六道家によって鹿六町を占拠した犯罪組織が壊滅した『鹿六町占拠事件』。世間ではそのように報じられているものの、その裏では大きな戦いも起こっていた。秘密結社を名乗り、Uを6人目として加えた『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と六道家の人間が抗戦。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』側がミッション終了により撤退を選択した為決着は着かなかったが、この対決は両陣営の対立を生み出す事となった事件だった。そして、六道家側が密かに危惧していたように、この事件の裏では様々な陰謀が渦巻いてもいた。そしてこれは『鹿六町占拠事件』から3週間後に起こる大きな戦いの1週間前に起きた、絶望と真実への序章の物語である………
『鹿六町占拠事件』から1週間後、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は組織内で潜伏の時を過ごしていた。春香を除く6人は六道家との対立が明確なものとなってもまるで動じていなかった。
「よーし、今日もゲーム大会だー!!」
………動じるどころか遊んでいた。ブルーとUは参加していなかったものの、六道家とは関係ない話ばかりで春香は首を傾げていた。
「あ、あの………皆さん、どうしてあんなに元気なんですか………?」
春香はUとブルーに恐る恐る問いかける。
「別にこんな荒事は皆慣れてるの。私とUは飛び抜けて戦闘経験が多いけれど、あの4人も戦闘経験はまずまずあるのよ。最も、普段はグレーとビリジアンの2人が解決するし、ピンクは基本戦闘系の子じゃないし………総帥も出るのは本当に稀な話ね」
ブルー曰く、メンバーは全員荒事に慣れている事から大して動揺していなかったらしい。しかし、出撃するメンバーなどは基本同じらしく、特にピンクとブラックはミッションには出ないらしい。
「まあ博士の能力は過激過ぎるしな………2日前に本人に見せてもらったが酷い目に遭った………」
Uはピンクの能力を思い出すと、どこか嫌そうな様子を見せた。
「ピンクさんの能力………いったいどのようなものなのですか?」
春香は首を傾げながらピンクの能力を問いかける。
「………爆発物の生成さ」
Uが語ったピンクの能力。それは爆発物の生成だった。
「本人から聞いた話だが、爆発する無機物ならなんでもいいらしい。手榴弾、スタングレネード、地雷………理論上は核すら作れるかもって話だ。勿論そんなのは作った事も作りたくもないと言っていた。だから普段は爆発物以外の機械いじりに奔走しているらしい。明るい性格してかなりブラックな能力を持っていたよ、彼女………」
Uはピンクの能力についてどこか暗そうに語っていた。それと同時に当人の望む能力では無かったのかもしれない………そんな考えがUの頭を回ってもいた。
「そうだったんですね………」
春香もUの言葉に同調するようにそう呟いた。
「まあそれをどう思うかは当人次第だ。僕の口から言えるのは推察止まりだな………この話は終わり。お茶のおかわりでももらおうかな」
だが、Uは真意までは知りえない事を付け加えて話を打ち切るのだった………
その日の夜、Uは再び髪の色を黒へと変えた後に組織の外に出ていた。組織がある六道県冥都は現在警備体制が強まっており、治安の悪い所ですら警官が彷徨いていた。しかし、組織のセキュリティは見た目に反して高い為に見つかっておらず、Uがいるのも組織の裏口からしか入れない高い壁に囲まれた場所である事から特に不安は無かった。
「ここに来てからもう1週間以上は経つのか。新参者として入ったくせに、今や後輩が出来てしまう始末か………神でも驚きたくなる程の速さだ」
Uは冗談混じりに呟きながら空を見上げる。この日は満月だった。そんな中、Uの後ろから春香が彼の後を追いかけてきた。
「今日は綺麗な満月ですね」
春香はUの後ろから声をかけた。
「だな。こういうのは僕も好きだ」
Uも月を眺めるのは好きだった………幾らかは自分の能力的な関係もあった為でもあったのだが。
「………春香、随分組織に馴染んできたな。この前出会った時は一触即発もいい所だったのに」
Uはそう言って春香が馴染んできた事を語る。
「そうですね………あの時はかなりパニックになっていたのもありますから………」
春香は思い出すようにそう呟く。
「そういえば、君は僕と初めて会った時にシングルアクションアーミーのモデルガンを持っていたな? ………あれは誰の差し金で持ってたんだ?」
Uは1つ気になった事を語る。
「えっと………私の旦那様です」
春香曰く、これは白三谷ユウの仕業だったらしい。
「意地でも戦わせたくねぇんじゃん。多分脅しの道具にしかならないやり口だよそれ………まあ、気持ちは分かる。僕も白三谷ユウなら君に銃刀は持たせたくないな」
Uは白三谷ユウの思惑についてそう呟いた。だが、大事な人に戦いを教えたくない気持ちには同調していた。
「………そういえば私も気になっていた事があるんです。Uさんの奥様はどのような方なのですか?」
そんな話を聞いた直後、春香はUの妻………白宮春香について問いかけた。
「………7割くらい君みたいな人だよ。礼儀正しくて清楚な割に、夫と娘の事ばかり考えてる。でも、僕の奥さんは僕に負けず劣らず自分の想いを貫いている。君と直接的に違う所は能力の有無かな。僕の奥さんはとてつもない魔法使いだ。あれだけ強い魔法使いはここまで見ていない。多分現れもしない………出来れば戦わせたくなかった時もあったけど………僕が疑いなく背中を預けられる。そんな人かな」
Uは白宮春香の事を語る。彼女は白三谷春香と概ね似ているが、戦う力を持つ人物である。Uの中では間違いなく大きな存在だった。
「………優しい人なんですね。貴方も、そしてその奥様も………」
春香はUの妻は優しいように考えていた。
「たまに喧嘩するけどね。なんなら1回奥さんの攻撃で死んだし」
しかし、Uは必ずしも円満とは限らない事を告げた。そして過去に妻の手で1度死んだ事もサラッと告げた。
「えっ………!?」
春香はゾッとする様子を見せた。
「あはは………滅多にない経験よな………」
Uはブラックジョーク混じりにそう呟いた。
「でも、絆は確かにあるさ。僕は奥さんの事が大好きだ。何度ぶつかったってまた一緒にいられる。それだけを信じて生きているんだ」
Uはそう言って、白宮春香に対する信頼の高さを口にした。それを聞いた春香は羨ましそうにUに視線を向けていた。
「………私もそんな生活が今でもしたかったです。ユウさんや真子がいれば何もいらなかった………今でも後悔しながらそう考えています」
そんな中、春香は自分だけがこうして生きている事に落ち込む様子を見せていた。
「………そういえば、娘はどうしたんだ? 彼女が死んだとは聞いていないが………」
Uは春香に対し、娘の白三谷真子のことを問いかける。
「………娘は夫が死んで間もなく失踪したんです。警察にも届けましたが未だに見つからず………それに私は夫が死んで以降六道家との接触を避け続けていたので捜索もロクに出来ず………」
春香によると、失踪した事以外は分からないらしい。更に六道家との接触を避けていたのもあってか、きちんとした捜索も出来ていないらしい。
「………辛い事だな」
Uは俯きながらそう呟く。
「私は六道家に対してそこまで不信感を抱いている方では無いのですが………あの日以降全く関わろうと考えた事はありません。どうしても夫が死んだトラウマを想起してしまって………」
春香は六道家と関わらない理由が、白三谷ユウの死を想起させるものであった事を語る。
「………となると、その白三谷ユウの死に六道家が関係していると考えていいんだな?」
Uはここで六道理央と白三谷ユウが関係を持っていた事に納得する様子を見せる。
「六道家は加害者ではないんです。私も実行犯は別の人であるのを目撃しているので間違いありません………!」
しかし春香によると、白三谷ユウの死は六道家の手によるものでは無かったらしい。それを聞いたUは六道家に対する疑念が少しずつ変わり始めていた。だがそんな最中、Uの中からテレパシーが飛んできた。
「………! ………すまない、ちょっと話を整理させて欲しい。1人にしてくれ」
Uはディメンからのテレパシーである事をすぐに察知するも、自然に会話する空気を作る為、春香に1人にするよう頭を下げる。
「………分かりました。それでは先に戻ってますね」
不自然に話を切られた事に首を傾げる春香だが、Uの頼みを聞いてその場は引き、組織の中へと戻った。春香が戻ったのを見届けたUは改めてテレパシーを行う事となった。
「………突然テレパシーを送ってきてどうした、ディメン」
Uは突然のテレパシーに首を傾げる。
「………さっき白三谷春香から白三谷ユウの話を聞いていたよね。それに関する話」
ディメンはどこか都合が悪そうにそう呟いた。
「………彼女の話では白三谷ユウが死んだのは六道家の人間の仕業じゃないと聞いたがどういう事だ?」
Uも突然かけてきた事に思う所があったのか、ディメンに対しそう問いかける。
「………確かに白三谷ユウを殺したのは六道家の人間じゃないよ。でも、ここまでの一連の話で六道家が全く原因じゃないとは言い切れないんだよ」
ディメンは白三谷ユウを殺したのは六道家の人間では無い事を認めるが、全く落ち度が無い訳では無い事を伝える。
「ならその原因を教えろ。そうじゃなきゃお前が六道家にも執着する理由が分からん」
Uはダメ元でディメンに対し六道家をも危険視する理由を問いかける。ディメンはしばらく口を開かなかったが、少しして覚悟を決めるように口を開いた。
「………邪島はかつて六道家に仕えていたんだ。そして裏切った経歴がある」
それはUとディメンが追っている邪島管心がかつて六道家に仕えていたというものだった。
「な、何………!?」
Uはこの事実に驚かされた。それと同時にディメンが六道家を危険視する理由の1つがそれである事に勘づいた。
「………あくまでこれは理由の1つだよ。今はこれ以上話せない」
ディメンはまだ語れない理由を隠しているのか、強引に話を打ち切ろうとしていた。
「………そこまで僕に知られたくないのか?」
Uは、ディメンが六道家をも憎んでいる理由を暴かれる事が彼女にとって問題である事を察知し、思わずそう問いかける。
「出来る事ならね。それと白三谷春香の話に関して1つだけ信用するなと言っておく事もある。それは六道家への信頼だよ。六道家は信頼も信用もしちゃいけない。いつかは六道理央やその家族が敵として立ちはだかり、貴方と殺し合いをする事になる。その事を覚悟しておく事だね」
