知らない人のためにも補足説明つけるので、見てってください。
2025年3月16日
・マスターの設定一部改訂
兄「一歌。今度よかったら咲希さんたち連れてマスターの喫茶店に行ってみないか?」
一歌「えっ?」
平日の夜。お兄ちゃんからこんな提案をされた。
一歌「どうしたの、急に」
兄「マスターのことを紹介したいんだ。あの人にはいろいろお世話になったからな」
マスターかぁ…。お兄ちゃんの話のところどころで出てきている喫茶店のマスター。ニヤリくん関連の場所でお兄ちゃんが持ち帰った異世界の宝石や通貨を換金してくれる(正確にはマスターを経由して社長が換金)摩訶不思議な人物。
ついこの前の、お兄ちゃんの仕事問題の時だって――、
兄『父さん母さん、一歌聞いてくれ!!記憶再生』
~記憶映像開始~
兄『マスター!俺に仕事を紹介してください!』
マスター『いいよ』
兄『ありがとうございます!!』
~記憶映像終了~
ちなみにこの間、わずか3秒。
一歌・父・母(((返事が早い!!)))
兄『仕事を紹介してもらえたんだ!!まだ数日かかるらしいけど!』
聞いてくれのあとに記憶映像見せるのはいろいろ矛盾しているし、記憶映像のマスターの顔なぜか見えなかったし、まだ他にもツッコミたいところはあったけどお父さんとお母さんも喜んでた。
だから余計にマスターがどういう人物なのか分からなくなったから、正直興味はあった。
一歌「そういえば……例の返事は返って来たの?もう数日経ってるらしいけど…」
兄「あぁそのことについてなんだが、紹介自体はしてもらえた」
一歌「えっ!!じゃあ仕事は決まったってこと!?」
兄「でもどういう仕事になるかーとか、そういうのはまだ決まってない。なにせいきなりだったからな。あっちでも時間がかかるみたいだ。それに今取り組んでる仕事もあるみたいだし……配属先とかはもうちょっと後になってから決まる予定だ」
一歌「もう決まってるなら、言ってくれればよかったのに…」
兄「まだ完全にこういう内容で働くって決まったわけじゃないからな。決まってから伝えようとしてたんだ。あ、父さんと母さんにはネタバレ禁止な?」
一歌「まぁ、いいけど…」
まさかもう仕事自体は決まっていたなんて…。あれから本当に一週間も経っていないのに早すぎる。本当にどういう職場なんだろう…。
兄「それに、マスターも一度一歌たちに合ってみたいらしい」
一歌「えっ、私たちに?」
兄「実はなんだが、一歌たちが初めてやったライブ。あそこにマスターも行っていたらしいんだ」
一歌「あそこにいたの!?」
まさかあのライブにマスターもいたなんて…。
兄「それで、初回限定で料理のお代は一歌たちのサインでいいよって言ってくれた」
一歌「えっ!?そ、そこまで…?いいの?」
兄「本人が良いって言ってるから問題ないって。それじゃあ、俺はそろそろ部屋に戻るよ。………あ、光の精霊さん。お疲れ様ですー。いやー今日もいい光具合で俺の心も晴れやかで……それではおやすみなさい。あ、音の精霊さん――」
一歌「―――――」
お兄ちゃんは時折、魔法のキレをよくするためにああして精霊と談笑している。事情を知っている私だからあんまりなにも思わないけど………何度見ても気味が悪いと思ってしまう。
そんなお兄ちゃんの背中を見送った後、私はバンドのグループLI○Eに先ほどの内容を打つのであった――。
* * * * * * * *
~後日 放課後~
咲希「いっちゃーん!早く早くー!」
一歌「もう、咲希ったら、そんなに急がなくて大丈夫だって…」
志保「そんなに急がなくても行く場所は待ってくれるでしょ…」
穂波「咲希ちゃん。今日の朝からウキウキだったもんね」
咲希「だってだって!ニヤリくんとクロスくんが来てた場所だったんでしょ!?また会えないかなーって思ったらさ!」
