幻想転移録ーザ・パラレルー   作:Uさんの部屋

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※本作は第3章の続きです。先に第1、2、3章を読むようよろしくお願い致します。


第4章 邪島戦争・真実

六道家によって、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』が六道県彼岸花町におびき寄せられ、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』、六道家、邪島四天王との対決となった三つ巴の戦い。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』側はこの戦いにおいて、白三谷春香が殺害されてしまう事態になってしまい、絶望の渦に呑まれてしまった。そして、白三谷春香の死亡は六道家にとっても問題となり、邪島四天王側も大ダメージを受ける事態となった。三者がダメージを受ける展開となった中、後に『邪島戦争』と命名された最大の事件が先の対決から1週間後に発生し、これによって勝負は決する事となった。これは邪島戦争とその後の真実が明らかになるまでの1週間の物語である………

 

 

 

白三谷春香の死から翌日。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は少しずつ立ち直り始めていた。Uも少しは落ち着きを取り戻し、ミッションの際に着ていた服を変え、いつもの緑のワイシャツにオレンジのネクタイ、黒のズボンにジャケットをマントがわりに羽織る服装に戻していた。そして今は、春香が死と同時に残していたロケットペンダントに付着する血を落としていた。

 

「そのロケットペンダント………もしかして春香の………?」

 

ロケットペンダントの血を洗い流す作業をしている中、ブルーが声をかけてきた。

 

「………ああ。春香の血と同時に出て来た唯一の形見だ。多分僕達には話していなかったんだろう代物だ。しかし、ロケットペンダントは大事な人の写真とかを入れているのが殆どだ………僕は既に中身を見ているが………虚しくなったよ」

 

Uはそう言うと、ペンダントの中身を空けてブルーを渡す。ペンダントの写真を見たブルーは言葉に詰まる様子を見せていた。

 

「………私も心が痛くなったわ………」

 

ブルーはUに同情するようにそう言った。写真の中には白三谷ユウと白三谷春香の写真が入っていた。Uはすぐにペンダントを閉じると………

 

「………あの世に行けるなら今すぐ彼女の旦那に謝りたいさ………僕のせいで春香を………パラレルの僕の奥さんを守れなかったんだから………」

 

Uは白三谷春香を守れなかった事に未だ苦しんでいた。昨晩泣き続けたからか涙は止まっていたが、Uの様子がおかしい事はブルーも分かっているようであり………

 

「………それは貴方だけの責任じゃない………私達もこうなる可能性を考慮すべきだったんじゃないかって………そう思うのよ………」

 

ブルーも思わず春香の死に責任を感じていた事を口にする。

 

「そんな事言うなよ………皆にまで重い空気を背負わせたくない………」

 

Uはブルーの言葉を聞き、胸が痛くなるような気持ちを感じていた。

 

「貴方が私達の事を心配するなんて………思っていたよりも優しいのね………」

 

ブルーはUの強い優しさを感じ取っていた。

 

「………僕も『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の一員だし………こう見えて愛着はあるからな………思わず心配したくなる………」

 

この時になると、Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』に愛着を抱き始めていた。この言葉は、ブラックの誘いと利害の一致で入った組織が、この時にはUの中で安らぎのような存在になっていた事が窺い知れるものだった。

 

「………貴方も染まったものね………」

 

ブルーはそう言って、Uが『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の空気に染まってきた事を口にする。Uとブルーが春香の死を余計に悔しく、悲しく思い始める中、ピンクが大慌てで2人の元へ走ってきた。

 

「ブルー姉さん! Uくん! ちょっと! 玄関の方に六道家の人間が侵入してきんだけと………!?」

 

ピンクが伝えたのは、六道家の人間が組織の玄関の方へ侵入した事であった。

 

「な、なんだと!?」

 

突然の事態に大困惑するUとブルー。2人はそれぞれ銃を取り出し、残弾を確認すると、ピンクに案内される形で玄関へと向かうのだった………

 

 

 

U達が銃を手に組織の入口の方へ走る。出てすぐの所には武器を構えるグレーとビリジアンが立っており、そこに対面するように立っていたのは六道理央、六道舞雪、六道玲花の3人だった。

 

「六道家の連中………!」

 

U達は目の前に六道家の人間が現れた事に驚いていた。

 

「………何の用? ここでは幾ら六道家の人間とは言え部外者なんだけど?」

 

ブルーはコルトパイソンを手にそう言い放つ。それに対し、舞雪が答える。

 

「待ってください。私達は戦いに来たんじゃないんです。この間の戦いについてお話をさせて頂きたくこちらに伺ったのです………!」

 

舞雪は話し合いの為にこの場を訪れたという。互いに動けない状況の中、ブルーが口を開いた。

 

「………総帥に確認してくるわ」

 

ブルーはそう言うと、組織の中に入っていき、ブラックにこの状況を確認しに行った。互いに膠着状態の中、理央は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々の中にUがいる事に気づいた。

 

「………アンタ、前に会ったUそっくりの奴か。やっぱり髪の色を変えてただけだったんだな」

 

理央はそう言って、以前起きた『鹿六町占拠事件』にて遭遇したのは、髪色を黒にしただけのUであった事を語る。

 

「………あまり調子づいて事を言うなよ若いの。こっちは仲間が1人死んでるんだ。お前の戯言は興味無い」

 

Uはそう言ってSOCOMピストル片手に理央への不信感を露わにする。

 

「こっちは悪気は無いんだけどな………」

 

理央は落ち込むようにそう言うが、Uは表情をまるで変えない。そんな中、ブラックへ確認へ行っていたブルーか戻ってきた。

 

「………総帥がお会いになられるわ。ただし、貴方達が持っている武器や危険物は全て預からせてもらう………いいわね?」

 

ブルーはブラックが理央達に会う事を伝えると共に、武器等を預かる事を条件に出した。六道家側はあくまで話し合いに来たという名目の為、ブルーの条件に従い、全ての武器を渡した。そして、ブルーを先頭に、全員で組織の中へと入るのだった………

 

 

 

そしてU達は、組織内の大広間にて話し合いをする事となった。ブルーは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々に、それぞれの好みの飲み物を出し、自身も紅茶の入ったカップを手に席に着いた。

 

「………俺達には飲み物は無いってか」

 

理央は冗談めいた言葉を吐く。すると、Uは肘を机にぶつけて音を立てた。

 

「客扱いされてるなんて思ってるなら帰れ。話にならん」

 

そう言って、理央への不快感を強める。

 

「U、静かに」

 

ブルーはUを諭す言葉をかける。

 

「お兄ちゃんも冗談言わないで。今日は本当に話し合いに来たんだから」

 

理央の方も舞雪に注意され、理央は口を閉じた。双方が口を閉じた所でブラックが口を開いた。

 

「それで? ………今日は何を話に来たの?」

 

ブラックは用件を問いかける。声を開いたのは舞雪の方だった。

 

「………まず先にお話したいのは先日の事です。あの時は嘘の情報で貴方達を誘き寄せましたが………そのせいで白三谷春香さんを殺す事態になったのは本当に申し訳ありませんでした」

 

舞雪は謝罪の言葉を言い、頭を下げた。この謝罪に対し口を開いたのはブルーだった。

 

「………春香が死んだ直接の原因は貴方達じゃない事は私達の誰もが分かってる。気にするなとは言わないけど、貴方達も責任を感じている事は分かったわ」

 

ブルーは許す許さないは口にしなかったが、春香が死んだ事について、六道家側は責任を感じている事は理解する様子を見せた。

 

「………次のお話をさせてください。次はあの戦いで、別勢力と思われるサイドのリーダー格、邪島管心とその仲間達についての資料をお渡し致します。邪島の仲間と思われる者達は皆外国などでのテロリストとしては有名な者達なので色々情報があるんです」

 

舞雪はそう言って、邪島四天王に関する情報資料が入ったファイルを渡す。ブルーがパラパラと資料に目を通し、取り敢えず偽物の情報でない事だけは悟ったようだった。

 

「………総帥、本物の情報と見て間違い無さそうです。私の元で保管する形でよろしいでしょうか?」

 

ブルーはブラックに対し、資料の情報が本物である事と、自身が管理する事に対し同意を求めた。

 

「いいよ」

 

ブラックはそれに頷いた。ブルーは資料を近くの棚に入れ、彼女が管理する事が決まった。

 

「………そして、正直言えばこれが本命の話です。先の事件でそちらの方………Uさんとそちらの総帥のブラックさんのお陰で邪島側は痛手を負ったと見て間違いは無いでしょうが………まだ安心は出来ません。そこで、私達六道家と手を組んで、邪島達を倒しませんか?」

 

舞雪が次に口を開いた時に語ったのは、今回の話し合いで六道家側の本命である、協力関係の構築を話し始めた。

 

「手を組む………総帥、今のお話をどう思いますか?」

 

ブルーは六道家側から手を組む事を申し出された事について首を傾げており、ブラックにこの事を問いかける。

 

「私1人の判断では決められないよ。理由がどうあれ2回対決してるのは間違いないし」

 

ブラックは自身の判断では決められない事を語る。

 

「では、私達の意見込みで判断するという事でしょうか?」

 

ブルーはブラックに対し、彼女はブルー達の意見込みで決めるかどうかを問いかける。

 

「それがいいと思うよ。利害の一致とはいえある程度の理解は必要だと思うもん」

 

ブラックはブルーの問いかけに頷き、ブルー達『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバー全員の意見を含めた決定を下す事を語った。

 

「まあ、組む分にはいいんじゃないかな? いないよりはマシだし」

 

先に口を開いたのはグレーだった。グレーは肯定こそしたが、別に信用はしていなかった。

 

「私もグレーと同意見。信用は出来ないけど春香殿の敵討ちはしたい」

 

