個人の青春に寄り添い、救うのも医者としての務めだよ。   作:橆諳髃

4 / 6
ブルーアーカイブの知識がないなりに自分で調べながら書いていますが、誤っている箇所があれば伝えていただけますと幸いです!

それではご覧ください。


Medical records.1 キヴォトスでの出会い
Examination.1 戸籍と医師免許って、どうしたら手に入りますか?


 

 

 

 

 

 

 僕は今、とある場所へと招待されていた。

正直招待された場所と、その場所を指定した組織は全く聞いたことがないために、僕と会うことで何を目的としているのだろう、と思った。

 

 でも僕はそのメッセージからは悪意を感じなかったこともあり、招待を受けることにした。

そして指定される場所に辿り着く。

どうやらキヴォトスの中心部らしくて、名称は『連邦生徒会』というらしい。

名前から察するに、前世での国連と同じような感じで、このキヴォトスという世界にある全教育機関、あるいはこの世界全てを統括する中心? と勝手にその名前から想像した。

 

 建物の中に入って受付に今回の用件を言えば、すぐに屋上にある部屋へと案内された。

そして部屋の前にあるドアを4回ノックすれば、すぐに部屋の中にいる人物から反応が返ってきた。

 

 中から入室の許可が出されたから、ドアを開けて室内に入る。

部屋の中は、まるで有名企業にある社長室のような調度品が配置されてあった。

まず目の前には来賓とくつろぎながら会話が出来るようにと、大きめの長方形の机があって、その長方形を両側から挟み込むように、机の長さにあったソファが配置されている。

 

 その向こう側はずっしりと重そうな重量でしっかりとした造りの社長机の様な机があり、その机の上では、この部屋の主と思しき人が両肘を付き、手を組ませては、組ませた手の上に顎を乗せて僕の方を見ていた。

 

「遠いところ遥々お越しいただいてありがとうございます。私はこのキヴォトスに存在する全ての教育機関を運営する組織、連邦生徒会の生徒会長を務めています。よろしくお願いしますね、”渡海 カンジさん”♪」

 

(……なんか急に帰りたくなったな)

 

 僕はこの人と会うのは初めてのはずだし、何よりこんなに綺麗な見た目をした人なら忘れるはずがないんだけど……。

その容姿とは反対に、心の中で僕は、目の前の人物を胡散臭いなと、そう感じ取っていた。

 

(それにしても、僕もよくあんな宛先不明の通信を信じてここまで来たよね……)

 

 本当に不思議だった。

普通なら宛先不明の内容なんて、中身など見ずに放っておくのがベストなはずだ。

そして僕は、自分が与えられた能力を訓練した故に、どんな形であれ悪意を読み取る能力を手にした。

これについては後付けで手に入れた能力に等しいけど、まぁ能力なんて多く保有していることに越したことはないと思う。

 

(それも普通に学生が銃を携行する世界だとね……)

 

 

 それで宛先不明のメッセージが僕宛に届いた時、僕はそれから悪意など微塵も感じなかった。

だからメッセージの中身も読んで、今日ここまで来たって話なわけで……

 

(でも携帯端末を買って、数時間後に知らないアドレス宛から届いた時は本当に驚いたよ……)

 

 まぁここまで来たからには、何でここに僕を呼び出したのかを聞くのを最低限のこととして、それ以降変な話を振られたら、相手に断りを入れて帰ることにしよう。 

 

 今更だけど、僕はこの世界で使われる携帯端末を手に入れていた。

カイザー絡みのことが終わった後、梔子さんに携帯端末を買える場所がどこにあるのかを聞いたんだ。

 

 それを聞いた梔子さんは、途端に目を輝かせてから私に任せてと言って、僕を案内してくれた。

その案内の傍ら、この街、アビドスについても話してくれた。

 

 数年前までは人であふれかえっており、キヴォトス、この世界でも有数の人口を誇っていたこと。

それに伴ってアビドス高等学校も生徒数が多く、他の学区からはマンモス校の位置づけで見られていたらしい。

 

 でも突如この街を襲った砂嵐によって、それも過去の話で、今ではいつこの街が完全に砂砂の中へ飲み込まれてしまうのかといった状況だ。

 

 確かに砂漠化と呼ばれる現象は、世間一般から見たら悪いことに見えるだろう。

砂が風によって遠くに運ばれて、人によっては健康被害を生み出す場合もあるし、何より砂嵐が起これば忽ち司会は遮られて、自分がいまどこにいるのかも分からなくなる。

 

