個人の青春に寄り添い、救うのも医者としての務めだよ。 作:橆諳髃
この2ヶ月間仕事を新たに見つけたりプライベート関係で色々あったので更新が遅れました。
原作の設定とは違う部分も多々あるかと思いますが、読んでいただけると幸いです!
それではご覧くださいませ!
※2025年4月9日8時31分に一度投稿したのですが、誤って別の作品の内容をあげておりました。
ご期待いただいておりました読者の皆様には、大変申し訳なく思います。
こちらではしっかりと前回の話から続いております。
二度手間だと感じられた場合は申し訳ございませんが、読んで頂けますと幸いです。
連邦生徒会の生徒会長から呼び出しを受けた翌日、彼女と話したことについて、行動に移していこうと思う。
戸籍についてはあの後、なんのトラブルもなく発行できた。
そのため、今後は賃貸契約や通信端末の契約、その他身分証が必要な場でのやり取りが正式に可能となる。
身分証を発行してもらった後、すぐ様ユメ先輩と一緒に行った端末を販売しているショップに向かって本契約をすることにした。
その時も、さっき僕の端末を仮契約する時に担当してもらった人が対応してくれた。
その人自身も僕がすぐに仮契約から契約に移してくれることに対して驚いていたけど……。
(でも嬉しそうにしていたから、すぐ来れて良かったよ)
これで通信については制限が何もない状態でできるようになって、端末でできる娯楽についても使用可能になった。
当分の間、誰かのお誘いとかない限りそういうのもしないだろうけど、この世界でのゲームとかがどんなものかについては人並みに興味はあるし、本当に暇になったらやっても良いかもしれない。
そう思っていたらモモトークに連絡が来ていた。
誰からだと思って開けば、それは連邦生徒会の生徒会長……なんか毎回こういうのも長いから、一旦会長さんと呼ぶことにしようか。
名前を聞こうとしたら"乙女の秘密"という内容で教えられてないし……。
他にもその役職の人と会ったら呼び方とかの面でごちゃついてしまうけど、その時はその時で考えれば良いかな。
それで内容を見てみたら、僕の医師免許を獲得するにあたってのスケジュール的なものが載っていた。
それで医師免許を獲得するにあたってより簡単なこととしては、やはり一度どこかの教育機関に編入というかたちで入らせてもらって、そこで学生生活をしつつ、っていうのが手っ取り早いみだいで……
(そのスケジュールと一緒にオススメの教育機関もPDFで届いたんだけど……)
ここまで聞いたら至れり尽くせりって思う人が多いかもしれない。
でもこのキヴォトスという世界は、何千といった単位で教育機関が存在する。
小学校、中学校とかを抜きにしたらもう少し減りそうではあるけど、それでも僕という新参者にとってどこが良いのか全く分からない……。
(とりあえず一つずつ見ていくか……)
まずはトリニティ総合学園。
キヴォトスの中でも大規模な学園で、お嬢様学校の立ち位置だと言われている。
文武両道を謳い文句とし、優雅で善良な生徒が多いと資料には書いてある。
そして救護騎士団という組織があって、名前だけ見れば医療分野に特化していることが分かる。
次にゲヘナ学園。
こちらもキヴォトスの中では大規模な学園で、自由と混沌を校風としていて……はっ? それを校風にしてるの? しかも違法なサークルが乱立していると……。
(極め付けは治安がキヴォトスの中でワースト1に輝くくらい悪い……ね)
でも治安が悪いということは、それだけ怪我人が続出するということで……そう考えると僕の医療の腕を見せれる機会が多いなとも感じた。
(それに組織にも救急医学部ってあるようだし、そこにも興味があるなぁ〜)
そう思いながらもオススメされた学園を順番に見て行った。
そして最後にあったのがアビドス高等学校で、梔子さんが所属している教育機関だ。
現在多額な借金を抱えているのに加えて、在校生も一桁しかいない。
オススメの学園の中には入っているけれど、それでも1番下にPDFが掲載されているってことは……僕から見たらあまり旨味を感じないとかって会長が思ったからかもしれない。
(でもこのアビドスも、魅力的な点は多くあるかもしれない)
他の教育機関だと、人材も多いし組織もしっかりとしたものが確立している。
