異世界セカイ   作:龍狐

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22 ちょっと紹介(みせ)たいところがあるんだよね。(他作品キャラ匂わせあり)

一歌「ただいま…」

 

 ようやく、今日の学校が終わった…。

 前回の記憶映像閲覧の後日、平日になって学校に行く日になった。その際、もちろんだけど鳳さんとも会った。鳳さんはお兄ちゃんに記憶消去されたから何も覚えてないからいつも通り挨拶されたけど、挨拶し返すときにぎこちなくなってしまった。心配かけちゃったかな…。

 

 

兄「あ、おかえり」

 

 

 リビングにいた憂鬱の原因――お兄ちゃんに声を掛けられた。

 昨日、ニヤリくんに呼ばれてから結局その日は帰ってこなかったけど、いつの間に帰ってたんだ…。

 

 

一歌「お兄ちゃん、帰ってたんだ…」

 

兄「うん。あのあと結局バトルが始まってね…。俺は参加しなかったけど。まぁそこはどうでもいいんだ。これ、二ヤリさんからのお土産」

 

 

 バトルへの発展がどうてもいいって末期すぎる…。

 お兄ちゃんが収納魔法を展開してその中身を取り出すと、それは普通サイズの紙袋だった。手渡され、中身を見ると紙包装がされた長方形の箱が入っていて、それを取り出すと――、

 

 

【ニヤリのおきつねラーメン】

 

 

 黒一色の背景に、明るい青*1で書かれたものが入っていた。――これ、お土産コーナーとかラーメン屋で直接売ってるお持ち帰り用のやつと見た目ほとんど変わらないんだけど。

 

 

一歌「これ、結構手込んでない?何、二ヤリくん本格的にラーメン屋でも始めるつもり?」

 

兄「いや、店を出す気はないみたいだよ。あくまで趣味アマチュアで通すらしい。包装とかも流通の過程で専用の機械があるからついでに作ってもらったみたい」

 

一歌「そうなんだ…。ていうか、おきつねラーメンって書いてあるけど、なにラーメンなのコレ?まさかとは思うけど油揚げが入ってるとかじゃないよね?」

 

兄「いや、ネーミングの方は単純に二ヤリさんの好みだけど」

 

一歌「…そっか」

 

 

 二ヤリくんが狐好きなのはクロスくん連れてる時点で分かり切ってることだけど、まさか自分の作ったラーメンにまで転用するほどとは…。

 

 

一歌「じゃあこれって結局何ラーメンなの?」

 

兄「え~っと…複合、と言えばいいのかな…。二ヤリさんが言うには様々なグルメ食材*2を使ってるって話だけど…何ラーメンって括りは着けてないみたい。醤油…塩?家系…二郎?わっかんねぇや」

 

一歌「そ、そう…。ところで、グルメ食材?……それって、高級食材とかだったり…?」

 

 

 グルメ食材って言うのがよく分からないけど、グルメって単語が入ってる時点でなんか高そうな気が――、

 

 

兄「材料たくさん使っててほとんど覚えてないけど…材料費と製品ソレが釣り合ってないのは確かかな。材料費、メッチャすごかったよ」

 

一歌「…そんなの、もらってよかったの…?」

 

 

 一瞬で手の中にある箱が純金の延べ棒に見えてきた。正確な値段聞くの怖いんだけど…。

 

 

兄「趣味アマチュアだから、そういうの気にしてないよ、あの人。むしろ食ってくれた方が喜ぶし」

 

一歌「そ、そっか…」

 

兄「…あ、そうだ。確か志保さんってラーメン好きだったよね?種類たくさんもらってるし、あげようかな。あぁでも志保さんだけに渡すのも…咲希さんと穂波さんにもあげよう」

 

一歌「他にもまだ種類あるんだ…」

 

 

 好きなものにとことんつぎ込むのはお兄ちゃんと似てきたな、二ヤリくん…。

 ていうかまだ13歳なのに趣味がラーメン作りって…まぁ好きな食べ物を追求したいって気持ち、分からなくない。私も余裕あったら、いろんなタイプの焼きそばパン作ってみたいし。同じ麺類を好むものとして、なんか親近感…。