 それに日中は容赦なく降り注ぐ日光と、その日光によって熱を帯びた砂の暑さのダブルパンチで気温が高くなる。

それによってとめどなく汗が身体中から流れ出て、身に纏う衣服も汗と、風によって運ばれた砂で動くたびに嫌な感触を伴う。

 

 夜になったらなったで日中とは真逆の環境になり、気温が一気に下がって氷点下になることもある。

だから防寒具は必須で、用意してなければ生命活動に危険信号が灯る。

 

 と、他のところで聞いたり見たりした情報かもしれないが、砂漠という単語だけで過酷な地域であるということは想像に容易いことだと思う。

 

 だが砂漠にもれっきとした、自然に対する役割があることは確かだ。

確か何かの本に載っていて、それを生前チラ見した程度だからところどころうろ覚えだが、砂漠の砂は植物の成長に欠かせない栄養素がある。

 

 植物が密集した森林地帯、ジャングルなどは、ただでさえ大きな木がそこらに密集している。

だからこそ生きるため、生長するための栄養素はその土地だけでは賄うことが出来ず、何も対策をしなければそのまま植物は枯れ果て、やがて水源もなくなりその土地は荒れた大地になるだろう。

 

 そこで重要なのが砂漠の砂で、砂漠から風に乗って舞ってくる砂は、その土地に必要な栄養素を沢山含んでジャングルに降り注いでくる。

その栄養素によって、森林地帯は枯れ果てずに自然の恵みをもたらしているのだ。

 

 それに砂漠の砂は森林地帯だけでなく海にも栄養素を運んでいる。

砂漠の砂に含まれた栄養素のおかげで、プランクトンは成長し、プランクトンを主食とする魚が育つ。

だから自然のサイクルに砂漠という環境は必要不可欠なものではある。

 

 しかしながら全ての地域にある砂漠が周辺の地域に恵みをもたらしているかと言えば、そうでもないとは思う。

 

(まぁ要するにバランスが大事ってことだ)

 

 そしてこの土地は……何らかの影響で自然のバランスが崩壊してしまい、今の状況に陥ってしまったんだと思う。

今も度々起こる砂嵐の影響にさらされて、街の中にまで砂は入り込み、昔はマンモス校であることで名が知られていたアビドス高等学校も、在校生は梔子さんと一年生の二人のみ……

 

 砂漠化に襲われるようになった当初は、当時のアビドス生徒会が資金などを投じてなんとかしようと思ったらしいが、焼け石に水の状態でどうにもならず、結果、何代か前の生徒会はカイザーコーポレーションにお金を借りるようになり資金を投じた。

 

 それでもどうにもならず、借りたお金の返済にも目途は立たず、終いには土地を担保として差し出している状況になってしまったとのことだ。

その影響もあり、アビドスを離れる生徒が続出した。

砂漠に飲み込まれる寸前の街にこのまま住めないという意見もあれば、親の都合で転校した生徒達も数多くいたと……。

 

(そんな状況の中でも、梔子さんは諦めずに頑張って来たんだな……)

 

 年も僕と変わらない……いや、確か3年生だと聞いたから僕より年上ではあるけど、それでも僕だったら目の前に借金地獄が見える学生生活は耐えられないと思う。

それをこの人は、不安を抱えながらも耐えてきた。

自分が所属する高校を存続させるために、昔のようなアビドスの景色を見たいがために……そんなことを、目的地に案内してくれる傍ら話してくれたんだ。

 

 そんな姿が健気に見えたのか、僕の手は自然と梔子さんの頭を撫でていた。

 

 急に僕がそうしたことに驚いたのか、梔子さんは変な声を上げながら驚いていて、僕は何か悪いことをしてしまったのだろうと勝手に思って、彼女の頭から手をどけようとした。

そうしたらもっと撫でていいよと、顔を赤くさせながらもはっきりとした声でそう言ってくる。

 

 顔を赤くさせているから、今度は風邪でも引いて体調が悪いのかと思っておでこに手をやれば、またもや変な声を上げていた。

 

 おでこから伝わってくる熱を測るあたり、特に風邪とかは引いていないようだった。

でもなんで顔を赤くしているのか分からなかったから、ついつい梔子さんに聞いてみれば、「もぅ~、デリカシーがないよ!」と叱られてしまい、罰としてしばらく頭を撫でるようにと言われた。

それが罰で良いんですか?

