幻想転移録ーザ・パラレルー   作:Uさんの部屋

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※本作はフィクションです。なお、本作は普段用いる台本形式では無い為あしからず。


第1章 高天事件

とある日の事。これまで数々の激闘を制してきた白髪の剣士であるUは、バイクに乗って舗装されていない草原を走っていた。

 

「こういう日にバイクを走らせるのは風が涼しくて気持ちがいいな」

 

この日の天気は快晴であり、程良く風も流れていた事からUは愉快な気持ちでバイクを走らせていた。だが、そんな草原地帯を走っていたUの目の前の空間が突如として歪んだ。

 

「なっ………!? (空間が歪んだ………?)」

 

Uは目の前で起きた突然の光景に驚いていた。思わずハンドルを切って目の前の空間から避けようとしたその時………

 

「………助けて」

 

空間の中から声が聞こえた。その声を聞いたUは無意識にハンドルを切る事を忘れ、空間内に飛び込んでしまうのだった………

 

 

 

………Uが入った謎の空間は決まった形を持たず、辺り一面の背景は波打つ何かであった。そして足場と言える足場も無く、バイクの車輪は走る足場を失ったタイミングで、空間の下へと落下を始めた。

 

「ぐうっ!? くそっ………!!」

 

Uは止むを得ずバイクを乗り捨てると、自身の姿勢を安定させた後に身体を浮遊させた。

 

「(重力が微かに働いている………僕自身は身体が飛行する術を覚えているが、バイクは微かな重力に逆らって落ちてしまったな………)」

 

Uは延々と落下していくバイクを残念がるように見ていた。すると………

 

「やっぱり来てくれた………助けを求めれば貴方は来ると思ってた………」

 

先程の声の主がUに再び言葉をかけてきた。

 

「………誰だ」

 

Uは声の主を警戒し、そう問いかける。

 

「この空間の支配者だよ」

 

声の主はUに対し、自身が空間の支配者である事を明かす。だが、Uは声の主がどのような人物であるかよりも、その人物の声帯に首を傾げていた。

 

「(誰かに似ている声だ。まるで真子の声………いや、有り得ない。世界の調査でここしばらく会っていないが、あの子にこんな高度な芸当が出来る訳が無い………)」

 

Uは、声の主の声帯が娘の真子に似ている事に違和感を覚えていた。しかし、自分の娘にこんな空間を作り出すような能力は無い事を知っているUは、首を傾げていた。

 

「呼び込んで早速なんだけど、私に協力して欲しい。倒して欲しい敵がいるんだ」

 

声の主はUに対し早速依頼をしてきた。

 

「待て、僕は協力するとは言っていないし、勝手に事を進められても困る。第一、お前が味方である保証も無いのにお前の依頼を受けるなんて僕に何のメリットがある?」

 

しかし、Uは声の主を疑っており、その態度はとても協力しようとする姿勢では無かった。

 

「………そうだった。貴方は身内に甘いけど初対面の人には警戒する性格なんだった」

 

声の主はそれに対し、まるでUを知っているかの言葉を呟いた。

 

「お前に僕の何が分かる?」

 

声の主の言葉に、Uは警戒しながらそう問いかける。

 

「分かるよ。こう見えて色んな世界の貴方………パラレルワールドで『ユウ』の名を持つ人をこの空間から見てきた………貴方含めてね。そして、今回の事件で貴方が1番頼りになる事を理解してここへ引き込んだんだよ」

 

声の主はそう言って、Uを知る理由と引き込んだ理由を語る。

 

「………次元を操る力か」

 

Uはその言葉から、声の主が次元に関する力を持っている事を悟った。

 

「………そうだね。貴方の味方である保証が無い事が最大の問題点だったね。分かった、証明になるかは分からないけど、貴方がとある敵を倒す為の協力をすると約束するよ。必要な物資や食料を瞬時に届けてあげる。それに私の目的が果たせたら元の世界へ同じ時間で返す。元いた世界で物理的時間が一切流れないまま帰れるなら貴方だって都合はいいでしょう?」

 

声の主はUの味方として、物資や食料の提供、目的達成後にUを元の時間へ返す事を約束する。

 

「まあそれはな。しかし、お前も僕の活動を観測しっぱなしという訳では無いんだろう? ちゃんと指示もしろ」

 

Uは声の主の提案に加え、自身への指示も要求する。

 

「分かってる。指示はしっかりするし、貴方が有益な情報を欲しい時に提供する事も約束する。これで信用してくれる?」

 

声の主は提案を受け入れると、自信を信用してくれるかを問いかける。

 

「信用はしていないが、指示の聞き入れはしよう。変に長居はしたくない」

 

Uは信用こそしていなかったが、長居をしたくないという理由で指示は受ける事を了承した。

 

「了解。じゃあ、貴方に行ってほしい世界へ転送しながら今回の概要を話させてもらうよ」

 

声の主はそう言って空間を操作すると、Uの下に出現した穴へ彼を引き込んだ。Uは目的の世界の空中に投げ出され、地上へと落下していた。

 

「今回この世界において倒して欲しいのは、この世界の日本で大きく勢力を広げ始めている犯罪組織『高天(たかまが)』、その副リーダーである邪島管心(よこしまかんしん)だよ」

 

声の主は放り込んだ先にある世界の人物、邪島管心の討伐を依頼してきた。

 

「副リーダー………? 珍しい討伐対象だ」

 

討伐する相手がリーダーでは無い事をUは不思議がっていた。

 

「実質的なリーダーは彼なんだよ。それと高天は幹部が日本の『古事記』っていう書物に出てくる神、天照、月読、須佐之男のコードネームを持つ3人、そして組織のリーダーである伊邪那岐とその他構成員で組織されているんだ、そしてその発足過程に邪島が絡んでいる。彼はこれまで数々の犯罪組織を組織しては日本のとある勢力を攻撃してきたんだよ」

 

邪島について解説する声の主。どうやら邪島はかなりの危険人物であるようだ。加えて、彼が所属する犯罪組織高天の概要をUへ伝えた。

 

「とある勢力………国家か?」

 

Uは邪島が関係する組織の矛先が日本国家であるかを問いかける。

 

「ううん、彼が狙っているのはこの世界で古来より日本の政治組織とは違う形で大きく存在してきた影の一族、『六道家』だよ」

 

声の主が言うには、その矛先は国家とは別の大きな一族、六道家である事を伝える。

 

「六道家? これまで見てきた日本のある世界には存在しなかった一族だ。あんまりいい予感がしないな………」

 

Uはこれまでの世界で存在していなかった一族に対して警戒心を向けていた。

 

「そうだね。一応日本国内へ実害を与える一族では無いけど信用はしちゃダメだよ。その勢力は裏社会にまで伸びている。私は少なくとも信用していないからね」

 

声の主も、六道家については警戒しているようであり、信用していなかった。そんな話をしている内に、地面へと落下していたUは地面が見えてきたのを目にする。高度1500FEATを切ったタイミングでUは姿勢を変え、高度500FEATを切ったタイミングで自身の身体を使って飛行を行った。これにより落下の勢いが無くなったUは緩やかに地面へと着地し、すぐに近くの岩陰に隠れた。

 

「地面に着地した。状況を伝える」

 

Uは岩陰から近くの様子を見る。するとその近くでは、マンションのような大きな建物を警察が透明な盾を持って囲っていた。そして、屋上には和装をした金髪の青年が立っていた。

 

「マンションらしき建物を警察が囲っている。ざっと見ても100人はいる。それに建物の屋上には金髪の男がいる。服装は和服と見て間違い無いだろう」

 

Uは目の前の状況を声の主へと説明する。

 

「金髪の男で和装………恐らく彼は月読。高天の幹部だよ」

 

声の主はその男が高天幹部の月読である事を語る。

 

「邪島以外の幹部はどうすればいい? 倒してしまっていいのか?」

 

Uは声の主に、邪島以外の幹部の討伐の有無を問いかける。

 

「任せるよ。高天がこの世界の脅威として存在しているのは間違い無いからね。生かすも殺すも貴方の好きにすればいいよ」

 

声の主は高天幹部の討伐についてはUに一任する事を告げた。

 

「分かった、行動を開始する」

 

Uはそう言って行動に移ろうとする。

 

「待って、幾つか伝え忘れてた」

 

だが、声の主は突如としてUに伝え忘れた事を伝えようとしていた。

 

「今現在、私達はとある力によって通信しているの。その原理を伝えておくよ」

 

声の主は、現在の会話手段について伝えようとしていた。

 

「いや、説明は割愛していい。どうせ僕の体内にある魔力を使ったテレパシーだろう? 春香とのテレパシーと同じ原理の」

 

しかし、Uは妻である春香とのテレパシーで用いている魔力通信である事を察知し、声の主へ答えを問いかける。

 

「………そうだよ。どうやらこれは改めて説明する必要は無さそうだね。私も魔力を持っている存在だから、貴方の中にある外付けの魔力に私の魔力を繋げれば通信が出来る。これからの間、この魔力のコードとも言うべき部分を繋げたままにしておくから、そっちが私に連絡したいタイミングでテレパシーを送ってくれれば対応するし、逆の時は私からテレパシーを飛ばす。貴方の中にある魔力に反応があった時が私がテレパシーを飛ばした合図だよ。その合図で反応する魔力は本当に微弱だから、敵には感知されない。安心してテレパシーを飛ばして」

 

声の主はテレパシーの仕組みを簡潔にUへと伝える。

 

「合図すると言っても呼び出す際にはコードネームのような名前くらいは必要だ。僕の方はそのままUと呼んでくれればいいが、そっちを何と呼べばいいか分からん」

 

Uは声の主に対し、どのような名で呼べばいいかを問いかける。

 

「………そうだね。次元を英語で言ったらDimension………そこから取って『ディメン』とでも名乗っておくよ」

 

声の主は取り敢えずディメンという名前でUに干渉する事を決めたようだった。

 

「ああ、そうだ。最後に私からの贈り物。すぐ目の前に銃の入った箱を送っておいたよ。貴方にとってはサブウェポンにしかならないと思うけど有効に使って欲しい」

 

ディメンによって、Uの目の前に突如として大きな箱が現れた。箱の中には銃と弾丸が入っているいくつかの弾倉が入っていた。

 

「ピストル………にしては大きいな」

 

箱の中にある銃はやや大きめのピストルだった。

 

「SOCOMピストルだよ」

 