 

 

兄「でも渡そうにもな…。一歌に持って行ってもらうのは荷物になるから悪いし、かと言って俺がそれぞれの家に訪問して渡しにいくのも…どうしよ…」

 

一歌「セカイで渡せばいいんじゃない?」

 

兄「あっ、そっか。その手があった。なら一歌たちのセカイで…いや、俺のセカイでいい?」

 

一歌「え、大丈夫だと思うけど…なんで?」

 

兄「いやぁ~ちょっと紹介みせたいところがあるんだよね。…まだ建設途中だけど」

 

一歌「建設途中…?新しい建物を立ててるの?」

 

兄「うん。マジすげぇから見てほしいんだ。あ、もちろんみんなの予定が噛み合ったときでいいから」

 

一歌「う、うん。伝えておくね…」

 

 

 そして、お兄ちゃんとは別れて自分の部屋に戻った。

 あ、ちなみにだけど今日も記憶再生会はやりました。と言っても、昨日の続きじゃなくてあの出来事が3度目の邂逅だと知ったお母さんがヴィヴィさんたちとの本来の二度目の出来事を知りたいと言ったのが発端だ。

 まぁ最終的にお通夜状態で終わったけど…。

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけで次の日の火曜日。都合よく全員の予定が空いていたので学校が終わった後私たちはお兄ちゃんのセカイで集まった。

 ちなみに今回私たちのセカイから着いてきたのはミクとリンの二人。ルカとメイコはお留守番を買って出てくれた。

 屋上の扉からお兄ちゃんのセカイに着くと、前回同様噴水の頂点にいたカイトが出迎えてくれた。

 

 

カイト「来たか。工事現場まで案内するよう陽介から聞いている。そう遠くはない。着いてきてくれ」

 

レオニリン「はーい、カイト兄!」

 

カイト「カ、カイト兄…?……まぁ、呼び方は好きにして構わないが…。そちらのセカイのリンか。随分、なんというか…とりあえず、行こうか」

 

 

 リンの呼び方に翻弄されて戸惑ったカイトだったけど、すぐに持ち直して私たちのことを案内してくれた。なんか喉から出かかってたけど、言うの諦めたな、アレ。

 それで、カイトの言う通り少し歩くとよく工事現場で見る骨組みやシートなんかが張られた場所があった。それにかなり広い。ショッピングモールくらい大きい。

 そのあまりの大きさに、咲希とリンが真っ先に走っていった。

 

 

咲希「わー大きいー!」

 

レオニリン「あ、見て見てサッキー!たぬきさんが工事してるよ!」

 

咲希「本当だー!たぬきさんが作業着とヘルメット着てるー!」

 

 

 どういう状況?咲希とリンの言葉が気になった私たちは足早で移動して、そのたぬきさんを見てみることにした。二人の元へ辿り付くと、そこには本当に作業着とヘルメットを着用した二足歩行のたぬきさんたちが木材や工具なんかを持って作業をしていた。

 それにこのたぬきさんたち、身長が私たちとほぼ変わらない…。

 

 

志保「ホントにたぬきだ…」

 

カイト「そういえば、お前たちは俺たち以外のこのセカイの住人を見るの初めてだったな。異世界セカイに置いて、住民はバーチャルシンガーである俺たちの他にはどうぶつたちとその他で構成されている」

 

一歌「その他って…?」

 

カイト「その他はその他だ。正直言葉では説明しずらいから、二足歩行のどうぶつ以外のものを見かけたら、その他の分類でいい」

 

レオニミク「この子たちが、このセカイの住人なんだね。本当に穏やかなセカイなんだね」

 

カイト「あぁ。トラブルのもとのメイコはリンとレンに任せてるからな。工事中の間は極力大人しくしてもらいたいからな…」

 

穂波「本当にこのセカイのメイコさんは一体なにを…?」

 

カイト「…否が応でも、いずれ分かる…」

 

 

 そう言って天を仰ぐカイトに私たちはなにも言えなかった。そこまで引き延ばされると、すっごい気になるんだけど…。ていうか、その言い方だとリンとレンがいても結局はトラブル起こすってことだよね?