今日から咲希はこの調子だ。これから行く喫茶店でこの前お兄ちゃんが二ヤリくんに会ったって言うから、もしかしたらまた会えるかもしれないと喜んでいた。
志保「いや、そこに行っても必ず会えるなんて確証はないし、お兄さんと二ヤリが出会ったのは偶然なんでしょ?だったら居る可能性は低いでしょ」
咲希「低くてもいるかもしれないじゃん!?クロスくんのこと、もう一回モフモフしたいしー!」
志保「そっちが本音でしょ…」
穂波「ははっ……そうだ。そろそろ、時間じゃない?お兄さんが近くで待ってるんでしょ?私たちも早くいかないと」
一歌「そうだったね。そろそろ行かないと」
学校が終わった後、お兄ちゃんとは人気のない場所で待ち合わせをしている。そこから風の魔法で直接飛んでいくらしい。相変わらず風の魔法は便利だ。
目的地まで歩いていく。場所は学校から近い人通りの少ない路地。しばらく歩くとそこには―――、
兄?「一歌。みんな。ようやく来たか」
一歌「えっ、あの……エルミリアさん?」
そこには……黒いパーカーを身に纏ったエルミリアさんがいた。
間違いない。滑らかな金髪に翡翠色の瞳、すっごく綺麗な顔に華奢な体、透き通るような声。全部映像で見たエルミリアさんの姿そのまま。
咲希「えーッ!エルミリアさん!?」
穂波「なんでここに…?」
志保「もしかして、世界超えてきた…?」
兄?→エルミリア(兄)「違うぞ。俺だよ、陽介だよ」
一歌「えっ、お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんを自称するエルミリアさん。いやお兄ちゃん要素全然ないよ!?
志保「どうなってるんですか、それ…」
エルミリア(兄)「変身魔法さ。それでアイツの姿になってるんだ」
穂波「なんでわざわざエルミリアさんの姿で…?」
エルミリア(兄)「マスターに言われてな。男の姿で女子高生と歩いてたら「なんかヤバくなる」ってさ」
一歌「なんかヤバくなるってなに?漠然としすぎじゃない?」
咲希「ていうかお兄さん。そんな魔法あるなら異世界でも顔変えればよかったんじゃないですか?」
咲希がそういって初めて気づいた。確かにそうだ。こんな魔法があるのなら異世界でもオーク扱いされずに済んだのに、どうして…。
エルミリア(兄)「咲希さん、簡単に言わないでほしい。肉体が変われば心もどんどん変わっていく…。自分の同一性が保てなくなってしまう危険がある。よほどのことがない限り使ってはならない禁断の魔法なんだ!!」
そんな魔法を待ち合わせのためだけに…!?
私を含め全員が頭を片手で抑えていると、お兄ちゃんが声を上げた。
エルミリア(兄)「それじゃあ行こっか」
一歌「うん…」
お兄ちゃんがフードを被ると、先頭になって歩き出した。
穂波「ちなみになんですけど、その服のサイズピッタリなんですね。新しく買ったんですか?」
エルミリア(兄)「あぁこれ、変身魔法強めにかけると服のサイズも変わるんだ」
一歌「本当になんでもありだね…」
雑談を交えながら、喫茶店までの道のりを歩いた。
* * * * * * * *
エルミリア(兄)「ついたぞ。ここだ」
一歌「こんな近くにあったなんて…!」
お兄ちゃんと合流した場所から数分歩いた先、住宅街の奥にヒッソリと建っている喫茶店があった。この場所は宮女からも近くて、まさかこんな場所にあったなんて気づきもしなかった。
エルミリア(兄)「マスター、こんばんわー」
【喫茶どんぶら】と書かれたのれんをくぐって、横開きの扉を開けると、モノトーンでシックな雰囲気が出てる、アンティークな喫茶店だった。――ただ入口から見て左側にあるお座敷とふすまがミスマッチだけど……ふすまの柄はモノトーンだ。
だけど――、
エルミリア(兄)「あれ、マスターいない…?」
店主がいるはずのカウンター席の奥に、人はいなかった。厨房にでもいるのかな?
