滅茶苦茶良かったです。
何気に今回初めて一歌のお父さんとお母さんの姿が出ました。ちょっとネタバレになったかもですが、俺的にはこの2人の登場も驚きましたねー。
それでは、本編どうぞ!
兄「……聞いてくれ一歌。ピンチだ」
一歌「えっ」
お兄ちゃんが突然そんなことを言い出した。
一歌「どうしたの、急に…?」
兄「ほら、昨日マスターのところで俺が異世界から持ち帰った宝石やらなにやらを換金してもらえるって言っただろ?」
一歌「そういえば…。結局、それどうなったの?」
兄「鑑定してもらった宝石自体は高値がついたんだが…、マスターに警告されたんだ。このまま換金すれば税務署に目を付けられると」
……国に?
兄「正式名称【税務署】……。ヤツらは俺の努力の結晶を平気な顔をして奪い去っていくと言われた」
いやそれ国民の義務だから。取られて当たり前のものだから。ていうか税務署と書いて“こっか”って読む人初めて見たんだけど。
まぁでも確かに出処不明の宝石で億単位稼いだら目を付けられるのも無理はな――
兄「あと確定申告とやらが面倒くさいらしい。なんなのか全然知らないけど」
そっちが本音だよね、税務署酷評している理由。ていうか確定申告面倒くさいなら会計事務所に依頼すればいいのに。
兄「でもその後社長の会社に丸投げしてるって言ってた。マスターも社長の商会に属しているんだけど、その理由も確定申告やってくれるからなんだって」
一歌「今までの下りなんだったの?もう終わっていい?」
兄「まぁ待て。ここからが本題だ。俺がこのまま大金を手にしてしまえば、必然的に魔法のことがバレてしまう可能性が高い。そうなれば――記憶創映」
お兄ちゃんがいつもの記憶再生の魔法に別の呪文を付け足したものを唱えると、空中に記憶映像が流れて――
一歌『ONITYAAAAAAANNNN!』
父・母『YOSUKEEEEEE!!』
兄『Nー!Nー!』
そこには全然身に覚えのない光景があった。なんか映画とかでよく見るウイルス対策用の防護服を来た人たちにお兄ちゃんが厳重に拘束されて連れていかれるシーンが映し出されていた。
―――なにこれ。
兄「“政府のなんか”が来て……こうなる」
一歌「“政府のなんか”…?」
兄「なんかは、なんかだよ…」
すごく漠然で抽象的な表現過ぎてこの映像がなかったらよく分からなかった。ていうか記憶の魔法って妄想も映像化できるんだ…。本当になんでもアリなんだなぁ…。
映像を消すと、お兄ちゃんがこちらに向き直った。
兄「そしてそうならないためにも宝石の換金はなしになった」
一歌「でも、お金の一部は受け取って、もう使っちゃったよね?」
兄「ソレに関してはマスターが俺が持ってたエクスバハマルの通貨を日本円に換金してくれて事なきを得た。でだ。俺が目覚めて約一月経ったわけだが…そろそろアルバイトにも手をつける頃合いになってきた。そこでだ。一歌は俺の妹だが、同時にアルバイターの先輩でもある。一歌、お前の助力が欲しい。付き合ってくれ」
一歌「まぁ、今日は特に予定とかないから別にいいけど…」
兄「ありがとう。本当に助かる。マジで助かる」
私はお兄ちゃんの対面の席に座る。
兄「とりあえず履歴書を書いてみたんだが、見てみてくれ」
一歌「なんで履歴書?」
兄「面接には必要だろ?」
一歌「アルバイトだと要らないところ多いよ。私のバイト先もそうだったし」
兄「そうなの!?」