 

 

カイト「……さて。案内の途中だったな。彼らはこの異世界セカイの工事全般を請け負う【たぬき建設】の社員たちだ。今から、現場監督のどうぶつの元へ行く。そこには陽介もいるはずだ、そこで合流しよう」

 

 

 あ、お兄ちゃんもそこにいるんだ…。

 私たちはその場を離れ、ぐるっと回るように4分の1ほど歩くと、そこには仮説の小屋のようなものが建っていた。扉の前まで行くと、まず最初に出た感想が「扉が大きい」だった。仮設小屋にしては明らかに大きな扉だし、なにより両開きタイプだし。なんでこんなに大きくする必要が…?

 

 でも、その理由はすぐに知ることとなった。

 

 

コンコンッ

 

 

カイト「失礼する」

 

??「…どうぞ」

 

 

 低い男の人の声が中から聞こえた。そのままカイトが扉を押して開けると――、

 

 

??「――――」

 

陽介「あっ、ようこそ、みんな」

 

異世界ミク「一歌ちゃん!そっちのセカイの私に、それにみんなも!」

 

 

 そこにはお兄ちゃんとこのセカイのミクと――途轍もなく大きい紫色のゴリラがいた。

 同じ机を囲っているお兄ちゃんとミクと比べても、そのゴリラが座っている椅子は群を抜いて大きかった。それに切れ目のサングラスを着けてるし、背中に巨大なハンマーあるしで、威圧感が凄かった。

 

 

カイト「ミク、お前もいたのか」

 

異世界ミク「うん!今内装のことでボンカッチさんと話してたんだ!」

 

 

 ボンカッチさんって言うんだ、このゴリラの人。威圧感が凄すぎて全く動けない私をサングラス越しで見ると、ボンカッチさんが立った。そこで、ボンカッチさんの全貌が分かった。この人、デカ過ぎる。身長だって2メートルは超えてるし、横の幅も絶対1メートルはある。この扉は、ボンカッチさんのためのものだったんだ…!

 

 そして、ボンカッチさんは背中のハンマーを抜いて壁に立てかけて、こっちに歩いてきて私の前に立った。

 お、大きすぎる…私の体、完全にこの人の影に隠れちゃったんだけど…!

 

 

一歌「え、あの、なにか…?」

 

??→ボンカッチ「……初めまして。俺、ボンカッチ。今回の工事の現場監督をしています。皆さん、どうぞよろしく…」

 

 

 と、礼儀よく頭を下げて私たちに挨拶をしてくれた。

 【たぬき建設】なのに、現場監督の人ゴリラなんだ…。ポカンとしている私たちに、カイトが耳打ちしてきた。

 

 

カイト「ボンカッチは見た目のせいで初見の者には誤解されやすいが、実際はとても優しい心根を持っている。だから、あまり怖がらないでやってくれ」

 

一歌「は、はい…。こちらこそ、よろしくお願いします。ボンカッチさん」

 

咲希「よ、よろしくお願いします!」

 

穂波「よろしくお願いします」

 

志保「よ、よろしくお願いします…」

 

 

 お互いに挨拶が終わって頭を上げると、今度はミク達の方を見た。

 

 

ボンカッチ「…ミク、二人いる…?リンも、いつもと恰好違う…」

 

ミク「えっと、初めまして。この子たちのセカイの初音ミクだよ。よろしくね」

 

レオニリン「私もこの子たちのセカイのリンだよ!よろしくね、“ボンボン”!」

 

ボンカッチ「ボンボン…?俺の、こと?」

 

レオニリン「うん!ボンカッチって名前だから、ボンボン!」

 

ボンカッチ「ボンボン…うん。俺、ボンボン」

 

レオニリン「うん、ボンボン!」

 

 

 す、すごいな、リン…。ボンカッチさんに速攻で渾名つけて仲良くなっちゃった…。ボンカッチさんもすぐに受け入れてくれるし、本当に優しい人なんだな…。

 