エルミリア(兄)「おーい、マスター!」
お兄ちゃんが呼ぶけど、返事はない。
そんなときだった。
???「いらっしゃい」
穂波「えっ、今、どこから…?」
志保「天井にスピーカー……は、ない。じゃあ、どこから…?」
突如喫茶店全体に響きわたるような男性の声が聞こえた。志保がスピーカーを探すけど、見つからない。それにこの声、聞き覚えがある。前にお兄ちゃんに見せてもらったマスターとの会話映像の際に聞いた、マスターの声そのもの。
咲希「あ!カウンターのテーブルにあるよ!見たことあるけど…名前、なんだっけ?」
一歌「あれって、【蓄音機】…?」
咲希が指さしたそこには、蓄音機が置かれていて、そこからマスターの声が響いていた。私たちが来た時点でそうなるようにしてたのかな…?でも、蓄音機にそんな機能ってなかったような…。そもそも古いものだし…
???→マスターの声(蓄音機)「この録音を聞いているときには、俺は今その場にはいない。野暮用ができたから、少しの間店を開ける。■■ロアのところに行ってくるから、今日は帰れない。だから―――」
志保「えっ、なに?」
穂波「誰…?」
咲希「カラフルだ…!」
その時、厨房に繋がっているであろう場所から3人のカラフルな人たちが現れた。
赤、青、黄色の三人組で顔にそれぞれの色でシルクハットみたいな形のものがついてる。―――なにこの人たち。
マスターの声(蓄音機)「順番に紹介しよう。まず赤いのが【ルパンレッド】」
赤いの→ルパンレッド「――――」
マスターの声(蓄音機)「次に青いのが【ルパンブルー】」
青いの→ルパンブルー「――――」
マスターの声(蓄音機)「最後に黄色いのが【ルパンイエロー】」
黄色いの→ルパンイエロー「――――」
マスターの声(蓄音機)「彼らは【怪盗戦隊ルパンレンジャー】。俺がいない間の店番をお願いしている。やっぱり経験者*1に頼むのが一番だからね」
―――これ、どこからツッコんだらいいんだろう…。
情報量が多すぎて考えることがバカらしく思えてきてしまう。
マスターの声(蓄音機)「ちなみに君たちのサインは会計の時に書いてもらうことにするから。それじゃああとはお願いね」
そうしてマスターの声は聞こえなくなった。とりあえずマスターが不在でこの人たちが代わりに接客してくれるということなのだろう。まさか店主不在とは思わなかったけれど…。
エルミリア(兄)「なるほど…そういうことか。とりあえず、席はどこでもいい?」
ルパンレッド「―――」コクッ
レッドさんが私たちをお座敷の前の席に案内してくれると、私たちはそこに座った。この席結構広いな…。それと、壁側にテレビがあってその横にアンティークな家具の中には似合わないカラフルな鳥のロボットのようなものがあった。なんなんだろう、あれ。
今度はイエローさんが私たちにメニューとお冷を渡してくれた。ちなみにブルーさんはさっき出てきた厨房の方に戻っていった。
咲希「すっごーい!いろいろある!」
穂波「どれにするか迷うね」
志保「生姜焼き定食って……こういう本格的なのもあるんだ…」
いろいろなメニューの中から、各々の好きなものを注文した私たちは、改めてお兄ちゃんに視線を向けた。
一歌「お兄ちゃん、あのさ。情報量多すぎてどこから聞いたらいいのか分からなかったけど…とりあえず……変身魔法、解除しないの?」
咲希「そういえばその魔法、変身時間が長くなると精神に影響出るって言ってましたよね…?」
エルミリア(兄)「まぁそうなんだけどさ、マスターから今日は誰かに変身した状態でいてほしいって言われていてな…。理由は知らないが」
穂波「でもそのマスター不在なんですよね…?」
志保「そもそも何のために変身したままでいる必要が…?」
本当にマスターはなにを考えているんだろう。意味不明すぎる。
すると、イエローさんが私の背中の方を通り過ぎていって、お兄ちゃんの前で立ち止まると、一冊の本を手渡した。
エルミリア(兄)「ありがとうございます」
ルパンイエロー「――――」コクッ
イエローさんがそのまま去っていくと、お兄ちゃんがどんな本を渡されたのか見てみる。題名は――
だった。ブレないなぁ…。
咲希「お兄さんって、本当にカー○ィ大好きなんですね…」
エルミリア(兄)「そりゃもちろん。俺にとって【星のカー○ィ】は生きる意味そのものだからな。【星のカー○ィ】への想いが、あの過酷な異世界で俺を生かし続けていたんだ。「還ってカー○ィのゲームをプレイするんだ!」……って」