ディメンはUが六道家といずれ全面的に殺し合う事を示唆する様子を見せる。
「………興味無い話だ。それに僕をこの世界へ送ったのは僕の事を六道家殲滅にも利用する為か?」
Uはこの時からディメンの目的に疑いを持ち始めていた。これまで協力してもらっている事から完全には疑っていないが、それにしても六道家への憎しみが強過ぎる事はUの中で大きな疑問となっていた。
「………必要とあらばやってもらうとは言っておくよ」
ディメンは全面的な否定をしなかった。それを聞いたUは………
「そうか………なら僕からもはっきり言わせてもらおう。僕はお前の事をはっきりとは理解していない。お前は誰だ? 六道家やあの爺さんに何をされた? ………それが答えられない内は六道家との殺し合いには同意しかねるな」
Uはそう言ってディメンが正体を明かせない限りは彼女の六道家殲滅には協力出来ない事を語った。
「………分かった、なら邪島を倒したら教えるよ。私の姿や正体、その目的の真意を………」
ディメンはUに対し、邪島討伐後に教える事を約束した。それを聞いたUは………
「………絶対だぞ」
そう言ってテレパシーを切った。Uは会話を終えると思わずその場に座り込み、月を見上げる様子を見せた。
「(ディメン………これまでの会話から分かっているのは次元能力者である事と、声と性格からして女である事だけだ………でも何かを見落としているような………そんな気もする………)」
Uは現時点でディメンに関する話を整理する。今の段階ではろくにディメンの事を理解していないUだが、彼女を全くの赤の他人とも考えられない様子を見せていた。
「(………結論を急ぐにはまだ早い。今はあの爺さんを倒すその時まで静かに待つしかないだろうな………)」
だが、現在の話の材料だけでは特定が出来ず、現状はこの世界に来た本来の目的、邪島を討伐するチャンスを待ち続ける事に決めたのだった………
それから6日後。事態が大きく動き出す事になる事件の日の前日、秘密結社『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のサイトにとある1件の噂が書き込まれた。
「六道県彼岸花町にて1人の老人と4人の能力者目撃したり………?」
ブルーがパソコンを使ってU達に見せた一文。それはイタズラとも取れるようなものだった。しかし、その割には書いている事が有り得そうなものであり、一概にイタズラとも言い難いものだった。
「………イタズラじゃないのか?」
当然Uもこれにはイタズラを疑った。
「イタズラなら良かったけど………『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の6人で行かないなら六道家に組織の場所を暴露するなんて脅し文句がかけられてるのよね………イタズラにしては手が込んでるのよ………」
ブルーは同時に脅迫がされている事を明かした。それを聞いたブラックは………
「うーん………仕方無い、全員で行くしかないかな」
仕方なさそうに全員で出撃する事を判断する。
「………大丈夫なのか? というか、僕の参加機会が少ないから知らんという部分が大きいが、博士とリーダーはどれくらい戦えるんだ?」
Uはブラックとピンクの戦闘能力を問いかける。それに答えたのはブルーだった。
「ピンクはまあまあ、総帥は………私達の中で1番強いわ」
ピンクは期待出来る程では無いが、ブラックは最強との事だった。
「1番強いんですか………? 確かにリーダーなのは気になっていましたけれど………」
それを聞いた春香は、まだ子供であるブラックがリーダーである事と最強の立場である事に疑念を抱いていた。Uもそれは同じような様子だったが………
「(まあこの組織にいる以上、ただの能力者とは思えない………ホワイトソードマンとして正体を隠している間は頼らせてもらうのも悪くは無いが………いざという時は守れるようにしておかないとな)」
彼女がただリーダーをやっているだけとも思えないので、自身が護衛に回れる範疇で頼らせてもらう事を決め………
「………分かった。くれぐれも無理はするなよ」
Uは自分が守る立場として立つ事を前提に、全員での出撃に承諾する。そしてピンク達も特段異論は無かった為、全員での出撃が決定した。それが決まった事でブラックは大きく声を上げて宣言する。
「よし! 明日、六道県彼岸花町にて1人の老人と4人の能力者の調査を行う! 必要とあらば独断で撃破に動いても構わない!」
書き込みの真実を調査する事を………
そして翌日、構成員全員が出撃する事となった為にバイクは4台となり、今回はU、グレー、ピンク、ブルーの4人が運転をする事になり、ピンクの後ろにビリジアン、ブルーの後ろにブラック、Uの後ろに春香が乗る事となった。
「しかし、全員出撃の事態になったとはいえ、春香まで着いて来るのか?」
ただ、Uは春香も着いてくる事に首を傾げる様子を見せていた。
「私はUさ………ホワイトさんの助手のようなものですから。着いてくるのは当然でしょう?」
しかし、春香はUの助手的立場の為着いて行くのは当然と語った。
「………無理はするなよ。君には戦闘能力が無いんだから」
Uは春香に対し全く戦えない事について釘を差し、無理をしない事を指示する。そして、4機のバイク全ての準備が整った事で出撃準備を完了させた。
「よーし! 『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』! 出撃!!」
ブラックの出撃命令により、全機が出撃するのだった………
それから1時間程で六道県彼岸花町に到着。辺り一面は町の名の通り、彼岸花で埋め尽くされると共に、枯れた柳も所々に存在するなど不気味なものだった。
「彼岸花………ねえ。まるであの世的だ。気分は良くない」
Uは目の前の光景の不気味さに対してそう呟く。
「………今回は分かれて動きましょう。それと今回は無線機を共通周波数にして使うように。いいわね?」
ブルーは今回の作戦においてチームで動くと共に、無線機の周波数についてを解説した。そしてチームについては、これもブルーが指示する事となった。
「私と総帥、グレーが東を捜索、ピンクとビリジアン、ホワイトと春香が西を捜索。これで行きましょう」
ブルーはチーム分けのメンバーを説明。この説明が終わった直後、目の前に2つの分かれ道が現れた。
「それじゃあ、作戦決行! 何かあったら直ぐに無線するようにね………!」
ブルーは最後にメンバーへそう言って、グレーと共にバイクを右に動かす。Uとピンクは左にバイクを動かす。これによって両陣営に別れる事となったのだった………
西に向かうU達はバイクを走らせていた。U陣営は春香が非戦闘員、ピンクも戦闘能力はUから見て未知数という不安も幾らか抱えたチームとなっていた。
「なあ博士、前に能力を教えてもらいはしたが、実際の戦闘能力はどういう感じなんだ?」
Uはピンクに対し、改めて彼女の戦闘能力がどのようなものかを問いかける。
「そうだね………私はどっちかと言うと頭脳派だし、ブルー姉さん程戦い慣れてないから一概には言えないかな。知ってると思うけど能力にも相性があるからビリジアンちゃんのような安定性には欠けるし、ブルー姉さんみたいな純粋な自力は自信ないから安定して活躍出来るって事は少ないかな。私がバックアップを好んでいるのもそれが理由」
ピンクは自身の戦闘能力を解説。どうやら安定性には欠けるようである上、ブルーに地力では劣るらしい。
「………そうか。無理はするなよ」
それを聞いたUは思わず優しさが出てしまい、冷静を装いながらそう呟いた。
「別に自己防衛するくらいなら余裕だよ。爆発物というものは解釈次第で殺傷兵器以外も作れるしね」
ピンクはそう言って心配させる程でも無い事を呟くのだった。そんな中、目の前から人の影が見えた。
「………ストップ。誰かいる」
Uはバイクを止めるよう指示。ピンクはそれに応じて動きを止めた。4人はバイクを降りると、Uとピンクのが影の方に視線を向け、ビリジアンは後ろを見張る事になった。ピンクは少し変わった形状の双眼鏡を手にすると、高倍率にして人影に視線を向ける。
「………煙草を吸ってる男の人だね。見た目からは読めないけど、能力者かな」
ピンクはその影は煙草を吸う人物のものであり、同時に能力者だと言及する。
「………何故能力者だと分かる」
Uはピンクが煙草の男を能力者だと言い切った事について首を傾げる。
「この双眼鏡は相手の体内から発生している能力者のエネルギーも捉えられるんだ。言ってしまえばグレーちゃんの特殊ゴーグルと見るものが違うってだけだね」
どうやら特殊な双眼鏡を使っている事が理由であった。
「しかし、こんな形で見つかったとはいえすぐに接触するのは危険だな。様子を見る他あるまい」
Uはそう言ってもう少し様子を見る事を提案する。だが、その直後、Uは何か嫌な予感を感じた。
「………! 風の流れが不自然に加速した………」
Uは微かな風の変化を本能的に察知した。当時に突如として背に装備したロングソードを手に持ち、後ろへ走り出すと、ビリジアンの前に飛び出して剣を振るう。すると、Uのロングソードに対して刀がぶつかった。刀を持っていたのは若々しい日本人の男だった。
「………驚いたな。何故俺の動きが予測できた?」
男はUが本能的に動けた事に首を傾げていた。
「別にお前のみたいな相手は過去に腐る程して来てるんでな………!」
Uはそう言うと、力で男を押し返した。
「ふっ………俺の刀を初見で止めた事は賞賛に値する。そんな貴様に俺の名を教えてやろう。俺は無錆隼人(むさびはやと)! 邪島管心様の忠実な下僕にして、邪島四天王の一角なり!」
男はUに攻撃を止められた事から彼に感心する様子を見せ、自らの名を口にした。
「無錆隼人………!?」
それを聞いてビリジアンが明らかに動揺する様子を見せていた。
「………知ってるのか?」
Uはビリジアンの様子がおかしい事に首を傾げる。そんな中で隼人もビリジアンの顔を見て驚く様子を見せた。
「………! 和か?」
ビリジアンの事を別の名で呼ぶ隼人。ビリジアンは呼ばれた名を否定する様子を見せない。
「し、知り合いなんですか、ビリジアンさん!?」
春香もこれには思わず問いかける様子を見せた。
「ビリジアン………そんな変なコードネームを与えられたのか、和」
隼人はビリジアンに対しそう問いかける。だが、ビリジアンはコードネームをバカにされた事で表情を強ばらせた。
「………私はもう刀木和(のぎのどか)じゃない。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のビリジアンニンジャ!」