 

 そんなこんなで端末が売ってある場所に到着して、早速定員さんにどれがいいかを聞いてから、契約をすることにした。

 

(そういえば、僕の身元ってこの世界ではどうなるんだろう……)

 

 カイザーの時は、僕が私有地と知らずに建物を建ててあまつさえ定住しようとしていたから立ち退き勧告を受けてしまったけど、結局カイザーは僕のことを殺めてでもその土地から排除したいと考え、実行に移した。

 

 だから僕は正当防衛としてそれに対応して、決め事も締結させた。

それも僕の言ったことを全て織り込む内容で……

 

(でも本来なら戸籍がないとダメだと思うんだよねぇ〜……)

 

 戸籍がない結果、所有権の欄は"僕"と明記して書類を作成した。

ただ顔写真と名前以外の情報は全て僕の個人情報を記載してある。

正直名前が偽名どころか一人称の時点で成立するかってところだけど、でもこれには"縛り"を結んでいる。

 

 縛りとは、呪術的要素が強い約束事の一種で、当事者間で約束されたことは必ず守らなければならない。

もしどちらかがその約束を破ろうものなら、破った対象に対して相応の罰が下るというものだ。

 

 カイザーはその決め事を締結する前に、僕の異常性を嫌というほど感じたことだろう。

当分はその決め事を破ったりとかのことはしないだろうが、あの性格の人物だ。

どうせ数年後には最初の頃の態度に戻って、誰かに対して余計なことをやらかすだろう。

 

 とまぁ、その時のことはもう過ぎたから良いとして、果たして携帯端末は戸籍がなくても出来るのだろうか?

そう思って戸籍の話に入る。

僕は戸籍がなく、最近外からここに越してきたことを素直に話した。

 

 すると担当してくれた人は、そんな人に対しても特例措置を用意していると話してくれた。

今は仮契約として、今月分の契約金と月額料金を収めれば、今日から半月はちょっとした制限はあるものの通信を使えるとのことだ。

その半月の間に戸籍を用意して持ってきてくれれば、仮契約から本契約になって制限もなくなると。

 

(前世に比べたら凄い良心的だな……)

 

 前世と比べて考えると、まずこんなことはあり得ないな……。

まぁ前世とキヴォトスを比べるというのもおかしな話か。

 

 ということでその場で最新機種を購入し、契約金と今月分の料金を全額その場で払った。

担当した人も物凄く喜んでくれて、次回また来た時は歓迎すると言ってくれた。

 

 その後すぐに梔子さんと連絡先を交換する。

ここでは"モモトーク"と呼ばれるアプリが主流で、まぁ前世の◯INEだな。

それで交換した後、時間も時間ということもありそこで解散して、僕は医療施設に戻る。

 

 戻ってからは、この土地の利権を獲得したことに精神的に余裕が出てきて、端末を使ってこの世界の娯楽についても少し検索していた。

僕がこの世界でも医療行為をすることが可能であることは分かった。

まぁロボット相手にするという、僕の想像の斜め上になってしまうが、それでも可能であることは確かなはずだ。

 

(だけどこの施設にはテレビとかないんだよね……)

 

 テレビを作ることは……まぁ可能なのだけど、電波を受信する装置までは作れない。

たまたま僕の持っている能力でこの施設と、生活に必要最低限の生活インフラは整えることができたけど、それでも通信関係の情報まではその能力にインプットされていない。

 

 ということで、この土地に来て通信施設を設置してくれる業者がないかを調べていたんだ。

そんな時に、登録されていない宛先からメッセージが届いて最初の場面に戻る。

 

「それで……連邦生徒会の生徒会長にあたる方が、私に何のご用でここに招待してくれたのですか?」

 

「まぁまぁ、そんな堅苦しい話は後にして、一緒にお茶でもいかがですか?」

 

 生徒会長は僕の質問をスルリと躱して、目の前のソファでお茶をしないかと勧めてくる。

相手の目的が何であるのかがハッキリとはしないが、初対面で相手の機嫌を損ねるというのも、後々面倒になりそうなため素直に応じた。

 

 ソファに座ると、目の前に用意されたのは紅茶とケーキのセットで、対面に座る生徒会長からは笑顔でどうぞと促される。

出されたものにも悪意を微塵も感じなかったため、いただきます、と言ってから紅茶を一口飲む。

 

 飲むと……とてもレベルが高いほどの味わいを感じた。

パール・ジャムの能力を引き上げるために、前世では絶対にやらないようなことも訓練してきた。

紅茶やコーヒーを最初から淹れたり、長時間煮込んだり……戦闘訓練と同じくらい厳しいものだった。

 

