目をした異世界セカイの住民の一人。
釣りの帰りにビビバスメンバーたちと遭遇し、異世界セカイの解説をした後にプライドドラゴン出現から討伐までを見送ったあとカイトにみんなを任せてその場を後にした。
ブロッコリー(伝説のスーパー野菜人) 真名:ブロリー
原典:ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦
:ブロリーMAD
今回はいつも通り、飯を目的に異世界セカイへ来訪。異世界セカイへの移動手段は支給されたスマホから。ただしいつも上半身裸でズボンのポケットに入れているためよく戦闘で破壊される。そのためブロリーに支給されているスマホは最低限の機能しか搭載されていない。
【星の箱舟】の集会の時にたまたま見つけたドラえもんに対し“B級グルメテーブルかけ”を目的に強請って強制的に連れてきた。
この後ネズミの住民を見て暴れたドラえもんに便乗して自身も暴れた。たくさん戦えてとてもスッキリしたようだった。
22世紀の猫型ロボット 真名:ドラえもん
原典:ドラえもん
【星の箱舟】メンバーの集会の際、ミーちゃんに会うためにすぐ帰ろうとしたがブロリーに捕獲され無理やり異世界セカイへと連れてこられた。
異世界セカイへはブロリーと同じく支給されたスマホからアクセス可能だが極力行くことを拒んでいる。理由は言わずもがなネズミの住民の存在である。今回運悪くネズミの住民とかち合ったことで【銀河破壊爆弾】を取り出しネズミの住民ごとセカイを滅ぼそうとしたがリンとレンに止められ暴れたお詫びとしてルカに【タイムふろしき】を貸し出した。