ビリジアンはそう言って自身のコードネームを強く言い返す。そして、ここでUと春香は、隼人が呼んでいるのはビリジアンの本名である事を察した。
「そうか………お前の事は剣道で尊敬していたつもりだったんだがな………現在は敵として立ちはだかるか………」
隼人はビリジアンとの過去を思い出すも、結局は敵としてぶつかり合う事をどこか悲しそうにそう呟いた。そんな中、Uは一旦距離を取ってビリジアンの横に立つ。
「………ビリジアン、奴は何者だ?」
Uはビリジアンに対し、隼人の事を問いかけた。
「無錆隼人………私が前に剣道の道場に入っていた時に同じ師範の元で修行した私の先輩。5年前に剣道の大会の男子の部で優勝し、そこから続けて2連覇を達成した程の人物だったのに、3連覇をすると見られていた3年前に殺人を犯したとして指名手配され………それ以降は行方をくらましていた………」
ビリジアン曰く、以前剣道で関わりがあったとの事らしく、剣道においてはかなりの実力者であるようだった。しかし、殺人の疑いをかけられた末に失踪したとの事だった。
「そんな事件が………」
Uは少し驚いていた。しかし、ビリジアンの隼人に対する目は哀れみでは無く憎悪だった。
「でも結局は疑いを通り越して事実だった。何故なら彼が殺したのは………私達の師範だったのだから………!! しかも、私の目の前で………!」
なんと、その時の殺人で隼人が殺したのはビリジアンと隼人の師範だった。それを聞いたUは驚きを隠せなかった。
「………狂ってやがる」
それを聞いたUも思わず引きながらそう呟いた。
「俺が求めているのは最強だ。それを知りたくて師範と戦ったが………奴は弱かった。そのせいで勢い余って殺してしまったんだよ」
隼人は悪びれもしなかった。あまりにも狂った価値観にビリジアンの怒りは強まるばかりだった。
「………そう。ならここで貴方を殺す。本当はあまり私情で戦いたくは無いんだけど………!」
ビリジアンはそう言って、隼人の殺害を心に決めた。
「………お前に出来るのかよ? 剣道でも1度として俺に勝てなかったお前に?」
隼人は挑発の言葉を投げかける。
「そんなのはやってみなきゃ分からない………{疾風斬鉄波}!!」
ビリジアンは初っ端から風を想起させる素早い斬撃を放つ。しかし、隼人はこれを軽々と受け止めた。
「こんな初歩的な技が俺に通じると思うなよ、和」
隼人はそう言って刀を鞘に納刀すると、素早い動きでビリジアンに近づき………
「{一閃滅嵐斬}!!」
素早い抜刀による斬撃を起こす。しかもあまりのスピードから嵐のようなものが発生し、ビリジアンを吹っ飛ばした。
「(ぐうっ………! み、見えなかった………! 反射的に直撃は避けられたけど………)」
ビリジアンは落下の際に上手く受身を取った為、ダメージを最小限に抑える事が出来た。
「………凄まじいスピードの斬撃か」
Uは目の前で見せられた斬撃を目で捉え、そう呟いた。
「ふっ、次はお前だ長剣の男………!」
隼人は素早い動きでUに接近。Uは斬りかかってきた隼人の動きを捉え、受け止めた。
「………ほう、俺のスピードを止めるか………どうやらお前はただの剣士じゃないらしい………」
隼人はUの反応力の高さに驚いていた。
「………この超スピードはお前の能力らしいな」
Uは隼人の異常なスピードについてそう呟いた。
「何故そう考えた?」
Uが隼人の異常なスピードを能力と結び付けた事を聞き、隼人は首を傾げる。
「人の出せるスピードをゆうに超えている。能力者か人間じゃない奴でもなきゃあんな動きは無理だ」
Uは冷静に呟く。隼人は笑いをこぼすと………
「殆ど当たりだ。しかし、俺のスピードはタダの高速移動能力者とは比較にならん! 何故なら俺の能力は倍基準で俺の速度をあげるものだ! そして、今お前達に見せたのは4倍のスピードだ!」
隼人は自身の能力を開示。どうやら自身のスピードを倍基準で上げるというものらしく、ここまでは普段の4倍で動いていたらしい。
「その割には余裕そうだな。となるとトップスピードはまだ先か………」
だが、Uは隼人の様子からまだ先があると直感した。
「ほう、そこまで読んだか………ますます面白い、和よりも楽しめそうな相手だな、お前」
隼人はどこまでも自分を見透かしていくUに益々興味を抱いていた。
「なら見せてもらおうか、お前の底力まで………!」
Uはそう言うと、隼人から距離を取る。しかし、隼人はUを追いかける為にスピードを押し上げ、攻撃を仕掛けるがUはこれを軽々とかわし続けていた。
「(俺の4倍速がかすりもしない………コイツ、相当戦闘慣れしてやがる………!)」
隼人も自分の加速がまるで当たらない事に驚いていた。だが、同時に戦闘への楽しみを感じ始め………
「面白い………なら5倍はどうだ!!」
隼人は能力によるスピードを上げたのだった………
一方、U達の戦いが激化するに当たり、U達が観察しようとしていた煙草の男は、遠くからU達の対決を見ていた。
「………あのガキ、どこの誰かも分からん連中とドンパチやってるな、今やるべきはそれじゃねえっつのに………まあいい、あのジジイの目的が果たされるまで煙草でも吸って待つか………」
男は呑気に様子を見ていた………だがそんな中、後ろからの気配を察した。
「………おいおい、こんな形で現れるとは思わなかったな………六道の当主様よぉ………!」
男の後ろにいたのはなんと六道理央だった。
「お前に用はない。用があるのはこの間の連中なんだ。わざわざ誘い出す為にあの連中のサイトに嘘の脅しをした書き込みをしたんだからさ………!」
理央はそう言って、用があるのは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』であり、サイトに例の書き込みをしたのも彼等六道家である事を語った。
「ほう………俺には興味無しか。だがいい、お前を倒せば俺の立場も上がるだろうからな」
男はそう言うと、左手を理央に向ける。すると次の瞬間、左手から理央の周辺を囲うように液体を放出させ、僅かではあるが理央にも液体を浴びせた。
「(この液体、アルコールくせぇ………って、アイツ煙草吸ってたような………?)」
理央は撒かれた液体がアルコールだという事には直ぐに気づいたが、気づいた時には男は咥えていた煙草を地面に落とす。すると次の瞬間、アルコールに火が着火。これにより六道理央は炎に包まれた。
「ふっ、俺はあんまり能力の事が好きではないが炎はいいものだ。俺を気持ち良くさせる………タバコを1個無駄にしたのは勿体無いが………」
男はそう言って再び煙草を咥え、マッチ箱を取り出すが、目の前の火が晴れた後の光景を目にすると、思わず手を止めた。何故なら目の前には髪型がアフロのようになっているだけで殆ど無傷の理央が立っていたのだから。
「あちち………お前のせいで髪の毛がアフロになったわ!!」
理央はかなり怒っていたが、あまりにも効果が無かった事には男も驚いており、思わず咥えていた煙草を落としてしまった。
「………イカれてやがる。噂には聞いていたが、ここまでタフだとは………」
男は理央へロクにダメージが無かった事にドン引きしていたが、冷静さを取り戻すと、先程落とした煙草を拾い、マッチ棒に火を着火させ、煙草の火を付けた。
「ふぅ………」
男は煙草を吸う事で再び落ち着きを取り戻した。その間理央は両手で髪の毛を戻し、なんとか冷静さを取り戻した。
「………というか、今思ったけどアルコールみたいなもん出す能力使ってるのに煙草を吸ってんのかよ、お前………」
理央は、男の能力と火を合わせれば危険な事になるのは目に見えているはずなのに、煙草を吸っている男の思考が理解出来ない様子を見せる。
「そんなのは俺の自由だろうに」
男はそう言って開き直る様子を見せた。
「そうか………うちの情報網によってある程度調べはついているが、本当に変なテロリストだな、アンタ………」
理央は未だ引いた様子を見せながらも、男の事を知っている様子を見せる。
「ほう、なら俺の事も理解しているようだな」
男は自身の事を知られている事に対しても冷静な素振りでそう返した。
「ああ。お前はフレイミー・アルコール。前にドイツで連続放火事件を起こした凶悪犯罪者だ。暫く行方知らずとされていたが、まさか日本にいたとはな………」
理央は調べた情報から男の素性を語る。彼はフレイミー・アルコールのコードネームを持つ極悪犯罪者であり、邪島四天王の一角でもあった。
「俺がどこにいようと勝手だろう。俺はそうやって生きるしか能が無いのでな」
フレイミーは特に悪びれる様子も無く、呑気に煙草を味わっていた。その様子に理央は珍しく嫌悪する様子を見せていた………
「取り敢えず煙草を消せよ。俺煙草苦手なんだからさ………」
どうやら煙草が嫌いな為に嫌悪しているらしい。
「煙草の美味さはガキには理解出来んよ」
フレイミーはそう言って理央に言葉を返した。
「まあいい、一撃で殺す必要性は無いからな。ゆっくりと火炙りにするまでだ」
フレイミーはそう言うと、再び左手を向けて液体のアルコールを飛ばすが、理央はそれを回避した。
「(………倒すしかないか。今回は舞雪も玲花も別方向から来てるし何とかなるだろ………!)」
理央はフレイミーの無力化の必要性を悟り、彼との対決を決めたのだった………
また一方では、U達とは別行動を取っていたブルー達が未だバイクを走らせていた。だが、そんな彼女達の前に突如として人影が飛び出してきた。
「………! ストップ!」
ブルーとグレーはなんとかブレーキをかけてバイクを止める事が出来た。突然人が飛び出してきた事に驚くブルー達だが、目の前に現れた人影の姿を目にしたブルー達は表情を一変させた。
「まんまと引っかかってくれたわね。丁度いい、3人とも纏めて倒してあげる」
そこに立っていたのは昆虫をイメージさせるようは様々な装飾が施されたレイピアを持つ女性………
「六道玲花………」
六道玲花がブルー達の前に立ちはだかった。ブルーはバイクを降りると、コルトパイソンを手に構える。その一方、グレーは首を傾げていた。
「………あの氷技を使う人はどうしたの?」
グレーは六道舞雪がいない事を疑問に感じていた。
「彼女は別件中、今頃貴女達の別の仲間の元にでもいるんじゃないかしら?」
玲花はそう言って煽る様子を見せる。それを聞いたブルーは無線機を起動し………
「………こちらブルー、状況は?」
U達へ無線を飛ばす。無線に出たのはピンクだった。
「こちらピンク、ホワイトくんがビリジアンちゃんと同じ刀使いの男の人と遭遇してるよ」
ピンクはUと隼人の対決を伝える。
「えっ? 氷技を使う女じゃなくて?」
ブルーは困惑する様子を見せる。それと同時に玲花も驚いていた。