穂波「それは……すごいですね…」
エルミリア(兄)「それに【星のカー○ィ Wii】の“チャレンジステージ”と【星のカー○ィ 20周年スペシャルコレクション】の“もっとチャレンジステージ”でまだ全部プラチナメダル取れてなかったのが心残りでな…」
志保「はぁ……(割とどうでもいい…)」
エルミリア(兄)「小2から小6までの四年間、他のカー○ィのゲームと並行しながらずっとプレイし続けていた」
一歌「えっ、同じゲームを4年間も!?執念が凄いね…」
確かにやり残したことは心に残るけど、それでもずっと長く同じゲームをやり続けていたなんて…。当時のお兄ちゃん、ほとんどの時間部屋で籠ってゲームばかりやってたから知らなかったけど、そこまで…。
エルミリア(兄)「特に20周年スペシャルコレクションには過去作品が6つも収録されてるからな…。異世界に行くまでになんとかその6つはエンディングまで行けたんだが…、収集アイテムを集めきれてなかったりと何気に中途半端でな」
一歌「並行してやってたって言ったけど、その間にも新しいゲームとか出てるはずなのに…」
エルミリア(兄)「いいか皆…ここまでしないと、青春賭けねぇと【星のカー○ィ 20周年スペシャルコレクション】は全クリできないし、“チャレンジステージ”でプラチナとれねぇんだよ……」
一歌・咲希・穂波・志保
「「「「――――――」」」」
お兄ちゃん、家庭用の1人プレイモードのゲームに大事な青春を…
お兄ちゃんがコップに注がれた水を一口飲むと、少し考え込んだ後に口を開いた。
エルミリア(兄)「……「TⅤゲームなんて、時間のムダだ」」
一歌「お兄ちゃん…?」
エルミリア(兄)「どこかの誰かが言った言葉で、誰かは一度は思うことだ。皆だって、そう思ってる顔してるぞ?」
穂波「えっ、そんなことは…」
咲希「熱心に、真剣に取り組むところは凄く立派ですし…」
エルミリア(兄)「取り繕う必要はないさ。確かにゲームは、遊びの延長線に過ぎないって言われていて、プロゲーマーを目指してでもない限りはただの遊びだ。だけど、こういったゲームをやっていたおかげで、異世界で助かったこともあるんだぞ?」
志保「えっ、そんなことあったんですか?」
確かにアクションゲームとかだったら技に転用とかできそうだったりするけど…。
どんなことがあったんだろう。
エルミリア(兄)「あぁ。例えば……記憶再生」
お兄ちゃんがお座敷側の方に記憶映像を映し出すと、私たちの視線が集中する。
エルミリア(兄)「これは、道中で魔物の群れと遭遇戦になったときの話なんだが…」
部下男1『オークが!鉛玉くれてやる!』
部下男2『撃て撃て!ヴィヴィちゃんのサポートを怠るな!』
部下男3『姐さん下がっててください、あのオーク強いです!』
ピンク髪の少女『やぁ!!はぁ!!』
エルミリア(兄)「そこで居合わせた商人の一行と協力してそれを撃退した時の話だ」
一歌「協力!?お兄ちゃん思いっきり攻撃されてるけど!?」
映像のお兄ちゃんはピンク髪の女の子に刀で攻撃されてその後ろから帽子の女性と男性たちが銃を持ってお兄ちゃんに攻撃している姿が映し出されていた。
志保「協力してお兄さんを倒そうとしている光景にしか見えないんですけど…」
穂波「ある意味いつも通りと言えばいいのかな…?」
咲希「お兄さん……」
エルミリア(兄)「あ、先過ぎた。早送り早送りっと…」
部下男1『あ、ぐ…!』
部下男2『う、動け…!』
部下男3『く、クソ…!』
燃える木々の中で地面に転がっている複数人の男の人たち。ざっと数えるだけでも10人以上。
帽子の女性『クソッ、このバケモノオークめ…!』
赤髪の女性『ヴィヴィ、逃げて!!』
ピンク髪の少女『こ、来ないで…!!』
うつ伏せになって倒れてる帽子の女性に、尻もちを着いて土煙で汚れた赤髪の女性、ピンク髪の女の子は泣きながらお兄ちゃんに向けて銃を向けて引き金を何度も引いているけど弾切れなのか“カチッ”“カチッ”っと虚しい音が鳴り響き、さっきまで女の子が持っていた刀は今お兄ちゃんの右手にあった。多分早送りしている間のシーンで奪ったんだろうけど……。
お兄ちゃんが悪役にしか見えない…!!
エルミリア(兄)「とまぁ、こんな感じで平穏かつ穏便に制圧したんだが…」
一歌「平穏かつ穏便に制圧ってなに?」
決して交わらない言葉が交わってとんでもないパワーワードになってる…!