 自分が満足する分であれば、そこまでする必要なないのだけど、その時は相手を満足させるまでは次のステップへ進めないといった、結構難題なものだった。

それで僕は、紅茶を誰から見ても完璧に淹れれるようになるまでに、感覚として半年以上はかかった気がする。

勿論他のことも並行してやってたけど、やはりどんなことを極めるにしても、毎日続けないと意味がないってことを痛感させられたな……。

 

(でもこれだけ上等なものを振る舞ってもらったのなら、僕からも何か返さないとね)

 

「お味はいかがですか? 私が個人の伝手で手に入れた紅茶の茶葉を使って淹れたのですが……」

 

「……えぇ、とても美味しいですよ。僕は紅茶の愛好家だったり専門家ではないので細かくは言えないですけど……僕が今まで味わってきた紅茶の中では最上級に美味しいって思います」

 

「そうですか! それは良かったです‼︎ でも最上級にということは、今回お出ししたものよりも美味しい紅茶を飲んだことがあるような言い方ですね?」

 

「はい。淹れてくれた本人を目の前にしていうのも申し訳ないと思ったのですが……」

 

「いえ、そこをあえて濁さずに正直に申告してくれる点は、私としてはとてもポイントが高いです! それにしても私が用意した茶葉も最高級のものだったんですけど、なんだか渡海さんがそこまで評価する紅茶があるという話なら、私も実際に味わってみたいものです」

 

「……なら味わってみますか?」

 

 僕がそう言うと、生徒会長はさっきの調子の笑顔を浮かべて数秒反応がなかった。

予想だと、僕がそんな発言をしたことが予想外だったから、一瞬僕が何を言ったのかが分からなかった、ってところだと思う。

 

「ええっと、渡海さんは普段から紅茶を嗜んでは……」

 

「普段口にするのは殆ど水ですけど、毎日紅茶は淹れるようにはしてますよ?」

 

「そ、そうなんですね。それで、この場で実際に淹れてもらえるのですか?」

 

「はい、一応道具一式はいつも持ち歩いているので……」

 

「た、嗜まないのに普段から道具を持ち歩いているんですね……」

 

「まぁその話は一旦置いておいて、良かったら淹れてきましょうか? それと用意するのに給仕室か、どこか簡単に調理が可能な場所を借りられればと」

 

「それでしたらすぐ隣にありますよ。勿論使ってもらって構いません」

 

「分かりました。それじゃあ……あぁそうだ。何点かお伺いしたいことがありまして」

 

「はい、何ですか?」

 

 そこで僕は、生徒会長である彼女に最近体調が悪く感じることはないかと簡単に質問した。

彼女も、何故この場でそんな質問をするのかを疑問に思っていたけれど、でも素直に答えてくれた。

 

 生徒会長からの最近の体調をある程度聞いて、隣にある給仕室へと入る。

入ると、一般家庭に設置されてある台所と同じ規模の広さと設備を兼ね備えていた。

やはり生徒会長という役職も激務で、ここで誰かに食事を作ってもらったり、自分で何か用意することもあるんだろうなと、そう勝手に思いながら紅茶を用意し始める。

 

(まぁ、普通の紅茶じゃあないけど……)

 

 淹れる過程は端折るが、僕がいつもやっているように淹れる。

まぁ今回はとあることをして一手間加えさせてもらうけど……。

 

 それから数分で完成し、紅茶を彼女に振る舞う。

 

「へぇ〜……カップとソーサーのデザインも拘ってますね?」

 

「まぁ人様に出せる程度には拘ってますね。自分が飲む場合は適当ですけど」

 

「それに……スンスン……薫りも良いです。これはどこの茶葉を?」

 

「それは私のオリジナルですね。一応茶葉も育てているので」

 

「えっ⁉︎ 茶葉からですか⁉︎ 本当に紅茶を嗜む程度なんですか?」

 

「えぇ。ただ私の職業柄というか、そういった素材は自給自足で今のところ育ててますね」

 

「しょ、職業柄……でも、なんというか……」

 

「ここまでやるとやり過ぎというか、一種の変人に見える、ですか?」

 

「……誠に失礼ですけど」

 

「まぁそれについては私も理解してます。だから正直に言われたところで何とも思いません。さっ、紅茶が冷める前にどうぞ」

 

「そ、そうですね。それでは、いただきます」

 

 彼女が紅茶を一口飲む。

すると彼女の顔は一気に驚きの顔へと変わった。

 