「舞雪じゃない………!? どういう事!?」
玲花は舞雪以外の相手と『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』が対峙している事に驚いていた。そんな中、ピンクからまた無線が飛んできた。
「こちらピンク。氷を使う女の人が来たよ! 確か………六道舞雪さんって人だっけ………?」
どうやら舞雪が到着したのは今現在との事らしい。それを聞いた玲花は………
「(………マズイ事になったわね………確かに彼等の組織のサイトにかけた脅しは嘘だけど、目撃情報は本物………お兄様が遭遇したならまだしも、舞雪が遭遇したとなると………!)」
慌てた様子を見せ始め、その場から走り出そうとする。
「おっと、逃がさないよー!!」
しかし、グレーがバイクを走らせ、玲花の前に立ちはだかる。
「どうやら貴女達六道家にとってもマズイ事態になってるみたいね………好都合だわ」
ブルーは続けてそう言うと、コルトパイソンを構える。ブラックは特に動く事無く、バイクの上で様子見をする事となったのだった………
一方その頃、ブルーからの無線がかかってきた直後にまで時間は遡り、ピンクが無線を受けた時の事だった。Uは5倍速の隼人と互角に立ち回っており、ピンクはそれを伝えていたが………
「えっ? 氷技を使う女じゃなくて?」
ブルーからの話が予想外なものであった事にグレーとビリジアンの2人が驚いていた。Uも攻撃を捌きながら無線機を通じて会話の内容を聞いていた。
「(あっちにいるのは六道家の人間なのか………? 声を聞いた感じレイピアを持ってたレディのようだが………何を困惑しているんだ?)」
Uは状況を把握しつつも、玲花が困惑している事には首を傾げていた。そんな最中にU達を捜索していた六道舞雪が黒子の運転する車によって到着し、車の中から姿を見せた。それを見たピンクは再び無線を飛ばす。
「こちらピンク。氷を使う女の人が来たよ! 確か………六道舞雪さんって人だっけ………?」
ピンクは情報を共有。舞雪は車から出ると………
「貴方達、戦闘をやめて大人しく投降しなさい!」
舞雪は両陣営の投降を要求。しかし、Uは驚く様子を見せる。
「ば、バカ!! なんでこのタイミングで来るんだ!?」
何故ならUからすれば舞雪達が絡んで来たタイミングはあまりにも悪かった。隼人は舞雪達の方を見ると………
「邪魔をするな、ゴミ共!!」
隼人はUへの攻撃を一旦やめると、舞雪達の方へ視線を向け………
「{騒嵐爆裂撃}!!」
隼人による鋭い斬撃の一撃が放たれる。これによって発生した斬撃は黒子達が乗っている車を爆発させ、乗っていた黒子達は全員爆発に巻き込まれてしまった。
「………! 黒子達………!?」
これには舞雪も動揺を隠せずにいた。だが、その隙を突くように隼人は攻撃を仕掛けてきた。
「ぐっ! バカ野郎が………!!」
Uは反射的に身体が動くと、舞雪を抱きかかえて隼人の攻撃をかわした。かわした後に勢い余って2人は転ぶが、Uはすぐに体勢を立て直した。
「な、何故私を………!?」
舞雪は、Uが自身を助けた事に驚いていた。
「さてな。というか気になっているのはなんで六道家までこんな戦いに絡んでいるって話だ………!」
Uは舞雪を助けた理由をはぐらかす。そしてそれ以上に何故六道家が今回の戦いに現れたのかが気になる様子を見せた。舞雪は理由を話すべきか悩んでいたが、Uに生命を助けられた事から、結果として口を開いた。
「………貴方達の組織のインターネットサイトのページに脅しをかけた書き込みをしたのは私達なの」
ここでU達には『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のサイトに書き込んでいたのが六道家である事を口にした。この時のUは無線機のマイクをわざとオンにしており、これによって他のメンバーにも書き込みの真実が露呈する。
「ならあの書き込みは全部嘘なのか?」
Uは舞雪に対し、書き込みの全てが嘘かを問いかける。
「………全部が嘘ではないの。1人の老人と4人の能力者を見かけたのは本当。彼はその1人………」
舞雪は目撃情報については本当であった事を語る。それを聞いたUは納得する様子を見せると………
「成程ね………でも、こっちにとってはある意味迷惑な話だな」
そう言ってどこか不服そうにそう呟いた。
「………別に私達は貴方達を捕まえたい訳じゃない。無力化すべき勢力は目の前にもいる」
舞雪はそう言いながら立ち上がり、隼人の方に視線を向ける。
「………そうかい」
Uはぶっきらぼうにそう言い放つ。そして………
「ならこっちから言わせてもらおう。潰すなら奴の方からがいい。僕達も奴を倒す意味はあるからな」
Uはそう言うと、先に隼人の方から潰すべきである事を口にする。
「………どういう意味?」
舞雪は首を傾げながら言葉の意味を問いかける。
「あんまり乗り気じゃないが………僕達で一時的に力を合わせて先に奴を倒す。僕達のいざこざはその後でも遅くないだろうって事だ」
それは共同前線を持ちかけるものであった。
「え………!?」
これには舞雪も驚き、そして様子を見ていたビリジアン、ピンク、春香も驚いていた。
「ほ、ホワイト殿、正気なの………!?」
ビリジアンは思わず正気かを問いかける。
「全然正気だよ。独断行動間違い無しだが使えなくは無いだろう。僕とビリジアンと彼女、この3人なら流石に手こずらせられるだろうってな」
Uはこれが独断行動である事を理解しつつも、共同前線を張る明確なメリットが見えた事から、舞雪と手を組む事を考えたようである。
「それと、博士達はリーダー達の元へ合流してくれ。噂が本当だった以上、他の能力者が紛れている可能性がある。それを踏まえたらチーム内で合流すべきだろうと思ったんだよ」
Uは他に能力者がいる可能性を考慮し、メンバー間の合流を急ぐ事を指示する。
「えっ? で、でも………」
ピンクと春香は困惑する様子を見せる。
「早く行け! 足でまといだ!!」
Uは2人に対し厳しい言葉をかける。それを聞いたピンクはムッとした表情を浮かべると………
「偉そうに言うね………死んでも知らないんだからね!!」
そう言って春香をバイクに乗せてこの場を離脱してしまった。だが、結果として上手くこの場を離れてくれた事に安堵するUは笑いを零す。
「………それでいい。こうでもしないと動いてくれないからな、博士は………」
どうやら先程の厳しい言葉は2人をなんとしてでも行かせる為のものだった。そして、U達3人は隼人の前へと立った。
「ビリジアン、遠くから打てる技は無いか? 最悪中距離でもいい」
Uはビリジアンに対し、中距離以上の技が無いかを問いかける。
「えっ? あ、あるにはあるけど………」
ビリジアンはUの求める攻撃範囲技を持っているとの事らしい。
「………んで、嬢ちゃんは?」
Uは舞雪にも同様の質問を問いかける。
「嬢ちゃんって………まああるけど………」
舞雪はどこか不服そうな様子を見せていたが、同時に中距離以上の有効範囲技を持っているとの事であった。
「そうか………よし、なら2人は奴の有効攻撃範囲外から攻撃。僕が接近して奴の妨害をしながら立ち回るから攻撃に専念してもらって結構だ」
Uは2人を攻撃の軸にする策を立てる。Uは2人の攻撃を通す為、隼人に接近して妨害役を引き受ける事を口にする。
「ほ、ホワイト殿1人で………? なら私も接近で………!」
U1人での接近戦を危険と感じたビリジアンは、Uと同じく接近戦を買って出ようとする。
「邪魔になるだけだ。あまりこういうのは好きじゃないが、奴の実力を考えると2人じゃ手も足も出ない………僕1人で十分だ」
Uはそう言うと、ゆっくりと歩き始め………
「ここで奴を倒す! 行くぞ!」
素早いスピードで隼人に接近し、剣を振り上げる。
「遅いぜ!」
隼人はUに向けて突きを放つが、Uは即座に回転しながら跳躍し、隼人の突きをかわすと共に、地上に着地する直前、素早い蹴りで隼人を地面に向けて倒した。
「うおっ!? (俺の突きを読むと共に、ジャンプ中に蹴り!? ………コイツ速いだけじゃねえ、読み合いにも強いのか………!)」
隼人はUに先を読まれていた事を驚いていた。Uが即座に倒れている隼人に向けた突きを放つが、隼人は地面を転がって回避。直後に立ち上がるとUに向けて横斬りを放つ。
「………っと!」
Uはこれを上手く受け止める。危なそうな声を漏らしていたが、特段焦ってなどおらず寧ろ余裕だった。
「これも止めるか………なら、こいつはどうだ!! {爆砲嵐圧撃}」
隼人はそう言うと、目に見えない風圧のような斬撃を放つ。常人ならぶっ飛ばされそうな攻撃ではあったが、Uはその場で持ちこたえる。しかし、隼人はUなら止めると考えていたのか直後に自身の能力で加速し、Uの懐に潜り込んできた。
「{極速嵐刃砕}!」
素早い2連撃による攻撃はUが持っていたロングソードに直撃し、Uのロングソードの刀身は粉々に砕けた。
「(武器を潰されたか………まあいい、こっちで何とかするか………!)」
Uは柄だけになったロングソードを隼人に向けてぶん投げる。隼人にはこれをかわされてしまったが、その隙に所持していたもう一本の剣ファルシオンを手にする。
「おおっと、潰せたのは1本だけか………なら、まだまだ楽しめそうだなぁ!!」
隼人はUの手が止まらない事について楽しそうに呟く。
「迷惑だ………それと気をつけろよ」
Uは隼人の言葉に呆れていたが、同時に警告を行う様子を見せる。そしてその直後、鋭い風の斬撃と鋭い氷の刃が隼人に向かって襲いかかってきた。
「うおっ!?」
隼人は咄嗟に自身の能力による加速でかわした。しかし、Uは間髪入れず追撃をかけた事で、隼人は体勢を立て直す間も無く防御をする羽目になった。
「そっちが嵐の斬撃ならこっちは物量の嵐だ! 止められるかな………!?」
Uは3人がかりによる攻撃が隼人に襲いかかる事を突きつけるのだった………
一方その頃、ブルー達はU達が六道舞雪と一時共闘する事を選択した事を、Uが意図的に付けっぱなしにしている無線機を通じて知った。
「(Uが六道舞雪との共闘を選択した………それ程戦っている相手が強いのか、それとも………まあいいわ、情報的優位性はこっちの方が上。利用しない手は無いわね………)」
ブルーは目の前にいる六道玲花が舞雪の事で動揺している事から、情報の優位性を感じていた。そして………
「………焦っている所悪いけど、この調子だと貴女の大事な妹は殺されているか捕まっているかのどちらね。他の仲間からの無線が楽しみだわ………!」
ブルーは嘘の脅しでおびき寄せられたお返しとばかりに舞雪の事について嘘の情報を口にした。だが、精神的に焦っている玲花を動揺させるには十分であり………