ビリジアンも肯定派だった。しかし、これも春香の敵討ちを目的とするものであり、六道家への信用は微塵も無かった。

 

「私は………どっちでもいいかな。皆の判断に任せるよ」

 

ピンクに至っては回答を放棄する始末だった。信用の出来ない肯定が続く中、Uが口を開いた。

 

「………僕は反対だ」

 

Uの意見は反対だった。これには舞雪が驚く様子を見せる。

 

「………先に答えた3人にも言えるものだが、アンタらに対する信用がない。信用が無いなら組んでも意味が見い出せん」

 

Uはグレー達が語った信用出来ない部分が正に拒否を行う理由である事を語る。

 

「そう………なら私も反対させてもらうわ」

 

ブルーはUの意見を聞き、自身も反対の立場に立つ事を語る。

 

「ど、どうして………!?」

 

舞雪は首を傾げる様子を見せる。

 

「………Uはここに来て日が浅いけど、戦闘面では六道家相手でも引けを取らないと思っているし、私にとっては彼の方が貴方達より信用出来る。彼1人で強さも信用も事足りてるし、それに………せめて協力関係を結ぶならUが頷かない限りは私も反対よ」

 

ブルーはUの強さと彼への信頼を理由に挙げると共に、せめて結ぶならUが頷かない限りは彼女も頷かない事を語る。

 

「そっか………じゃあ私からはうんとは言えないかな」

 

ブラックはUとブルーの2人が反対の立場に立っている事から、頷く事はなかった。

 

「そんな………」

 

舞雪は落ち込む様子を見せる。そんな中でUは席を立った。

 

「………もういいかな。これ以上話す意味もないだろうし………」

 

Uはそう言って勝手に話から抜けてしまい、外の方へと出ていってしまった。

 

「あ、あの………!!」

 

舞雪がUに言葉をかけようとしたものの、Uに声は届かなかった。ブルーもこれ以上話し合う意味が見い出せなくなったのか………

 

「………もういいかしら? 私達も暇じゃないから今日は帰ってもらうわ」

 

そう言って会話を打ち切ってしまったのだった………

 

 

 

その後、理央達は武器を返却された後に追い返されてしまった。

 

「………追い出されちゃったね………」

 

舞雪はこの上なく落ち込む様子を見せる。

 

「まあ、私達を恨んでいるとかそんな訳では無いからいいけど、協力する気もサラサラないというのがあの人達の答えなんでしょうね」

 

玲花は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』サイドの心情から理由を考えた。

 

「あの中で特段俺達を煙たがっているのはユウそっくり………を通り越したあの男だろうな」

 

理央はUが先程の会話で1番に六道家サイドとの協力を拒んでいる事を考えていた。そんな中、理央達は先程会話を勝手に切り捨てて出て行ったUが買い物袋片手に戻ってくるのを目にした。

 

「………やっぱりあの後話し合いも出来ずに追い出されたか。まあ、そうだろうな」

 

Uはそう言って理央達の横を通り過ぎる。

 

「ちょっと! その言い方はどうなの!?」

 

玲花は不満が漏れ出たのか、Uに対してそう言い放つ。

 

「勘違いするなよレディ。僕達は慈善事業で戦っている訳じゃない。六道家がどれだけ大きいかは知らんが、僕達には戦う理由を選ぶ権利がある」

 

Uはそう言って、不満に対し静かにそう答えた。

 

「………ならお前はなんで彼女達の為に戦う?」

 

すると理央がUに対し、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の元で戦う理由を問いかける。

 

「………僕は彼女達の世界征服の夢を応援したいんだ。リーダーの夢に向かった真っ直ぐな志、それを支持し、硬い絆で結ばれてそれを実現しようとする構成員達………僕は、彼女達のそんな所に惹かれたんだ。はっきり言うよ、アンタらより断然信用も信頼も出来る」

 

Uはそう言って、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』への信用と信頼を語る。

 

「………それに、ただ戦力が欲しいだけならそっちの若いので事足りるだろう。邪島についてはこっちで勝手にやる。文句があるならまた相手になってやってもいいけどな」

 

Uはそう言うと、理央達の元を去ろうとする。

 

「………白三谷ユウはお前とは違ったぞ。性格はいい訳じゃ無かったけど、お前程敵意のある奴じゃなかった!!」

 

すると理央はUに対し、白三谷ユウとの違いを吐き出した。どうやらあまりにも協力する気の無いUに痺れを切らし始めたのだろう。

 

「………若いの、僕と白三谷ユウを一緒にするな。白宮ユウがどうだったかは春香亡き今、僕は知らねえよ。奴とは色々似ているだけの別人だ。少し人の心が読めてないんじゃないか?」

 

Uは白三谷ユウを話に持ち出された事に少しばかり苛立ちを見せた。

 

「なんだと………!?」

 

理央もUの態度に苛立ちを見せ始める。

 

「俺達六道家は人情を大事にしているんだ! お前のように自分の考えるままに戦う戦闘狂とは違う!」

 

理央はUの悪態を突くようにそう呟く。それを聞いたUは足を止めた。

 

「人情を体のいい言い訳にするな。白三谷ユウはお前の人情をどう解釈したかは知らんが………僕には甘い戯言にしか聞こえん。若いの、お前は強いんだろうが………まだ若すぎる」

 

Uはそう言って理央達の前から姿を消してしまった。

 

「………怒られちゃったじゃない。どうするのお兄ちゃん、これでますますあの人達との協力なんか絶望的だよ………」

 

舞雪はUと理央の関係悪化を嘆いていた。

 

「………あんなユウとはかけ離れた奴の力なんていらないさ。俺達だけでなんとかする。最悪他の人の手を借りるさ」

 

理央はこの時に『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』との協力の線を捨て、自分達六道家のみで戦う事を決めた。

 

「帰るぞ。あんな連中の相手をしてるだけ無駄な話だ」

 

理央は機嫌を悪くして帰る事を口にする。玲花側は特に文句を言わなかったが、舞雪はこの悪い関係に思うところがあった。

 

「(お兄ちゃん達は当てにならないし………もう私が頑張るしか………!)」

 

舞雪は協力関係の提携を諦めきれないのか、自分1人で奔走する事を心に誓うのだった………

 

 

 

それから舞雪は連日奔走する事となった。翌日にはまたしても『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の本拠地に単身で訪れた。この時にはUが玄関へ顔を出したのだが………

 

「………帰ってくれ嬢ちゃん。アンタらと話す事は無い」

 

門前払いの如く追い返された。そしてこの日は全く相手にされないまま帰る事となってしまった。その翌日には再び本拠地を訪れ、この時にはブルーが対応したのだが、入口でしばらく話した後に追い返された。

 

「(………今日もダメだった………)」

 

舞雪はこの日もロクに相手をして貰えずに落ち込む様子を見せた。それから次の日もまるで相手をされないまま、春香の死から5日が経過した日、舞雪は入口の前に座り込み、何も状況が解決しない事に落ち込んでいた。そんな中、Uが組織の入口から顔を出した。

 

「………懲りないな、嬢ちゃんも」

 

Uは呆れと感心が混じった様子でそう呟いた。

 

「す、すみません………でも………」

 

舞雪はどうしても諦めきれない様子だった。それを目にしたUは………

 

「………ちょっと付き合えよ」

 

そう言って近くの廃墟の方へと歩き出す。舞雪はUの言葉に驚いていたが、彼の後を追いかけるのだった………

 

 

 

少し離れた廃墟へやってきたU達。そこには人の気配はまるで無く、とても静かだった。

 

「………嬢ちゃんはさ、なんでそこまで僕達にこだわる? 前にも言ったが戦力が欲しいだけならあの若いので事足りてるだろうに」

 

Uはそう言って、何故未だに『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』との関係にこだわるのかを問いかける。

 

「私はただ戦力が欲しいから共闘を申し出た訳じゃないんです………貴方達の想いを考えた上で共闘をお願いさせていただいたのです。それと………私自身、貴方に助けられた事が感謝してもしきれないから………だから一緒に戦って欲しいんです!」

 

舞雪はそう言って自身の想いを語り、再び頭を下げて共闘を申し出た。Uは少し考え込んだが………

 

「………嬢ちゃん、僕達に頼むのはやめろ。人はそう簡単に信用するもんじゃない」

 

Uは共闘を受け入れず、同時に自分達を信用して欲しくない事を語る。

 

「それに………君は優しすぎる。人を殺す経験をする前に戦いなんてやめろ。君はそういうのに向いてない」

 

Uは同時に舞雪に対し戦いそのものをやめろと言い出した。それについては舞雪が優し過ぎる事が理由に挙がった。

 

「………貴方だって優しいじゃないですか」

 

しかし、後半の言葉に対して舞雪はUにブーメランが刺さっているかのようにそう言い放った。

 

「僕のどこが優しいんだよ?」

 

Uは舞雪の言葉に対し首を傾げた。

 

「優しいですよ。ならなんであの時私を助けてくれたんですか?」

 

舞雪はUに対しそう問いかけた。

 

「………利用価値があると思ったからさ。別に僕は無差別に人を救うヒーローじゃない」

 

Uは特に感情的な理由は無いと否定する。

 

「………そうですか」

 

舞雪はそのような回答が帰ってくると読んでいたかのようにそう呟く。

 

「だとしても助けてくださったのは事実です。どうもありがとうございました」

 

だが、舞雪はそれでも助けられた事実からUに感謝の言葉をかける。

 

「………今ので僕に呆れるかもしれないと考えていたのにまだ感謝を言うか。かなりのお人好しだな」

 

Uはそう言うと、無線機を手にし………

 

「………ブルーか? 僕だ。例の六道家との件………やっぱ意見を変えるわ。別に組むだけなら好きにすればいいと思ってる。リーダーにもそう伝えてくれ」

 