「えっ……お、美味しい、です」

 

「そう言ってもらえたのなら何よりです」

 

「はい……これは……今まで味わったことが……あれっ? どうしてでしょう? なんでか涙が……」

 

「これ、良かったら使って下さい」

 

「あっ……ありがとうございます」

 

 生徒会長にハンカチを渡す。

彼女はそれを素直に受け取って、目元に当て始めた。

 

「す、すみません……私が渡海さんのことをこの場に呼んで、まだ本題にも入っていないのに……涙が止まらなくて……」

 

「別に気にしてません。生徒会長が気の済むまでそうしていただいても。あっ、私は部屋の外に出てますね」

 

 そう言って僕は部屋から出る。

生徒会長のあの反応は、ある意味正常なもので、僕は何も疑問に思わない。

それどころか当然だとすら思っている。

 

(なにせそうさせているのは僕だからね)

 

 パール・ジャム……これもスタンドだが、戦闘能力は皆無だ。

だがその代わりに、一級品に分類される料理にこのスタンドを混ぜ込めば、その人が抱えている病の類をたちどころに治してしまうという、ある意味素晴らしいスタンドだ。

 

(ただ一級品の料理じゃないと完全に作用しないから、本当に大変だったよ……)

 

 僕は料理人になる気は全くないというのに……。

そう思っていたら、僕の内側に憑く居候が、「その能力のお陰で俺はいつでも上手い飯が食えるがな」と言ってくる。

全く気楽に言ってくれる。

僕はあくまでお医者さんなんだから……

 

(そう言えばこの世界でいうところの医師免許って、どうやったら手に入るのだろうか?)

 

 まだ戸籍も何とかしないといけないのに、そもそもこの世界で医師免許がないと医療行為ができないってなると……悩みの種が増えてしまった。

 

 僕が新たな悩みの種に気付いて、それについてどうしようかと考えていると、中から入っても良いと言われた。

 

 部屋の中に再び入ると、目元を少し赤くしているものの、どこかスッキリしたような顔をして、生徒会長が僕を迎えてくれる。

 

「先程はお恥ずかしいところを見せてしまって、申し訳ありません。お借りしたハンカチは、後日私が洗って返しますので」

 

「あぁ、別にそこは問題ないですよ。私が「いえ! どうか私に洗わせて下さい‼︎」……えっ? あぁ、まぁそこまで言うなら……」

 

「ふふっ、ありがとうございます。それにしても、久々にあれだけ涙を流しました。でもそのお陰でスッキリして、疲れも吹き飛んだような」

 

「それは良かった。そう言えば私がさっき質問した他の体調面についてはどうですか?」

 

「えっ? そう言えば……寝不足気味だった目も、いつもよりスッキリしててよく見えます。後肩凝りも……渡海さんの紅茶を飲んだ後は全然軽いですし……あの、聞いても良いですか?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「私が飲んだ紅茶に……何かしましたか?」

 

「何かしたか,についての質問に対しては、YES。とだけ答えておきます」

 

「それは……渡海さんの保有する能力だと認識しても?」

 

「勿論。ただ詳細は言えません。言えませんが……目の前に僕にとっての患者がいるというのなら、僕はどんな手段を講じても治します。それが医者として、医療行為に殉じる私の使命ですから

 

「っ‼︎ ……ふふ、そうなんですね。とても素晴らしいことだと思います」

 

 僕の医療に関する心意気を聞いた生徒会長は、さっき浮かべていた笑顔よりも自然な笑みでそう言ってくれた。

多分最初らへんで浮かべていた笑みも本当の意味で彼女の表情なんだろうけど、僕としては今浮かべている笑みの方が好ましく思える。

 

「私、あなたにもっと興味を持ちました。そこで提案なのですが……渡海さんさえ良ければ連邦生徒会の専属医になってもらえますか?」

 

 ……なんか急に勧誘されたんだが。

 

「急にこんな話になってしまうのも、戸惑ってしまうと思います。それは当然の反応で、すぐにお答えいただけなくても問題ありません」

 

「えぇっと……それが私をここに呼んだ理由本来の理由、ですか?」

 

「あっ、申し訳ありません! 本当はあなたの戸籍関連についてお話させていただこうとこの場に呼んだのですが、渡海さんのことがとても気に入ってしまったものですから、どうしても”私の手元”にいて欲しいなって思いが強くなってしまったが故についつい口に出してしまいました……。お気を悪くされたなら謝罪します」

 