「あー俺の金が…」と嘆くお兄ちゃん。わざわざ買ってきてたんだ…。履歴書って就活じゃないんだから必要ないのに…。最近まで寝たきりだったからそういうの知らないとはいえ、なんだか不憫に見えてきた。異世界でこれでもかって言うぐらい不憫な目に合ってきただろうに、こっちでも不憫な目に合うって本当に運悪いんじゃ…。
兄「ちくしょー、せっかく書いたのに…」
一歌「まぁ志は立派だけど…」
兄「まぁ書くところ少なかったからあんま苦労しなかったけど…」
一歌「少ない?………………あ」
お兄ちゃんが机に置いた履歴書を手に取ってみる。
そこには―――、
| ふりがな | ほしの ようすけ |
| 氏名 | 星乃 陽介 |
| 2003年4月27日生 (満17歳) | ※性別 男 |
| 住所:東京都渋谷区―――――――――○○ー○○ | 電話番号:○○○ー○○○○ー○○○○ |
| 連絡先 |
| 年 月 | 学歴・職歴(格別にまとめて書く) |
学歴 | |
| 2010年4月 | ○○小学校 入学 |
| 2016年1月 | 私情により入院 |
| 2020年6月 | 退院 |
| 現在に至る 以上 |
―――なにこれ
履歴書書いたことのない私でも分かる。絶対書き方間違ってる。上の部分は問題ないけど、下の部分が違う。入院経歴とか書く必要絶対にないでしょ。そして薄い。経歴があまりにも薄すぎる。仕方のないことだけれど、こうやって文字に起こすと経歴の薄さが物凄く顕著に表れてる。
一歌「ちなみに……履歴書の書き方って誰かに教わったの?」
兄「いや?ネット漁って見た後にとりあえず項目通りに書いただけだけど」
一歌「なんでそういうところ適当なの?」
仮に履歴書必要な場所でこんなの出したら即書類選考から落ちるに決まってる。
とりあえず駄目だ。この人に履歴書を書かせちゃ駄目だ。
一歌「とにかく、アルバイトには履歴書は必要ないから、仕舞っといて」
兄「分かった」
できればそのままシュレッダーにかけてほしいという言葉を飲み込んで、真面目に考える。
一歌「普通に考えて、経歴とか関係なしにできるアルバイトって肉体系のものだと思うんだよね。工事現場とかの…そこら辺はどうなの?ほら、お兄ちゃんなら魔法使えるから特に苦労しなさそうだし」
兄「……確かに魔法で筋力とかの強化は出来る」
一歌「だったら――」
兄「ただそういった強化魔法は完全に戦闘向きのものでな。筋力を強化する魔法を使ったら、鉄筋を風船見たく投げることができるし、ポ○キーのように簡単に折ることができる。そういうところでボロが出たら“政府のなんか”エンドになる」
一歌「“政府のなんか”エンド…」
とんでもないパワーワードだなそれ…。
兄「一応筋力の強化比率を下げることもできなくはないけど……加減したら精霊がキレるからなあ…。あんまりやりたくないんだ」
一歌「精霊怒らせちゃうんだ、加減すると…」
兄「通常の仕様とは違う面倒な仕事をお願いするからなー…。こればかりはどうにも……」
兄「―――――」
一歌「―――――」
しばらくの沈黙が、リビングを支配する。
今お父さんは自室で寝てるし、お母さんはママ友の集まりでいないから余計に静かだ。
兄「これは……ピンチだな」
一歌「そうだね…」
兄「こんなピンチは【封印都市ルバルドラム】の防衛結界が破られて伝説級モンスター1000体が解き放たれたとき以来だ」
一歌「……お兄ちゃん…なんでこんなときにそんな気になる話するの…!?」
お兄ちゃんって本当に空気を読むスキルがないっていうか…!!