「だ、黙りなさい!」
玲花はブルーに向かってレイピアによる突きを放つが、冷静さを欠いた突きがブルーに当たる訳がなく、ブルーは攻撃をかわすと共に蒼炎を身に纏い、玲花のレイピアに向けて蒼炎を纏った弾丸で狙撃を行う。これによって玲花のレイピアに弾丸が直撃したタイミングで蒼炎がレイピアを通じて玲花の身体を燃やした。
「ぐううっ!?」
玲花は生存本能が働いたのか、自身の身体で燃える蒼炎の元素を操り、致命傷を避けたものの、ダメージは大きなものとなり、地面に膝を着いてしまった。
「………終わりね」
ブルーは勝負の決着が着いた事を悟り、彼女に対しコルトパイソンを向ける。だが、バイクの上から様子を見ていたブラックは突如として何かに驚く様子を見せると………
「………2人とも! そこを離れて!」
ブルー達に対しその場から離れるよう指示を飛ばす。ブルー達は何事かと驚いていたが、ブラックの指示を聞きその場を離れる。そしてその直後、玲花が膝を着いている場所から半径300m程の円形状にとてつもない重力が発生する。
「ぐっ………ううっ………!」
玲花は重力の圧に苦しめられる様子を見せる。
「とてつもない重力が目の前で発生した………!? 状況を考えれば間違いなく能力によるものだと思うけど………」
ブルーは目の前で起きている現象について察知するが、同時に驚きも隠せずにいた。そんな中、超重力が発生している所へ歩いてくる人の影が現れた。
「おお………まさか六道家の能力者が私の能力の網に引っかかってくれるとは………これは最高の獲物だ………!」
玲花が自身の能力の網に引っかかった事に喜ぶ男の声。ブルー達が声の方へ視線を向けると、イギリス人の男が歩いて来るのを目にする。玲花はイギリス人の男を前に驚く様子を見せた。
「あ、あの男は………グラヴィティ・リバーサル………! 六道家の情報網によって目撃された能力者の1人………!」
イギリス人の男はグラヴィティ・リバーサルのコードネームを持つ人物であり、彼もまた邪島四天王の1人であった。
「私の事をよく知っているらしい。流石六道家の情報力だ。しかし、当主の妹は言う程強い訳でも無いらしい」
グラヴィティは自身の事が知られている事を感心しつつも、玲花は理央程強くは無い事を悟っていた。そんなグラヴィティは超重力空間に足を踏み入れる。しかし、グラヴィティは普通に歩いていた。
「(あの超重力空間をいとも容易く………!? 何か種があるの………!?)」
ブルーはグラヴィティが軽々と歩く様子に何か仕掛けがあると見ると、蒼炎を身に纏い、コルトパイソンによる射撃をグラヴィティに向けて行う。しかし、弾丸は超重力空間に入った瞬間に重力の勢いによってほぼ真下へ急降下してしまい、グラヴィティにはまるで届かなかった。
「(普通に重力が発生している………その中で動くなんて正気の沙汰じゃない………!)」
どうやら物理法則的な観点において、重力は確かに発生しているものの、グラヴィティのみが普通に動けるようだった。そして超重力が働いているという状況のため、その有能範囲内にグレーが入るのは自殺行為である。
「………私の出番かな」
そんな中、バイクの上で静観を続けていたブラックがバイクから飛び降りて地に足をつけると、ゆっくりと超重力空間に向かって歩き出した。
「………! 来てはダメ! 重力に押しつぶされてしまう………!!」
玲花は敵とはいえまだ子供であるブラックに思わず心配の言葉をかける。だが、ブラックは歩いていく中でゆっくりと自身の身体に真っ黒かつ巨大なオーラを身に纏わせていく。
「(あのエネルギー量………子供であそこまでのエネルギーを持っているというの………!?)」
玲花はブラックの圧倒的エネルギー量に圧倒されていた。そして、ブラックは超重力空間に足を踏み入れたものの、彼女は全く重力の影響を受けずに歩いていた。
「な、何っ!? 何故私の発生した重力空間を平気で歩ける………!?」
当然これにはグラヴィティも驚いていた。
「………私の真っ黒な闇はありとあらゆる現象を中和出来る。昔から闇はありとあらゆる力を超越するって漫画やラノベではお約束だからね………!」
どうやらこれはブラックの能力によって、超重力空間を形成するグラヴィティの能力を中和している為らしい。
「情報源が創作物………? というか、闇を操る力にそんな力はあったかしら………?」
玲花はブラックが持つ闇を操る能力について首を傾げていた。
「確かに普通は無理でしょうね。でもそれは我々の解釈でしかない。総帥が出来ると解釈すれば出来るのよ」
ブルーはそう言って彼女の能力の解釈についてそう語る。
「解釈………まさか! ………能力の拡大解釈!?」
ブルーの言葉で、ブラックの解釈状況が拡大解釈によるものである事を悟った。
「………そう。拡大解釈は自身の能力を大きくパワーアップさせる手段の1つ。拡大解釈自体は別に珍しくもないけど、解釈の広げ方については総帥が段違いなレベルで得意としている事………! 私達の想像を絶する思考がもたらす圧倒的な力は、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』最強の実力なのよ………!」
ブラックの解釈は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』最強と言わせしめる程のものであった。超重力空間を散歩感覚で歩くブラックは両手に黒いエネルギーを纏わせると、エネルギーを纏ったパンチを叩き込んだ。
「ぐあっ!」
グラヴィティはブラックのパンチを受けて大きく吹き飛ばされた。そして、ブラックは超重力で動けずにいた玲花を軽く蹴って突き飛ばした。
「うあっ!?」
玲花は反射的にレイピアで防御したが、ブラックのパワーにより重力空間を脱し、地面に叩きつけられた。
「………邪魔」
ブラックは冷たくそう言い放った。
「な、なんですって………!?」
玲花はブラックの言葉にイラッとする様子を見せていた。近くにブルーとグレーが駆けつけると………
「あーあ、あれは完全に乗っちゃったみたいかな」
グレーがブラックに向けてそう言い放った。
「総帥は物事に集中すると、アスリートで言う所のゾーンに入るの。あの状態の総帥はそう簡単に止められないわ………!」
ブルーは、ブラックが圧倒的な集中状態になっている事を語る。それを聞いた玲花は驚きのあまり呟いた。
「………私達はとんでもない連中に絡んでしまったのね………」
自分達が対峙している組織はただの組織ではなかったという事を。そして、ブラックはグラヴィティに再び接近し、自らの闇のエネルギーを纏ったパンチを再び叩き込む。
「ぐあああっ!」
グラヴィティは再び大きく吹き飛ばされる。
「どうやら身体強化系の技は持ち合わせていないみたいだね。なら、あの大技をぶち込んでも問題ないかな」
ブラックはグラヴィティが身体強化技を持っていない事を察すると、途端にブルーとグレーの元へ走り出し、2人に触れると共に自らの闇のエネルギーを与えた。
「アレやるから15秒くらい時間稼ぎして」
ブラックは大技を発動する為の時間稼ぎとして、2人に足止めを依頼する。それを聞いた2人は迷う事無く頷くと、グレーがバイクでグラヴィティに接近し、ブルーも軽く移動。そしてブラック本人は大技発動の為に自らのエネルギーを集束させ始める。
「無駄な事を………! 私に近付けば超重力の餌食だ!」
グラヴィティはそう言うと、再び自身から半径300m程の円形状にとてつもない重力を発生させる。しかし、グレーはバイクごと闇のエネルギーを纏っており、重力の影響をまるで受けていなかった。
「な、何っ!?」
グラヴィティはグレーにも超重力が適用出来ない事に動揺する。グラヴィティはグレーの槍による攻撃を回避する事は出来たが、回避の先はブルーの持つコルトパイソンの軌道先であり、しかもブルーの身に纏われた黒いエネルギーと蒼炎が混ざり合い、コルトパイソンの中に2つの能力のエネルギーが入った。
「これは総帥のエネルギーが私の中に入っている時のみ使える拡張技………その名も、{ダークネスバレット}!」
ブルーはコルトパイソンの引き金を引き、弾丸を発射。黒炎となった弾丸はブラックの力の拡大解釈効果も相まって重力を無視し、グラヴィティの右肩を貫通。更に黒炎による追加ダメージを与えた。
「ぐあああっ! ああっ!!」
グラヴィティはとてつもないダメージに苦しんでいた。辛うじて致命傷は免れたが、グラヴィティは黒炎が消えても痛みに苦しんでいた。そして、この時間稼ぎが上手くいった事で、ブラックは右手に黒い球体を完成させる。
「2人とも、離れて!」
ブラックは2人に退避を指示。2人の身に纏われた闇のエネルギーが消失しかかっていた事もあってか、2人は迷わずその場から走り去り、玲花の方へと走った。グラヴィティは何とか立ち上がろうとしていたが、彼の前に立っていたのは黒い球体を手にしたブラックの姿だった。
「これが私の最強奥義!!」
ブラックは黒い球体をグラヴィティに向けて投げる。そして、グラヴィティの目の前で黒い球体は内部から爆発し、形を変えてグラヴィティに接近していく。それを見たグラヴィティは戦慄した。
「ぶ、ブラックホール………!?」
それはまるでブラックホールのようなものであった。
「そう、自らの闇によって擬似的にその形と特徴を再現させた大技………{ブラックホール}!!」
ブラック曰く技名はそのままブラックホールとの事であった。あくまで闇を用いて擬似再現したものである為、本物のように光さえ脱出出来ない程のものでは無いらしいが、それでも手負いのグラヴィティからすればそれが自らの死を予感させる程のものであった事は想像できた。
「う………うあああああ!!」
グラヴィティは右肩と黒炎のダメージによって動けない状況であり、目の前に迫るブラックホールに絶望するのだった………
そんなブラックの大技ブラックホールは大規模な技であり、現在遠くで交戦中のU達と隼人もブラックホールを目にしていた。
「あれはブラックホール………!? まさか彼の仲間なの………!?」
舞雪は邪島四天王側の能力者のものと考えた。
「いや、あれはブラック殿の切り札………!」
しかし、ビリジアンが即座にそれを否定し、ブラックの技である事を伝える。実際邪島四天王の1人である隼人は驚いており………
「まさか………誰かやられそうになってんじゃねえだろうな!?」
隼人は嫌な予感を感じたのか、突然Uとの斬り合いそっちのけでブラックホールの方へ走り出し、自らの能力で大きく加速する。
「待て! ………ビリジアン、君はバイクで嬢ちゃんを連れて追いかけてくれ!」