それにお兄ちゃんの解説と映像に大部齟齬があるし。
兄(15歳)『俺はオークじゃない』
ピンク髪の少女『ヒイッ!!……えっ?』
兄(15歳)『俺は、オークじゃない』
ピンク髪の少女『あ、あなたは…去年の『越冬祭』のときにも狩られかけた…あの…』
兄(15歳)『あぁ、村に入った途端傭兵と村人総出で囲まれたっけ。あの時いたのか』
ピンク髪の少女『はい……。返り討ちに遇いましたけど…。二度もごめんなさい…』
越冬祭……あ、思い出した。この子、前にお兄ちゃんに越冬祭の映像見せてもらったときに真ん中の机の席にいた女の子だ。よく見ると、赤髪の女性も帽子の女性も同じ席に座っていた人たちだ。
すると、今見ている映像の横に新たな映像が流れ始めた。
エルミリア(兄)「あ、記憶の精霊が過去の記憶を…」
兄(14歳)『いいか?俺はオークじゃない』
村長『はい……。でも、顔が…』
兄(14歳)『顔が?』
村長『あ、いや…』
村人1『顔が…』
傭兵1『顔がなぁ…』
傭兵2『それに銃弾全部効かなかったし、噂の“魔法オーク”じゃ…』
兄(14歳)『誰がオークだって?』
傭兵2『あ、すみませんなんでもないです』
ボロボロになった村人や傭兵さんたちが、ナイフを片手に持ったお兄ちゃん相手に全員正座してた。その中には今見た映像の女の子たちも混じっていた。
あの越冬祭の前にも狩られかけたんだ、お兄ちゃん…。
志保「こんな衝撃的な出会いしてたのにこの人たちお兄さんのことすっかり忘れてたのか…」
穂波「全員ボロボロになって正座させられてるのが…」
ピンク髪の少女『でもあのあと、お祭りに一人で参加してましたよね…?あんな目にあったのに…』
咲希「えっ、この後に普通に参加してたんですか!?」
一歌「お兄ちゃんメンタル鋼すぎるでしょ…」
咲希たちにもこの前お兄ちゃんからもらった『記憶再生の呪符』で越冬祭のところは見せたけど、改めて壮絶過ぎる…。
お兄ちゃんが差し出した手を女の子が握って立ち上がると、なにかを言い淀んでいた。
ピンク髪の少女『それに、ル――』
兄(15歳)『とりあえず、全員の怪我を治そう』
お兄ちゃんが自分の体に収納魔法の入り口を作ると、そこから呪符を取り出していた。そしてその光景を見た女の子がとても驚いた表情を浮かべたあと、お兄ちゃんが呪符を空中に向かってばら撒いて――、
兄(15歳)『疾風操作!』
コップを操るのに使っていた魔法を使うと、綺麗に呪符が一枚につき一人に綺麗に張られ、その傷を癒していた。やっぱりあの呪符って『回復の呪符』だったんだ…。
赤髪の女性や帽子の女性や男性たちが戸惑いながら起き上がると、お兄ちゃんは燃え盛る森を見た。
兄(15歳)『この火もこれ以上燃え上がる前に消さないとな。轟水駆送!!』
お兄ちゃんが頭上に手を上げて呪文を唱えると、巨大な青色の魔法陣が出現してそこから滝のように水が出現して、辺り一帯の地面を濡らし、炎を鎮火させた。
燃えた木々を、地面を、人を濡らした轟水は雨のように降り注いでやがて止んだ。
ピンク髪の少女『―――今の、って…』
兄(15歳)『……それで、なんの話だったっけ?』
ピンク髪の少女『あの、その…』
帽子の女性『ヴィヴィ!こっち来て!』
ピンク髪の少女『ココお姉ちゃん…でも……。』
赤髪の女性『ヴィヴィ。ここは私に任せて』
ヴィヴィと呼ばれたピンク髪の女の子に変わって、赤髪の女性がお兄ちゃんの前に出た。杖を突きながら左脚を気にするように歩いてるけど、左脚が悪いのかな…?