どうやらこれはSOCOMピストルの愛称を持つ『H&K MARK 23』と呼ばれる大きく重たい銃だった。

 

「SOCOM? 殆どの世界に実在する銃なのは何となく知っているが、なんでこれをチョイスしたんだ?」

 

Uは何故SOCOMピストルを送って来たのかを問いかける。

 

「私の知り合いにその銃を好評していた人がいた………と言えば納得してくれるかな」

 

どうやら選択理由は個人的なものであった。Uはディメンの思考に首を傾げていたが………

 

「まあいいさ。大きくて重い程度、僕にとっては誤差だ。有難く使わせてもらう」

 

そのままSOCOMピストルを使わせてもらう事に決め、弾倉を1つ残して懐にしまい、残る1つをSOCOMピストルへセットした。

 

「装填数は12か。残弾数はしっかりと頭に入れておかないとな」

 

Uはそう言って銃のロックを外すと、建物の影を利用してゆっくりと例の建物に近付いていた。一方その頃、警察の1人が拡散機を手にし………

 

「犯人に告ぐ! お前は今完全に包囲されている! 大人しく投降しろ!!」

 

屋上に立つ月読に対し、投降を求めていた。

 

「うるさいなぁ………たかが人間がいきがんなよ」

 

だが、月読は面倒くさそうな様子でそう呟いた。そして次の瞬間、月読は右手に光を集束させる。

 

「(右手に光………奴は能力者か!)」

 

その動きを見たUは、月読が能力者である事に気づいた。そして、月読は右手に集束されていた光を刃の形に変えると、そのまま警察達に向けて放った。

 

「ぐああああ!!」

 

光の刃は警察が持っていた盾を易々と貫通し、次々と彼等の体を真っ二つにした。

 

「ぐっ、こうなったら仕方がない!」

 

その場にいた警察の総数の内、数十人が殺害された事に焦った警察の1人が拳銃を構えると、威嚇射撃等の過程をすっ飛ばし、月読に向けて発砲した。しかし、月読は自身の身体に光を纏うと、放たれた銃弾を身体で弾いてしまった。

 

「じゅ、銃が効かない!?」

 

銃が効かない事に困惑する警察達。その直後に月読は残っている警察達に向けて光の刃を次々と飛ばした。これにより、彼等は誰1人残らず光の刃によって身体を斬られてしまい、警察達が立っていた場所は死体と血が飛び交う地獄と化していた。

 

「あははは!! 警察如きに俺を倒せはしない! 無線機で黙って聞いてる人達よぉ、早く六道家っていう家の人間連れてこいよ! 強いんだろ!? あはは!!」

 

月読は狂った笑いをしながらそう言い放つ。

 

「………成程、月読の名の通り、月に由来した光の能力か」

 

Uは静かに分析を行いながら例の建物に近づくと、建物の壁を足場代わりにして、月読のいる屋上へ数秒で昇った。

 

「あん? 誰だお前? 見た感じ警察じゃ無さそうだ」

 

月読はUが突然現れた事に首を傾げていた。

 

「楽しそうだな。まるで頭のネジが外れた野郎だ」

 

Uはそう言って月読を毒づいた。

 

「はは、楽しい事を楽しんで何が悪いのさ」

 

月読はUの問いに対してそう言い放った。それを聞いたUは………

 

「そうかそうか。殺戮を楽しみたいならあの世でやってくれ。僕には共感出来ない趣味なんでな」

 

そう言ってSOCOMピストルを月読に向けた。

 

「無駄さ。俺に銃は効かない」

 

月読はそう言って再び全身に光を纏わせる。Uが試しに月読に向けてSOCOMピストルの弾丸を3発撃ってみるが、全ての弾丸が弾かれてしまった。

 

「やはりそうか。自身の力を身に纏う事で銃弾の勢いや貫通性を殺す………要は銃撃では威力が足りないって事だな」

 

Uはそう言って銃が効かない理由を語る。

 

「………なんで俺の力の原理を見抜いた? よく分からないけど………幾らお前でもこれをくらえばお終いだ………!」

 

月読はUに違和感を感じつつも、右手に光の刃を生成させ、Uに向けて投げ放つ。Uはこれをかわすが、その威力は近くにあったビルを切断し、そのまま爆発を起こしてしまう程だった。

 

「光を圧縮した熱エネルギーによって刃に触れた部分が溶かされる………それがお前の刃の原理だろ?」

 

だが、Uはこの光の刃の原理すらも見抜いていた。それを聞いた月読はかなり驚いた様子を見せる。

 

「お前何者だよ………俺の力なんて姉さんや須佐之男、父さんくらいしか知らないはずなのに………!」

 

月読はUへの警戒を強める。一方、Uは月読に向けてゆっくりと歩み出す。

 

「悪いが僕も似たような力を持っているんだ。しかも偶然、月由来のね………!」

 

Uはそう言って自身の右足にエネルギーを纏わせると、左足で地面を強く蹴って大きく飛び上がる。

 

「{ワイルドアタック}!」

 

Uは右足にエネルギーを纏わせた必殺のキックを放つ。

 

「何っ!? う、うああああっ!!」

 

月読はがむしゃらにUへ向けて光の刃を何発も飛ばす。しかし、全ての光の刃はUの右足に触れた途端に消滅。Uはそのまま月読の身体を貫通する蹴りを放ち、彼の身体に風穴を作った。更に蹴りの勢いがとてつもなく、月読は屋上から追い落とされた。

 

「ぐわあああっ!! (馬鹿な! 有り得ない有り得ない!! こんな、どこの誰かも分からない奴に俺が負けるなんて有り得ない!!)」

 

月読は自らの敗北が信じられない様子だった。しかし、月読は身体に風穴が出来たまま地面に激突した。地面に着地した月読の身体からは血が吹き出しており、遠目から見ても死んでいるのが分かる程だった。

 

「やはりそんな強い相手では無かったな………」

 

歴戦の戦士であるUにとって月読は全く相手では無かったようだ。Uは月読の死を見届けると………

 

「………ディメン。月読を倒した」

 

テレパシーでディメンに対し、月読を倒した事を告げる。

 

「月読を一撃で倒すとは………やはり歴戦の実力者からすれば月読は相手にならなかったようだね」

 

ディメンも月読とUの強さの差についてそう呟いた。

 

「それはさておき、早くそこを離れた方がいいよ。恐らく警察の応援が来る。警察の情報はさっきの警察隊が全滅させられたで止まっている。今が逃亡のチャンスなんだよ。銃を持っている以上、警察に声をかけられた時点でマズイ事になるし」

 

ディメンはUに対し、現場からの離脱を促した。

 

「分かった、一旦どこかに隠れる」

 

Uはそう言うと、空を飛行する形でその場を離脱した。その後、警察の応援隊が駆け付けた時には月読が既に死んでいたのもあって、現場は混乱が生じたという。また、月読の身体に風穴が出来ていた原因が、Uの異常な威力による蹴りである事を警察は突き止める事は出来ず、結果として月読は原因不明の死亡者として調査を続けられる事となったのだった………

 

 

 

そして、現場を離脱したUはしばらくして地面へ着地。持っていたSOCOMピストルを懐にしまうと………

 

「ディメン、月読を倒したのはいいが結果としてお前が捜し求めている邪島については何も情報が手に入らなかった。どうやら他の幹部と接触するか本拠地に乗り込むかしないと対面するのは無理そうだ」

 

再びディメンへテレパシーを行い、邪島の事を話す。

 

「そのようだね。警察は未だ高天の本拠地を掴めていない。今のままじゃ手詰まりかもしれないかな」

 

ディメンは、警察が未だ高天の拠点を掴めていない事を語る。

 

「手詰まりって………それじゃあ僕が来た意味が無いじゃないか」

 

Uは呆れた様子でそう呟く。

 

「あくまで警察は………って話だよ。高天の組織は実在している。場所は既に調べてあるよ」

 

ディメンはそう言って、独自に高天の組織がある場所を調べていた。

 

「それを先に言え………で、場所はどこだ?」

 

Uは呆れながら組織の場所を問いかける。

 

「高天の組織の場所はね………」

 

ディメンが組織の場所を言おうとしたまさにその時だった。Uは突如として異質な気配が近づいて来るのを感じた。

 

「待てディメン………誰か来る」

 

Uは気配を察知すると話を強引に止めた。懐にしまったSOCOMピストルを取り出すと、気配の方へ銃を向ける。すると彼の前に高校生くらいの青年が現れた。

 

「前と同じだ。また異質な気配………って、は? お前………白三谷ユウ………!?」

 

目の前には、銀髪に黒のメッシュのような色の毛がある高校生くらいの青年はUを見やるなりそう呟いていたが、突如としてUを白三谷ユウという人物と誤解する様子を見せ、驚いた様子でUを見やった。

 

「シロミヤユウ………?」

 

Uは青年が呟いた、自分の名と絶妙に似ている人物の名を聞き、首を傾げていた。

 

「おかしい………ユウは死んだはずだ。目の前にいるのがユウであるはずが無い………」

 

青年はUに対し首を傾げていた。しかし、しばらくUを見ていると………

 

「いや違う………お前はユウじゃない。似ているけど全く違う別人だ」

 

青年は彼が知っているユウの名を持つ人物とUが別人である事に気付いた。そんな中、ディメンから突然Uに対してテレパシーが飛んできた。

 

「U、気をつけて………! 彼は六道家の人間だよ。それも現当主、名前は六道理央」

 

ディメン曰く彼は六道理央という名を持つ六道家の当主であるようだ。

 

「六道………お前の言う例の………?」

 

Uは首を傾げながらテレパシーを飛ばす。

 

「そう、彼はかなり自由な人物みたい。ここに来た事も完全に好奇心だと思うよ………でも警戒して。強さは年齢の割にかなりのものだよ」

 

ディメンはそう言って、青年への警戒を促す。

 

「らしいな………雰囲気が強敵のそれだ。これまで戦ってきた神クラスの強さかもしれない………若さの割にな………」

 

Uも彼の強さを理解していた。そんな中、目の前の青年………理央が口を開いた。

 

「お前は誰なんだ?」

 

理央はUに対し、何者かを問いかける。

 

「………君よりは長生きな男だよ、若いの」

 

Uは理央に対し、強く警戒しながらそう返事した。

 

「………やはりユウとは違う。ここまで強い雰囲気を感じたのは初めてだ」

 