兄「え、聞きたいの?」
一歌「……うん」
兄「こんな時に…ウソだろ?」
ルカ「私も聞きたいわ。その話」
メイコ「私にも聞かせてくれないかしら?」
突如私のスマホから、ルカとメイコの声が聞こえた。その方向を振り向くと、机に置いていたスマホからルカとメイコがホログラムとして飛び出していた。
兄「うおっ、すっげ」
一歌「ルカ、メイコ…」
ミク「一歌、お兄さん、ごめんね…。急に出てきちゃって…」
一歌「ミクも…」
兄「え、みんなも聞きたいの?」
ルカ「えぇ。お邪魔だったかしら?」
兄「今俺のこれからの人生について大事な相談を――」
一歌「お兄ちゃん早く」
兄「―――分かったよ。記憶再生」
こうしてお兄ちゃんの記憶映像が再生される。
ミク(なんか今かなり大事な話してたみたいだけど…。一歌のお兄さんへの対応がどんどん雑になっている気がする…。指輪売却見せられたら無理ないけど…)
ルカ(お兄さんの異世界冒険…壮絶なものだとはこの前の映像である程度分かったけど……流石に指輪売却は酷すぎる。でも頭ごなしの反論はいけない。今回のできっちり判断しないと…)
メイコ(今日、志保たちにお兄さんの異世界冒険のこと聞きに行ったけど、やっぱり実際に見て見極めないと…)
記憶映像は上空から映し出されたものから始まって、高い山に囲まれた渓谷の間にできた都市の上空に五芒星の模様がある結界が張られていた。
お兄ちゃんは都市の中で、結界がある上空を見上げていた。
兄(15歳)『これは…?まさか凍神剣以外にも魔法のようなものが存在していたとは…。封印都市とは聞いたが、なにを封印してるんだ…?』
一歌「―――?」
凍神剣以外にも…?映像のお兄ちゃんの言い回しに疑問を感じたけれど、その時映像のお兄ちゃんの後ろからとても見覚えのある人が出てきた。
エルミリア『なにも知らないのね』
兄(15歳)『―――!?』
エルミリア『知能もオーク並みなのかしら?』
ルカ「エルミリアさん普通にいるのね…」
メイコ「あんなことがあったのに、強い…」
エルミリアさんの強さ()に関心していると、周りの異世界の住人たちがお兄ちゃんの存在を認識して騒ぎ始めた。
住民1『げっ、オーク!?』
傭兵1『オークだ!!』
これ何度見てもキツイなぁ…。
ミク(異世界の人にはお兄さんがどんな風に見えてるんだろう…)
ルカ(これは確かにキツイ…。人間不信になってもおかしくないわね…)
メイコ(志保たちから聞いた通りだけど……これが4年間も続いてたなんて…)
エルミリア『――!、落ち着きなさい!!見まごうことなくオーク!だけれど本物のオークなら伝説級のモンスターすら阻むこの結界の中で生きているわけないわ!!』
住民&傭兵s『『『―――――』』』
傭兵1『確かに…』
傭兵2『うう…人間なのか、アレで…』
住民1『世も末だ…』
エルミリア『同感だわ…』
いや庇い方。庇ってくれてるのは確かなのにその庇い方が罵倒と変わらないのがなんとも言えない…。これでもうちょっと言い方がマイルドならお兄ちゃんの好感度も高いのに…。
兄「な、コイツ。酷い言いようなんだよ…」
ルカ「でも庇ってはくれてるし…」
兄「そう?庇うヤツはこんな言い方しないよ」
メイコ「……これ見てると、どっちもどっちね…」
エルミリア『オーク顔はすぐ四面楚歌になるのね。顔隠したりしないの?』
兄(15歳)『したくない』
エルミリア『……ふーん』
一歌「……お兄ちゃん。ちょっと待って」
その時、私はとある不可解な点に気付いて、一度映像を止めてもらった。
一歌「…『四面楚歌』?なんで異世界で四字熟語が…異世界に『楚』なんてないよね?」