赤髪の女性『えっと……一度とならず二度までも襲って申し訳なかった…。その、だな…。今、キミが持ってる武器はヴィヴィの大事なものなんだ……。できれば、返してくれると助かる…』
兄(15歳)『あぁ、いいぞ。ほら』
赤髪の女性『私たちのことは信用できないだろうけど、どうか………え?』
兄(15歳)『大事なものなんだろ?ほら』
赤髪の女性『あ、あぁ……。ありがとう……』
あっさりと渡してくれたことにポカンとしている赤髪の女性はヴィヴィさんの方を向くとヴィヴィさんとココと呼ばれた帽子の女性が近づいてきて、赤髪の女性からその刀を受け取った。
咲希「お兄さん、あんなことあった後で武器を素直に渡すなんて…また攻撃されたらどうするつもりだったんですか?」
エルミリア(兄)「当時の俺から見てももう殺気とかはなかったからな。それに大事なものなら手放したくないのは誰だって同じだろ?俺だってカー○ィのぬいぐるみは手放してないからな…永久保存ものだよ」
穂波「やっぱりカー○ィなんですね…」
ちなみにお兄ちゃんの部屋の壁の棚にはカー○ィのキャラのぬいぐるみが飾ってある。大分前のものだけど未だに飾っているからどれくらい好きなのかが伺えるんだよね。
そして刀を受け取ったヴィヴィさんは、とても安心した表情を浮かべた。
ピンク髪の少女→ヴィヴィ『よかった…』
帽子の女性→ココ『よかったね、ヴィヴィ』
そんな時、後ろの方から男の人達の声が上がった。
部下男4『姐さん!ココさん!ヴィヴィちゃん!離れてください危険ですって!』
部下男5『ソイツ、噂の“魔法オーク”ですよ!』
部下男6『今さっき魔法みてぇなの使ってたし、間違いないですって!』
兄(15歳)『俺はオークじゃない』
赤髪の女性『こらお前たち!ちょっと静かにしてろ!』
“魔法オーク”…。お兄ちゃん、そんな呼ばれ方してたんだ…。
ココ『まぁ、確かに。気になってはいたんだけど…。魔法なんてものが実在するなんて、この眼で見るまでは信じられなかったよ…』
―――え?
志保「魔法が信じられない…?」
一歌「ねぇ、お兄ちゃん、これってどういうこと?」
咲希「ここで異世界なんですよね?それに凍神剣とか結界とか不思議なものもあるのに、なんでこの人たちこんなに驚いてるんですか?」
穂波「もしかして…」
兄(15歳)『そんなに驚くことか?凍神剣とか結界とか現実離れしたものがあるんだから、今更じゃないのか』
ココ『……凍神剣もルバルドラムの結界も、すべて【大罪竜】たちが起源なんだ。実はオークの皮を被った【大罪竜】なんじゃないかって噂もあるし』
兄(15歳)『だから俺はオークじゃない』
ココ『あ、ごめん…』
お兄ちゃんの記憶映像を見て、ある確信に至った。今まで魔法的なものはいくつもあったけど、それらはすべて【大罪竜】に由来するものだった。凍神剣は【色欲竜】、結界は【強欲竜】【怠惰竜】【嫉妬竜】、エルミリアさんの装備は【憤怒竜】となにかしら【大罪竜】たちが関わっていた。
それに、今までの映像やお兄ちゃんの言葉の端々で……
※2話・6話より
兄&エルミリア「「貴方のために助けたわけじゃない。貴方の魔法の力の有用性を考えてそっちを優先しただけなんだから、勘違いしないで」」
※3話より
エルミリア『それに“魔法”と言う得体のしれないものを扱う!あなたたちが不信に思うのも無理はない!!』
※5話より
クレイリア『でも、私には人前で凍神剣を使う度胸も、その覚悟も、ないのに…』
※7話より
傭兵2『もしかして噂の“魔法オーク”…?』
※同話より
傭兵2『それに銃弾全部効かなかったし、噂の“魔法オーク”じゃ…』
こんな言葉が出てきていた。
今までずっと、異世界って言うから魔法があって当たり前だと思ってたけど、そんなことなかったとしたら?
私の、私たちの視線が、自然とお兄ちゃんの方へと向かっていった。
お兄ちゃんはため息を吐くと、気ダルそうに答えた。
エルミリア(兄)「あぁ。エクスバハマルでは、魔法は一般的じゃないんだ…。むしろほとんど存在してないと言っていい」
それは、今までの前提を覆す答えだった。
本当は1話でまとめるつもりだったのに、10000文字いきそうだったんで次の話まで持ち越します。
次回もお楽しみに。ていうか今回でようやくタグに着けてたほかゲームのキャラを登場させることができました。なにげにそのキャラらしい会話を書くって難しい。
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