理央はUの強さを無意識に感じ取っていた。

 

「(………彼とここで戦うのは骨が折れる。ここは離脱させてもらうしかないな)」

 

一方、Uはそう考えるとSOCOMピストルで理央の近くにあった消化器を撃つ。これにより消化器の中のガスが噴出し、近くにいた理央を覆った。

 

「消化器のガス………!?」

 

これにより理央は消化器から噴出されたガスに気を取られた。その隙にUはなんとかその場を離脱する事に成功。ガスが晴れた時には理央の前に立っていたUが消えていた。

 

「………逃げられてしまった。いったい奴は何者なんだ………?」

 

理央はUについて、彼の謎に首を傾げるのだった………

 

 

 

一方、何とか離脱出来たUは廃墟となっている建物に身を隠すと………

 

「ディメン、1つ聞かせろ。彼の言っていたシロミヤユウとは誰の事だ? 明らかに僕の事では無かったようだが………?」

 

ディメンに対して先程理央が語っていた白三谷ユウとは何者かを問いかける。

 

「………」

 

この時のディメンは白三谷ユウについて、何処か話しづらそうであり、落ち込むような息を漏らした。

 

「………どうした?」

 

それを聞いたUは、先程まで何を聞いても普通に答えてきたディメンの様子がおかしい事から思わずそう問いかける。

 

「いや………彼の言っていたシロミヤユウとは白三谷ユウの事かな。漢字にすると白、三、谷。それで白三谷。ユウはカタカナだよ………」

 

ディメンは少しして、理央の言っていた白三谷ユウの事を語る。

 

「要はパラレルワールドの僕って事か」

 

Uは彼の言っていたユウがパラレルワールドの自分である事を悟った。

 

「………そういう事」

 

ディメンがUの問いに頷いた事から、Uの解釈は確かなようだった。

 

「………となれば僕で言う奥さんと娘………春香と真子に当たる家族もいるんだろう? どうなんだ、ディメン?」

 

Uは続けて、白三谷ユウには妻や娘もいるのでは無いかと問いかけた。

 

「………それはそうだけど………白三谷ユウは既に死んでいる。それに白三谷ユウの娘も彼が死んだ直後に行方不明になった。確か妻の方はまだ生きていたはずだけど………今はそんな事はどうでもいい。高天をなんとかするのを優先して欲しい」

 

ディメンはUの問いに頷きこそしたが、その答え方はやはり苦しそうなものだった。実際最終的にディメンは話を強引に変えてきた。

 

「なんというか………悪かった。分かった、白三谷ユウの話はしばらく無しだ。それで? 高天の場所を教えてくれ」

 

Uもこの時ばかりはディメンの辛い様子が本当である事を察知し、思わず気を使っていた。

 

「そうだったね。高天は六道県六道市の外れにある廃墟の教会の地下にあるよ。最近は心霊スポット化している場所だから人が訪れる事はまずないし、訪れた人間は9割の確率で失踪するなんて噂もある。拠点としては最適なんだろうね」

 

Uが話題を逸らした後、ディメンは少し冷静さを取り戻し、高天の拠点となっている場所を伝えた。

 

「六道県六道市………また六道絡みかな。それにしても縁起が悪いな。まあそういう場所が隠れ家に最適なのは確かな事だが」

 

Uはディメンの言葉に頷く素振りを見せる。

 

「恐らく本拠地に邪島がいるはず。彼を討伐する手段は問わない、任せるよ」

 

ディメンはUに対して邪島の殺害を改めて依頼する。

 

「でも幹部格はまだ残っているはずだろう? 確か天照と須佐之男だったか………」

 

Uは高天にはまだ幹部が残っているという点を指摘する。

 

「さっきも言ったけど倒す事については貴方に任せる。必要なら倒せばいいし………邪島討伐を達成してもらえばそれで結構だよ」

 

ディメンは討伐の必要性についてはUに一任する事を改めて伝える。

 

「分かった、その場その場で判断する事にするよ」

 

Uは彼女の言葉に頷くと共に、臨機応変に判断する事を呟く。

 

「高天の話については以上だよ。何か質問はある?」

 

ディメンはUに対し今回の事について質問を問いかける。

 

「質問って程じゃないが新しい銃が欲しい。SOCOMは気楽に使えるが連射面で虚弱だ。マシンガン系統を頼む」

 

するとUは新たな銃を欲した。

 

「分かった、アサルトライフルを送るよ」

 

ディメンはそう言って、再びUの目の前に大きな箱を送る。Uが箱を開けると、その中にはアサルトライフルが入っていた。

 

「FA-MAS、連射性が高い銃だな。連射性能が高過ぎてすぐに弾倉が空になるのが弱点っちゃ弱点だが………いざと言う時に信頼は出来る。弾倉は1つにつき25発。小回りが効きづらいがそこはSOCOMを使ってカバーした方が良さそうだ………まあ、能力者相手にはセイバーしか通じなさそうだから普通の人間にしか効果は出ないだろうがまあいいか。無闇にセイバーの事が露呈しても困る。特にあの若いのとか………」

 

Uはそう呟きながらアサルトライフルのFA-MASに弾倉をセットすると、背中の方へ隠し持つように装備。残った弾倉を懐にしまうと………

 

「よし、行くとするか」

 

Uは行動に移る事を決めた。

 

「あの、U………なんでもない。忘れて」

 

ディメンは最後に何か言いたがっていた様子を見せた。だが、結局は言葉を止めると話す事をやめた。

 

「………さっきから悲しそうだな。ホームシックにでもなったか?」

 

Uは、ディメンが白三谷ユウの話をし始めた所から悲しそうな様子である事から、冗談交じりにそう問いかけた。

 

「う、うるさいな………! 早く邪島をなんとかして!」

 

ディメンはUの言葉に思わずムキになる様子を見せた。

 

「ふっ、案外可愛げがあるじゃないか」

 

Uはディメンの様子に思わず笑いを零した。

 

「むうっ………いじわる」

 

ディメンは先程まで見せていた緊張感が思わず緩んでしまった様子を見せる。

 

「それにさっきから声で思ってたけど、お前、女だろ? 男にしては声が高いし」

 

Uは、ディメンが女である事も悟っていた。それを聞いていたディメンは少し黙りこくっていたが………

 

「………そうだよ、女ですぅ………これで満足?」

 

不貞腐れるようにディメンは自身が女である事を語った。

 

「まあね。でもそこまで開き直られたら逆に信用出来るってもんだ」

 

ディメンの完全に開き直る言葉を聞いたUは、この時になって彼女を信用する事に決めたようだった。

 

「ふふっ………そう言ってくれると有難いかな。私も貴方の味方であり続けられるようにするって約束するよ」

 

ディメンはUが警戒心を緩和してくれた事に思わず笑いを零すと、彼の味方として立ち続ける事を改めて約束した。

 

「寂しくなったらいつでも話し相手になる。それじゃあ行くからな」

 

Uはディメンに対し、高天の拠点に行く事を告げる。

 

「お願い、気をつけてね」

 

ディメンは優しい口調でUを送る言葉をかけた。

 

「………貴方はお父さんと同じ頼りになる人だから」

 

オマケとして、ディメンは最後にボソッとそんな事を呟いた。

 

「なんか言ったか?」

 

Uはディメンの言葉を聴き逃したのか、思わずそう問いかけた。

 

「なんでもない、絶対に邪島を倒してね」

 

ディメンは最後にそう言うと、テレパシーを止めた。

 

「ディメン………まるで子供のような人物だな。まるで小さい頃の真子を思い出す」

 

Uはディメンの様子から、自身の娘である真子の子供の頃を思い出していた。そして少し時間が経った後に、高天の本拠地に乗り込む覚悟を決め、六道県六道市の外にある教会へと歩き出した………だが、そんな彼が目的地へと向かう様子を何者かが見ていたようであり………?

 

「………ここにいたのか」

 

声の主はそう呟いて、Uの後を追いかけるのだった………

 

 

 

その後、Uは時間をかけて目的地である六道県六道市の外れにある廃墟の教会へとやってきた。そして窓から様子を見つつ、ディメンにテレパシーを飛ばした。

 

「随分古びた教会だな。窓から中の様子を見ているが、長椅子や司祭が立つであろう教壇すらかなり朽ち果てている。あんな朽ち果て方は見た事が無い。心霊スポットと言われるのも頷けるな」

 

Uはそう言って内部状況をディメンに伝える。そんな中、教会の入口から黒い覆面を被った怪しい男が入ってきた。

 

「覆面の男が入ってきた。あれは誰だ? 高天の構成員か?」

 

Uは覆面男についてディメンに問いかける。

 

「かもしれないね、構成員はこの教会から拠点に入る時には覆面をしている。誰1人として顔を見せないのは足がつかないようにしてるんじゃないかな?」

 

ディメンはそう言って、覆面の男が高天の構成員であるかについてそう答えた。実際覆面の男は周辺を見回した後に教壇の下へと隠れるように入った。

 

「教壇の下に入った。あそこが入口かもしれないな」

 

Uはそう言って入口の方へ回ろうとした時、教会の方へ数台の車の走行音が聞こえてくるのを耳にした。

 

「誰か来るぞ………?」

 

Uは咄嗟に教会の裏側に隠れる。そして教会へ到着した車からは数人の黒子らしき者達が登場し、教会の中へと入っていった。

 

「黒子………? 見た感じ浮いているようにしか見えないが、何人か入口に立った。車には………女? 誰か乗っている。多分、コイツら黒子よりも偉い人間だ………これでは入口からの侵入は無理だ」

 

突如現れた黒子達によって教会の入口が占拠されてしまい、正面突入は不可能になってしまった。

 

「そうなったら方法は2つしかないね。正面突破か窓からこっそりと侵入するか………」

 

ディメンはこの状況の打開策を口にした。

 

「正面突破は現実的じゃないな………もしあの偉い立場にいそうな女が六道家の人間だとしたら面倒な事になる。さっきの若いのも六道家の人間である以上な」

 

Uはそう言って様子を見ていた。すると、車の方へ歩いてくる人物が1人………

 

「あっちの車の方に誰か来ている………」

 

Uは車の方へ向かっている人物を遠くから観察する。

 

「っ………!? あの見た目………間違いない、さっき遭遇した若いのだ………!」

 

どうやら車に近付いてきたのは六道理央だったようだ。彼は車の中に入ると、中にいる女性と会話を始めた。

 