兄「あぁ、翻訳の都合だろうな」
お兄ちゃんが画面を一回タップして右上にある歯車マークを押して言語メニュー項目をタップすると、【日本語】から【エクスバハマル語】に変化した。
一歌・ミク・ルカ・メイコ「「「「―――!?」」」」
エルミリア『イルグザック ラールラルラ トーテルグベン』
兄「原語の直訳だと『グベン軍10日目の慟哭』で分かりづらいからいい感じに日本語翻訳してあるみたいだ」
一歌「なにこのインターフェイス…」
ミク「本当にこの魔法なんでもありなんだね…」
ルカ「グベン軍になにが…?」
メイコ「そっちの方も気になるけれど、集中しましょう」
兄「続き再生するよー」
映像が再生されると、お兄ちゃんの目線が右にある店頭にある謎の果物に集中していた。
そしてお兄ちゃんがその果物の方に歩いていくと同時に――、
エルミリア『ま、まあべつに!隠さなくても慣れたら確かに吐くほどの顔じゃないっていうか…。私は嫌いじゃないっていうか―――』
兄(15歳)『すげぇでかい果物だな…!』
兄「あっ、これマジで美味いんだよ!!」
一歌「うん…」
ミク「でかいね…」
ルカ「いやお兄さん後ろ後ろ」
メイコ「話聞いてあげて…」
お兄ちゃん本当にタイミング悪すぎるって…。
するとエルミリアさんがお兄ちゃんの背中にくっついてきた。お兄ちゃん、顔顔。凄く嫌な顔してるよ…。
エルミリア『それは南方で採れるエクアの実ね。この都市の西方に広がる【獣の出づる大地】…。そこに住む神話級のモンスターを封じるために張られた大規模結界。かつての人類が多くの犠牲を払いながらもその一部を手に入れることに成功した、【嫉妬竜】エンヴィー・ドラゴン、【怠惰竜】スロウス・ドラゴン、【強欲竜】グリード・ドラゴン。3体の【大罪竜】たちの素材を使って、古代の人類が築き上げた人類の歴史の象徴そのものなのよ。…でもその際【怠惰竜】から生まれた【人類の負の遺産】もあったけれど…もう関係ないわね。800年前の失われた技術だけれど―――』
兄(15歳)『光剣顕現……闇剣顕現』
急に情報が多くなって着いていけない…。辛うじて聞き取れた【大罪竜】って、あの【暴食竜】と同レベルのモンスターってことだよね…、古代の人類凄かったんだな…。凍神剣が製造されたのが400年前だから、それより前にはもっとすごいのがたくさんあったのかな…。
………あれ、映像のお兄ちゃん、魔法の武器なんて取り出して一体なにを…、
エルミリア『この街があらゆる都市の特産品が行き交う安全な貿易拠点として栄えているのはこの結界のおかげなの!』
兄(15歳)『おいしょと』
二つの剣の先が触れた瞬間――ビームみたいなものが出て結界を破壊した。
一歌「――――」
ミク「――――」
ルカ「――――」
メイコ「――――」
―――え?
住民1『ヒィィー!』
住民2『キャアー!』
傭兵1『うわぁあああ!』
傭兵2『結界が!?』
兄「あーほら見ろ見ろ皆!モンスターだ!モンスターが責めてくるぞ!」
一歌「いや……いやいや待って!?なにやってんのお兄ちゃん!?」
ミク「防衛結界が破られてって…」
ルカ「破ったのお兄さんよね…?」
兄「いや、いけるかなって」
メイコ「そんなくだらない理由で都市一つ危険にさらしたの?」
身内のとんでもない行動に頭を抱えていると、映像ではとてつもなく大きい巨人のようなモンスターが映った。
傭兵3『サイクロプスが攻めてきたぞー!』
城壁を握って破壊する鎧をまとったような巨人が。
傭兵4『アレは、タイタン…!?』
光り輝く姿形が見えない巨大な竜が。
傭兵5『嘘だろ、不可侵級モンスターの【傲慢竜】プライド・ドラゴンまで…!』