それに比べてアビドスは、昔はキヴォトスの中で1,2を争うほどの規模だったけど、今では砂嵐の影響で在校生も一桁の、来年新入生が入らなければ存続はさらに厳しくなるだろう。
(ただ逆を言えば自由度はとても高い)
借金返済に奔走するのは、想像しただけでもかなり厳しい現実であることは理解している……だけど逆を言えば、それを抜きにしたら自由度は高いなと感じた。
(それに何もその学園に所属して、そこだけで学生生活を謳歌してくださいとかって言われていないわけだし……)
放課後とかもある程度自由な時間は確保できることだろうし、大学卒業間近だったから学力についても問題ないと思ってる。
ということで、僕の中でどこにいくかは決まった。
後は決まったことの報告と、それにプラスして僕が考えたことが通るかを相談するために、モモトークで会長に連絡を取ることにする。
ただ彼女は平常時でも忙しくしていたから、メールでまずアポイントを取ることは忘れずにね。
side ユメ
カンジくんと会った日、私はホシノちゃんに怒られてしまった。
何かあったら連絡することをホシノちゃんと約束していたのに、全く連絡をよこさなかったことが1番の理由で、更にカイザーの武装兵といざこざを起こしてしまったことも知られてしまい、その日は2時間正座+説教コースだったよぉ〜……。
その後はなんとか許してもらった。
次の日からはいつもの通り、アビドスを滞りなく運営するため色んなことに奔走しながら学校生活を送っています。
(そういえばあれからカンジくんを見かけないなぁ……)
そうは言っても、なんだかんだ会ってまだ2日しか経っていないんだけどね?
「ユメ先輩、おはようございます」
「あっ、おはようホシノちゃん!」
カンジくんの事を考えていたら、ホシノちゃんが生徒会室に顔を出してきた。
ホシノちゃんは一年生で、既に一桁になった在校生の中で唯一生徒会に入ってきた子なの!
とっても厳しいけど、私よりもアビドスのことを考えて行動してくれている。
そしてこんな状況の生徒会にも入ってくれて、とっても優しい子なんだ〜!
「学校のポストに連邦生徒会から手紙が届いてたんですけど」
「えっ、そうだったの? 全く気付かなかったよ」
「……先輩、いつも朝早く来たらポストの中を確認して下さいって言ってるじゃないですか? 重要な内容の書類だったらどうするんですか!」
「ふぇ〜ん……ごめんねホシノちゃん……」
「全くこの先輩はいい加減なんだから……。それで、中身はなんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってね。えぇっと〜……えっ、えぇ〜っ⁉︎」
「ど、どうしたんですか⁉︎ ま、まさか……廃校関連の手続きに関することですか⁉︎」
「ほ、ホシノちゃん……」
「な、なんです……」
「ここに……ここに編入生が来るって‼︎」
「……えっ? えぇ〜っ⁉︎」
side out
生徒会長に連絡してからすぐの事……俺はアビドス高等学校への編入が決まった。
編入の準備にあたっては必要書類が送られて、それも既に書き終わっている。
後は学生服や指定カバンとか色々と必需品が送られていて、足りない物などの不備がないかどうかを確認していた。
それも確認し終えて数時間後、モモトークに着信が入ってきた。
見ると梔子さんからで、内容はアビドス高校に編入する事についてだった。
文章を見る限り戸惑いも感じられるが、それ以上に嬉しいといった感情が伝わってくる。
送られてきた内容には無難に返して、最後には編入する日を楽しみにしている旨を送っておいた。
それに対して梔子さんは可愛らしいスタンプで返してきてて……
(なんかこのやり取りって、何気に初めてだな……)
前世では医学の道に進むため、友人との交流はあったものの浅い関係に留めていた。
だからなのか、梔子さんとの、この何気ないようなやり取りが新鮮に思えてきて……
(……前世でももう少し付き合い方が変わっていれば、何か変わったのかな)
そんな事を思いつつも、たらればなんて大概自分の好きな方向でしか物事を考えられないし、今は今で医学の道を歩める機会が目の前にある。
学生でも銃を持ち歩くような物騒な世界観だが、まぁ俺もいずれそんな日常に慣れていくんだろうな。
梔子さんとやり取りをしていたら、いつの間にかいい時間帯になっていて、高校への編入については明後日からだが、明日もやらなければいけないと考えている事が多い。
