「はじめまして。
なぜ一人で自己紹介をしないといけないのか?
これまで疑問に答えてくれたウォルターはいない。エアも。
泣くという機能が失われて久しかった私に、久々の潤いがもたらされる。嬉しくはない。悲しい。
つう、と垂れる涙。
「……烏丸さん、座って大丈夫ですよ」
いけない。いまのわたしはふつうの人だった。あまり感情を出すと怪しまれる。
教師の言葉にうながされるまま、ぺこりと一礼して、すとん、と椅子に座る。
「不思議な人」
「かわいいー」
「……すー、すー……」
わたしの自己紹介に対する評価はおおむねきこえている。
誰かの寝息も。……大胆だな、寝てる子。
ここは日本、初星学園、一年二組の教室。
わたしはそのアイドル科に学生として通う、そういう認識だ。
ルビコン3にいた時よりも、視覚以外の五感の調子がよい。
今のわたしは、強化手術を受ける前よりずっと、きれいでかわいらしい。
実はアイドル、ちょっと自信ある。
自己紹介が終わり、自席に置かれた学生証を再度眺める。
名前欄にはKARASUMA SANGOという名が書かれている。
C4-621と呼ばれたほうが馴染みがあるな。まあ、別に名前なんて何でもいいけど。
が、その隣にある見目麗しい顔写真ににこにこしてしまう。
これが、今のわたし。
銀髪のストレートロング、前髪は眉にかからないぐらいのぱっつん。エメラルドグリーンの瞳に、ちょっと垂れたまなじり。ぷにぷにもちもちしてそうでいながら透明感のある肌。
年頃の娘としてはさいきょうではないだろうか。
いや、同クラスに同じくらいの美少女はちらほら見られるが、そこはさいきょうを名乗ってみたい。ルビコン3でもさいきょうだったので。
ねすと? よくわかんないばしょですね。たてもち重二……滞空みさいらー……軽二だぶるじまーまん……うっあたまが。
……それはおいといて、ウォルターもエアも今は居ないとおもうと、へこむ。
しかしわたしは気付いた。
わたしが日本でアイドルをやってとても有名になれば、
もしかしたらわたしと同じように変な役割を与えられているかもしれないウォルターやエアが気づいてくれるのではないか。
よし。トップアイドル、なるぞ。
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しかし話をよく聞いてみると、二組は入試成績下位者が集まるクラスだそうだ。
あれ? トップアイドル、もしかして初手から厳しい?
まあ、ルビコン3密航で最初に会ったへりこぷたーみたいなもんか。なんとかなるさ。
本作621は
もともと女性、
顔に出ないが内心では情緒豊か(ac乗りやってて表情筋の動かし方を忘れた)、
外見に対する自己肯定感ゲロ高(外見を捨てて久しかった)、
すこしアホの子(ウォルターの命令かエアの提案に乗ってる生活だったので判断力が落ちた)、
でお送りします。
続けば。