兵隊長『大砲だ!大砲の標準を合わせろ!弾も持ってこい!!』
兵士1『拡散弾ですか!?焦熱弾ですか!?』
兵隊長『全部だバカ!!』
周りが慌ただしくなる中、お兄ちゃんとエルミリアさんは魔法で空を飛んで五芒星を形作っている内壁の中心に降り立った。
兄(15歳)『それで、ここまで連れてきてやったがどうだ?」
エルミリア『故郷の絵本でしか見たことないわよ。あんな怪物…』
向かってくる巨大なモンスターたちに映像で見ているだけの私でも息を飲む。モンスターたちとの距離はかなり離れているはずなのに、巨大であることが分かる。特にさっきの【傲慢竜】なんて他のモンスターの比でもないくらいにデカイ。
エルミリア『確か推定生息数1000体…。オーク顔。どう?』
兄(15歳)『その数じゃ流石に無理だ。たくさんの犠牲者が出る』
エルミリア『―――そお』
そう言うとエルミリアさんは腰の剣を取り出すと、いきなりその剣に雷が走った。それに付随するようにエルミリアさん自身にも雷が纏わりついた。
兄(15歳)『お前、それ…』
エルミリア『これはあんまり使いたくなかったんだけど…。……ふっ、醜い顔。でも隠さないのね。ぶきっちょ。バカね。………私と同じで!!………逃げて』
エルミリアさんは物凄いスピードで空を飛んでモンスターたちに向かっていった。
一歌「お兄ちゃんなにやってるの!?これってかなり不味いんじゃ――!」
兄「あぁ、だから…」
エルミリア『いたっ!?』
兄「張り直したんだ」
映像の結界が元通りになって――、え?
メイコ「お兄さん、さっきこれ失われた技術って…」
兄「いや、結界を形成してた精霊にお願いしたら普通に元に戻してもらえたけど?」
ルカ「そんな簡単に…?」
兄「まぁ精霊からめっちゃクレーム受けたけど…」
ミク「クレーム…」
住民1『た、助かったー!!』
結界が元に戻ったことで大喜びする住人の人たち。だけど…
住民2『しかし…なんだったんだ一体?』
住民3『何者かが結界を破壊した…?』
傭兵1『この辺で何か光ったのを見たが…』
その時、住民全員の視線がお兄ちゃんに集中する。まぁこれに関しては自業自得だからなんとも言えないけど…。
傭兵2『もしかして噂の“魔法オーク”…?』
傭兵3『あのオークが…』
そんなとき、エルミリアさんの肩の装備が外れた。
メイコ「今、エルミリアさん自分で…」
一歌「えっ、そうなの?」
メイコ「お兄さんに視線が集中してた一瞬にやってたわ」
なんでそんなこと…
傭兵4『落ちたよ、“剣聖姫”さん』
エルミリア『あぁ、すまないな』
傭兵5『見てたよ、さっきのアレ!さっすが“剣聖姫”だな!噂に違わぬものだった!』
傭兵6『やっぱすげぇぜ。【憤怒竜】の装備…。羨ましい限りだぜ』
傭兵7『あんなにすごい装備なんだから大事にしなきゃ』
エルミリア『――――。留め具が切れたようだ。なにせ古いものだからな。伝説の武具といえば聞こえはいいがつまるところ骨董品だ。』
住民3『そんなこたぁ……』
周りに沈黙が訪れる。
傭兵5『骨董品か…』
傭兵6『【憤怒竜】の装備が骨董品か…。まぁ、作られて大分時間経ってるし…』
住民4『案外そうかもしれんのぉ…』
住民5『古いもんだしなぁ…』
傭兵8『数百年もメンテなしで初めての不具合が出たとか?』
傭兵9『王都の大図書館に結界についての資料があると聞いたが…【大罪竜】由来のものだからな。それについての本もあるかもしれないな』
住民6『もう失われた技術なんて言ってる場合じゃねぇよ!!』
そっか。エルミリアさん、周りに結界が不具合で壊れたって思わせて…!