ブルーへ連絡すると、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と六道家が手を組む事への反対を撤回。組んでも構わないという思考にシフトする事を伝えて無線機を切った。Uの無線を聞いていた舞雪はUの心境の変化に驚いていた。

 

「えっ………組んでくださるのですか………!?」

 

これには思わず聞き返してしまう程であったが………

 

「………君に免じてだ。確か………舞雪ちゃんだっけ? ………つまりそういう事」

 

Uは舞雪の人の良さに僅かながら動かされ、彼女の立場を考えて協力する事を決めたようだった。これまでロクに六道家の面々の名前すら覚える気が無かったUが、この時初めて六道家の一族の人間を認めたのだ。

 

「Uさん………ありがとうございます!」

 

舞雪は嬉しそうな様子で感謝を述べる。

 

「ただし………あの若いのは苦手だ。仲良しごっこをするつもりは無いし、最悪殺す事だって厭わない。それを忘れるなよ」

 

しかし、今でもUは理央の事を苦手としている事を語った。舞雪も薄々それは感じていたので………

 

「分かってます。私が窓口というか中継役になりますよ」

 

両陣営の仲を自身が取り繕う事を約束するのだった。ただ、何はともあれUと舞雪の仲が構築された事によって状況は変化した。ブルーもブラックもあくまでUが反対しているから反対していたのであって、彼が認めるならば状況は変わってくる為、手を組む路線が現実のものとなりかけていた………だが、その直後にUの体内にある魔力がテレパシーによって反応した。

 

「………失礼。ちょっと」

 

Uは無線機を手にし、恰も『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーから話を聞いている素振りを見せる。テレパシーの相手は言うまでもなくディメンだった。

 

「U………どういう事かな?」

 

開口一番、ディメンは六道家と協力する事を選択したUに困惑と怒りが混じった声でUに疑問をかけてきた。

 

「………聞いていたのか、六道家との事」

 

Uはテレパシーで六道家との事がディメンに知られた事を聞き返す。因みにテレパシーで言葉を返している為、舞雪にはただUが一方的に話を聞いているようにしか見えなかった。

 

「六道家は信用するなって言ったよね………どうして手を組む道を選んだの?」

 

ディメンが聞いてきたのはやはり六道家と手を組む事に対するものであった。Uの側からしても怒りがひしひしと感じられる中、Uは答えた。

 

「………別にあの若いのを信用しての話じゃないさ。僕は六道家の人間の1人………六道舞雪が悪い人物じゃないと思えたからそう言ってるんだ」

 

Uが六道家と手を組む理由が六道舞雪にある事を。

 

「………六道舞雪ね。確かに彼女自身は六道家の中でも比較的落ち着いた存在である事は確かかもしれない。でも六道家の人間としてこれまでの事件に関与している事もまた事実なんだよ。彼女が確実に殺しをしない保証はどこにもない………貴方を裏切る可能性もね」

 

しかし、ディメンは六道舞雪の人物像を快く解釈していなかった。Uはそれを聞き、ディメンが持っている六道家嫌いの思考は、自身では想像のつかないものである事を察知した。

 

「そうか………しかし、前もそうだが今回は恐ろしく情報の仕入れが速いな。まるで監視されている気分だよ」

 

Uはディメンに情報が伝わるまでの情報があまりにも速い事から、皮肉を交えてそう言った。

 

「………口の利き方には気をつけた方がいいよ。貴方が元の世界に戻れるかどうかは私が決定権を握っているんだから」

 

ディメンはUに対し脅しをかけてきた。それを聞いたUは………

 

「(………図星を突かれて脅しをかけてきたか。六道家絡みの話になると途端に様子が悪くなる………そう考えると、彼女にとって僕と六道家が手を取り合うのはあまりにも都合が悪いって事だ………)」

 

ディメンは図星を突かれた可能性が高い事、Uと六道家が手を組む事が彼女にとって都合の悪い事態である事が明白である事を悟っていた。その為………

 

「………どっちにしろ六道家と手を組むのは決定事項になってしまう可能性が高い。僕が意見を変えた以上、僕を理由に否定していたリーダーとブルーが否定する意味がないだろうしな」

 

Uはそう言って、『漆黒の支配者達』と六道家が手を組むのは恐らく決定事項である事を突きつける。それを聞いたディメンは一度息を吸う様子を見せると………

 

「………なら潰しちゃえばいい。六道舞雪が貴方達の誰かの武器で怪我をするとかすればね」

 

ディメンは衝撃的な事を吐き捨てた。それを聞いたUはゾッとした様子を見せると共に………

 

「………悪い、舞雪ちゃん!」

 

Uは突如として舞雪を突き飛ばす。舞雪はなんの事がさっぱりといった様子を見せていたが、突如Uの方に、グレーが愛用するものと同じ形状の槍が飛んで来た為、Uは懐からビームサーベル型武器ZEROセイバーを手にし、槍を弾いた。

 

「や、槍………!?」

 

舞雪は突如槍が飛んできた事に動揺していた。Uはディメンが非道な行為に走った事に怒りを顕にし………

 

「何を考えているディメン! この子は僕達に物理的な危害を与えた訳じゃない! 関係悪化以前の問題になるぞ!!」

 

Uは怒りの声を上げた。

 

「そ、そんな言い方はないでしょう………!? 私は貴方の為にやってるのに!! 貴方が活動しやすくなるようにやってるんだよ!? なんでそれを邪魔されないといけないの!?」

 

それに対しディメンも怒った。どうやらUの為に事を進めていたのに、Uにそれを妨害された事が許せないようである。

 

「………今は邪島討伐が最優先のはずだ。六道家の力を借りてさっさと終わらせる。話はその後でもいいだろう!?」

 

Uはこの時点で六道家との問題は二の次でいい事を語り、邪島討伐を最優先とし、その解決の為に六道家と手を組むべきである事をディメンに語る。

 

「………へぇ、反抗するんだ。折角ここまで手を貸してあげたのに」

 

ディメンはどこか諦めたようにそう呟く。

 

「………なら私にも考えがあるよ。そもそも私が邪島を倒す為に貴方を呼んだのは、私の事を悟らせない為。私個人でもこんな世界の破壊は容易い事だよ。あくまで邪魔になりうる存在がいるから貴方に手を借りただけだし………ここまで言えば私が何をしようとするか分かるよね?」

 

ディメンはここに来て、Uを呼び寄せた理由を語る。そして、彼女にとって今U達がいる世界の破壊など容易いものである事を突きつけると、Uは彼女が何をしようとしているのかすぐに理解する様子を見せた。

 

「………お前が直接干渉するとでも言うのか?」

 

Uは、これまでずっとUに任せていた状況を一変させ、ディメンが直接干渉を行う可能性を予感した。

 

「止むを得ないって考えたら全然やるよ。別に私にとっては貴方も六道理央も厄介な人物程度の認識でしかないしね。まあこれからの行動については覚悟しておく事だね」

 

ディメンはそう言って、最悪の場合この世界への直接干渉を行う意思をはっきりとさせた。

 

「………そうか」

 

Uはこの時にディメンに対する疑念を強めると、そのままテレパシーを終えた。そして、先程弾いた槍を手にするU。すると、槍は酷く冷たい事に気付いた。

 

「(………槍が極端に冷たい。まるで氷を直に掴んでいるかのような冷たさだ………それに、ディメンに伝わるまでの情報の圧倒的速さ………皮肉のつもりで言った監視されている線もあながち冗談じゃないかもしれないな………しかし、槍を投げたのは凍えるような冷たさを持つ者………もしくは冷たいのに耐性がある者だと思われるな………というか、そんな心当たりの奴が1人いるような………)」

 

Uは槍を投げた犯人を予測する。そんな中で1人、槍の状況的に有り得る人物がいる事を考える。

 

「(………氷の騎士か? 奴なら確かに有り得なくは無いかも………しかも、アイツはディメンの使い魔的存在………全然候補になりうる存在だ………いや、待てよ? ………氷の騎士がいる時にディメンにテレパシーを飛ばした時にディメンがテレパシーを返してきた事があったか? それに、前に春香が死んだ時にアイツはまるで自分事のように事を言っていた。使い魔にしては感情があるようにも思えるな………そして、春香の夫である白三谷ユウについてはディメンが過剰に反応した事もあったっけ………? なんだろう、この違和感………考えれば考える程、ディメンがただの次元能力者、氷の騎士がただの使い魔には思えなくなってきた………)」

 

Uは不安を抱え、懐から形見のロケットペンダントを取り出す。

 

「………分からなくなってきたな」

 

Uはそう言って、ディメンと氷の騎士に対する疑念を強めていくのだった………

 

 

 

その後、組織に戻ったUは舞雪を引き連れてブラックの前で話をした。

 

「………そういう訳で、六道家と手を組む線で行くのも悪い案では無いかなと思ったわけさ」

 

Uは六道家と手を組む助言を行う。Uが一転して六道家と手を組む提案に賛成し始めたのは、この時点でディメンに対する疑念が強まっていた部分があったのだろう。

 

「成程、Uがそこまで意見を変えるなんて………ブルー、どう思うかな?」

 

ブラックはUの意見の変わりように対し、思わずブルーへ問いかける。

 

「そうですね………まあいいと思います。どうせ邪島を倒さないと終わりとはならない以上、今は手を組みましょう」

 

ブルーも六道家との因縁は邪島撃破まで終わらない事を考慮すると、手を組む事に賛成した。

 

「………なら手を組むという方針でいいよ。そっちが納得すればの話だけど」

 

ブルーが賛成した事で、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』サイドからの反対は消えた為、ブラックも賛成を選択した。

 