 

カイト「ボンカッチ。本題に入っていいか」

 

ボンカッチ「あ…うん。話は聞いてる。見学は大丈夫。でも、始めたばかりだから骨組みを組み立ててる途中。中には入れないけど…」

 

ミク「え、中には入れないんだ…」

 

志保「じゃあ、ここに来た意味は…?」

 

ボンカッチ「それで、みんなに見てもらうのは、これ」

 

 

 ボンカッチさんがさっきまで座っていた椅子がある机のところまで行くと、私たちにその机の上に乗っていた大きな紙――設計図らしきものを見せてくれた。再びその設計図を机に広げると、私たちはその設計図を見るために机を囲った。元々巨漢のボンカッチさんが十分使えるサイズの机なため、全員が囲っても問題ないくらいの大きさはあった。

 それに、この机、私たちのような小さな身長(ボンカッチさん基準)の人でも見やすいように椅子でよくある高低を調整する機能があって、私たちの身長に合わせてくれた。

 

 

ボンカッチ「俺たちが今作ってるのは、温泉施設なんだ」

 

レオニリン「温泉!?おっきなお風呂!泳げるくらいおっきいの!?」

 

志保「リン…温泉で泳いじゃ駄目」

 

レオニリン「えーだってー、そんなおっきなお風呂があったら、泳いでみたくならない!?」

 

咲希「分かるー!私も小さいころやったなー」

 

レオニリン「だよね、サッキー分かってるー!」

 

穂波「二人とも…」

 

 

 温泉での水泳談義に花を咲かせる二人を周りは苦笑いしながら見ていると、ボンカッチさんが話を続けた。

 

 

ボンカッチ「うん。温泉だから広い。完成したら、みんなも来て」

 

レオニミク「分かった。完成したら、その時は入りに来るよ」

 

異世界ミク「ぜひぜひ来て!なんたって、この温泉は通常の温泉や露天風呂、サウナはもちろん、電気風呂にジャグジー、日替わり温泉、さらにさらに!■■ロアさんたち経由で手に入れた温泉とか食材もあるから、来なきゃ損だよ!」

 

兄「あ、ちなみになんだけど今回この温泉施設を提案したのって、■■ロアさんたちなんだよねー。ここなら自由に作れるし、他のメンバーも来るからさ。広い風呂ができるってなったら、俺のセカイの人たちみんな喜んでくれたし」

 

 

 ボンカッチさんに敗けず、ミクとお兄ちゃんも温泉の宣伝を私たちにしてくれた。温泉か…しばらく言ってなかったけど、たまに入るのもいいかな。温泉って、美肌とかに効果あるし、入って損もないから。

 

 

カイト「……すまない。少し気になるところがあるんだが…」

 

 

 すると突然、カイトが地図を見てボンカッチさんに尋ねた。設計図は素人の私たちじゃ浅くしか理解できないけど、なにか気になることがあったのかな…。

 

 

ボンカッチ「カイト、どうした?」

 

カイト「ここ、湯舟の部分なんだが…広い空間が4つと、それなりの大きさの空間が2つ。これはなんなんだ?男湯と女湯の二つなら分かるんだが…」

 

 

 カイトの言葉で、私たちはカイトが指さした部分を見てみた。

 カイトが指さしたのは、更衣室から温泉部分を含めた空間の多さだった。確かによく見ると、その場所は左側の通路から入る形の横長の長方形の空間で、そこから5つの扉があった。上下に大きな空間が二つずつと、その横長の空間の奥にあるそれなりに大きい空間が2つ。確かに、温泉にしては多すぎるような…。

 

 

ボンカッチ「これ、それぞれ分けた結果」

 

カイト「分けた…。そうか、そう言うことか」

 

一歌「どういうこと…?」

 

カイト「人間と、どうぶつとで分けた結果がコレだ。この4つの広い空間は、“人間の男”“人間の女”“どうぶつの男”“どうぶつの女”で分けてある」

 

ボンカッチ「そう。どうぶつは、人間と一緒に入ること、気にしない。でも、人間には、特定のどうぶつが近くにいると、体調悪くする人、いる。だから、そういう配慮」

 

 

 特定のどうぶつが近くにいると体調が悪くなる人――動物アレルギーの人のことを言っているんだ。世の中には犬アレルギーとか猫アレルギーの人だってたくさんいる。この空間の多さは、そういう配慮の結果だったんだ…!