「六道理央………マズイ事になった、彼は貴方を知っている………あの女の人が六道家の人間なら貴方に警戒を向けるよう情報を流す可能性もある………」

 

ディメンは六道理央の登場により、より一層警戒する様子を見せた。

 

「それなら窓からの侵入しかないだろう。考えたくは無いが彼等が高天の情報を掴んでいる可能性もある………警察すら獲得できていない情報を掴んでいるとは考えたくないが………」

 

現状を見たUは、窓からの侵入を考える事に決めた。UはSOCOMピストルを取り出すと、銃口側を持ちグリップで軽く窓を叩いた。

 

「やはりボロボロなだけあってガラスは脆い。下手に勢いよく叩かなければバレるリスクも低いし、ここは窓からの突入が最適解だろうな」

 

Uはそう言うと、窓からの侵入を試みる事に決定した。だが、その直後に辺り一面に地響きが発生する。

 

「地震………? 自然によるものでは無いな………」

 

Uは驚いた様子を見せる。すると次の瞬間、教会内の教壇が突如として真上へと吹き飛んだ。教壇の下には確かに階段が隠れていたようであり、その階段からは赤髪の大男が現れた。

 

「おうおうおう、兄上を倒したのはお前達かぁ………!?」

 

中から現れた男はそう言って月読が殺された事に苛立っている様子だった。

 

「ディメン、デカイ赤髪の男が現れたぞ………! パッと見で2mはある………」

 

Uはその男についてディメンにすかさず報告する。

 

「2mの赤髪男………間違いない、彼が須佐之男だよ」

 

ディメンによると、目の前に立つ大男こそが高天幹部の1人、須佐之男のようだ。

 

「須佐之男………現場の騒音が凄まじいものになっていくな………」

 

Uは目の前の状況の変化に思わずそう呟いた。

 

「でもこれはチャンスかもしれない。幹部クラスが相手なら幾ら六道家でも時間がかかるはず………少なくとも時間稼ぎくらいにはなる………! U、今の内に中へ潜入して………!」

 

だが、ディメンはこの状況をチャンスと捉えた。それを聞いたUは………

 

「………分かった。もう少し様子を見たかったがここは強気に行こう」

 

ディメンの案を聞き入れ、SOCOMピストルの銃口を持って構える。

 

「兄上を倒したのは………お前らかああぁぁぁ!!」

 

そして須佐之男が怒号を飛ばしたと同時にUはSOCOMピストルのグリップで窓ガラスを破壊。黒子達は須佐之男の巨体と怒号に気を取られ、窓ガラスが割れた事に気づけなかった。その隙に窓ガラスから中に入ったUは、須佐之男の影となっている部分から音を立てずに階段を降りるのだった………

 

 

 

誰にもバレずに中へ入れたUは階段を降りると、近くの影に隠れて落ち着く様子を見せる。

 

「………正面突破は過去に何十回と行ってきたが、隠密行動は中々無い経験だ」

 

Uは安堵の気持ちから思わずそう呟いた。そして、UはSOCOMピストルを片手に持ち、壁の影を利用しながら内部への潜入を開始する。それと同時にディメンへのテレパシーを飛ばし始めた。

 

「ディメン、組織内に潜入した。入口に見張りはいない。これから中へ入る」

 

Uは組織内への潜入を報告。彼の言うように入口に見張りはいなかった。

 

「分かった。何か欲しい物資とかがあったらすぐ教えて」

 

ディメンはUに対し、困った際の物資支援を約束。

 

「了解」

 

Uはそう言ってテレパシーを切ると、ゆっくりと組織の中を探索する。だが、Uが現在歩いている一本道には見張りが誰もいなかった。

 

「(須佐之男のような図体のデカイ奴がここを直前に通った影響かは分からないが見張りが居ないのは助かる。今の内にここを通る………!)」

 

Uはこのチャンスを逃さず、次第に足取りを軽くして進んでいく。だが、一本道の出口が近づく程に、足音が聞こえてきた。

 

「(足音………さては一本道の出口が近いな………?)」

 

Uは足音が響かないよう足を止めると、壁の影に隠れながら一本道の出口に近づく。そして足音の通り、一本道の出口からは、3階層に渡る大広間が広がっていた。

 

「(くそっ、フロアがデカイ上に視界が広すぎる。マズったなぁ………)」

 

Uはあまりにも開けた空間に頭を悩ませていた。そんな中、Uがいる地点に歩いてくる見張りがいた。

 

「(あれは覆面型武装兵士………軍人のようなミリタリー服にアサルトライフルも持っている………あの形は多分AK-47か………いや、待てよ? 奴が使えそうだ)」

 

Uは覆面兵士を見つけてとある光明を見い出した。そして、覆面兵士が目の前に来た次の瞬間、兵士の口元を押さえながら服の首元を掴んで一本道の方へ引き寄せた。直後にUは覆面兵士の首元にチョップを叩き込み、覆面兵士を気絶させた。

 

「悪く思うなよ。僕だって早く帰りたいんだからさ」

 

Uはそう言って兵士が着ていた服と装備一式を強奪。それらを身に着けると共に、AK-47を構えると、元々の見張り兵を組織の入口の方へと運んだ。その後に見張りへ擬態する形で大広間に出た。

 

「(こっから見ると本当に広い。何とか奴らのトップ層が居る所にまで近づきたいもんだが………)」

 

Uは状況を把握しながら歩き回る。すると………

 

「おい、お前!」

 

後ろから覆面に加えて別の色の服を着ている見張りが声をかけてきた。

 

「………!? (バレたか………?)」

 

Uは反射的にAK-47を構えた。

 

「おわっ!? 銃を俺に向けるなって! お前の見張りは地下2階だろって話だ! 起きたばっかで寝ぼけてんじゃねえのか?」

 

だが、その見張りはUを先程気絶させた方の見張りと勘違いしている様子だった。ここで声を出してバレる訳にはいかないUは謝るように頭を下げる。

 

「たくっ………エレベーターはあっちだ。さっさと持ち場に着け!」

 

見張りの言葉を聞いたUは敬礼をしてエレベーターの方へ向かった。

 

「(危ねぇ………! 反射的に構えちまったよ、もう………!)」

 

Uは心の中でそう呟きながらエレベーターへと向かい、地下2階へと向かう。そしてエレベーターが到着するまでの間に、テレパシーで通信しておく事に。

 

「ディメン、兵士に擬態して潜入出来た。この兵士の担当は地下2階らしい」

 

Uはディメンに対し、自身が擬態している兵士の持ち場を伝えた。

 

「それは幸運な事だね。そういう地下組織は地下最深部に幹部層がいる事が多いよ。安全面は勿論、地表貫通型核ミサイルが刺さってきても平気でいられるようにね………U、最下層を捜索してみて」

 

ディメンは、Uに対して最下層部の捜索を指示する。

 

「分かった」

 

Uは返事のテレパシーを送る。それと同時にエレベーターは地下2階へ到着した。

 

「(よし、行くか………!)」

 

Uは見張りのフリをしながら地下2階の捜索を始める。そして、入口に入って早々、同じ色の服を着た見張りと遭遇し………

 

「おっ、交代の時間か。ここは重要部のくせに見張りが1人しか設置されないんだよなぁ。伊邪那岐様ももうちょっと警備を固めるべきだと思うんだけどなぁ………まあいいや、何はともあれ頼んだぞ」

 

見張りはUの登場で交代と勘違いし、そのままエレベーターの方へと向かった。

 

「(ここを兵士1人で護衛………? 確かに上からこの階を見下ろす事は出来るが、見た所他の階は大体3人体制だ。死角だって生まれる………それ程余裕があるのか、ここの組織のトップ層は………)」

 

Uは困惑しながら見張りのフリをして辺り一面を歩く。Uがいる階は大広間な割にエレベーターと両開き扉の1つしか無く、重要部と呼ぶにはあまりにも物が無かった。

 

「(なんだってこんなバカな体制を敷いているのやら………?)」

 

Uはあまりにも手薄すぎる警備体制に首を傾げていた。そして………

 

「………意を決して行くしかないか」

 

Uは覚悟を決めて扉をゆっくりと開ける。だが、扉の先はまたしても机等が存在しない大広間だった。

 

「(大広間が連続………? 罠か………?)」

 

Uは罠を疑いながら辺り一面を見回す。そして、迂闊に動けない事を考えると、一度ディメンへのテレパシーを行う事に。

 

「ディメン、僕が擬態した兵士は思ったよりも重要な担当だったらしい。偶然とはいえ嫌な予感がするよ」

 

Uはあまりにも好都合な動きに嫌な予感を感じていた。

 

「そうだね………というより、守りを固める必要がある最下層の警備がザルっていうのはあまりにも変だよ………」

 

ディメンも、不自然過ぎる警備体制に首を傾げていた。

 

「………何か秘密があると見るしか無いだろう。見張りを減らしてまで隠したい都合があるとか」

 

Uは首を傾げながら仮説を立てていた。そんな中、Uは何処かから視線を感じていた。

 

「………! 何処からか視線を感じる………」

 

Uは視線を感じるなりAK-47を辺り一面に向ける。Uに向けられていると思われる視線の位置が二転三転する中、その視線の主と思われる何重もの着物を着用した女性が後ろからUに対し強襲をかけるように接近してきた。

 

「………そこか!!」

 

Uは視線の方角を当てるなり、AK-47を乱射した。しかし、女性は身体に赤い光を纏う事によって銃弾を防いでいた。

 

「ぐっ! (現代兵器が効かない………能力者か………!!)」

 

Uは後ろに飛ぶ形で何とか強襲を回避。再びAK-47での狙撃を行おうとトリガーを引くが、弾が切れてしまった為に不発に終わった。

 

「弾切れか………! だったら………!!」

 

UはAK-47を投げ捨てると、見張り服の内側に隠していたFA-MASを取り出し、FA-MASによるとてつもない速度で弾丸を乱射する。しかし、女性の身体に纏われた光の防御を突破する事は出来ず、すぐに弾切れを起こした。

 

「これも効かないのか………!?」

 

Uは現代兵器が尽く通じない事に驚きを隠せなかった。すぐにFA-MASの弾倉を取りだしてリロードしようとするが、女性は右手から炎を放って来た。

 

「なあっ!?」

 

Uは右に飛ぶ事で回避したが、その際にFA-MASを取り落としてしまった。

 