Uはすかさず後を追う事を提案し、ビリジアンに舞雪を乗せて追いかける事を指示する。
「でもホワイト殿はどうやって………!?」
ビリジアンはUがバイクに乗らないで行く事に対し首を傾げていたが………
「大丈夫だ。僕は自分の足で行く!!」
Uは目にも止まらぬ速さで隼人を追いかけだし、5秒も経った頃にはビリジアン達はもうUの姿を見失っていた。
「ホワイト殿、まるで光のように速い………!? ………というか、冷静に考えれば隼人兄さんの攻撃を真正面から捌けてた時点で常人じゃないと気づくべきだったなぁ………」
ビリジアンはUの足の速さに呆気に取られていたが、そもそも超加速を武器に戦っていた隼人相手に真正面から戦えていた事を思い出すと、嫌でも納得させられていた。そして、舞雪もUの圧倒的なスピードに驚かされていたが、同時に疑念も生まれていた。
「(あのホワイトって人、強さがあまりにもおかしいような………というか、今思い返すと顔とか高天を壊滅させた人にそっくりだし………お姉ちゃんは似てるだけで髪色は違うって言ってたけど、あの並外れた強さはまるで人間の域を超えている………あの人も単独で高天本部を滅ぼした可能性が大なのを考えると、あの人じゃないと説明が付かないような気がしてきたな………)」
それは、以前彼女が目撃したいつもの白髪のUと容姿、圧倒的強さを持っている点が酷似している事から、同一人物の説を疑い始めていた事だった。舞雪はビリジアンが運転するバイクの後ろに乗ると………
「(………あの人は何者なんだろう………)」
変装しているUの正体について考え出すのだった………
そして、このブラックホールはピンクと春香も目撃していた。2人は来たルートを戻ってきており、ブラックホールが近くで見てる事から近い事は間違いないものの、未だブラック達との合流には至っていない。
「参ったね………出来れば早く合流しようと思ったのに………」
ピンクは未だ合流できていない事に内心焦っていた。そしてその不安は春香にも伝わっていた。
「ピンクさん、大丈夫ですか………?」
春香も思わず心配の声をかけた。危機感を煽られる状況下の中、春香は人の気配を感じると、辺り一面を警戒するように見回した。
「ピンクさん! 何か気配が………!」
春香は気配を感じた事をピンクに伝える。ピンクも気配については薄々感じており………
「この気配は………1、2………どころじゃないね」
春香の言葉に付け加えるようにそう呟いた。実際気配の数は複数存在しており、ピンクが目の前に視線を向けると、目の前から数十体の異形の魔物が向かってきていた。
「怪物………かな。とにかく人間でない異形な存在なのは間違いなさそうだよ」
ピンクは先程までの焦りを抑えると、状況を分析し始める。
「………離れてて。私の能力は危ないやつだから」
ピンクは前に立ち、春香に近づかないよう言い、春香も頷くと、バイクの近くに隠れる。
「さて………行くよ!」
ピンクはそう言って両手を広げると、自身の持つエネルギーを両手に集中させる。すると次の瞬間、彼女の両手に火の着いたダイナマイトが出現。彼女はダイナマイトを魔物の群れに投げ、ダイナマイトは魔物の群れの中で爆発。そしてピンクはダイナマイトをひたすら生成しては魔物の群れに投げつけ、次々と魔物を倒していく戦術を展開するのだった。
「(あれがピンクさんの能力………爆発物の生成………!)」
春香はこの時初めてピンクの能力を目にした。そう、これこそがピンクの持つ能力、爆発物の生成を行う能力である。
「仲間がいる中で使っちゃうとフレンドリーファイアを起こす恐れがあるから普段は使いたくないんだけど………こういう1vs多数なら問題は無いし、寧ろやりやすいよ!!」
ピンクの爆発物生成能力は本物の爆弾を生成するものである為、人や地形を破壊出来る爆発物と何ら変わりは無い。その為味方がいるとその味方を巻き込む恐れがあった。しかし、今のようにピンク単体で複数の敵と対峙する場合なら話は変わる。この状況においては味方を巻き込む恐れが無くなる為、ピンクの能力が最大限に発揮出来るのだ。
「そして私の能力でひたすら爆発を起こすのが私の必殺技とも言える技!」
ピンクはそう言うと、両手にありとあらゆる爆弾を生成し、一斉に魔物の群れに投げ込む。
「………{ミリアッドボンバー!!}」
無数の爆弾による爆発は魔物の群れを一瞬にして消し飛ばした。
「凄い………」
春香はピンクの力に驚いていた。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の中では1番戦闘のイメージが無かったピンクだが、彼女もまたその一員である事を春香は強く思い知らされていた。
「これで魔物は全滅したね。大丈夫だっ………っ!?」
ピンクは安堵しながら春香の方に視線を向けた直後、驚きと共に動揺していた。そして春香も同じタイミングで背筋が凍るような様子を見せる。ピンクの視線の先には春香と、春香に密着しながら右手で春香の頬を撫でるアメリカ人の女がそこにいたのだ。
「(この人………見た感じは強そうに見えないけど、嫌な気配を感じる………)」
ピンクはアメリカ人の女に対し、強さこそそこまで警戒していなかったが、同時に彼女から嫌な気配を感じていた。
「せっかく作った私の可愛い怪人達が全滅する事になるとはね………貴女、それなりにやるじゃない」
アメリカ人の女は驚きを見せつつも、内心では余裕そうな様子であり、面白そうにそう呟いた。
「貴女が作った………!? 貴女はいったい何者なの………!?」
ピンクはアメリカ人の女に対して疑問を感じ、何者かを問いかける。
「私の事が気になるのね。まあ、これから楽しくなりそうだし教えてあげる。私はイヴィル・モディフィケーション。怪人を作り出す天才だよ」
アメリカ人の女イヴィルは名乗った。そしてそれを聞いたピンクは怪人を作り出すという点に疑問を感じていたが、徐々に嫌な予感を感じてもいた。
「………ちょっと待って。怪人を作り出すってまさか………!!」
ピンクは嫌な予感の答えに気づいた。
「どうやら気づいたみたいね。そう、私は直接触れた相手を怪人にする能力があるの。かなり面倒くさい発動条件ではあるけど、私が彼女に触れた時から貴女は詰んでたってわけ」
イヴィルはピンクを小馬鹿にするようにそう言い放つ。その直後、イヴィルに触れられていた春香は呻き声を漏らし始めた。
「あ………ああ………!」
そして春香の身体は次々と異形の形へと変化していき、その身体は人間のものとは思えない怪物と化してしまった。
「そんな………春香さんが怪人に………!?」
ピンクは春香が怪人と化す最悪の事態に衝撃を受けていた。そして、怪人となってしまった春香はピンクへと体当たりをし、ピンクを吹き飛ばす。
「うあっ!」
ピンクは無抵抗のまま吹き飛ばされる。しかし、相手が春香という事を考慮すると、反撃も出来なかった。
「(皆に知らせるべき………!? でも、確実に混乱を与えてしまう………!)」
ピンクはこの時無線を受信状態にはしていたが、ピンク側からのマイクはオフになっていた。春香が怪人となってしまった事を無線で伝えるべきかと考えていたが、確実にメンバーに動揺を与える事態にどうすべきか悩んでいた。そんな事をしている内に再び春香の怪人はピンクは再び吹き飛ばされてしまった。
「うあああああっ!!」
同時にピンクは痛みによる声を上げるのだった………
そして、ブラック達はブラックホールによりグラヴィティにトドメを刺す寸前にまで追い込んでいた。
「………貴女達のこと、正直見くびっていたわ。まさかあそこまでの力を持っているなんて………」
ここまで圧倒的な力を目にした玲花は、これまでのブラック達の印象を見直していた。そして、このままトドメを刺す………と思われた次の瞬間、突如として何者かが超スピードでグラヴィティの前へと走り、彼を救出してブラックホールをかわした。
「なっ………!?」
ブラックは自身の大技をかわされてしまった事に驚いていた。そしてブラックホールは何も吸収出来ないまま少し経って消滅した。グラヴィティを助けた人物は漸く足を止める。そこに立っていたのはブラックホールを目にして走ってきた隼人だった。
「無錆さんですか………助かりましたよ」
グラヴィティは隼人に助けられた事に喜んでいた。
「………馬鹿がよ。それにもうお前は下がってろよ………」
隼人は呆れた様子でそう言い放つ。グラヴィティは首を傾げていたが、隼人の言葉の意味にすぐ気付いた。直後、隼人を追いかけていた人物が超スピードで隼人に剣による鋭い一撃を放ってきた。
「………! ホワイト!」
そこには目にも止まらぬ速さで追いかけてきたUがおり、隼人も刀によってギリギリ止める事が出来たが、腕が震えており、自分を追いかけてきたUに驚いていた。
「………お前程の相手は見た事がない。俺に追い付くばかりか、ロクに息も切れていない………イカれてやがるな………」
隼人はUの異常なスピードとスタミナに驚いていた。
「お前にイカれていると言われたくは無いな………!」
Uは隼人の言葉を否定すると、後ろへ動いて距離を取った。Uはグラヴィティの様子を目にすると共にブラックの元に近づき………
「………だいぶ善戦したらしいな」
ブラック達の善戦を悟り、思わずそう呟いた。
「私達もこう見えて凄いんだよ」
ブラックは胸を張るようにそう言った。そして直後にバイクの音が聞こえた。音の方に視線を向けると、そこにはU達を追いかけてきたビリジアンと舞雪が乗っていた。
「ビリジアン!」
ブルー達はビリジアンとも合流出来た事を喜んでいた。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
そして、舞雪の方も玲花と合流出来た事に喜んでいたと同時に、心配の声をあげた。
「大丈夫………貴女こそ無事でよかったわ………」
玲花も舞雪の無事を喜んでいた。一方、隼人達は2つの勢力との対決を前に、流石に危機を感じていた。
「ここまで敵が集まるとはマズったな。どうすっかな………」
隼人がどのような手を打つか、そのような事を考えていたその時だった。突如、隼人達の後ろから足音が聞こえてきた。
「情けない………そんな奴等に手を焼くとは………」
足音の主は老人の声であり、その話の内容は隼人達に呆れるものだった。その場にいる者達は老人の声に首を傾げていたが、Uだけはその老人の声に驚いていた。
「(この声………まさか………!!)」
何故ならそれは聞き覚えがあるものだったから。そして、隼人達の後ろから声の主である老人が顔を見せた。
「よ、邪島管心………!」
ブルーは目の前にいる老人が邪島である事を語った。邪島は見下すようにその場にいた者達を見ていたが、Uの顔を目にすると途端に表情を変えた。