 

 

カイト「それでは、奥の二つの空間は?他4つのと比べるといささか狭いが…」

 

ボンカッチ「それ、共同浴場。人もどうぶつも、性別も関係なく入れる。でも予約優先制って社長が言ってた」

 

カイト「なるほど…まぁ性別関係なく入れる以上、そういった制度は当然だが…使う者は限定されるな…」

 

異世界ミク「あ、それならね!二ヤリくんがクロスくんたちと一緒に入るときによく使うだろうからって!」

 

兄「あ、それなら琴音さんもムースくんと一緒に入るときに使いそう」

 

 

 共同浴場にそんな使い道が…普通の温泉じゃペット同伴なんて絶対無理だけど、このセカイでの温泉ならできる。確かに二ヤリくんと琴音さんが使いそう…。

 

 

穂波「確かに…私もしばおのことをお風呂に入れるときは専用の容器にお湯を貯めてそこに入れてるから、一緒の湯舟に入れるのは、とってもいいかも」

 

ボンカッチ「みんなで入ると、もっと気持ちい。だから、ここはそんな人とどうぶつたちのための場所」

 

カイト「なるほどな…。答えてくれて感謝する。疑問が解けた」

 

ボンカッチ「大丈夫。気にしない」

 

 

 カイトにお礼を言われて、口元で笑みを浮かべるボンカッチさん。

 そしたら、私たちが入って来た扉からノックとともに一人のたぬきさんが入って来た。

 

 

たぬき建設社員「親方~」

 

ボンカッチ「ん、どした?」

 

たぬき建設社員「配管工の方々が相談があるとのことです」

 

ボンカッチ「分かった。すぐ行く」

 

 

 そう言うとボンカッチさんは立ち上がって、壁に立てかけていたハンマーを背中に再び背負った。

 

 

ボンカッチ「それじゃあ、ゆっくりしてって。ここは特になにもないけど」

 

一歌「はい。お気遣い、ありがとうございます」

 

 

 背を向けて、扉の方へと歩いていくボンカッチさんとその隣で歩くたぬきさん。こうしてみると、ボンカッチさんの背の高さが顕著に出るな…。

 

 

たぬき建設社員「それでその後は、中庭の金魚草の配置の件で相談が」

 

ボンカッチ「うん。それもあとから行こう。防音ガラスはもう入ってる?」

 

たぬき建設社員「はい。あとは組み立てるだけで――」

 

 

 そこで、扉は完全にしまった。キンギョソウを植える中庭に防音ガラスが欲しいって、どういう状況なんだろう…。

 

 

カイト「それでは俺はパトロールに戻る。時間が許す限り、ゆっくりしていってくれ」

 

異世界ミク「カイト、お疲れさま~!」

 

 

 カイトもパトロールでこの部屋から出て行った。

 さて、この後どうしよう…。とりあえず相談しよう

 

 

一歌「それじゃあ、この後どうしよっか」

 

異世界ミク「それじゃあ、この前の陽介の記憶の続き見ようよ!」

 

 

 それを聞いて私の体は硬直する。嘘でしょミク、アレをみんなに見せるつもり…!?

 

 

レオニミク「お兄さんの記憶の続き?それって、この前の後の話?」

 

異世界ミク「実はね、2日前にその続きを見たんだ。一歌ちゃんと両親とルカのみんなで!あのあとの続きが気になるなーって!」

 

志保「えっ、そうなの?」

 

穂波「一歌ちゃんも全然そんなこと言ってなかったから、知らなかった…」

 

咲希「えー!ずるいよいっちゃん!あたし、あの後のオーロラの島ってところ気になってたんだよ!教えてよ~!」

 

一歌「……駄目。目が、脳が、腐るから駄目」

 

 

 あんな害獣ミクや咲希たちに見せたら絶対腐る…!なんとしてでも阻止しないと…!