「やってくれるなぁ………でも今ので分かった………アンタが天照って訳だ」

 

Uは女性の能力を目にし、彼女が天照である事に気付いた。

 

「いかにも。私は伊邪那岐三幹部の長女天照。貴方、侵入者にしてはやりますね。どんなに凄腕のスパイでもさっきの一撃に動揺して燃えるのがオチなんですが………」

 

女性は自身が天照である事を名乗り、この数手でUの実力の高さを感じていた。

 

「そりゃそうだ。普通の人間は火炎放射器も無しに炎は出せないからな」

 

Uはそう言って身体を起こすと、覆面を外して投げ捨てた。

 

「それに、私が能力者である事をあっさりと見抜きましたね………貴方は何者です?」

 

天照は首を傾げながらUを問いかける。

 

「平凡な生活を送りたいだけの男だよ」

 

Uはジョーク交じりの言葉を返す。

 

「………ジョークだとしても信じ難いですね」

 

天照はそう言うと、自身の身体に纏われる赤い光を強める。

 

「貴方を殺すには………私も本気を出さねばなりませんね………」

 

天照は右手に再び炎を出現させる。更に、左手には金色の光を出現させ、両手の力を交じ合わせた。

 

「(能力は炎だけじゃない………天照の名の通り太陽に関する能力。それを拡大解釈した高等技だ………!)」

 

Uは天照の攻撃を分析。そして、両手の力を交じ合わせた事で、天照の手元に太陽のような球体が生成される。

 

「{高天太陽波}!」

 

天照はUに向かって球体を投げる。球体はUの方へと飛んでいき、とてつもない爆発を起こした。

 

「{高天太陽波}は、太陽神と呼ばれ高天原を統治していた古事記の天照大神に対する解釈の末に完成した私の奥義………例え強力な能力者でもそう易々と耐えられる技ではありません」

 

天照はそう言って、自らの勝利を確信していた。

 

「………確かにまともにくらったら跡形もなくなるな。アンタが奥義として信用するのも分かる。けど………若いな」

 

だが、Uはそう言って辺り一面の炎を消し飛ばした。天照の目の前にいたのは、潜入時に着ていた兵服を脱ぎ捨て、いつもの格好になっていたUだった。

 

「そんな………! この技を受けて無傷なんて………!」

 

天照は目の前の光景が信じられずにいた。Uは懐から懐中電灯のようなものを取り出す。するとその先端から青い光が刃のように放出する。

 

「剣………ビームサーベル!?」

 

天照はUが持つ武器のタイプは初めて見るのか、その存在に驚いていた。

 

「アンタに恨みは無いんだが………僕を倒すのは無理だ。経験が足りない」

 

Uはそう言って天照では自分を倒せない事を語る。

 

「ぐっ………この私をなめないでください………!!」

 

天照はそう言うと、右手から炎、左手から光のレーザーを連続して放つ。しかし、Uは手に持ったビームサーベル型武器ZEROセイバーで攻撃を撃ち落とすと、光の刀身を天照に向けて飛ばす。

 

「っ………!」

 

天照は回避行動を取ったが、Uによる斬撃の一撃は左腕の着物の袖を斬った。

 

「(かわせなかった………!? なんて鋭くて速い斬撃………!)」

 

天照はUの鋭い斬撃に驚いていた。

 

「はああっ!!」

 

天照が動揺する中、Uは天照に向けて接近するのだった………

 

 

 

一方その頃、地上では須佐之男が暴れていた。黒子達は刺叉のようなものを使って応戦するが、須佐之男の雄叫びに萎縮し、圧倒的なパワーを前に吹き飛ばされてしまった。

 

「この程度で俺を倒せると思ったかぁー!!」

 

須佐之男は黒子達を圧倒しながらそう言い放つ。車の中で様子を見ていた六道理央と女性は驚く様子を見せていた。

 

「あの人、見た目に違わずかなり強いね………やっぱり高天幹部は能力者だっていう噂は本当と見て間違いなさそうだよ」

 

女性は理央に対し、高天幹部に対する噂を伝える。

 

「そうかぁ。そりゃ警察には太刀打ち出来ない訳だよ」

 

理央はそう言って須佐之男に視線を向ける。

 

「そういう割には楽しそうだね」

 

女性は理央に対して、彼が楽しそうな様子である事を指摘する。

 

「まあな。こうして強い奴と戦う機会は早々回ってこないからさ」

 

理央はそう言って車の中から出てきた。

 

「おい、お前! 俺が相手になってやるよ!」

 

理央はそう言って須佐之男に勝負を持ちかける。

 

「なんだぁ、お前?」

 

須佐之男は理央に対し首を傾げながら問いかける。だが次の瞬間、須佐之男は理央から放たれたパンチ1発で倒れてしまった。

 

「………あれ?」

 

理央は余りにも拍子抜けした様子を見せると、須佐之男に駆け寄る。

 

「気を失ったのか………? だとしても早すぎだろ………」

 

理央は落胆した様子でそう言い放つ。すると女性が車から出てきた。

 

「馬鹿言わないでよ。簡単に倒せただけ良かったでしょう?」

 

女性は呆れた様子で理央に対しそう言い放つ。そして、近くにあった階段を見つけると………

 

「ほら、行くよ。それと何人かは彼の身柄を抑えといて。通報するから」

 

そう言って、3人程がその場に残り、落胆する理央と残り数名の黒子を連れて階段を降りるのだった………

 

 

 

そして同じ頃、天照と対決していたUは彼女を圧倒していた。

 

「はあっ、はあっ………そんな………ここまでの実力差があるなんて………ここまで強い存在は六道家以外には存在しないはず………!」

 

天照はUの強さが六道家のような異次元なものである事に驚きを隠せなかった。

 

「六道………? あの一族そんなに強いのか?」

 

Uは首を傾げながら天照にそう問いかける。

 

「………六道家を詳しく知らない? じゃあ、貴方はいったいどこの家の人間なのですか………!?」

 

天照はUが六道家の人間では無い事を知ると、益々その出身に疑問を抱いていた。

 

「どこの家の出身でもない………幾度も幾度も………数十年、数百年と戦いに駆り出され続けてきた哀れな男だよ」

 

Uはそう言って、手に持ったセイバーにエネルギーを収束させる。

 

「ぐっ、ううっ………{高天太陽波}!」

 

天照は再び必殺の一撃を放つ。しかし、Uはエネルギーを溜め込んだセイバーが紫へ変化したのを目にすると、セイバーを両手で上に掲げる。

 

「{マスターセイバー}!!」

 

Uは勢いに任せた縦斬りを行い、そのまま刀身のエネルギーを飛ばす。刀身のエネルギーは天照が放った太陽のような球体を真っ二つにし、そのまま天照の身体を斬り裂いた。

 

「ああああああっーー!!」

 

刀身のエネルギーは天照の身体をも貫通。近くの壁に激突する事で漸くエネルギーが切れたように消え去った。

 

「六道家の人間は知らんが、僕は殺しに関してはドライな方でね。月読を殺したのも僕だ………人殺しだと罵りたければ罵ってくれ」

 

Uは天照が致命傷を負ったのを見届けると、持ち手だけとなったセイバーを懐にしまうと同時に、月読を殺したのは自分だと語る。

 

「月読………そうですか」

 

天照はそう言って口から血を吐いた。

 

「………結局、あの子には幸せというものが何かを教えてあげられなかった………」

 

次に天照の口から出たのは、意外にも月読に対する後悔だった。

 

「幸せ? どういう意味だ」

 

Uは天照の言葉に首を傾げていた。

 

「父上………伊邪那岐様は10年前の事件で愛する人を失ってしまった………その愛する人は私達三幹部の実の母親なんです………」

 

天照が語ったのは、なんと自分達三幹部は10年前に亡くなった伊邪那岐の恋人の子供であるというものだった。

 

「アンタらが実の姉弟だと?」

 

Uは天照の言葉に多少なりと驚いていた。

 

「ええ………私達が名乗っている神の名は所詮コードネームでしかなく………本当の名前と同じ苗字を持った、ただの人間でした………最も、父上には………お父様には忘れろと言われていましたけれど………」

 

天照はそう言うと、服の中から5つのドッグタグを取りだした。

 

「ドッグタグ………?」

 

天照から意外なものが出てきた事にUは驚いていた。

 

「これは私達の名前を唯一記録している存在………高天という組織としてではなく、家族としての記録………私が家族を忘れない最後の希望だった………」

 

天照はそう言って、目に涙を浮かべながら自身の中に溢れてくる想いを口にする。彼女の想いを聞く中で、Uは無意識に彼女へと駆け寄る。

 

「………1つ教えてくれ。そんな幸せな家族が何故こんな犯罪組織を作った………?」

 

Uは自身の中にある疑問を天照に語りかける。

 

「この組織は、10年前の事件で母が殺された際に、六道家の人間によるものだと聞かされた父が、六道家への復讐の為に発足したとお父様は仰っていました………」

 

天照曰く、高天は愛する恋人を失った伊邪那岐による六道家への復讐が目的だった。しかし、天照はどこかそれが正しいとは言い難い様子を見せていた。

 

「………なら何故邪島なんて奴がいる?」

 

Uもその答えに引っかかる様子を見せていた。確かにこれだけが目的なら邪島が実質的なトップになるのはおかしい。

 

「………これは月読や須佐之男にも話していない事ですが………あの10年前の事件で母を殺害したのは邪島だったんです………」

 

天照はUに対し、邪島の事を語る。なんと、伊邪那岐の恋人を殺したのは邪島だというのだ。

 

「邪島が犯人だと………!?」

 

Uはまさかの展開に驚きを隠せなかった。

 

「お父様はそれに気づかないまま操り人形同然にされてしまったんです。私も過去に助言しましたが聞き入れてもらえませんでした………私は家族への愛情は持っていましたけれど、あの男だけは信用していなかった………私達家族の平穏な日常を壊し、私達家族の中に秘められていた能力を用いた犯罪組織を作る為にお父様を利用したあの男か憎かったのです………!」

 

天照は悔しそうな様子で真実を語る。これこそ、邪島が組織の実質的なリーダーとなっている経緯であった。

 

「とんでもない野郎だな。人間としてのネジが外れてやがる」

 

Uもこれにはとてつもない嫌悪感を見せていた。

 

「………しかし、邪島の事をどこで知ったのですか? この組織でもトップシークレットと呼ばれるくらいには邪島の事は知られていないはずなのに………」

 