医療の充実とか周囲の自然環境の改善とかetc……取り敢えず明日に備えて、眠りにつく。
編入初日……梔子さんが指定した場所に30分前に到着した。
既に梔子さんは登校しているようで、到着した事をモモトークで連絡すると、直ぐに行くから待っててと返信が来た。
それから数分後に梔子さんが来て、僕を校舎の中へと招いてくれた。
校舎の中に入った印象としては、とても静かとしか言いようがなかった。
アビドスの一区画に医療施設を建てて大体2週間……周りの環境を整える事をしながらも、周りの状況は確認してきた。
本来街の中心となっている区画は砂漠化の影響でゴーストタウンと化し、郊外に住んでいる人はいるものの、それでも過去この地域に住んでいた人口の10分の1……或いはそれ以上にここに住む人達は少なくなっていると思う。
そう思案していると、どうやら目的の場所に着いたようだ。
そこは生徒会室とプレートが付けられていて、他に紹介したい子も待機しているって。
「それじゃあ一緒に中に入ろっか。中には私の他に生徒会に入ってくれた子が1人いるんだけど、カンジくんと同い年の子で優しい子だから、直ぐに仲良く出来ると思うよ!」
梔子さんはそう言いながらドアを開けて、中にいる子に一声かけた。
梔子さんが一声かけた後、別の女の子の声がした。
どうやら梔子さんを注意しているようで、それに対して梔子さんも謝っている声が聞こえる。
(取り敢えず僕も中に入るか)
中の状況が何にせよ、これからの学園生活と、自分自身の医療生活を送るために、生徒会室に入った。
side ???
この学校に編入生が来る事が知らされて数日、私とユメ先輩は早めに登校した。
今日は本来自由登校の日だけど、1000分の1……いや、それよりも少ない可能性である、アビドス高等学校に編入生が来る、という出来事に対して誰も歓迎しないということは話にならない。
(そもそも歓迎しなかったらこの編入自体なしになるんじゃ……)
私が入学した当初も在校生は少なかったけど、現在学校に所属する在校生も入学した日以下の人数になって、来月以降も別の学校に転入する人がいる始末で……
(それもこれも全部数十年前に起こった砂漠化と多額の借金のせい……だよね)
これ以上在校生が減ってしまうと、月々の借金の利息を払うことも儘ならなくなる……そう懸念していた時に丁度編入生が来るって話が舞い込んできて……聞いた当初は驚き半分嬉しさ半分の感情で埋め尽くされていた。
ユメ先輩はというと、既に編入生と面識があるようで得意気に私に話してきた。
その様子が、どことなく私に対してマウントをとってくるように見えて、凄くムカついたので怒ったのは記憶に新しい。
その時もその時でユメ先輩は涙目になって謝ってきたけど、謝るのなら最初からそうしなければ良いのに……。
それで編入生を迎える準備を生徒会室でしていると、ユメ先輩のモモトークに連絡が入る。
どうやらこちらで指定した場所に編入生が来たようで、ユメ先輩は準備そっちのけでそっちに向かってしまった。
部屋から出た時に見えたユメ先輩の横顔が、物凄く嬉しそうで……いえ、どことなくだらけたニヤケ面も垣間見えた。
(……どんな子なんだろう)
年齢としては私と同い年だというし、1年には私しかいないから、もし性格的に合わなかったらどうしようかなって不安にもなる。
何よりアビドスの状況は、キヴォトスにいる人なら誰もが周知していることで、にも関わらず今の時期に編入してくるって事を考えてしまうと……自分としては怪しいと考えてしまう。
編入生が来ると知らされた時は嬉しい感情があったのに、今では疑う気持ちの方が強い事を考えると、私の頭は固いのかなって、そんなどうでも良いことも思い浮かべる。
(こんな自分と仲良くなんて……)
そう思いながら準備をしていると、ユメ先輩が戻ってきた。
その時の顔が、編入生を迎えに行った時に垣間見えたニヤケ面そのものだったので、それに対してのムカつきが口に出て、それを受けたユメ先輩がいつものように涙目になりながら謝るといった、最早ルーティーンに近いやり取りになる。
そんな中、生徒会室のドアをノックする音が聞こえた。
(あっ……今のやり取りを外にいる編入生に聞かれちゃった……)
どうせ直ぐにバレることかもしれないけど、今日だけは朗らかにして編入生を迎えようと事前に決めていた。