本当にすごくいい人だ。
ミク「エルミリアさんのおかげで助かったね」
ルカ「お兄さんが全ての元凶だったけどね…」
メイコ「本当に、いい人なのね。出会いに恵まれてるわ」
一歌「エルミリアさんに感謝しないと駄目だよ…」
兄「――――」
エルミリア『命拾いしたわね。オーク顔』
兄(15歳)『……俺が結界壊したって言わないのか?』
エルミリア『ご飯奢って!それでチャラ!』
エルミリアさん…!
一歌「この後二人でご飯食べるんだよね?何食べたの?」
ミク「私も、異世界の食事とかすっごい興味ある!」
ルカ「やっぱりあれほどのことして庇ってくれたんだから高級料理とかじゃないかしら?」
メイコ「確かに。むしろそれくらいしないとおかしいわよ」
兄「―――――」
兄「俺は逃げた」
一歌・ミク・ルカ・メイコ
「「「「なんで!!??」」」」
なんで逃げたの!?奢りは!?エルミリアさんとの約束は!?
兄「観ろ。記憶創映」
お兄ちゃんが再び妄想を映像化する魔法を唱えるとそこには…
エルミリア(妄想)『よーしオーク顔。次はあんパン買ってこいよ。走れー!』
本人が絶対にしないであろうゲス顔でお兄ちゃんに命令するエルミリアさんが。あと鶏肉頬張ってるし。
兄「いいか一歌。こういう輩からの恐喝は最初の小さな要求を突っぱねること重要なんだ。でないと永遠にカモられ続けることになる!」
一歌「言わない!エルミリアさんこんなこと言わない!!」
ルカ「嘘でしょ…」
メイコ「ディナーへの誘いが恐喝扱い…?」
ミク「どれだけ他人を信用してないの…?」
確かに異世界人のこと信用できる要素なんて今までなかったけども!エルミリアさんは違ったのに!確かに本人の言動も酷かったけども!
私たち全員が項垂れていると、不意にお兄ちゃんが口を開いた。
兄「しっかし、精霊にお願いか…。よし、やってみよう」
お兄ちゃんは席を立ちあがると玄関から靴を持ってきてベランダを開けた。
一歌「どこに行くの…?」
兄「マスターのところだ。マスターにお願いすれば、仕事を紹介してもらえるかもしれない」
お兄ちゃんがよく行く喫茶店のマスターか…。そう言えばそのマスターも謎が多いんだよなぁ…。二ヤリくん繋がりってのもあるけど、異世界の宝石や通貨を換金してくれる時点で普通の喫茶店じゃない。
案外――と言うよりお兄ちゃんにはそこしかないかもしれない。
一歌「喫茶店のマスターが…?もしかしてそこで働かせてもらうとか?」
兄「どうだろうか…。とにかく、イチかバチかで行ってくる。あ、戻るまでの間、これ使っててくれ」
お兄ちゃんから手渡されたもの――それは【記憶再生の呪符】だ。それを数枚もらった。魔法が使えない私でも使えるもの。貼った対象の記憶を閲覧することができる呪符で、昨日お兄ちゃんにお願いしていたものだ。
私しか知らない部分もあるから、咲希やミクたちに私の記憶を経由してお兄ちゃんの記憶を見せるためにお願いした。
兄「じゃ、行ってくる」
その言葉と共にお兄ちゃんは風の魔法で空高く飛んで行った。
ルカ「大丈夫かしら、お兄さん…」
メイコ「あれ見る限り社交性とかなさそうだし…仕事なんてそう簡単に見つかるものかしら?」
ミク「異世界の人は信じないのにマスターのことは凄く信じてるけど、なんでなんだろう…」
一歌「……とにかく、他の、見る?」
メイコ「そうね…。お兄さんの人間不信の理由の一端、もっと知っておかないと…」
ルカ「嫌な予感しかしないけどね…」
ミク「その予感、当たってるよ…」
この後、この日の午前中は記憶閲覧で終わった。
なお、ここまでの記憶再生でルカとメイコが遠い眼をしていたのは別の話である。
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