スペファン   作:プレイヤー

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トリップ

スペースファンタジア。SF×ファンタジーなVRMMOだ。

ストーリーは並行世界間に開いたゲートによる科学機械文明と魔法文明の大衝突。

互いの技術を食い合いながら、発展していくという超スペクタクルな物語である。

 

私はそのゲームが大好きだった。

滅亡を目前とした地球で、並行世界へ思いを馳せるのは逃避であり、唯一の希望と言ってもよかった。

 

二つの並行世界は和睦し、ウルトラハッピーエンドを迎えた。

 

希望に溢れた世界に私は涙を流す。

 

「このウルトラ平和な世界が本当だったらいいのに」

 

 そして、式典で平和の祈りを祈る。

 運営の声が聞こえた。

 

『世界の融和によって可能性の種が今ここに生まれた』

『今はまだ小さき可能性の種。それを育てたいという勇者よ、名乗り出るがいい』

 

 そんな声が聞こえた。

 

『100万円の課金者専用クエストを購入しますか? Yse/No』

 

 破滅しても構わなかった。

 だって、このゲームの終了とともに私は死ぬ予定だったから。

 

 私は、全財産を課金し、クエストを購入した。

 

『勇者達をそれぞれの並行世界へ送ります。一つでいい、地球を救える未来が現れる事を望みます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、私は裸で冷たい床に寝ていた。

 

「つ、冷たぁ! どこ、ここ……?」

 

 起き上がると、冷える体をさする。

 

『チュートリアルクエスト1:電源を入れろ』

 

 赤く光る矢印が表示される。ここはゲームの中? だが、冷たさがあまりにもリアルだ。震えながら、ボタンを押す。

 明かりがついて、暖かい空気が流れてくる。

 

『チュートリアルクエスト1を達成した。報酬:携帯バッテリー』

 

「う、頭が痛い……。ここはゲームの中……なの……? ログアウト!」

 

『チュートリアルクエスト2:カバンを開けよう!』

 

 ログアウトの言葉に反応もない。ここはクエストをするしかないか。

 近くにカバンが落ちている事に気付き、そのカバンを開ける。

 

 そうして、私は身支度を整え、船のAIを起動し、ゼウスと名前を与え、ここ……宇宙ステーションの施設を把握し、NPCを2人貰ったところでチュートリアルクエストを終えた。

 

 アイテムボックスにアイテムは引き継がれていて安心した。

 ショップも変わらず使えるようだ。

 

 ひとまず、ステーション内のお店の稼働を確認して、設定を確認。アイテムボックスの中の全保有NPC達を宇宙ステーションごと解放する事にした。コミュ障でソロプレイしていた私に現実化したNPCの人生を背負うのは荷が重いが、巨大な宇宙ステーションで1人で暮らす方が非現実的だ。前の拠点と今の拠点、悩んだ末に、住み慣れた宇宙ステーションに移動する事に。ゼウスの端末アンドロイドとNPC2人のお引越しの準備をする。

 そして新品の宇宙ステーションはアイテムボックスの中へ。

 

 端末を配布して、基本給を設定。とりあえず側近扱いでいいかな。

 そも、給料とは電子的に発生させた数字で船の可処分物資との引換券でしかないので痛む懐もない。

 運営のショップに使える通貨はもちろん別である。

 

 そう、この電子通貨システム。

 要は各星系、各ステーションに独自通貨があり、各所で買い物するときにはそれを買わねばならないのだ。

 私の場合は月石。

 リアル嗜好だけあって、お金に関しては色々あって面倒だったっけ。

 もちろん、課金通貨もある。ジェムだ。白は無課金で虹が課金。

 

『皆さんにお知らせです。神託で並行世界地球を救うように言われて、並行世界に飛ばされました。1ヶ月後に地球に到着予定です。帰還は不可能です。生産部は頑張れ超頑張れ』

 

「ルナ艦長! どういう事だ!」

「エル副艦長。何って、言った通りだよ。1ヶ月後に地球に着く予定」

「準備なんてしてないぞ!」

「神様から十分な物資は貰ってるよ。それとは別に100万白ジェムも」

 

 本当は100万の課金クエストに関わらず、200万虹ジェム、100万白ジェム貰えたのだが、それは言わないでおく。200万虹ジェムは私のへそくりってことで。

 

「む。そ、それなら文句はないな。むしろ十分だな……。不安から物資の買い占めの心配がある。店の品は常に補充しないとだぞ。それと不安から治安の一時的悪化の心配がある」

「じゃあ商品補充と、全員に10万月石配っておくね。ロウくん、カオスくん、お願い。あと、当然通信機と移動手段を持ってる人は有料で強制買取ね」

 

 私は宇宙ステーションのAIに命ずる。

 

『かしこまりました』

『即座に10万月石回収してくれよう。いつも以上に品揃えを充実させる』

 

「それなら皆喜ぶだろうな」

「エル副艦長。紹介するね。神様から推薦された宇宙ステーションAIの端末、ゼウスとサイボーグの雷電、ドリアッドの落葉だよ」

「ゼウスです」

「雷電です」

「ら、落葉です」

「副艦長のエルだ。よろしく」

「エル副艦長。2人を側近にするから、案内をよろしく。ロウ。彼らにもお給料とボーナスを忘れずにね。カオスは部屋の手配と身の回りの品の販売をよろしく。最初は入り用でしょうから、今日24時までのお買い物は50%引きに加えて、ボーナス10万月石プラスして」

『お任せください』

『存分に無駄遣いさせてくれよう』

「なら急がないとな。こちらへ来てくれ」

「「「はい」」」

 

「……さて」

 

 私は席についた。このゲームには豊富なミニゲームがあった。

 現実化した今ならば……。

 

「カオス。私が保有するワクテカ出版のマンガ・小説・アニメ・映画・ドラマを全て端末にダウンロードなさい」

『読み放題見放題、月3000月石になりまーす』

「構わないわ」

 

 漫画家や小説家を育成するミニゲームで作った作品の内容が読める! ウヒョー!!

 傾向と題名と展開しか決められなかったのよね!

 何が書かれていたか気になるぅ!

 

「料理人に菓子を用意させて! 物資は豊富にあるんだし、二週間は自堕落に過ごすわよ! あ、忘れずゲームも用意してね!」

 

『そう来なくっちゃ!』

『何やってんですか……?』

 

 そうして、私は午前中は宇宙ステーションを見て周り、訓練をしてロウとカオスの報告を聞き、午後は自堕落に過ごし、新たに音楽部門を立ち上げ、ワクテカ出版の編集作業に精を出し、娯楽にテコ入れした。

 

 ドリアッドで同人作家の愛菜ちゃんとは真の友情を結べたと思う。

 

 そんなわけで、1ヶ月して異空間のゲートの扉が開き、私達は地球付近に出た。

 

 おお、母なる蒼き惑星よ……!

 

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