 

 

レオニリン「え!見たら腐っちゃうの!?それはヤダー!」

 

志保「いや、腐るって比喩表現だから…。ていうか、一体なにがあったのその映像の中で」

 

一歌「…新しい町でヴィヴィさんたちと再会して渡航に邪魔なモンスターを倒したところまでなら見た」

 

咲希「えっ、ヴィヴィさんたちと再会したの!?」

 

穂波「でも、そこだけ聞くとなにも問題ないように聞こえるけど…」

 

一歌「いや、それは、その…」

 

 

 あの害獣のことを喋ってもいいのだろうか、否である。あんなの見せた時点で腐ることは免れない。

 すると、こっちのセカイのミクが一歩前に出て私に声を掛けた。もしかして、なにか助言を――、

 

 

異世界ミク「一歌ちゃん…」

 

一歌「ミク…」

 

異世界ミク「一部例外はあるけど、エクスバハマルのモンスターって基本あんなのばっかだよ」

 

 

 その瞬間、私は膝から崩れ落ちた。助言じゃなくてトドメを刺された…。ミクに…

 

 

咲希「いっちゃん!?」

 

志保「と、トドメを刺した…。…一歌の反応見るに、私たちに見せたくない理由はモンスターにあるわけか…」

 

穂波「こ、これ以上この話をつつくのは、一歌ちゃんのメンタル的にも危ない気が――」

 

 

兄「記憶再生イキュラス・エルラン

 

 

 その時、不意にお兄ちゃんの詠唱が聞こえて、そこを見るとすでに記憶再生の準備を終わらせているお兄ちゃんがいた。流石に驚いたので勢いよく立ち上がった。

 

 

一歌「ちょ、お兄ちゃん話聞いてた!?」

 

兄「え?要するに前回の続きから見せればいいんだろ?」

 

一歌「いやそうなんだろうけどそうじゃなくて…!」

 

 

 駄目だこの人なにも分かってない…!

 だけど、無情にもどんどん席に付いて行ってしまうため、私はフラフラの体を咲希たちに支えてもらいながら席に付くことができた。

 

 重い首を上げて記憶映像に顔を向けた。

 

 

兄「前回からの内容はさっき一歌が言った通りで、その後にモンスターたちの墓を建てたんだ。で、その後――」

 

 

 映像はお兄ちゃんが浜辺の岩に座って休憩しているところから始まっていた。

 休憩しているお兄ちゃんに、少し離れた先で集まっていたロロさん一行からヴィヴィさんが外れて、恐る恐るといった形でお兄ちゃんの方に近づいてきていた。

 

 

兄(16歳)『…なにかあったか?』

 

ヴィヴィ『えっと、ネクロさんは以前封印都市ルバルドラムの結界を再構成し―――』

 

兄(16歳)『――――』ザワ…

 

 

 ヴィヴィ編・完。

 記憶映像が始まってたったの5秒で話終わった…!私たち全員が見透かしたような表情になった。映像のお兄ちゃんも完全に“ヤル”気になってるし!

 緊迫の数秒が、何十分にも感じたのは決して気のせいではない。

 

 

ヴィヴィ『あ、えっと…“してない”…ですよね?』

 

兄(16歳)『―――』

 

 

 …あれ?

 

 

ヴィヴィ『有名になるのは良いことだけど、その分大変になるって、私も分かるから』

 

兄(16歳)『…お前たちの商団って、そんなに有名なのか?』

 

ヴィヴィ『前までは、そうでもない普通の商人だったんだけどね』

 

 

 ヴィヴィさんはお兄ちゃんの隣に座ると、その説明をしてくれた。

 

 

ヴィヴィ『1年くらい前かな、私たち、ドルド村って言うところで山崩れが起きてね。その山の中から大きな扉が見つかったの』

 

 

 うん、その山崩したのお兄ちゃんですね。

 そしてその扉の奥はその後にお兄ちゃんが攻略したダンジョンですね。

 