「あ、ありがとうございます! 兄の方には私から説得しますので………!!」

 

舞雪は当初の目的が果たせた事に感謝し、ブラック達に深々と頭を下げ、理央の説得をしてくれる事を約束する。

 

「(………ディメンの事が怪しくなってきたが、それはそれだ。今は邪島の撃破を優先する………春香の為にもな………)」

 

Uはディメンへの疑いを強めていたが、今は邪島撃破を最優先として活動する事を決める様子を見せたのだった………

 

 

 

翌日、舞雪の方から電話がかかり、電話に出たのはブルーだった。U達は、2人が昨日の六道家と手を組む話の続きをしているものだと考えていたが、ブルーは驚きの声を漏らしており、どうやらそのような話では無い事をU達は察した。

 

「………分かったわ。すぐに行きます」

 

ブルーは受話器を置いて電話を切る。

 

「どうしたの、ブルー?」

 

ブルーの慌てように首を傾げたブラックが彼女に声をかける。

 

「………六野町にて、邪島とその協力者発見の連絡が来ました」

 

ブルーが口にしたのは、六道県の町の1つ、六野町にて邪島達が目撃されたというものだった。

 

「………そう。なら、即出撃だね………!」

 

それを聞いたブラックは即刻出撃の命令を下す。それを聞いたU達は準備を初め、1分も経たずに外に向かう。そして、外に出た後はU、ブルー、グレーの3人がバイクの運転手となり、Uの後ろにビリジアン、グレーの後ろにピンク、ブルーの後ろにブラックが乗る事となった。

 

「『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』、出撃!」

 

ブラックの掛け声と共に、U達は出撃を行うのだった………

 

 

 

それから数十分後、U達は六野町に到着。六野町では邪島達の目撃者と思われる黒子達の死体が多く転がっていた。

 

「六道家の黒子達………どうやら例の連中は近そうですね」

 

ブルーはそう言って、邪島達が近くにいる事を予感する。そしてその予感は正しく、目の前には邪島四天王の1人、グラヴィティ・リバーサルが立っており、まだ生きていた黒子達を超重力で押し込め、そこからナイフで頭を突き殺していた。

 

「あれは………この間の重力を操る男………!」

 

ブラックは目の前の男、グラヴィテイの事を指差す。

 

「ああ、確かリーダーの能力を前に何も出来なかった奴だっけか?」

 

Uは以前の戦いについて聞かされている様子を見せていたが、グラヴィティについては小馬鹿にするような解釈をしていた。

 

「な、なあ!? 私の事をバカにするとは………万死に値する行為だ………!!」

 

グラヴィティはUの言葉に怒る様子を見せる。

 

「万死に値する………ねえ」

 

Uはグラヴィティの言葉を聞くと、バイクを下りてグラヴィティの前に立った。

 

「………やってみろよ。僕も気になっていたんだ。重力使いの能力者もそうはいないからな」

 

Uはグラヴィティの能力を見定める為に、敢えて棒立ちでグラヴィティに能力の発動をするよう煽りをいれる。

 

「………い、いいだろう………我が能力の前に潰れるがいい!!」

 

グラヴィティは、Uを起点に半径300m程の円形状にとてつもない重力を発生させる。

 

「U殿!!」

 

ピンク、グレー、ビリジアンの3人はUがエネルギーを全く展開させないまま超重力の対象となった事に焦る様子を見せていた。それと同時に六道家の車が到着。Uがグラヴィティの能力を受けているのを目にし、舞雪と玲花が慌てて車を出る中、理央は呑気に車から出てきた。

 

「ふはは! 私の能力を前にしてもまだ大口が叩けるか………!?」

 

グラヴィティはUを相手に勝利を確信していた。しかし、Uは涼しい表情のまま超重力の中を歩いていた。

 

「な、なにいっ!? (バカな!? 私の能力を中和もしないで軽々と歩くだと!?)」

 

グラヴィティはUに超重力による押さえ付けが効いていない事に驚きを隠せなかった。

 

「………私の負担が大きくなるので出来ればやりたくなかったが………最大出力の100倍重力で潰してやる!」

 

グラヴィティは能力による重力の強さを最大限にして解放。その重力は100倍であり、常人であればまず耐えられない重力となった。しかし、そんな中でもUはまるで苦しそうな様子を見せず、その場から走り出し、グラヴィティの胸に向けて、光のエネルギーを纏ったパンチを放つ。

 

「ぐおああああっ!?」

 

Uの放ったパンチはグラヴィティの身体を貫通した。

 

「………100倍重力ねえ………100倍程度で僕が殺せると思ったか?」

 

Uはグラヴィティに対してそう言い放つ。

 

「な、なんだと………!? 私の力が………100倍を持ってしてもダメージを与えられない………? あ、有り得ない………」

 

グラヴィティはUにとって100倍重力など大した脅威では無い事を知らされ、絶望の表情を浮かべた。心臓ごと胸を貫かれたグラヴィティはそのまま絶命。Uはグラヴィティの死体を近くの木に向かって投げ捨て、グラヴィティの死体は近くの木に直撃した。

 

「い、一撃で倒した………!?」

 

舞雪と玲花は、Uの圧倒的過ぎる実力に驚かされていた。理央はそこまで驚いていなかったものの、Uの圧倒的な実力を前には流石に目を向けさせられたようだった。

 

「凄い! 私達なんてブラックの能力無しに戦えなかったし………!」

 

グレーはUが何の能力も使わずに超重力を攻略した事に驚いていた。そして、玲花もUが能力無しで超重力を攻略した事には訳が分からない様子を見せており………

 

「超重力に耐えうるなんて、単なる経験値の差じゃ説明がつかない………何故彼は超重力を攻略出来たのでしょうか………?」

 

首を傾げながらUの異質な強さについて言及するのだった。兎にも角にも『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と六道家が合流した為………

 

「来てくださってありがとうございます。恐らく、後の2人と邪島が近くにいるはずです。手分けして捜索しましょう!」

 

舞雪は駆け付けてくれた事に対する感謝の言葉と共に、手分けして近辺の調査を行う事を語る。

 

「………そうね。なら私達は東を捜索するわ」

 

ブルーは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々で東方向への捜索を行う事を口にする。

 

「なら、私達は西を捜索します!」

 

舞雪は六道家の面々で西方向の捜索を行う事を提案。これにより、互いに東西に別れた捜索を行う事となった。

 

「………待った。まだ北の方角が残ってる。僕はそっちに行かせてくれ」

 

だが、Uがそこに待ったをかける。それは北方向の捜索についてであり、Uが行く事を提案する。

 

「なら、私もU殿と一緒に行くよ………!」

 

すると、ビリジアンもUに着いて行く様子を見せる。

 

「………分かった、頼むよ」

 

Uはビリジアンの提案を受け入れ、2人で北方向に向かう事となった。これにより、3方向に分かれるグループが決まり、Uとビリジアンは北、残りの『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々が東、六道家の面々が西に行く事となった。

 

「それじゃあ皆さん、ご武運を………!!」

 

舞雪のこの言葉を契機に、3組はそれぞれ捜索を行う面々に分かれたのだった………

 

 

 

最初に北の方角。U達は5分程北側に向けてバイクを走らせていたが、途中で能力者の気配を拾い、バイクを止めた。

 

「………成程な。こっちの方角にはお前がいたか」

 

Uは目の前に現れた人物に声をかける。

 

「無錆隼人………!」

 

その相手はビリジアンにとって因縁の相手である無錆隼人だった。

 

「よお、和………それにあの時の剣士………お前達と会えて嬉しいぜ。前回はグラヴィティのバカのせいで楽しい勝負が中断されてしまったからな」

 

隼人は喜んでいた。以前決着がつかなかった事を思い出し、喜ぶ様子を見せていた。

 

「グラヴィティ………か。さっき殺したけどな」

 

Uは直後にグラヴィティを殺した事を口にする。それを聞いた隼人は驚いていた。

 

「………結局死んだのか、アイツ………」

 

隼人はグラヴィティを助けた意味が無かったかのように感じると、思わずそう呟いた。

 

「な、仲間をそんな風に言うなんて………」

 

ビリジアンは、隼人の口ぶりに引いていた。

 

「別に仲間意識はねぇよ。今生き残ってるのだと………俺とフレイミーか。フレイミーなんざもっと仲間意識ねぇぞ。俺も別に邪島様に仕えこそしているが、あの人は俺にとって戦いのきっかけとなっているに過ぎない。俺達は仲良しごっこなんて誰1人好きじゃねえのよ」

 

隼人曰く、邪島四天王間の仲間意識は皆無に等しいらしい。

 

「そうなんだ………まあ私にはもう関係ない事だけどね………」

 

ビリジアンは隼人の話を聞き、頷きこそしたが別に自身の人生を左右するものでも無い事を付け加えると、腰に帯刀する刀を鞘から抜いた。

 

「………ビリジアンは下がってろ。僕がやる」

 

Uがビームサーベル型武器のZEROセイバーを装備すると、ビリジアンを戦わせまいという様子を見せる。

 

「いや………私も戦いたい。彼との決着をつける為にも………!」

 

しかし、ビリジアンにも譲れない思いがあった。それを聞いたUは少し考える様子を見せると………

 

「………僕が奴の攻撃を抑える。君は好きなように戦え!」

 

Uは隼人の攻撃を抑える役を買って出る事を言い、遠回しに共闘を受け入れる様子を見せた。

 

「………ありがとう」

 

ビリジアンは一言、感謝の言葉をかける。こうして2vs1の対決となるが、隼人には特段問題は無かった。

 

「(和が俺の能力に追い付ける訳が無いのは前の戦いからはっきりしている。俺の6倍超加速で速攻潰してやる!)」

 