そんな中、天照はUが邪島の事を知っている事に驚いていた。

 

「………依頼主がいるんだよ。六道家以外にも邪島って奴を殺したがってる人間はいるらしい」

 

Uはディメンの正体を明かさない範囲で理由を語る。それを聞いた天照は………

 

「そうですか………最も、死のタイムリミットが迫っている私には関係無いですが………」

 

苦笑混じりにそう言って右手をあげると、左側の壁に自身のエネルギーを放出。するとその中心が引き戸のように横へとずれた。

 

「能力者によって動く壁が通り道だったのか………そりゃ、警備もそんなにいらないはずだ」

 

Uは納得させられた様子でそう呟いた。

 

「しかし、何故この先の道を開けてくれた?」

 

同時にUは何故自身に最深部への道の入口を開けてくれたのかについて疑問を感じていた。

 

「貴方が六道家側でも邪島側でもない………そう信じての事です。それに………こんな馬鹿げた組織は作るべきじゃなかった………その後悔の念があるっていうのもありますが………」

 

天照は期待と後悔の気持ちからそう呟いた。

 

「それとこれを………」

 

更に天照は、Uに対してドッグタグを渡してきた。

 

「………受け取れない。こんな想いの詰まった物………」

 

Uは受け取る事に抵抗がある様子だった。それを聞いた天照はUの本質に僅かながら気付いた。

 

「………殺人の面で自身の事をドライと仰っていましたけれど、意外と情に厚い人………貴方なら邪島を倒せます。きっと………」

 

天照はそう言って、Uの情の厚さに思わず笑みを見せていた。そんな最中、部屋の外から銃声や見張り兵の悲鳴が聞こえてきた。

 

「な、なんだ………!?」

 

U達は驚きを隠せない様子を見せる。

 

「他の侵入者が入って来たみたいです………須佐之男が偵察に行っていたはずなのですが、戻って来ない所を見るとやられた可能性がありますね………」

 

天照は状況を察知した。そして………

 

「なら尚更早く行ってください………! ここで侵入者と鉢合わせたら貴方にとっても問題でしょう………!?」

 

天照はUに最深部への突入を促した。

 

「しかし………!」

 

Uは躊躇う様子で反論しようとする。

 

「私は貴方だから通すんです!! 他の侵入者達を通させないとまでは行かなくとも、時間稼ぎくらいはします………! だから早く!!」

 

天照はそう言ってUの躊躇いに対しそう言い放った。それを聞いたUは握り拳を作りながら開いた入口の前に立ち………

 

「………ありがとう………!」

 

一言感謝の言葉を述べて最深部へと入りだした。天照はUが中へ入ったのを見届けると、すぐさま自身の能力で壁の引き戸を閉じた。

 

「ありがとう………家族以外で言われたのは初めて………ですね………」

 

天照は最後の最後に満足した様子で息を引き取った。その直後に他の侵入者が天照のいる空間に突入。入ってきたのは数名の黒子と先程の女性、そして六道理央だった。

 

「行き止まり………? それに、人が倒れている………!?」

 

女性は目の前の光景に驚いていた。そして、黒子達が天照の死体に触れ、彼女が死んでいる事を伝えた。

 

「ここで殺人が起きた………でもどうしてここで………?」

 

行き止まりで起きるにはおかしいように感じる天照の殺害。女性が首を傾げていると、理央は先の戦闘でUが投げ捨てたAK-47と、取り落としたFA-MASを見つけて拾い上げた。

 

「銃が落ちてる………でもどう考えてもそいつの死因は刃物かなんかで真っ二つにされた事だな。それに死んだばっかの様子だし………」

 

理央は天照の殺され方に不自然さを覚えると………

 

「なあ、この部屋全部調べないか? もしかしたら仕掛けがあるかもしれないし」

 

そう言って、部屋の中に仕掛けがあると勘繰って、黒子達と共に調査を開始するのだった………

 

 

 

そして、その会話をUはドッグタグを握りしめながら密かに聞き、同時にディメンへテレパシーを送り始めた。

 

「ディメン、彼等がここまで来た………! 須佐之男は倒されたのか………!?」

 

Uは驚きを隠せない様子を見せながらディメンに須佐之男討伐の有無を問いかける。

 

「会話していた人の中に六道理央がいる事から、倒されたと見るべきだね………ここまで早く来たのは驚いたけど………」

 

ディメンは外の様子から須佐之男が倒された事を確信した。

 

「U、そこの入口がバレるのも時間の問題だよ。今の内に奥に入って邪島を討伐して! 脱出の方は最悪私が何とかするから………!」

 

ディメンは理央達と鉢合わせる事が無い今がチャンスとして、最深部への侵入と邪島の討伐を指示する。

 

「………分かった。天照が最期にくれたこのチャンスを無駄にはしない………!」

 

Uは天照から受け取ったドッグタグを懐にしまうと、最深部に向かって走り出すのだった………

 

 

 

そこから先は長くて暗い一本道が続いていた。だが、ここは隠し通路故複雑なものではなく、Uはすぐに出口を見つけた。出口の先には玉座の魔があり、そこには玉座に座る男と、その横に老人のような見た目の男が立っていた。

 

「………ディメン、最深部に到着。玉座に座っている男と………老人がいる」

 

Uは目の前の状況をテレパシーでディメンに説明する。

 

「老人………!? 間違いないよ、その男が邪島だよ!!」

 

ディメンは、老人が邪島である事を伝える。

 

「奴が邪島………」

 

Uは懐からSOCOMピストルを取り出す。

 

「………ダメだ、ここからSOCOMでは届かない。伊邪那岐を含めた対決を覚悟で行くしかないのか………」

 

Uは天照の言葉を聞いた手前、伊邪那岐との対決に疑問を持っていたが、六道理央達と鉢合わせるタイムリミットが迫っている事を考え、心を鬼にして伊邪那岐との対決に対する覚悟を決めた。そして………

 

「………ディメン、覚悟は決まった。行くよ」

 

ディメンに対してそのようなテレパシーを飛ばして突入した。

 

「動くな!」

 

UはSOCOMピストルを構えながら伊邪那岐達の前に立った。

 

「………! 誰だ貴様………!?」

 

伊邪那岐は侵入者が目の前に現れた事に声を荒らげた。

 

「アンタが伊邪那岐か。悪いが僕はアンタに用は無い。用があるのはそこの老人………邪島だ!」

 

Uはそう言って、自らの討伐対象を語る。伊邪那岐はUの登場に驚きを隠せずにいた中、邪島は伊邪那岐以上にUの登場に驚いていた。

 

「………どうした、邪島?」

 

伊邪那岐は邪島のあまりの驚きように首を傾げる。

 

「いえ………」

 

邪島は一言だけそう呟くと、すぐに冷静さを取り戻す様子を見せた。

 

「偉い動揺してるじゃないか………そんなに侵入者が入るのは嫌か?」

 

Uは邪島に対しそう言い放つ。邪島は何か都合が悪いのか、沈黙を貫いていた。

 

「………天照はどうした?」

 

そんな中、伊邪那岐が口を開き、天照の安否を問いかける。

 

「僕が殺したよ」

 

Uは表情を変える事無く自身が手にかけた事を語る。

 

「あの子は私の配下の中で1番強い子だ。殺したなど信じ難いが………目の前にいる以上は信じる他あるまい。どうやってここまで繋がっている通路への仕掛けを見抜いたかは知らんが………」

 

伊邪那岐はそう言って、天照の死は事実である事を悟った。

 

「まあいい。ここで貴様を殺せば関係無い話だ」

 

伊邪那岐はそう言って玉座を立ち上がる。

 

「お待ちください、伊邪那岐様。天照様を倒したという事は、奴は間違い無く能力者です。能力は恐らく………」

 

邪島は伊邪那岐にUの能力が何であるかを伝える。

 

「(僕の能力を把握している………? いや、有り得ない。僕はここまで力の一端しか見せてないんだぞ………?)」

 

Uは目の前にいる邪島が自分の能力に気付いているかもしれない事に首を傾げていた。

 

「………ほう。それは厄介だ」

 

邪島の助言を聞いた伊邪那岐はそう言うと、近くに置いてあった刀を手にする。

 

「ならば我が能力で滅ぼしてくれる!」

 

伊邪那岐はそう言うと、刀に緑のエネルギーを纏わせ、Uに向けてエネルギーを飛ばす。

 

「当たるか!」

 

Uはこれをかわすと、SOCOMピストルによる2連射を行う。

 

「はああっ!」

 

しかし、伊邪那岐は手から光の弾丸を放ち、弾丸にぶつけて撃ち落とした。

 

「(エネルギーを構築してそれをぶつける………古事記の伊邪那岐と言えば、日本列島を作ったなんて逸話もある………成程、創造系の能力なのは明らかだ)」

 

Uは伊邪那岐を分析しながら、SOCOMピストルによる狙撃を繰り返す。

 

「ふんっ!」

 

次に伊邪那岐が放ったのは白、青のエネルギー弾であり、Uの狙撃した弾を神業のように次々と落としていく。Uは空になった弾倉を外し、新たな弾倉をセットしてリロードする。

 

「(僕が今持ってる弾倉は後4つ………全弾撃てた所で60発か………でも結局天照や月読と同じ事されたらこの60発もコンクリートの壁に石ころ投げるくらい意味の無いものになる………)」

 

UはSOCOMピストルでは相性が悪い事を察知していた。

 

「(………組織の大ボスの能力がこれで終わりとも思えない………多分、まだ一段階くらい上のものがある………能力解禁はせめてそこを突き止めるまでダメだ………!)」

 

しかし、Uはあくまで自身の能力を使わず、SOCOMピストルによる狙撃を行う。

 

「無駄なあがきだ!」

 

伊邪那岐は赤いエネルギーを、放たれた弾丸に向けて投げる………だが、この1、2秒を使って伊邪那岐の横に回り、SOCOMピストルによる3連射を行う。

 

「(これならどうだ………!)」

 

Uは様子を見る事を継続しながら、奇襲に対する対象法に目を向ける。

 

「ぐぬぬ………うおおおっ!!」

 

すると伊邪那岐は左手からとてつもない勢いの風を発生させる。これにより風の中に入った弾丸は威力を失い、天高く打ち上げられた。

 

「………やっぱりな。お前の能力は森羅万象を創造する能力………! 大ボスなだけあってレベルの高い能力持ちのようだな」

 