 

ヴィヴィ『村の人たちと一緒にその扉の中に入ってね。その奥の、普通の宿屋の一室くらいの空間に財宝があったんだ』

 

 

一歌「…お兄ちゃん、そのダンジョン攻略したって言わなかったっけ?」

 

兄「したぞ。だからダンジョンの中にはモンスターもいないし罠も全部機能を失ったからな。元々このダンジョンはロロの依頼を受けなかったら見つけることもできなかったし。だから見つけた宝の半分はロロ達に残したんだ」

 

レオニミク「なるほどね。でもそれで…」

 

 

ヴィヴィ『それから私たちのお宝目当てで変な人たちが近づくようになっちゃって。それでいろいろあって、最終的にロロちゃん、手に入れた財宝を高い買い物をしたあと、孤児院とかに寄付したんだ』

 

兄(16歳)『…そうか』

 

ヴィヴィ『だから変に有名になっても大変ですから、ナイショ、ですね』

 

 

 そこで、気になったのかロロさんとココさんも近づいてきた。

 

 

ココ『ヴィヴィ、何の話をしてるの?』

 

ヴィヴィ『ココお姉ちゃん。えっと…1年前は有名になって大変だったなって、話してたんだ』

 

ロロ『なんでその話を…あぁ、そうか。過度な名声って、結構大変だからな…』

 

ココ『なるほどね。私も黙っておくよ』

 

兄(16歳)『――――』

 

 

 え、これ、どうなの?セーフ?アウト?どっち?

 

 

兄「なにやら、今回は結界の件は勘違いと思ってもらえたらしくてな…。それに、ロロ達のために残した財宝が逆にみんなを苦しめてたって聞いて、流石に心に来たよ…」

 

志保「ホッ……。まぁ、善意で残したわけですしね…」

 

 

 良かった…!セーフだった。このまま開始五秒で終了するところだった…!いや、良いのだろうか、これ?結局この続きを見ることになるってわけだよね?

 それと、これには流石のお兄ちゃんも堪えたみたい。善意で残した財宝が原因でロロさんたちが大変な思いをしたっていう本末転倒な結果だから、仕方がないけど。

 

 

ロロ『そういえば、通った後に滅茶苦茶になった山道見たときは本当に肝が冷えたな…』

 

ココ『確かに。崩れるのが早かったら確実に巻き込まれてたし…。でも、あのモンスターの大群は山崩れが起きなかったら対処しきれなかったろうし…煮え切らないね』

 

 

 そうか、お兄ちゃんが記憶を消した影響で自分たちが通った後にモンスターの襲撃がきて、その後突然山崩れが起きたことになってるのか。

 

 

ロロ『古くて危険な道で、住民も近年は使ってなかったらいしから、事なきを得たが…』

 

ヴィヴィ『山も禿山で、朽ちた祠くらいしかなかったみたいだもんね』

 

兄(16歳)『…壊しちゃいけないのか』ボソッ

 

 

穂波「えっ?」

 

咲希「何言って…」

 

 

兄(16歳)『普通は破壊可能オブジェクトは壊したり落とせばアイテムや隠し通路が出てくるもんなんだがな…』ボソッ

 

 

レオニミク「相変わらずのゲーム感覚…」ヒソヒソ

 

一歌「お兄ちゃんって、こういうとこ静かに壊れてるんだよね…」ヒソヒソ

 

志保「でも実際壊したからダンジョンが出てきたわけだし、成功経験が拍車をかけてるのかもね…」ヒソヒソ

 

 

 本当にお兄ちゃんってこういうとこ…。

 

 

兄「でな、それから一日宿屋で過ごして、港で合流して島に向けて出発したんだ」

 

レオニリン「異世界の船って、どういう感じなの!?あたし、すっごい気になる!」

 

兄「ん?あぁやっぱり異世界だからか、木製の船が主流だな。ちなみに、俺が乗った船はこんな感じ」

 

 