隼人はビリジアンを潰す為に6倍の超加速でビリジアンに攻撃を仕掛ける。ビリジアンには最早反応するのも難しい速度になっていたが、Uがセイバーで受け止めた。

 

「やらせるかよ!」

 

Uはそう言うと、隼人をそこから力任せに押し、隼人を大きく吹き飛ばした。

 

「(うおっ!? ………なんというパワーだ………前と武器が違うのもあるが………奴も本気を出してきたという訳か………!)」

 

隼人はUの本気を感じていた。

 

「なら………7倍はどうだ!!」

 

隼人は7倍のスピードに加速。最早ここまで来るとビリジアンには目で捉えられない所まで来たが、Uはそれを前にしても追い付き、隼人の攻撃を受け止める。

 

「ぐっ………お前はいったい何者だ………俺のスピードにここまで追いつけた奴は見た事がない………!!」

 

隼人はUにここまで追いつかれている事を不思議に感じていた。

 

「さてな………でももう覚悟は決めたんだ………お前達を相手に容赦するつもりは微塵もない………!」

 

Uはそう言って鋭い斬撃を放つ。隼人はかわしたように思っていたが、左肩から出血した。

 

「(………咄嗟にスピードを8倍に上げてもかわせなかった………いや、8倍以上じゃなかったら左腕が無くなっていた………そう考えると出し惜しみをする必要は無さそうだ………アイツは間違いなく速い………)」

 

隼人はUの圧倒的なスピードを直感。そしてUの前に立つと………

 

「………俺の最大出力、10倍からの大技でお前を滅ぼしてやろう………!」

 

隼人はそう言うと、手に持った刀を構える。

 

「(必殺技か………!)」

 

Uは必殺技が来る事を予感すると、地面を強く踏み込み、セイバーを構える。

 

「くらえ! {豪嵐無限斬}!」

 

隼人は台風を想起させるような、とてつもない嵐の斬撃を放つ。ここに隼人の10倍超加速が加わる事により、威力は比例するように上がった。

 

「(俺の最強技{豪嵐無限斬}はただ素早く斬撃の連打を行う技では無い………俺の超加速を持って最強の技として完成する。そうする事で斬撃のスピードや数も比例する形で増える………この状態の俺の斬撃数は………1秒間で200! 幾ら奴でも止められないはずだ………!!)」

 

隼人は斬撃の数でUを倒すつもりだった。常人や普通の能力者には最早防ぐどころか捉える事もままならない無数の斬撃を前に、Uはセイバーを構える。そしてセイバーに赤いエネルギーを纏わせると………

 

「{オメガセイバー}!!」

 

地面に向けてセイバーのエネルギーを叩き付ける。これにより、Uの周りで強い爆風が起きた。

 

「何っ!? 爆風だと!?」

 

隼人はUが放った必殺技による爆風で物理的に接近が出来なくなった。更に爆風が発生し、その爆風は隼人を大きく吹き飛ばした。

 

「ぐああああああ!!」

 

隼人は大きく吹き飛ばされた。咄嗟に自身のエネルギーでガードしたのが良かったのか、隼人の身体は無事だった。

 

「お、俺の必殺技すらも通用しないだと………!? こ、こんな馬鹿な事が有り得るのか………!?」

 

隼人は目の前で起きている事が信じられない様子だった。

 

「別に不思議な事じゃないよ。世界は広い。時に異次元というか、理不尽な奴も存在する。確かにお前の超加速能力は強いよ。多分この世界においてはお前の強さはトップクラスのものだろう。インベーダーズ連中でもリーダーが相手でようやく戦えるって所だろうな」

 

Uは隼人の実力について、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のリーダーにして最強であるブラック以上の強さであると考えていた。実際、彼の実力については認めているようだった………

 

「………ま、自身の快楽を優先しているせいで時折視野が狭まるのが難点といった所だがな」

 

だが、それと同時にUは隼人の欠点も指摘する。隼人はUの言葉に首を傾げていたが、次の瞬間、隼人は後ろから強い気配を感じた。後ろに視線を向ける隼人だが、そこには刀を振り下ろそうとしている直前のビリジアンがいた。

 

「(し、しまった………! 和が攻撃してこねえと思ったら、俺の隙を作る為に待機していたのか………!!)」

 

隼人はビリジアンの動向に驚いていた。しかし、不意を突かれた隼人に出来る事は無かった。

 

「U殿がくれたこのチャンス………決して無駄にはしない!! {疾風牙狼撃}!!」

 

ビリジアンは隼人を反応させない鋭い斬撃を放ち、隼人を吹き飛ばした。更に直撃したのは右腕の部分であり、同時に隼人の右腕を切断させる事に成功。近くの木に頭から激突した隼人の意識は朦朧とし始めていた。

 

「(ぐあっ………右手………肩から先の感覚ねぇ………)」

 

隼人は右肩から走る激痛では無く、右肩から先の感覚が消失した事を感じていた。それと同時にある事を感じていた。

 

「………和、お前俺を相手に情けをかけたな………? あの時なら俺の生命を奪う事だって出来たはずだ………何故だ………何故俺に情けをかけた?」

 

隼人はビリジアンに情けをかけられた事を察知していた。

 

「………なんでだろうね。多分、心の中のどこかで貴方を完全に憎みきれていなかったのかもしれないし………インベーダーズに染まった結果なのか………私には分からないよ」

 

ビリジアンはそう言って、自分でも理由は分からない様子を見せていた。

 

「………甘いな。そんな思考ではいつか死ぬ………」

 

ビリジアンは朦朧とする意識の中でそう言い放つと、そのまま昏倒してしまった。ビリジアンは隼人を目にしながら刀を鞘にしまうと………

 

「甘い………か。確かに甘くなったのかもしれないね。でも、だからこそ私はビリジアンニンジャなのかもしれない………私は少なくともそう思うけどね」

 

そう言って、自らの甘さを否定せず、むしろその甘さも自身を構成するものとして解釈する様子を見せた。

 

「ビリジアン………」

 

Uはビリジアンの前向きな解釈に対し、思わず感心する様子を見せる。ビリジアンは隼人に対して背を向けると………

 

「………U殿、ありがとう。貴方がいなかったら私は何も出来なかった………感謝してもしきれない………」

 

Uに対する感謝を述べる。Uは無言でバイクに乗り、ビリジアンの前に移動すると………

 

「早く乗りな。ブルーの話じゃ邪島とあと1人いるらしいし………それに、奴の腕をぶっ飛ばしたのは間違いなく君の力だ。僕はあくまで力添えしただけだよ」

 

ビリジアンにバイクへ乗るよう指示すると共に、自身はあくまで力添えをしただけに過ぎない事を追記する。ビリジアンはUの後ろの席に乗り………

 

「………貴方がインベーダーズに入ってくれてよかった。初めて会った時に刀を向けてしまった事が恥ずかしいよ………」

 

ビリジアンは先の事が恥ずかしい行為であるように語る。

 

「………何言ってんだ。今更気にしてないよ、そんな事」

 

Uは過去の事について特に気にしておらず、笑うようにそう呟きながら、バイクのエンジンをふかし、ハンドルのアクセルを捻り、バイクを猛スピードで飛ばすのだった………

 

 

 

一方その頃、西を進む六道家側は玲花と数人の黒子を黒子達の死体の山の前に残し、理央と舞雪の2人と残りの黒子達が乗る車で先を進んでいた。

 

「………そういえば舞雪。あの連中と手を組む交渉をずっと続けてたんだってな」

 

理央は舞雪に対し、U達『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と六道家が手を組む交渉を独断で続けていた事について話し合いをしていた。

 

「だって、あのまま対立したままじゃダメだと思って………それに、Uさんだって話してみたら優しい人だったよ」

 

舞雪は焦る様子を見せる。

 

「優しい………ねえ。俺にはなんというか底がしれないというか………闇深い所も見えたけどな」

 

理央はUへの印象として、闇深い部分が見えた事を指摘する。

 

「闇深い………? まあ確かに、あの異次元な強さはかなり気になるけど………」

 

舞雪はUの闇深さは強さの事を指しているように考えていた。

 

「そこじゃねえよ、精神的な意味さ。アイツは怒らせたらダメとかそういうタイプじゃねえ気がするんだよ。多分、俺達みたいに民の為に国を守るとかそういうタチの奴じゃない。俺達と真逆………世界を滅ぼすなんて言ったら本気でやりかねないタイプだ。俺達六道家とは相容れない部分も多々あるって事だな」

 

理央はそう言って、Uとは相容れないような様子を見せる。

 

「………そうだろうね。お兄ちゃんみたいなタイプ苦手そうだったし」

 

舞雪もそれには納得していた。

 

「………でも、根本は優しい人なんだよ。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の人々に対しても仲間想いだし………多分、打ち解けられていない人との対話が苦手なんだろうなあって感じかな」

 

しかし同時に、Uは根本が優しい人物であると解釈をしていた。舞雪がここ数日でUを大きく信頼するようになった事には理央も首を傾げていた。

 

「………何故舞雪がここまで心を許し出したんだか………」

 

理央は訳が分からない様子で頭を掻いていた。するとその直後、黒子は目の前から誰かが飛び出して来た事に驚き、慌ててブレーキを踏んだ。

 

「うおっ!? ど、どうした………?」

 

理央達は突然の急ブレーキに驚いていた。理央達が正面の窓に視線を向けると、そこには煙草を吸う男が待ち構えるように立っていた。

 

「アイツ………フレイミー・アルコールか………!」

 

理央はその男が、以前対峙したフレイミー・アルコールである事を口にすると………

 

「………奴の能力は厄介だ。黒子、舞雪を連れて直ぐにここを離れろ」

 

車を運転する黒子に対し、舞雪と共に退避する事を指示して車から出た。

 