なのに、扉越しであるとはいえ編入生に今のやり取りを聞かれてしまったことに対して、凄く恥ずかしくなる。
ノックの音に対してユメ先輩が対応して、その時の先輩の顔はとても笑顔になっていた。
それもさっきまでの涙目が嘘のように……。
それでドアの外から、失礼します、と一声あったと同時にドアが開かれた。
(あれっ? さっき聞こえた声……女の子の声じゃないような……)
そう思ったと同時にドアから入ってきた子は……黒髪短髪、肌は綺麗な白で、スラリとした体型で、身長は私より頭1つ分高いかなってくらいの男の子……
(お、男の子ぉっ⁉︎)
「それじゃあ紹介するね! この子は小鳥遊ホシノちゃん! 私はいつもホシノちゃんって呼んでて、カンジくんと同じ1年生だよ!」
私の思考が停止している間に、ユメ先輩が私の自己紹介を編入生である男の子にしていた。
男の子は私の紹介を聞いて、私に目線を向ける。
今私がしている表情は、多分何が起こっているか分からないというような、ポカンとした顔になっていると思う。
そんな顔を見られたことに対して、私は後から恥ずかしい気持ちになったけど、その時はそんなことを考えられる余裕が無かった。
そんな表情をしている私に対して、男の子は私に一歩近付いてきて……
「初めまして。僕は
とても綺麗な笑みを浮かべて、私に手を差し伸べてきた。
side out
初顔合わせについては、特に問題ないと感じた、と思う。
ただ、小鳥遊さんは僕を見た時凄く呆気に取られた表情をしていて、何かおかしなことを言っただろうかと少し不安になった。
その時に初めて聞いたのだけど……どうやらこの世界では男子生徒が確認された事例は少なく、その記録も数十年前が最後だとか。
男の子が生まれた場合については、まぁ周りに気付かれないよう大切に育てられるようで……
(その原因としては十数年前からの男性の出生率低下……それによって女性が男性に対して性犯罪を行なってしまうといったことが頻発して、今は学生のうちから男性を保護しようといったカリキュラムを組んでいる……か)
だけどそれも知識としてのみであり、実際に今の世代の学生達はほぼ男子学生を見た事がない……それどころか自分達と同じ人種の括りで男性を見た事がないと、梔子さんから説明された。
「だから君と出会った時、とってもドキドキしたんだよ!」
照れた表情を浮かべながらも、笑顔でそう言ってくる。
それがとても可愛いなと感じて、僕も釣られて照れたほどだよ。
(まぁその直後に小鳥遊さんにこっぴどく叱られてたな……)
梔子さんは僕がここに編入してくることは分かっていたようだけど、小鳥遊さんに対しては今まで秘密にしていたらしい。
本人曰く、小鳥遊さんを驚かせたいという思惑もあったようだけど……
「私としては、カンジくんに初めて会った女の子としてマウントを取ってみたかったんだ〜!」
という様に、小鳥遊さんに自慢したかった様だった。
そこからは凄い剣幕で梔子さんに説教をする小鳥遊さんといった構図を間近で見ることになった。
「(ただこの様子を眺めるというのも、有効的に時間を活用できないよね)あの〜……お取り込み中のところ申し訳ないんだけど、この学校の紹介をしてくれると嬉しいなぁ〜って……」
「あっ、そ、そうでしたね! 校内の案内は私が案内します。ユメ先輩は、私が戻るまで正座のままでいて下さい」
「ふぇん……足が痺れてきたよぉ〜……」
「自業自得です。さ、行きましょうか」
助けを求めてくる梔子さんの表情については、助けたい気持ちに駆られてしまうものの、今回は梔子さんが悪いとも思っているので、申し訳ない気持ちになりながらも小鳥遊さんに着いて行った。
そこからは学校内の施設についてを説明を受ける。
小鳥遊さんの説明は無駄がなく正確だった。
他の学校と比べると全校生徒も少なく、普段使う施設も限られるために紹介された施設自体少なかったものの、分かりやすい説明だったと思う。
ただ小鳥遊さん自身、とても真面目なのか、施設を紹介することに対して以外口を開くことはなかった。
(まぁ僕がこの世界で例をほとんど見ない男ってこともあって、何を話して良いのか分からないってこともあると思うし)
でもそれ以外に、僕に対して警戒しているような気配も感じとれた。
このことに関しては、生徒会長にも指摘されたことでもある。