 映像を飛ばすと、港での映像に切り替わった。港というだけあって漁業用のそれなりに大きい船があったりしたりもしたけど、ロロさんたちが集まっているところにズームインすると、周りの船とは一回りほど大きい船が用意されていた。

 

 

兄(16歳)『待たせたな。これがお前たちの船か…』

 

ロロ『ああ。手に入れた財宝はほとんど寄付したが、手元に残していたもので、予定のものよりいいものを買ったんだ』

 

ココ『ロロ、ネクロ、早く乗りな』

 

ロロ『分かったって。少し待っててくれ』

 

ヴィヴィ『ロロちゃん、手貸すよ』

 

ロロ『ヴィヴィ、ありがとう』

 

 

 左脚が不自由なロロさんに手を貸して船に乗るヴィヴィさん。その後に付いて行くようにお兄ちゃんも船に乗った。

 

 

一歌「それで、しばらくは船旅になるの?」

 

兄「あぁ。異世界の海は透き通ってて、泳ぐ魚とかもよく見えるんだ」

 

咲希「へぇ~!それじゃあ、船から見る海はすっごく綺麗だったんですね!見て見たいです!」

 

兄「あぁ、綺麗だった・・・・・・みたいだな」

 

穂波「え、見た、んですよね?」

 

兄「いや――」

 

 

 

兄(16歳)『お゛、ヴ、あ゛、オ゛エ゛ェ…

 

 

 

 そこには、甲板で寝そべって唸り声のようなものを上げているお兄ちゃんの姿だった。あからさまに顔色悪いけど、これって…

 

 

兄「船酔いしてそれどころじゃなかった…」

 

一歌・咲希・穂波・志保・レオニミク・レオニリン「「「「「「――――」」」」」」

 

異世界ミク「陽介って、船酔いするタイプだったんだね~」

 

兄「俺もこの時初めて知ったよ…。これ以降はもう船には乗らないって心に決めたね」

 

 

 車とか電車では酔ってるところ一度もなかったから考えもしなかったけど、お兄ちゃんって船酔いするタイプだったんだ…。

 こんな調子で大丈夫かな、お兄ちゃん…。

 

 

次回に続く。

*1
青竹色

*2
【トリコ】に登場する様々な食材のこと




異世界セカイの住人解説


・【たぬき建設】の社員
原典:【どうぶつの森シリーズ】 モデル:“まめきち”&“つぶきち”

 二足歩行のたぬきであり、身長は一歌と比べると少し小さいくらい。姿はまんまどうぶつの森のキャラのような見た目。

 【星のカービィ】に置いて建設などをするキャラは【ワドルディ】のイメージがあるが、それよりも陽介が過去1年間プレイしていた【とびだせどうぶつの森】の【たぬきハウジング】がモデルになっている。
 これは他に【星のカービィ】に置いて“建設”に専門的なキャラがいなかったことが起因している。


・【たぬき建設】の現場監督:ボンカッチ
原典:【星のカービィシリーズ】 モデル:ボンカース

 全長二メートル越え、肩幅1メートル越えと言う驚異の肉体を持ち、切れ目のサングラスを付けた紫色の体毛のゴリラの住民。常に背中に巨大なハンマーを背負っている。
 【たぬき建設】なのにゴリラである(本人や周りは全く気にしていないうえ、【たぬき建設】にはたぬき以外のどうぶつもいる)。現場監督と言う役職を任されており、厳つい顔や見た目と相反して本人の気質は物凄く優しい。性格はアニメよりで自分がお辞儀の際に背中のハンマーを相手にぶつけてしまうことを自覚しているため、今回一歌たちにあいさつする際はハンマーを壁に立てかけるという配慮を見せた。そして、レオニリンにより“ボンボン”というあだ名をもらった。

 ちなみに彼が現場監督と言う地位にいるのは陽介の想いの影響によるもの。

工事関係→力持ち&工具→星のカービィキャラで検索→ボンカース(ゴリラ)

 という連想ゲームで決まった。

 名前の由来:ボンカース+トンカチ

・金魚草

おぎゃぁ


・雇われ配管工

世界一有名な赤と緑の配管工兄弟


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