「いや、こっちも急の申し出で戸惑ってしまって……。それで戸籍については用意していただけるとの認識で問題ないですか?(あれ? なんかさっき変なニュアンスが聞こえたような……)」

 

「はい、戸籍は私の方で用意します。これがその用紙ですね」

 

 先程生徒会長が言ったことになにか引っかかりがあるなと感じながらも、戸籍登録のために必要な用紙を受け取った。

用紙を見ると、どうやら書くことは前世の市役所で案内されることと同じようだった。

 

「(でもこの所属学校って、どう書けばいいんだ?)「あぁそこはですね」っ⁉」

 

 生徒会長いつの間にか僕の隣にいて、僕が手に持っていた用紙を顔だけ近付けさせてのぞき込んでいた。

急に隣から声が聞こえたから驚いてしまったけど、これは多分顔に出ていたんだろう。

彼女が僕の様子を見て笑っていた。

 

「あっ、ごめんなさい。驚かせてしまいましたね。それでそこの『所属学校』の欄については、渡海さんはどこにも所属していないので所属なしで出してもらっても良いですよ」

 

「あぁ、そうなんですね」

 

「はい。ただ渡海さんって今おいくつでしたっけ?」

 

「15、ですね」

 

「なら、今からでも編入って形をとってどこかの学校に所属することもできますよ? まぁそこは渡海さん次第になりますけど」

 

「編入……まぁ、確かに他の学校で学ぶ、というのは興味がありますね。でもずっとそこにいるというのも……」

 

「でしたら、こういうのはどうでしょうか?」

 

 生徒会長が提案してくれたことは、確かに僕にとっても理にかなっていると思った。

だから僕もその案に乗ろうと思っている。

ただ一つ問題があるとすれば……

 

「医療行為をするにあたっては、医師免許って必要ですよね?」

 

 この世界が僕がいた世界とはほとんど違うことは、梔子さんから聞いて理解している。

ならば専門の人が所有する許可証はどうなるのだろか? いくら学生でないとはいえ、外科手術とかをしようものなら免許はあるはずだと思うけど……

 

「えぇ、勿論ありますよ。各学校の医療分野に所属している学生であれば、最低でも仮免許は持っていますね。それを渡海さんの場合どうやって入手するのか、それが今のところの懸念点ですね?」

 

「はい、確かに医療技術全般は誰にも負けないと自負しています。でもそれを証明するための免許がなければ、ただの口だけになります。だからその技術を証明するための免許をどうやったら手に入るのか……まぁそもそも戸籍がない時点でどうしようと考えていましたけど、その件については生徒会長のおかげで何とかなりそうです」

 

「医師免許は、各教育機関の医療分野に所属した子で、そこで3ヶ月間医療について学び、その後試験を受けます。そして合格した子は仮免許を取得できて、そこから更に3ヶ月以上、医療の現場に携わって現場から認められれば正式に医師免許が発行されます。渡海さんは、さっき私が提案した内容で6ヶ月間医療分野に従事していただければ、問題なく医師免許を発行できると思いますよ」

 

 ……なんか考えていたよりも難易度が低いな。

本当ならそれなりの期間を要すると思ったけど、まぁ地道に頑張っていけば発行されるってことだから、僕としてはありがたい。

 

「分かりました。それじゃあ、生徒会長には今後ご迷惑をおかけすることが多くあると思いますけど、これからよろしくお願いします」

 

「えぇ、こちらこそ。渡海さんの今後の活躍を期待しています」

 

 さて、これから忙しくなるな。

 

(僕としてはそっちの方が願ったり叶ったりだけどね)

 

 こうして僕は、この世界で医師免許を獲得するために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばずっとその喋り方って疲れません? もう知らない仲でもないですし、公の場でもないですからいつもの口調に戻してくれて構いませんよ?」

 

「あぁ、ならお言葉に甘えて。そういば生徒会長の名前って何でいうんですか?」

 

「ふふっ、私に興味がありますか? でもダメです。乙女の秘密、というものですから」

 

「なんかそっちだけ僕の名前を知っているなんて、ズルいな……」

 

「まぁまぁ、私の呼び方は呼びやすいように呼んでもらって大丈夫なので、改めてこれからよろしくお願いしますね、渡海くん!」

 

 

 

 

 




連邦生徒会の生徒会長の口調って、これで大丈夫ですかね?

後他のキャラクターも今後出していく予定ですけど、そこが心配です……

今度の投稿はまた不定期ですが、楽しみにしていただければ幸いです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。