だが、これによってUは伊邪那岐の能力に気付く事が出来た。そう、伊邪那岐の能力は森羅万象を創造する能力だった。

 

「私の能力が分かった所で、能力無しで私を倒す事は出来んぞ! 」

 

しかし、伊邪那岐はUが能力を使わなければ自身には勝てない事を通告する。

 

「だろうな。お望み通り何割かを解禁させてもらうとしよう………!」

 

Uは伊邪那岐の言葉に頷くと共にSOCOMピストルをしまい、中からセイバーを取りだした。

 

「さあ、行こうか」

 

Uはそう言うと、先程までとは打って変わって接近戦に出ると、セイバーを振り回す。

 

「無駄だ!」

 

伊邪那岐はそう言うと、右手から大量の水を放出する。

 

「はああっ!」

 

Uはセイバーで水を軽々と真っ二つにした。

 

「何っ!?」

 

伊邪那岐は驚きを隠せない様子だった。Uは正面から斬る………と見せかけて素早い動きで後ろに回り、伊邪那岐の背中に蹴りを放つ。

 

「ぐああっ!」

 

伊邪那岐は前の方へぶっ飛ばされ、倒れた。

 

「ぐうっ………! ならこれはどうだ!!」

 

伊邪那岐はそう言うと、大きな石の壁を創る。またしてもこれは正面に強い守りのものだった。

 

「そんな壁で僕が止められるものか!」

 

Uはそう言うと、右足にエネルギーを纏わせる。

 

「………!? バカな、奴にそんな能力は無いはず………!」

 

一方で、勝負を傍観していた邪島は焦る様子を見せていた。そんな中、Uは大きく飛び上がり………

 

「{ワイルドソニックアタック}」

 

ドリル状の回転キックで壁を破壊。そのまま伊邪那岐に貫通し、伊邪那岐をぶっ飛ばした。伊邪那岐はUの蹴りを真正面から受けた事で、胸の部分から血が吹き出すと共に、口からも血を吐いていた。

 

「ば、バカな………正面から攻撃してくるだと………!? 話が違うぞ、邪島ぁ!!」

 

そんな中、伊邪那岐は邪島に対し怒りを露わにする。

 

「話………?」

 

Uは身構えながら首を傾げる。

 

「わ、私も驚いています。彼の能力は次元を操る能力のはず………!!」

 

邪島はそう言って、Uの能力が自分の知るものと違う事に動揺していた。だが、U本人の能力は次元を操る能力ではない。

 

「………誰かと勘違いしていたみたいだな」

 

Uは伊邪那岐達の様子にそう呟いた。

 

「勘違いだと………!? 貴様は白三谷ユウでは無いのか!?」

 

邪島はそう言って、Uが白三谷ユウでは無い事に驚いていた。

 

「成程な………次元能力者だったのか、パラレルの僕は………」

 

Uは小さな声で別次元の自身についてそう呟く。そして………

 

「爺さんよ、ここでお前を殺す以外無さそうだな」

 

Uはそう言うと、改めて邪島の殺害を心に決める。そんな中、伊邪那岐は立ち上がると………

 

「貴様が何者でも関係無い………私は………貴様をここで滅ぼす!!」

 

そう言って復讐に燃えるようにUに炎を放つ。しかし、Uは炎をセイバーで軽々と斬り捨てた。

 

「伊邪那岐………アンタは可哀想な人だ。天照の言う通りな………」

 

Uは伊邪那岐に対し、哀れみの目を向けていた。

 

「何故そんな目をする………!?」

 

伊邪那岐はUの目に疑問を感じていた。

 

「………天照から聞いた。アンタは愛する人を失った………その先に行き着いたのは憎しみか………アンタ達の子供を手にかけた手前こういう事は言いたくないが………悲しい男だな」

 

Uはそう言って、哀れみの目の理由を語る。

 

「黙れ! 貴様に何が分かる!!」

 

伊邪那岐はUに対し反論を行う。

 

「………分かるさ。大切な人を失った時、生き残った方は強い孤独を感じる………心の中がグチャグチャになって、生きる事に絶望する………枯れたはずの涙すら滝のように零れる………心の底から恋をした人間の涙は枯れたりしない。決して………」

 

Uはそう言って、大切な人を失う痛みを語りながら左手で自身の胸を押さえる。手が震えている様子を見た伊邪那岐は、彼の言葉が嘘で無い事を感じていた。

 

「………やけにリアルだ。貴様、私と同じ悲しみを感じた事があるとでも言うのか………?」

 

伊邪那岐はUの様子に首を傾げていた。

 

「永い時で目にした人の死は数え切れない。その中には大事な人が何人いたか………今となっては数えるのにも時間がかかる」

 

Uはそう呟きながらゆっくりと伊邪那岐の前へと歩き始める。

 

「だが………1人の大切な人の死と100人の大切な人の死………これに何の違いがある? どっちだって失った事に苦しめられるのには変わりない………アンタが復讐の道に堕ちる気持ちは痛い程分かる」

 

Uはそう言って懐に左手を入れる。伊邪那岐は身構えるが、Uが取り出したのは、天照から受け取ったドッグタグだった。

 

「ドッグタグ………?」

 

伊邪那岐は思いもよらないものが出た事に驚いていた。

 

「アンタの娘から預かった」

 

Uはそう言って押し付けるようにドッグタグを伊邪那岐へ渡した。伊邪那岐がドッグタグに目を向けると、そこに刻まれている名前に驚いた。

 

「これは………私達家族の名前………!?」

 

ドッグタグに刻まれていたのは、天照の言うように伊邪那岐やその家族達の本当の名前だった。

 

「………アンタに同情はする。でも、アンタは1つ過ちを犯した」

 

Uは伊邪那岐に背を向けながら歩き始めると共に、伊邪那岐が過ちを犯した事を指摘する。

 

「………過ちだと………?」

 

伊邪那岐はUの言葉に首を傾げた。

 

「愛した人の死に涙するのは悪い事じゃない。でも、アンタにはまだ守るべきものがあった………アンタの子供達だ。アンタは六道家への復讐に堕ちるべきじゃ無かった………天照、月読、須佐之男………あの3人を守る為に生きるべきだった………!」

 

Uが指摘した伊邪那岐の過ちは、彼が復讐の道を選んだことだった。

 

「………私にはもう復讐しか残っていない………それに、その子供達を殺したのは貴様だろう!?」

 

伊邪那岐はそう言うと、Uに向かって殴りかかる。

 

「だとしてもだ!! ………僕が偉そうに言える立場じゃないが………あの爺さんの操り人形として生きる事に何の意味がある!?」

 

Uは振り向くと共に、伊邪那岐の拳を止め、強く伊邪那岐の心に訴えかける。

 

「ぐっ………黙れ黙れ黙れ!!」

 

伊邪那岐は両手からがむしゃらに様々な属性の攻撃をUに放つ。しかし、Uは両手に光を纏わせると、全ての攻撃を受け止めて見せた。全ての攻撃が抑え込まれた後、伊邪那岐は膝から崩れ落ち、目から涙を浮かべた。

 

「ううっ………ああっ………うあああああっ!! 何故だ………何故私は………私はぁぁ!!」

 

この時、伊邪那岐の中で抑え込められていた気持ちが完全に壊れた。

 

「………伊邪那岐」

 

Uもそれを察知したのか、伊邪那岐に対し再び哀れみの目を向ける………だが、そんな2人の悲しみに水を差すように、邪島は銃を取り出し、Uに向けて狙撃を行う。

 

「………! はあっ!」

 

Uはセイバーで弾丸を撃ち落とす。

 

「………水を差すなよ」

 

Uは呆れた様子でそう呟いた。

 

「………最早貴様が何者でも構わん………所詮、高天は私の目的を果たす為の隠れ蓑の1つに過ぎない………!」

 

邪島はそう言って、手に持った銃マカロフPMで伊邪那岐に向けて狙撃を行う。

 

「ぐおおっ!? うあああっ!!」

 

この時の伊邪那岐は完全に力を発揮していなかった為、狙撃によって受けたダメージは圧倒的であり、これが致命傷となってしまった。

 

「味方を撃った………!? 貴様、正気か!?」

 

Uは邪島の行動に驚きを隠せなかった。

 

「役に立たなくなればガラクタ同然だ………そんなのは赤子でも分かる」

 

邪島は歪んだ思考をUに語る。それを聞いたUは………

 

「とち狂った考え方だ………人を信用出来ない生き方をしてきた人間の典型例だよ」

 

Uはそう言って、邪島のあまりにも狂った思考が理解出来ない事を語る。

 

「貴様如きには分かるまいよ。私の思考についてはな………」

 

邪島はそう言って、Uには行き届かない思考を行っている事を語る。そんな中、この秘密空間の入口の方から轟音が聞こえた。

 

「なんだ………!?」

 

Uと邪島は突然の轟音に身構える。すると、入口の方からは数人の刺叉を持つ黒子と女性、そして六道理央が入ってきた。

 

「動かないで!」

 

女性はUと邪島に対しそう言い放つ。

 

「ぐっ、六道家の人間か………!!」

 

邪島はここで六道家の人間と鉢合わせた事に焦る様子を見せる。そして………

 

「邪魔が入った………! ここで奴等との対決は勝ち目が無い………白髪の男よ! また会おう!!」

 

邪島はそう言って近くのカプセルに入った。

 

「脱出カプセル!? 逃がすか!!」

 

Uは咄嗟にSOCOMピストルを取りだし、銃撃を行うが、カプセルは防弾仕様なのか弾が弾かれてしまった。そして、邪島はカプセルのスイッチを入れると、そのままカプセルで地上の方へと飛んで行った。

 

「………くそっ!」

 

Uは邪島に逃げられた事を悔しがる様子を見せる。理央達も怒涛の展開に一瞬言葉を失っていたが………

 

「………取り敢えず目の前のコイツをなんとかするしか無いんじゃないか?」

 

理央はまず、目の前にいるUに視線を向けながら女性に対してそう呟いた。

 

「(どうする………!? 目的が果たせないまま鉢合わせてしまった………)」

 

Uは目の前のトラブルに対し、解決策を探っていた。

 

「………ディメン! ディメン!!」

 

Uはテレパシーでディメンに連絡を取る。しかし、ディメンから返答は無い。

 

「(くそっ………! こんな時に何やってんだディメンは………!?)」

 