「………久しぶりだな」

 

理央はフレイミーに対しそう言い放つ。

 

「………俺はくじ引きの運がいいらしい。お前との決着をつけられるのだからな」

 

フレイミーはそう言うと、煙草を地面に捨て、踏み潰す形で火を消した。

 

「煙草のポイ捨てしてんじゃねえよ。自然環境が悪くなる」

 

理央は呆れた様子で煙草のポイ捨てを指摘する。

 

「いいんだよ。どうせ全部燃やすだけだからな」

 

フレイミーはそう言うと、左手から理央に向けてアルコールを飛ばす。

 

「うおっ!?」

 

理央は間一髪でこれを回避。しかし、フレイミーは立て続けに右手からアルコールを放出。これにより、理央の左腕にアルコールをかける事が出来た。

 

「ちっ………! (左腕にアルコールをかけられた………どうしたもんかな………)」

 

これにより、理央は微かに火が触れれば左腕が燃える事態となった。理央がどうするべきか考える中、フレイミーは新たな煙草を取り出し、それを咥えた直後にマッチを取り出して着火させると、それを煙草に着火させ、火の着いたマッチ棒については理央の方に投げた。

 

「危ねぇ!」

 

理央はこれをかわす。そしてマッチ棒は地面にかかっていたアルコールの方へ飛んでいき、アルコールに火が引火する形で大きく火が燃え上がった。

 

「………相変わらずおっかねえ能力だな………」

 

理央はフレイミーの能力の火力の強さに驚かされていた。フレイミーは呑気に煙草を吸っており………

 

「お前には大した事無いのだろうけどな」

 

フレイミーはそう言って、理央を煽る様子を見せる。

 

「………そうだな。俺もいつまでもお前の相手をしている暇はねぇからな………」

 

理央は左腕がアルコール塗れの中、格闘術の型のような身構えをする。

 

「あくまで攻めの形を崩さないか。良かったよ、遠慮なく殺せるってものだ」

 

フレイミーはそう言うと、自身の後ろから火炎放射器を取り出す。

 

「燃えろ! 六道家の当主!!」

 

フレイミーは火炎放射器から火を放つ。理央は左腕を前にして接近。これにより、火が理央の左腕に引火して燃えてしまったが、理央はそれを利用し、炎を纏ったパンチを放つ。

 

「ぐおっ!?」

 

フレイミーは理央のパンチによって吹き飛ばされる。

 

「な、何………!? (コイツ、俺の能力を逆手に取りやがったのか………!?)」

 

フレイミーは自身の能力を逆手に取られた事に驚いていた。

 

「悪いか、俺にはお前の能力は通用しない………覚悟しろ、フレイミー・アルコール!」

 

理央は左腕を振って火を消化すると、その場から走り出し………

 

「{六道流軍鶏蹴り}!!」

 

型に沿った正確な蹴りをフレイミーに打ち込んだ。

 

「ぐああああ!!」

 

フレイミーは近くの木に向かって吹き飛ばされ、木に激突した。

 

「ぐおっ!? ………や、やるな………流石に次元の違う相手だ………まあ、それがあのジジイにも通用すればいいけどな………」

 

フレイミーは理央の圧倒的な実力を認めつつも、それが邪島にも通用するとは限らないと言わんばかりの言葉を口にする。

 

「………どういう意味だ」

 

理央は、フレイミーの言葉の意味を問いかける。

 

「あのジジイはイカれてやがる………余程あの白髪のガキが憎いらしい………あの行動がもたらす結果については俺は知らねえよ………俺はその結果だけが気になるだけだからな………」

 

フレイミーはそう言うと、吹き飛ばされた衝撃で落としていた煙草を手にし、再び口に咥える。

 

「ふうっ………やっぱり煙草は美味い………俺の無気力かつ、つまらん人生を確実に癒してくれるのは………コイツだけだな………」

 

フレイミーは煙草の味に至福を感じた直後、そのまま意識を失ってしまった。

 

「どういう事だ………奴の言う言葉の意味………まさか邪島は今回、何かを仕込んでここに来たというのか………!?」

 

理央はフレイミーが最後に吐いた言葉に首を傾げていた。嫌な予感を感じた理央は携帯を取り出すと………

 

「………俺だ。舞雪、フレイミー・アルコールの確保作業を頼む。俺は気になった事が出来た。それを調べに行く………」

 

舞雪に対し、気絶したフレイミー・アルコールの確保を依頼した後に、自身は何かを探し求めるように東の方角へと走り出したのだった………

 

 

 

そして東の方では、Uとビリジアンを除く『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々がバイクで走っていた。

 

「全然見つからないね。本当にこっちの方にいるのかな?」

 

グレーはバイクを運転しながら、邪島とその協力者達が見当たらない事に首を傾げていた。

 

「それについては根気よく探す他無いわね」

 

ブルーは根気強く探す他無い事を語る。

 

「それは嫌だなぁ………早く帰ってハンバーグ食べたい」

 

一方で、ブラックは根気強く探す事に乗り気では無かった。

 

「我慢してください、総帥」

 

ブルーは長期的な捜索は仕方の無い事と判断している為、我慢を要求。ブラックが子供のように嫌そうな様子を見せている中、ブルーは何かの気配を感じた。

 

「………良かったですね、総帥。今日はディナーまでには帰れるかもしれません」

 

ブルーはそう言ってバイクを止めて降りると、コルトパイソンを手にし、目の前に見えた影の方へ向ける。ブルーが銃を向けた先には、右腕が体型に合わない義手であり、その右手でマカロフPMを持った老人が立っていた。

 

「邪島………!」

 

その場にいる誰もが、目の前に立つ老人を邪島だと認識した。

 

「………貴方の右腕はUに吹き飛ばされたはず………義手………いや、違う。その腕は誰かの物と見て間違い無さそうね」

 

そんな中、ブルーは邪島の右腕について言及する。確かに邪島本来の右腕は1週間前の戦いの際に、Uによって吹き飛ばされてしまった。

 

「確かに、これは元々人の腕にくっついていたもの。その人物こそ、2ヶ月近く前に滅ぼされた犯罪組織『高天』の幹部、須佐之男だ………!」

 

そんな疑問に対し邪島は答えた。なんとこの腕は以前Uが戦った犯罪組織『高天』の幹部格、須佐之男の右腕だという。

 

「『高天』って………確かUが戦って、結果的に滅んだ組織だよね………?」

 

ブラックは『高天』の名前だけは覚えており、ブルーに対してそう問いかける。

 

「そうですね………しかし、六道家側の話では、須佐之男の行方だけが分からない状況であるとは言われていていました………まさか、邪島の元に渡っていたとは………」

 

ブルーは六道家サイドから『高天事件』の事の顛末を聞いていたようであり、須佐之男の身体が邪島サイドに渡っていた事については素直に驚いていた。

 

「まあ何はともあれ………倒すしかないよね………!」

 

グレーはそう言って、ピンクをバイクから降ろし、槍を手にする。その際に自身の能力で邪島の周辺に煙を発生させる。

 

「無駄な事を………ふん!」

 

邪島はグレーの事を嘲笑いながら右腕を動かす。すると、グレーが発生させた煙が突然初期化されたように消え去った。

 

「………え?」

 

この光景にはグレーは勿論、ブルー達も驚いていた。

 

「(わ、私の能力が消えた………!?)」

 

グレーは目の前で起きた事に動揺する。

 

「ふふっ、どうした? 貴様の能力はその程度か?」

 

邪島は嘲笑うようにそう言うと、グレーが乗るバイクのタイヤに向けて発砲。これによりタイヤがパンクした。

 

「うわっ!?」

 

グレーはタイヤが破裂した際に姿勢を崩し、バイクから落下し、地面に倒れてしまった。

 

「グレーちゃん!」

 

ピンクは心配の声を上げる。同時にグレーの危機を目にしたブラックは怒りを顕にする。

 

「よくも私の仲間を………!! 許さない!!」

 

ブラックは自らのエネルギーを集束させる。大技を狙うブラックをブルーがコルトパイソンを手に守ろうとする様子を見せており、邪島もマカロフを構えているものの、ブルーに銃を突きつけられている為に簡単には撃てないようだった。互いに攻撃が出来ない状況の中、ブラックはエネルギーの収束を完了させる。

 

「くらいなさい………{ブラックホール}!!」

 

ブラックは必殺の一撃を放つ。

 

「ほう………確かにこれをまともにくらえば死ぬ………グラヴィティが死にかけた事も頷けるものだ」

 

邪島はブラックの必殺技を前にし、圧倒的なものである事を直感していた。

 

「最も………くらえばの話ではあるがな」

 

しかし、邪島はそう言って右手を動かす。すると、ブラックの放った{ブラックホール}が消えてしまった。

 

「なっ!? わ、私の{ブラックホール}が消えた………!?」

 

これにはブラックも驚いていた。ブルーもブラックの大技が消えてしまった事に驚いていたが………

 

「………成程、それが貴方の能力という訳ね」

 

同時にブルーはこれが邪島の持つ能力の仕業である事に気付いた。

 

「その通り………とは言うが、少し違うな。これは私の右腕に刻まれた能力………言うなれば、須佐之男が持つ能力だ………!」

 

邪島は自身が今発動した能力が、元々須佐之男の持つ能力である事を語った。

 

「ええっ!? そんな強い能力ずるいよ!!」

 

ブラックは、邪島が獲得した対能力者用能力とも言える能力に非難の声を上げる。

 

「馬鹿め。戦いの世界はどんな事をしても勝てばよい。この能力があれば私は能力者に負ける事は無い! 私こそが天下を手にするのだ!!」

 