アビドスが現在多額の借金を背負っている状況であり、生徒も減る一方の状態……それはキヴォトス中に浸透している話であるのに、態々そんな状態の高校に編入を申し込むというのは、何か裏があると思われてもおかしくないと。
(そうだとしても……僕には恩があるからね)
あれはなんの変哲もない出会いだったのかもしれない。
それでも僕にとっては、この世界のことを全く知らなかった僕に取っては、梔子さんとの情報交換は本当に助かったと思っている。
もしかしたら梔子さんじゃない、他の人と出会う可能性もあって、その結果に今の状況に至らなかったかもしれないけど、それは数ある可能性の一つにしか過ぎないし、深く考えたところで今の僕の何かが変わることなんてないから……
学校の施設や設備について粗方教えてもらった後、小鳥遊さんと生徒会室に戻ることになった。
その時も全く会話がなかったことが、仕方ないと思いつつも少し寂しいかなと感じていた時……
「……あなたはなんでこの高校に編入しようと思ったんですか?」
小鳥遊さんからそんな疑問を投げかけられていた。
僕が何かを答えようとする前に、続けて彼女が口を開く。
「この高校が抱えている問題……知ってて編入してきたんですか?」
「……はい。この街が砂漠に飲み込まれかけていることも、その対策をしようとして多額の借金を抱えていることも知ってます」
「それを知ってて、なんで態々ここにしたんですか? あなたが編入した際の学力テスト、勝手ながら見てしまいました。学力も一般的な生徒よりも上で、戦闘が起こった際の判断能力もゲヘナやトリニティ、ミレニアム……それ以外にも編入できる場所はある筈です」
やはりというか、僕のことを疑っていた。
この学校に編入してきたのは裏があるんじゃないか、と。
それは、いたって当然の考え方で、僕も疑われることは承知の上で編入した。
だから……
「そうだね。確かにこの学校以外にも編入できるところはあるし、連邦生徒会長からも別のところが良いのではって、遠回しに言われたよ」
「だったら何故ここに?」
「僕が梔子さんと知り合い関係にあることは知ってるかな?」
「編入生の知らせの時に知りましたね」
「そっか。それで梔子さんと会った時さ、僕はこの世界のことを何も知らなくてね。記憶喪失の感覚に近くて、身分を証明できるものも無かったんだよ。それでどうしようかと困ってた時に彼女と会った。それで色々と教えてもらったんだよ。この世界のこととか色々と、それで助けられたんだ。だから僕は、そんな彼女に恩返しがしたいって思ってる。勿論それ以外にも考えがあってここに編入したのは事実だけど、小鳥遊さんが今抱いているかもしれないような、何か悪さをするために来たわけじゃないから」
自分が今考えていることを小鳥遊さんに伝える。
僕が言ったことが、今の小鳥遊さんに通じるかは分からないことだけど、それでも敵意がないことだけは知って欲しかった。
「……まぁ今はあなたのその言葉、信じてあげます。ただ、あなたがこの学校を裏切るような行為を少しでもした場合は、力尽くで追い出しますから」
「うん、それで良いよ。見ての通り僕は君達の頭の上に浮かんでいるヘイロー、だっけ? それがないから、鉛玉がどこかに当たっただけでも致命傷なんだよね。だから、小鳥遊さんから見て僕がこの学校を裏切っていると見えた時は、僕の身体が動かないくらい再起不能にしても良いし、勿論命を奪っても良いから」
「っ⁉︎ な、何を言ってるんですか⁉︎ 私はそんなつもりで言ってるわけじゃ」
「まぁまぁ落ち着いてよ。僕はただ、それだけの覚悟を持ってここに来たってことを小鳥遊さんに知って欲しかったんだ。驚かせてしまったならごめんね」
「そ、そうですか」
「でも最初の内は、僕のことなんて1ミリも信用できないと思うから、思う存分警戒してもらって構わないよ。僕はそれに対して、1日も早く小鳥遊さん達の信頼を勝ち取れるように頑張るから」
「わ、分かりました。私も、あなたがこの学校に害を齎さないかどうか見張ってますから。それとは別で、あなたが一刻も早くこの学校に馴染めるようにも祈っておきます」
「うん、それじゃあこれからよろしくね、小鳥遊さん」
「はい、よろしくお願いします、渡海さん」
最初から順風満帆とはいかないけど、この世界に来て学園生活と医療行為を両立させる生活の第一歩を踏み出した。