Uはディメンからのテレパシーが突然途絶えた事に動揺していた。そんな中、女性は理央の言葉を聞き頷く素振りを見せる。

 

「………そうだね。取り敢えず彼を拘束しよう。話はそれから………」

 

女性はUの拘束を決定する。UはSOCOMピストルを構えながらゆっくりと後退る様子を見せる。

 

「(………やりたくは無かったが、僕の力の制限をもう一段階解禁するしかない………!!)」

 

Uは正面からの徹底抗戦を覚悟する。そんな中、致命傷を受けて倒れていた伊邪那岐はUと六道理央達の一触即発の空気を目にし………

 

「そいつは私の仇だ………貴様ら如きにくれてやるものか!!」

 

そう言って、最後の力を振り絞り、右手からは炎、左手からは光を理央達に向けて放つ。

 

「あ、危ねぇ!」

 

理央達はこれを回避。Uも何とかこれを回避すると、理央達が混乱している間に入口の方へ走り出した。

 

「ま、待ちなさい!」

 

理央達は逃亡を行うUを追いかけようとする。すると次の瞬間、入口の方から水色の鎧を纏った人物が突然Uの横を通り過ぎると、理央達の前に現れた。

 

「………邪魔をするな、六道家の人間達」

 

目の前に現れた人物は加工された声でそう言い放つ。

 

「だ、誰………!?」

 

女性は予想だにしない新人物の登場に驚いていた。Uすら驚きを隠せずにいる中、水色の鎧を着た人物はUの手を引き、彼を連れて走り出した。

 

「うおっ!? おいっ! お前は誰だ!?」

 

Uは水色の鎧を着た人物に訳も分からないまま連れて行かれる事に驚いていた。そして、鎧の人物は次の瞬間、左手で目の前の次元を捻じ曲げてゲートを生成。Uと自らがゲートを通ったタイミングでゲートを閉じてしまった事で、理央達が後を負えなくなった。

 

「………あーあ、逃げられちまった」

 

理央は落胆するようにそう言い放つ。女性の方も逃げられた事を悔しがる中、無線機を取り出す。

 

「地上に残っている黒子、聞こえる? ………ねえ?」

 

女性は地上にいる黒子達に無線を飛ばすが、反応が無い。

 

「どーした?」

 

理央は女性の様子に首を傾げる。

 

「………地上班と連絡が取れないの。あの白髪の人は残念だけど後回しだね………取り敢えず警察に通報しないと………事態が明るみにならないようにする為のカバーストーリーも必要だし………」

 

女性はそう言ってこれからのことを語る。

 

「………それは残念だ。折角ユウの事について何か分かると思ったんだけどなぁ」

 

理央は落胆するようにそう呟くのだった………

 

 

 

一方その頃、地上で気絶している須佐之男を見張っていた黒子達は血だらけの死体と共に、数人の工作員に須佐之男の身柄を回収させるのを監督する人物がいた。

 

「………高天が壊滅か………まあいい、目的のサンプルは手に入った。後はあのジジイが戻ってくるのを待つだけだな」

 

その人物はそう言って、その先の目的について思考を巡らせながら煙草を取りだし、煙草に火を付けるのだった………

 

 

 

そして、謎の鎧の人物に連れられたUはゲートの先に出た。そこは、高天の組織がある教会が見える、少し離れた丘だった。

 

「………もう安全だ」

 

鎧の人物は突然口調を落ち着かせてそう言い放つ。

 

「………助けてくれた事は感謝する。でも、お前は誰だ?」

 

Uは鎧の人物に対し首を傾げてしまう。

 

「………私は貴方の協力者の下僕………言える事はそれだけだ」

 

鎧の人物はそう言って再びゲートを開くと、ゲートをくぐってその場から消えた。そして次の瞬間、Uの元へテレパシーが届いた。

 

「U! 聞こえる!?」

 

テレパシーで最初に届いたのは、ディメンによる心配の言葉だった。

 

「ディメン………! 何とか無事だ」

 

Uは自身の安否を伝える。しかし、自身の生存は今の彼にとってどうでもよかった。

 

「………なあ、さっきなんでテレパシー出来なかった? というか、さっきの水色の鎧の奴は誰なんだ?」

 

Uはそう言って、先程の人物について問いかける。

 

「貴方を助けたのは私の力を分け与えられた氷の騎士だよ。さっきテレパシーに出られなかったのは彼に指示してたから………ごめん」

 

ディメンは先程の鎧の人物に説明すると共に、テレパシーに出れないタイミングがあった際の事を話して謝罪する。

 

「いや………今となってはどうでもいい。それにこっちも謝る必要がある。あの爺さん………邪島の殺害は失敗した。逃げられてしまった………高天は壊滅状態と見て間違いなさそうだが………」

 

Uはそう言って、ディメンにここまでの状況を報告した。

 

「そう………しかし期待した通りだったよ。高天幹部2人と伊邪那岐を撃退………それでいてまだ余力が残っている。貴方に託してよかった」

 

ディメンは邪島の殺害に失敗した事を落胆しつつも、高天をほぼ1人で壊滅状態に追いやったUの腕を賞賛していた。

 

「褒められた行為では無い………」

 

Uはそう言って、浮かない様子を見せる。

 

「今度は貴方が元気無いね」

 

ディメンはそう言って、Uの浮かない様子を問いかける。

 

「家族の話には弱い。放っておけなかったよ、彼らの事」

 

Uは伊邪那岐と口論を行った時の事を思い返していた。

 

「そう………」

 

ディメンはUに同情する素振りを見せる。

 

「………ディメン、やけに僕に寄り添って来る様子を見せているようだが………あんまり僕を信用するなよ。まだ僕達は顔を合わせてないんだから」

 

Uはここでディメンを突き放すようにそう呟く。

 

「………でも私は貴方の味方。それだけは揺るがない」

 

しかし、ディメンは自らがUの味方であるという姿勢を崩そうとはしなかった。

 

「分かったよ………勝手にしてくれ」

 

Uはディメンの断固たる意思を聞き、ディメンの姿勢を否定するのはやめた。

 

「そう言われると嬉しいよ」

 

ディメンはそう言って喜ぶ様子を見せる。その様子を声だけで聞いていたUだったが………

 

「まるで誰かさんみたいな様子だな………」

 

その様子がUの記憶の中にある誰かとマッチしたのか、その事を独り言のようにそう呟いた。

 

「………まあ、それはそれとしてだ。これから邪島の事はどうする? 行方を眩ました以上、僕にはどうにもならん」

 

直後、Uはディメンに対し今後の事を問いかける。

 

「………そうだったね。邪島は私と氷の騎士で捜索するよ」

 

ディメンはそう言って、邪島の捜索は自分達が行う事を語る。

 

「分かった。それまで僕はどこにいればいい?」

 

Uはディメンに自身の動向を問いかける。

 

「………今言えるのは潜伏かな。六道家に悪い意味で認知されてしまった以上、しばらくはどこかに身を隠す他無いかな」

 

ディメンはそう言って、潜伏を行うよう指示を行う。

 

「潜伏か………分かった、身を隠しておくことにしよう。何かあったら連絡する。そっちも寂しくなったらテレパシーをくれ」

 

Uはそう言って、ジョーク混じりにそう呟いた。

 

「またいじわるを言って………分かった、寂しくなったらそうするよ」

 

ディメンはそう言って、Uの言葉にいじけながらも言葉を返した。

 

「ふっ、可愛げのある反応だな」

 

Uは笑いを零しながらそう呟いた。

 

「………そんな事言ってると元の世界に返してあげないよ?」

 

ディメンは図星を突かれたのか、Uに対して冗談交じりに脅しをかけた。

 

「分かった分かった………」

 

Uは慌てた様子でそう呟いた。そして、Uが潜伏の為にその場を離れようとした時、Uは思い出したかのように再びテレパシーを行う。

 

「………そうだ。さっき対峙した連中の中で例の女がいた。彼女が何者か分かるか?」

 

それは、六道理央と共に行動していた女性の事だ。

 

「例の女の人だよね? それならさっき誰だか特定出来たよ。彼女は六道理央の妹………六道舞雪。この世界においてはモデルとして名が知れてるけれど………勿論ただの人間では無いよ」

 

例の女性は六道理央の妹だった。それを聞いたUは………

 

「だろうな………ただのモデルの嬢ちゃんがあんな戦場に来る訳が無い」

 

Uはそう言って、六道舞雪が只者ではない事を直感していた。

 

「………取り敢えず六道家の人間とは鉢合わせないようにする。じゃあ、次に動く時までな」

 

Uはそう言って、テレパシーを終える事を促すような言葉をかける。

 

「うん、じゃあ動きがあったら連絡するよ」

 

ディメンはそう言ってテレパシーを止めた。Uもテレパシーが止まったのを確認すると………

 

「さて、どこに身を隠そうかねぇ………」

 

Uはそう言って、どこか呑気な様子で丘の近くにある森林へと姿を消していくのだった………

 

 

 

この時のU達の激闘は、後に『高天事件』として世間に名が知れ渡る事となった。この事件は警察側の多数の犠牲者、そして高天側は3名の死亡者と1人の行方不明者を出して幕を下ろした。高天側で死亡したのは、伊邪那岐、天照、月読の3名。行方不明者は須佐之男。そして、現場鑑定と落ちていた銃火器からは未確認の指紋が検出。それをUの指紋だと仮定した警察は………Uを正体不明の殺人犯として指名手配するのだった………

 

 

 

To Be Continued………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………取り敢えず、私の正体はバレていないかな。Uは………あの人は私の言うように邪島殺害の為にあらゆる手を尽くしてくれるから頼りになるなぁ。たった数時間で高天を滅ぼしたのは完全に想定外だけど………まあ、今となってはあれで良かったかもしれないし、邪島殺害にあの人の力が必要なのは間違いないよ。その為ならありとあらゆる手を尽くすまで。……さん、絶対にあの老人への復讐を果たして見せるから………私の事を見守っててね………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章に続く………




次回予告
Uは1ヶ月の間、六道家の捜索をかわしながら身を潜めていた。そんな中、Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』を名乗る裏社会集団の少女達と出会う事になる。Uは彼女達と手を組み、新たな犯罪者組織の討伐任務に付く事となった。しかし、その過程で六道家と対決する事になるU達。更にこの戦いの中で、Uは意外な人物との邂逅を果たす事となるのだった………
次回「漆黒の支配者達」
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