邪島は全てが自分中心になったと思いたくなる程の全能感を感じていた。そして、邪島はブラック達に対し銃を向けると………

 

「私の狙いはお前達では無いが………ここで殺すのもまた一興か」

 

そう言って、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々の殺害を目論む。だが、邪島が銃の引き金を引こうとした瞬間、突如として邪島に向けて光の斬撃が飛んできた。

 

「ぬあっ!? お、おのれ………!!」

 

邪島は間一髪右手で能力を発動し、斬撃を消すことに成功する。しかし、邪島の手は恐怖を感じるように震えていた。

 

「誰だ!! この私に攻撃を放つ愚か者は………!!」

 

邪島は斬撃を飛ばした張本人に向けて叫ぶ。

 

「………ほう。無線を介して会話を傍受させてもらっていたが………本当に能力ごと須佐之男の腕を移植したらしい。僕の見立てが正しければ、相手の能力を打ち消す能力か………」

 

邪島の怒りの声に対し、斬撃を飛ばした張本人は答えるようにそう言い放つ。それを聞いたブルー達は安心する様子を見せる。その理由は………

 

「………それで、さっきのお前の言葉に対して敢えて答えるならば………お前に刃を向けた男は………『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』6人目の戦士! ホワイトソードマンこと………U!!」

 

邪島を倒す為に姿を現し、名乗った張本人こそ、光のビームサーベルZEROセイバーに白いマントを羽織ったホワイトソードマンのコードネームを持つ男、Uだったからである。

 

「貴様………またしても私の前に立ちはだかると言うのか………!」

 

邪島はUに対し、激しい憎しみを露わにする。

 

「随分お怒りのようだが………怒りに溢れているのはこっちとて同じだ! 邪島! 今日この場で貴様を倒す!!」

 

Uはそう言って素早い動きで邪島の前へと接近する。一方、その直後にはUが運転していたバイクを押していたビリジアンが追いついた。

 

「はあっ、はあっ………U殿がいきなりバイクそっちのけで走るから、ここまで来るのが大変だったよ………」

 

ビリジアンはバイクを押しながらの移動となったことに対し、Uへの文句を口にしていた。しかし、目の前でUが邪島と対峙する姿を目にする事によって、彼女の文句が止まった。

 

「………急に走り出したと思ったらそういう事だったんだ………」

 

ビリジアンが、Uのバイクそっちのけ行動の理由に気づいた為である。そして、Uはセイバーによる斬撃を邪島に放とうとした時、邪島は右手から能力を発動し、Uのセイバーのビームサーベルの刀身を消してしまった。Uは光の刀身が消えたのを目にすると攻撃を中断し、一度距離を取った。

 

「………成程。確かに僕のセイバーも僕のエネルギーを持って光の刃としている。能力の一部といえば有効範囲内か………」

 

Uはセイバーの刀身が消えた理由をすぐに察知する。

 

「ふっ、これでは貴様も能力には頼れまい」

 

邪島はUの能力戦法を封じた事で、Uを煽る様子を見せる。

 

「そうだな………確かに能力中心の戦い方は出来そうにない………能力者殺しの能力とも言えるな………」

 

Uも能力を中心とした戦法ができない事を素直に認めた。それを聞いた邪島はニヤリと笑う。

 

「………もう勝った気になってるのか? それは早とちりが過ぎやしないか?」

 

だが、Uは全く動じていなかった。Uは持ち手のみとなってしまったセイバーを懐にしまうと、邪島の目に捉えられない速度で彼の顔面を殴った。

 

「ぐぶあっ!?」

 

邪島は顔から血を吹き出しながら倒れる。

 

「ば、馬鹿な………!!」

 

邪島はUに殴られた事に動揺していた。そして、勝負を見ていた者のうち、ブルーはある事に気付いた。

 

「な、成程………! 確かに邪島が打ち消せるのはあくまで能力だけ………物理的な攻撃なら全然通る………!」

 

それは、あくまで対策されているのは能力だけの為、能力やエネルギーを使わないパンチのような物理的な攻撃は普通に刺さるのだ。

 

「そう考えると、彼は地力も凄いんだね、恐れ入るよ………」

 

ピンクはUの地力の高さに圧倒されていた。

 

「どうした? 腕っ節は自信が無いとでも?」

 

Uは邪島を煽る様子を見せる。それを聞いた邪島は苛立つ様子を見せる。

 

「黙れ………貴様ごときに、この私が負けるものか!!」

 

邪島は右手に持ったマカロフによる狙撃を行うが、Uは走りながら弾丸の軌道を予測してこれを回避する。そして、右足による蹴りで邪島の右手を攻撃。これにより、邪島の手からマカロフを離させると、Uは邪島の懐に潜り込み、彼の右腕を掴む。そして、そのまま彼に超威力の蹴りを邪島の脇腹に叩き込む。この時にUが邪島の右腕を掴み続けていた為か、彼の右腕はちぎれるように強引に切断された。

 

「ぐうあああああ!!」

 

邪島は無理矢理右腕をちぎられた事に驚いていた。Uはちぎった右腕を投げ捨てると、右足にエネルギーを蓄積する。

 

「………トドメだ」

 

Uは再び目にも止まらない速さで邪島に接近すると、彼の胸倉を掴む。

 

「わ、私が負けるなど有り得ん………! 私は………私は全てを超越した存在………! 貴様のような男に私が負けるはずは無い………!」

 

邪島は尚も自らの敗北を諦めない様子を見せる。そんな足掻きを見せる邪島に対し、Uは恐ろしいくらいに冷めた視線を向けていた。

 

「超越………ね。僕はお前のような汚い人間を腐るほど見てきた。お前は割とクズな方だったが………超越と言うには鼻で笑いたくなるくらいの愚かな人間でしか無かったよ」

 

というのも、Uにとって邪島はよくあるタイプの悪人でしかなく、所詮は愚かな人間だった。Uは最早彼の事など微塵も興味が無くなった事で彼を天に打ち上げる。そして、そのまま大きく跳躍すると、右足にエネルギーを纏わせた必殺のキックを邪島に向けて放つ。

 

「ぐうあああああ!!」

 

邪島は悲鳴とも言える声をあげる。Uの放ったキックは邪島の身体すら貫通し、Uはそのまま地面に着地。邪島の身体は落下の勢いも相まって地面に着地する際も大ダメージを負った………元々必殺のキックを貰った所で致命傷を負っていたのでそこまで変わりのない話ではあったが。

 

「ぐぶおっ!! はあっ、はあっ………」

 

邪島は口から血を吐いていた。邪島は死の間際に陥ってもなお、近くに落ちていたマカロフに手を伸ばそうとしていた。しかし、優はマカロフを蹴り飛ばすと、代わりに自身のSOCOMピストルの銃先を邪島の口に押し込んだ。

 

「しぶとい野郎だ。普通身体に穴が空いたらまず死ぬんだけどな」

 

Uはそう言って、邪島がまだ死なない事に対し、どこか呆れていた。

 

「分かっているのか………!? 私を殺す事がいかに愚かな行為か分かっているのか………!?」

 

邪島は最後の最後まで毒を吐く様子を見せる。この光景にはブルー達も最早呆れていた。

 

「………知らねえよ。それで世界が滅ぶとかならそれまでだったって事さ」

 

Uはそう言うと、SOCOMピストルのトリガーに指をかける。

 

「や、やめろ………! やめてくれ………!!」

 

邪島は死の恐怖から命乞いをする様子を見せる。

 

「そうやってお前は何人の人を殺した? 人を殺しまくった奴に命乞いなんか許されないんだよ。それは僕にも言える事だがな。だから覚悟を決めている。お前みたいに最後まで自分が安全地帯から人を殺せると思っているクソ野郎とは覚悟の強さが違う………!! お前はあの世で白三谷ユウと白三谷春香………あの二人に詫びろ………!!」

 

Uはそう言って銃口を引く。これにより、邪島の頭の中から弾丸が貫通。この一撃により、邪島は息絶える事となった。Uは邪島の口からSOCOMピストルを引き抜く。SOCOMピストルは血塗れになっており、Uも布を取りだして銃口を拭いてからSOCOMピストルを懐に戻した。

 

「………春香、仇は取ったぞ………」

 

Uは空に視線を向けながらそう呟く。そして、Uが邪島の殺害に成功して間もなく、東の方角へ捜索に走ってきた六道理央もその場に到着した。理央は到着して間もなく、地面に転がる邪島の死体から、この状況に気づいた。

 

「………お前、邪島を殺したのか………?」

 

理央はUに対し、邪島殺害を行ったかどうか問いかける。

 

「………ああ、僕が殺したさ」

 

Uは一切言い訳などしなかった。理央はUが邪島を殺した事に対し、複雑な表情を向けていた。

 

「………前から思っていた事だが、お前は殺しに容赦が無いらしいな」

 

理央はこの時、Uの行動に目を向けていた。それは、彼が人を殺す事について、特に抵抗も容赦も無い事だった。

 

「お前とは年季が違うんだよ」

 

Uはそう言って、理央の疑問に対し、経験の差だと言い放つ。

 

「年季の問題じゃないと思うが………」

 

理央はUの精神が理解出来ない様子と共にそう呟く。

 

「若いのが理解するにはまだ早いだろうな」

 

Uはそう言って理央に対して背を向ける。理央はUに対する疑念を強める。だが、結果として邪島が死んだ事でこの勝負が終わりを告げた事は間違い無かった。

 

「………兎にも角にも邪島は倒した。僕のやるべき事の1つは果たした」

 

Uは、この世界に来るきっかけとなった邪島が死んだ事は確かであり、自身のやるべき事は果たされた事を語る。

 

「………ちょっと待った。まだ話は終わってないだろ」

 

しかし、理央は待ったをかける。

 

「あの騎士はいったいなんだ?」

 