「………! き、貴様………! あの時の男か………!?」
邪島は目の前にいる男が、高天事件で苦渋を味わわされた男と同一人物であると考えていた。髪色こそ違うが、自身の操る組織を一度潰された過去がある事から間違えるはずが無いと言わんばかりの様子だった。Uはここでしらばっくれる事も考えたが、目の前にまた倒すべき相手が現れた事を考慮すると、懐から巻物を取り出す。その巻物を広げると、巻物に込められていた魔法が発動。これによりUの髪色は白髪に戻った。
「………久しぶりだな」
Uは邪島に対しそういい放つ。邪島は因縁の相手が現れた事に驚いていた。そして、Uがここで自分から正体をばらした事について『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は驚いており、更にUを追い続けていた舞雪達も探し求めていた相手が目の前に現れた事に驚いていた。
「やっぱり………予想は間違いじゃなかった………」
舞雪は自らの予想が当たった事を感じていた。
「ここでお前の生命を貰うぞ」
Uは邪島に対し、彼を殺害する事を宣言する。
「生意気な男が………!」
邪島はUに対し、分かりやすく怒りを露わにしていた。そしてUは思わぬ形で邪島と遭遇した事に驚きつつも、冷静にディメンへテレパシーを送った。
「………ディメン、僕だ。今目の前に例の爺さん………邪島がいる」
Uは邪島と対峙している事を報告する。
「本当に………!?」
ディメンは驚きの声を上げていた。だが、同時に嬉しそうな様子も見せていた。
「………分かった、すぐに氷の騎士を送るよ。そのまでその場はお願い」
ディメンは氷の騎士をUの元へ送る事を伝えてテレパシーを切った。
「(思わぬ形にはなったが………奴を殺す絶好のチャンスだ………!)」
Uが邪島を殺害する為、現状を分析する。そして、頭の中で策を編み出した為、攻撃を行うために動こうとした瞬間と同時に、春香の変貌した怪人からの攻撃を受けていたピンクがボロボロの姿でブラック達の近くに転がってきた。
「ピンク!?」
ブラック達はピンクの姿に驚いていた。ピンクはブラック達と偶然ながら合流した事に驚いていたが………
「た、大変………春香さんが………怪人に………!」
ピンクは春香の怪人化を伝えた。U達はその言葉が信じられずにいたが、直後に春香が変化した怪人とイヴィルが歩いてきた。
「ほう………あの男の妻を怪人に変えたのか………面白い事をしたものだな………」
邪島はイヴィルの行動を喜んでいた。そしてUも怪人の気を探知し………それが春香のものと察してしまった。
「そんな………本当に春香なのか………!?」
Uもこの時ばかりはかなり動揺していた。そして、怪人の春香は自我を失った状態で無差別に体当たりを行った。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は春香と聞いて攻撃が出来ず、防御に集中する他無かった。そしてそれは舞雪達も同じであり、白三谷ユウの妻であるという事を考慮すると、舞雪達も反撃が出来ず、守りに徹するしか無かった。Uは怪人となった春香の姿に動けずにいた。そのような状態の中、怪人となった春香はUを攻撃対象に体当たりしてきた。
「ぐっ………!」
Uは体当たりを受け止めるが、春香に対して反撃を行おうとする意思が持てず、春香の身体を掴んで受け止めた後から何も出来なかった。
「止めろ春香………! 君を攻撃する事なんて僕には出来ない………!!」
Uは春香に暴れるのを止めるように訴えかける。しかし、反撃そのものは何も出来ずにいた。
「あらあら………どうやら彼女を怪人に変えた事は正解だったみたいね。こんな面白い光景なんて中々見れないもの………!」
イヴィルは現在の状況で混乱を生じた事を喜んでいた。
「………は?」
だが、それを聞いたUは怒り混じりの声を漏らした。
「お前か………そんな事をしたのはお前か………!」
Uは怒りを見せていた。あくまで別人とはいえ、自身の妻と同じ見た目、近い性格の彼女をこのような怪人に変えた事が許せなかったのだ。
「そうだと言ったら………?」
イヴィルは小馬鹿にするようにそう言った。それを聞いたUは何かが切れた様子を見せる。そして、春香を押さえていた右手を春香から離し、右手にエネルギーを纏わせると、光の衝撃波をイヴィルの左腕に放つ。光の衝撃波のスピードはイヴィルに反応させる暇を与えず、更にこの攻撃によって彼女の左腕がぐちゃぐちゃとなった。
「え………? ………う、うあああああ!!」
イヴィルは左腕が破壊された直後は目の前の光景が信じられずにいたが、少しして左腕が潰れた事に対する苦痛の声を上げた。そしてブラック達も目の前の光景に言葉を失っていた。
「(えっ………!? 今のUの攻撃だよね………? 全く見えなかった………)」
ブラックはUの攻撃を捉えられなかった事に驚いていた。一方、イヴィルは苦痛に表情を歪ませており………
「この私の左腕を吹き飛ばすなんて許さない………!! その報い………絶望を持って贖いなさい!!」
Uへの恨みを吐き捨てると、ノーダメージの右手を広げると、握り拳を作る。Uやブラック達が身構えていると、突如、Uの目の前で大量の血が吹き飛んだ。
「っ………!?」
Uは思考が停止してしまった。何故なら目の前で押さえていた怪人となった春香が爆散した為であった………体内から爆散し、大量の血が春香だった身体から噴出。その中には春香が持っていたであろう血塗れのロケットペンダントもあり、Uの身体に当たった後に地面に転がった。春香の血を大量に浴びたUは血塗れになると共に、目の前の光景に絶望していた。
「は、春香………嘘だろ………!? 春香………春香あああぁぁぁ!!」
Uはこの光景を目にした事で全てを察した。春香はイヴィルの力によって殺されてしまったのだ。Uは地面に転がったロケットペンダントを手に春香の名を叫び、地面に拳を打ち付け、慟哭する事しか出来なかった。
「あは………あはは………あははははは!! ざまぁないわね!! 貴方の大事な人は死んだ! これで心はズタズタよ!!」
イヴィルはUに一矢報いたかのように大笑いした。
「………よくやったイヴィル。これで奴はもう絶望に支配される事となる………!!」
邪島もそれに続いてUの心を折った事を笑った………それがUの逆鱗に触れる事態になった事を知らず………
「………春香を殺す事が計画だったとでも言うのか………!?」
Uは静かに立ち上がると、震えた声で邪島達にそう問いかける。
「死んでくれた方が都合がいいとは言っておこう………!」
邪島は嬉しそうな様子でそう言い放つ。だが次の瞬間、邪島の右腕を光のようなモノが通り過ぎ、邪島の右腕は切断され、吹き飛ばされた。
「な………ぬああああああ!?」
邪島は右腕を吹き飛ばされた事でその場に倒れ、無様に転げ回っていた。イヴィルがUの方を見ると、Uの拳は邪島の方を向いており、彼の右腕を吹っ飛ばしたと誰でも分かるような状況となっていた。
「春香が死ぬのが都合いいだと………死ぬのはお前らのような人の幸せを平気で踏みにじるゴミみたいな人間だあああ!!」
Uは勢いに身を任せるように、光のエネルギーを飛ばすパンチを放つ。その光は圧倒的に大きなものであり、イヴィルの身体全体を言葉では体現出来ない圧倒的な痛みが襲った。
「いぎゃあああああーー!?」
イヴィルはUの怒りの一撃により、骨すら残らず吹っ飛ばされた。
「なっ!? イヴィルさんが………死んだ………!?」
グラヴィティはイヴィルが一撃で殺害された事に動揺を隠しきれなかった。そして隼人もこれはマズイ事を直感的に感じると、所持していた照明弾を使い、辺り一面にいる者達の目をくらませる………
「………引くぞ!!」
隼人はこの隙に自身の能力で超加速し、邪島とイヴィルを連れて撤退した。
「待て! 逃がすか!!」
Uは追いかけようとしていたが、突然の照明弾に視界を奪われた事で見失ってしまい、邪島達の逃亡を許してしまった。
「ううっ………うあああああ!!」
Uは地面に当たり散らすように拳を打ち付ける。Uの目からは涙が零れており、Uの慟哭が辺り一面に大きく響く。その場にいた誰もが、Uの慟哭に口を挟めずにいたのだった………
そしてこの照明弾はかなり遠くまで届いており、そこまで効果が無かったとはいえ、対決していた六道理央とフレイミーの方にも光が届いた。
「照明弾………タイムオーバーか」
フレイミーは何かを察した様子でそう呟くと、突如として足を止めた。
「悪いが今日はここまでだ。目的は果たされたようだしな」
フレイミーはそう言うと、自身の目の前にアルコールをばらまき、咥えていた火着きの煙草を落とす事でアルコールを引火させる。それにより、理央の目の前で大炎上が起きた。
「また会おう、六道家の当主!」
フレイミーはそう言ってその場を撤退した。
「ぐっ………! 追いかけるのは無理そうか………!」
理央はフレイミーを追いかけたかったが、火の勢いの強さを前に断念した。
「………しゃあねえ、舞雪か玲花にでも連絡取るか」
理央がそう言って携帯を取り出した直後、近くで巨大な氷塊が出現。それはU達が集まっていた場所であり、理央からすれば途中で見えたブラックホールと同じ地点だった。
「な、なんだ!? あれは舞雪の………にしては技の完成度が高過ぎる………まさか、この間の奴の仕業か………!?」
理央は嫌な予感がしたのか、その場から走り、氷塊の方へと向かうのだった………
そして視点は再びU達の元へ戻る。Uが春香を失った事に慟哭する中、ブラック達はUに駆け寄るが何も声をかけられず、U達を追う立場だったはずの舞雪達もどうすればいいか分からない様子を見せていた。そんな状況の中、突如として上空の空間が歪み、ゲートが出現。中からは氷の騎士が出現する。
「………これはいったいどういう事………!?」
氷の騎士は目の前の惨状に動揺した。動揺の際に漏らした声は幸い誰にも聞かれなかったが、すぐに地面から降りると、Uが絶望した様子を見せている事に気付いた。
「えっ!? だ、誰!?」
ブラック達は氷の騎士の事は知らない為に動揺。Uが氷の騎士を目にすると、彼の慟哭は止まり、氷の騎士の登場に対し驚きを見せていた。
「氷の騎士………悪いが一足遅かった。春香が怪人にされて………殺された。幸い、そうした野郎は倒せたが………結局また邪島には逃げられた………」
Uはかすれた声で氷の騎士に状況を説明する。
「なっ………!? ………なんて事だ………」
氷の騎士はまるで自分事のように動揺していた。そして、氷の騎士の目に舞雪達が映ると、途端に怒りを露わにし………!?
「お前達の………お前達の生み出した癌のせいで彼女は………彼女はああ!!」
氷の騎士は感情を爆発させ、自身を中心に特大の氷塊を作り出した。
「うわあああっ!!」
舞雪と玲花は氷塊生成時の勢いで吹き飛ばされる。それから10秒程、目の前に透明性の薄い氷塊が顕現していたが、やがて氷は内部から壊れた。しかし、氷が消えた時には氷の騎士や『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々はそこにはいなかった。
「………逃げた………!?」
舞雪達はU達がいなくなった事に驚いていた。その直後、舞雪の携帯に電話がかかってきた。
「もしもし、俺だ!! そっちの方は大丈夫か!?」
電話をかけてきたのは理央であり、慌てた様子でそう問いかけた。
「………うん、私もお姉ちゃんも無事………ただ、色々と問題が起きちゃったんだ」
舞雪は取り敢えず自分達が無事である事を語る。そして、舞雪の言葉を聞いた理央は………
「今どこだ? 一旦合流しよう。話はそれからだ」
そう言って、舞雪達と合流する事を約束するのだった………
かくして、六道家に誘導される形で始まった『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のミッションは、白三谷春香を殺されてしまうという最悪な結末で幕を閉じてしまった。春香の死は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』にとっても、六道家にとっても最悪の事態であり、暗い陰を落とす事となったのだった………
そして六道家側にとって、白三谷春香による死という事態は最悪だった。彼女は白三谷ユウの妻であり、春香本人は特段悪い人物では無かった為、春香の死こそ世間には出なかったが、大きな問題となっていた。
「………死んだ人達の供養、終わったぞ………とはいえ、これは最悪だ………あの連中を引っ張り出した事が完全に裏目に出た………」
理央も流石に春香の死を引き起こす事態となった事を後悔していた。
「ユウさんが死んで春香さんも死んだ………娘の真子ちゃんが未だ行方不明なのもあって、白三谷家を謝っても謝りきれない不幸に落としちゃったね………」
舞雪も白三谷ユウ達に申し訳が立たない様子を見せていた。そしてそれは玲花も同様だった。
「それに………今回はあの人達にも迷惑をかけてしまったね………私達の作戦があんな形で裏目に出た事、申し訳が立たないよ………」
続けて舞雪は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々にも申し訳なさそうな様子を見せていた。
「それなんだけどさ………例の連中の組織、漸く場所が特定出来たんだ」
そんな中、理央は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地が遂に見つかった事を語った。
「ほ、本当ですか………!?」
玲花は驚いた様子で問いかける。
「ああ、初めて連中に会った時から探してはいたんだが、まず地域特定で時間がかかったのと、組織の場所と思われる場所が尽くダミーだった。六道家の情報網を持ってしても見つからなかったから今回の事を起こすしか無かった………まさかこうなるとは思って無かったけどな………」
理央は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地を見つけるのにかなり苦労していた事を語る。中々見つからなかった為に、今回の脅迫じみた誘いをかけたが、結果として春香が死んだ事は予想出来なかったを前提にしても皮肉なものである。
「………それで、あの人達の本拠地はどこなの?」
舞雪は理央に『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地の場所を問いかける。
「六道県、冥都の中のボロ屋街………その中の1つに隠れていたよ。あそこは監視カメラが置かれていない上に治安も悪いから連中の隠れ蓑には最適だろうな………」
理央は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地の場所を伝える。それを聞いた舞雪は使命感に追われるように立ち上がり、部屋を出ようとする。
「舞雪………? どこへ行くの?」
玲花は驚いた様子で舞雪にどこへ行くのかを問いかける。
「決まってるよ、あの人達への謝罪の準備だよ ………今回は迷惑をかけたし、生命も助けられたから謝罪しに行かないと………!」
舞雪はU達への謝罪を考えていた。それを聞いた理央と玲花も舞雪の言葉に頷き、3人で部屋を後にするのだった………
その一方、氷の騎士の力で戦場を離脱したU達。氷の騎士はゲートを使ってU達を『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地へ送った後、すぐさまその場から姿を消した。U達は本拠地へ戻ってきたものの、春香を失った悲しみに打ちひしがれていた。
「春香………すまない………うああっ………!!」
Uは手にしていたロケットペンダントを目にし、再び泣き出していた。誰もがどう声をかけるべきか迷っていた。そんな中でやっと口を開いたのはブルーであり………
「………皆、今日のミッションは終了………今はゆっくり休んで………」
そう言ってその場を離れた。しかし、ブルーも動揺しているのは確かであり、その場の押し潰されそうな空気に耐えきれないが為の言葉だった。泣いていたUもそれを分かっていた。いや、苦しいのはブルーだけじゃない。誰もが同じであった。実際にブルー以外の面々は泣いてこそいなかったが、春香の死とそれに動揺するUへの同情からまるで言葉を出せていなかった。
「(異世界の僕がこの場にいたのなら………間違い無くキレてただろうな………パラレルの奥さん………あくまで別人であると分かってはいても………前に僕の奥さんの方の春香を失った時と同じような苦しみに心が痛めつけられて………死ぬよりも辛い気持ちだっ………!)」
ここまで冷静さを保っていたUも、この時ばかりはすぐに立ち直れずにおり、苦しんでいた。結局この日は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の誰もが立ち直れないまま地獄のようにその日を過ごしたのだった………
そんな中、邪島達は自身の本拠地へ戻ったが、状況は半壊寄りだった。イヴィルは死に、グラヴィティもブラックによって重症を負わされた。隼人とフレイミーは大したダメージを負っていないが、邪島も右腕を失うなど、事態は深刻だった。
「あの男………! あの男のせいで私の右腕は………!!」
邪島は右腕を切断したUにかなりの恨みを抱いていた。
「………ジジイ、アンタはもう出てくんな。死なれたらこっちの立場が悪くなる」
フレイミーにとっては邪島の死は都合が悪いのか、珍しく心配する様子を見せていた。だが、邪島のストレスは更に深まっていき………
「………フレイミー! 奴は………須佐之男の身体はどこに保存している!?」
邪島は以前フレイミーが持ち去った、高天幹部の1人、須佐之男の身体の行方を問いかける。
「あの大男か? 多分例の機械の中だが………栄養を与えて生かされているだけで、実質植物人間状態だそぞ?」
フレイミーは須佐之男の身体を機械に入れて生かしているらしいが、状況は最早植物人間状態である事を語る。
「構わん! 奴の右腕を私の腕に移植する!」
邪島はなんと須佐之男の右腕を自身に移植するよう言い放った。
「………正気か? まさかお前の身体の代わりの為に奴を連れて来いとかほざいたのか?」
フレイミーは邪島の指示に驚く様子を見せ、思わず聞き返した。
「私に考えがある………須佐之男の腕を移植する事には意味がある………出来ればもう少し後にやりたかったが、そんな事は最早言ってられんわ!」
邪島はUに右腕を吹き飛ばされた事で気が狂っていたのか、予定を前倒ししてまで右腕の移植を考えていた。それを聞いたフレイミーは首を傾げていたが………
「………まあいいだろう。現状俺達は動けないんだ。余命が少ないジジイの我儘くらい聞いてやるか」
邪島の指示を引き受ける様子を見せた。
「………その前に一服させろ。移植はそこからだ」
フレイミーはそう言って煙草を取り出し、口に咥えると火を着け、煙草を吸い始めるのだった………
『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』、六道家、邪島四天王の3勢力がそれぞれダメージを負う事態となったこの戦いは、後にこの1週間後に起こる事件の前哨戦のような形で六道家の記録に残る事となった。そして1週間後に起こる大きな戦い。この戦いの時、再び訪れる邪島との決戦、そして、ここまで隠されていたとある真実が明らかとなる。その真実の答えはその戦いの後に明かされる事となるのだった………
To Be Continued………
「まさか……さんが………白三谷春香が死ぬなんて………邪島はそこまでやる男だと分かってたのに………! ………やっぱりこんな事になったのは六道家があんな癌を生み出したから………!! あの人が絶望するきっかけになったのも………全部全部………!! ………許さない。邪島は絶対倒さなければならないけど、邪島を倒したら次は六道家も滅ぼさなくちゃ………私から……さんと……さんを奪った………諸悪の根源を倒さなきゃ………どうせ私を前にしてもどうにかなると思っているのだろうけど………貴方のそんなふざけた思考は私には通じない。覚悟しなさい、六道理央………!!」
第4章に続く………
次回予告
春香の死に絶望したU達は何とか立ち直ろうとする中、六道家の面々と顔を合わせ、邪島討伐の為に共闘を申し込んできた。これまで対立していた関係の両サイドは果たして手を組めるのだろうか………? そして、U達『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と邪島四天王達の最後の戦いが幕を開ける。戦いに決着が着いたその時、U達はまさかの真実を知る事となるのだった………
次回「邪島戦争・真実」