待ったをかけた理由は、理央が気になっていた、氷の騎士についての話が関係していた。

 

「………あの騎士? 分からないな。僕も詳しい事は知らんのでな」

 

Uも氷の騎士については自身の中で考察を行っている最中であり、詳しい理解は出来ずにいた。

 

「嘘つけ。お前が1番詳しいだろ。過去に何度お前を助けている? お前、何か関係があるんじゃないのか?」

 

理央は、氷の騎士が何度もUを助けている事から、彼が現状で1番氷の騎士の事に詳しいのではないかと考えていた。最も、Uですら詳しい事は分からずじまいだが。

 

「………なら知っている事だけでいい。教えてくれ」

 

理央は現状の情報を求める。

 

「現状ねえ………」

 

Uはどのように説明すべきか悩んでいた。だが、それと同時に理央の真上から突如として無数の氷塊が落ちてきた。

 

「うおっ!? 危ねぇ!!」

 

理央は氷塊をなんとかかわす。

 

「氷塊………!? まさか………!」

 

Uは氷塊を目にした事で何かに気づいた。だがその直後、Uの後ろを取った人物がUの喉元に氷の刃を突き立てる。

 

「………氷の騎士か」

 

Uは動じる事無く、氷塊と自身の後ろを取った人物の正体を言及する。

 

「………私の事を話そうとしたな? それが何を意味するか………分かるはずだ」

 

氷の騎士はUを脅すようにそう呟く。

 

「やけに焦ってるな………ディメンの差し金? お前の独断? ………或いはその両方か?」

 

Uは氷の騎士が焦っている事を察知し、わざとらしく2つの可能性を語っていた。

 

「何の話だ………?」

 

氷の騎士はUの言葉の意味が掴めなかった。Uは少し考えていたが、途端に思考がとある可能性へと到達。Uは思わず笑い出してしまった。

 

「………ふはは………! ………なんだ、単純な事だったんじゃないか………氷の騎士とディメン………その関係は使い魔と使役者じゃない………今考えたらボロが沢山出てたじゃないか………!」

 

Uはこれまでのディメンと氷の騎士の行動にはボロがあった事を思い返し、喜ぶ様子を見せる。

 

「ボロ………?」

 

氷の騎士はUの言葉に首を傾げる。Uは氷の騎士が手にしていた氷の刃に触れ、それを破壊すると、氷の騎士の顔を隠した兜に向けて視線を向ける。

 

「………今、テレパシーを飛ばした………ほら、出ろよディメン」

 

Uは今、目の前で堂々とディメンに対しテレパシーを飛ばしたという事を口にする。

 

「………ディメンって誰?」

 

この場にいる者はUと氷の騎士以外はディメンの事を知らない為、首を傾げていたが、氷の騎士は途端に言葉を失った。

 

「………出られねえだろうな………だって今は氷の騎士として立ってるもんな、ディメン」

 

Uはテレパシーに出なかった事から、目の前の氷の騎士の正体こそディメンであると確信する様子を見せた。

 

「フッ………私がディメン様だとでも? ディメン様の顔や本来のお名前も知らないお前の根拠など何の意味もない………!!」

 

氷の騎士はまだ否定の姿勢を見せる。

 

「話はもう1つある。白三谷ユウと白三谷春香の話さ」

 

そこでUは2つ目の理由を語る。それは白三谷ユウと白三谷春香の事である。

 

「………白三谷ユウの話を露骨に嫌がったのは偶然かと思ったけど………今考えたらお前、致命的な事をしてしまったよな。白三谷春香の死に対して自分事のような様子を見せてしまったのは特大ミスだったな………仮に知り合いだったとしてもあの怒り方は異常だ。そして白三谷ユウが死んでいる以上、あれだけ怒る者がまだ残っているとしたら、行方不明の娘………そう、白三谷真子だ………そしてディメンの声は僕の知る限り僕の娘の真子と全く同じ………100%一緒とも言えないが、パラレルの春香は僕の奥さんの方の春香と声が一緒だった。そうなれば娘の真子の方も同じ声である可能性は限りなく高い………お前はディメンであり真子だ………違うか? 違うならその兜を取ってみろ。なんなら僕が取ってやってもいいが?」

 

Uは目の前に立つ氷の騎士がディメンであり、しかもその正体が白三谷真子では無いかと問いかける。これにはU自身の憶測も混じっていたが、Uは顔を見れば少なくとも氷の騎士が真子であるかどうかは見分けられる事を語る。それを聞いた氷の騎士は少しの間黙っていた。

 

「………図星か?」

 

Uはダメ押しのようにそう言って氷の騎士の兜を掴み、無理矢理引っぺがした。

 

「………マジか」

 

Uは目の前の光景を前にし、そう呟く。その直後、自らの素顔を暴かれた氷の騎士はUの腹に鋭い拳を叩きつけた。

 

「ぐうっ!?」

 

Uは地面に膝を着き、そのまま地面に倒れた。Uの姿勢が低くなった事で、理央達にも氷の騎士の素顔が晒された。

 

「………! 馬鹿な………!! し、白三谷真子………!?」

 

その素顔はUの予想通り、白三谷真子だった………

 

「………まさか私の正体を暴くのがパラレルのお父さん………貴方とはね、やっぱりパラレルワールドとはいえ、本当によく似ているよ」

 

白三谷真子はそう言って自ら纏っていた鎧を内側から吹っ飛ばす。真子は白髪の長い髪をツインテールに括っており、目の色は緑で顔は春香と似ていた。服装については、ピンクのシャツに緑の上着を羽織り、首元にはチェック柄の赤とピンクのマフラーが巻かれ、水色の短パンに青の長いソックス、茶色のブーツと、Uの娘の真子が子供時代に着ていた服装と全く同じ格好だったが、容姿だけは中、高校生くらいのものと異なるものであった。Uは目の前の真子の容姿に驚いていた。

 

「………瓜二つ所じゃねえな………まあ春香の時点で全く同じだったから予想は出来てたけどな………」

 

Uは真子の姿に驚きこそしていたが、妙な納得感を覚えていた。そんな彼の頭を真子は右足で強く踏み付ける。

 

「貴方も馬鹿だよね。人の墓を暴くような真似をするなんて………最初から六道家なんかに頼らずに私の言う事を聞いて邪島を倒せばよかったのに………まあ邪島は結果として死んだからもういいけどね」

 

真子はそう言うと、左足でUの身体をボールのように蹴り、Uの身体を仰向けにした所で彼の腹を踏みつける。

 

「がはっ!」

 

Uの身体に踏みつけられた事による圧迫のダメージが襲いかかる。

 

「U!!」

 

ブラック達はUの危機に慌てる様子を見せていた。そしてブルーは、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーの中で、真子の強さの恐ろしさを1番に感じていた。

 

「(不意討ちとはいえ、あそこまでUを痛めつけられるなんて………それに、あの見た目からは想像も出来ない禍々しさはいったい何………?)」

 

ブルーはコルトパイソンを真子に向けるも、本能が恐怖を訴えてきており、とてもトリガーを引けなかった。

 

「………貴方のことをお父さんと呼ぶのは何か違う気もするけど………結局姿形は全く一緒だし、別にお父さんでもいいかな。私が持ってる氷の力だって貴方の娘由来の力だし」

 

真子はそう言って、目の前にいるUを父として扱うかに首を傾げていたが、自らの氷の力の由来から、そのまま父として扱う事を口にする。そんな彼女の言葉など、とてつもない苦痛と動揺に襲われていたUにとっては完全に上の空だった。

 

「まあでも、お仕置きはいるかな。私の事を話そうとした罰をね」

 

真子はUにお仕置きをする事を宣言。するとその直後、Uにも劣らないスピードで移動した真子は、ブラックとブルーの身体に触れると、彼女達から何かを抽出するかのようにエネルギーを放出した。

 

「うあああああっ!? (な、何………!? この異物が入ってくるかのような感覚は………!?)」

 

ブラックとブルーは言葉に出来ない感覚に苦しめられる。

 

「や、やめろ………!!」

 

Uはなんとか身体を起こそうとするが、優が身体を起こす頃には、真子はエネルギーを止めていた。

 

「ううっ………!」

 

ブラックは真子の力の影響によって意識を失ってしまい、ブルーは意識こそ失わなかったものの、地面に膝を着いて苦しんでいた。

 

「ふ、2人に何をした………!?」

 

Uは動揺しながら真子に問いかける。すると真子は立ち上がろうとしていたUの背に触れる。

 

「ちょっとコピーしただけだよ。2人の能力をね」

 

真子はそう言い放つ。するとその直後、真子の身体にブルーのものと同じ蒼炎が纏われる。

 

「蒼炎………!? う、うわあああああああ!!」

 

これによりUの身体にも蒼炎が着火し、Uは身体が焼き尽くされる感覚に支配され、地面に倒れる。幸い、蒼炎はすぐに鎮火したが、Uは服ごとボロボロになる程の大きなダメージを負って地面に倒れ、そのまま気を失ってしまっていた。

 

「ゆ、U殿!!」

 

一方的にUが痛めつけられる光景はその場にいる誰もを驚かせていた。そして真子の行動には理央も引く様子を見せていた。

 

「な、何をやっているか分かっているのか!? 昔の君はそんな間違った事をする子じゃ無かったはずだ!!」

 

理央は真子に対し、その行動が過ちである事を口にする。そんな彼の説得に対し、真子は冷めた視線を向けた。

 

「昔の私? 知ったような事を言わないでほしいかな。そもそも六道家が存在しなければ私達家族の幸せは壊れなかった。邪島なんて癌を生み出したのも六道家がいたから………貴方達は存在しちゃいけなかったんだよ」

 

真子は理央の事を正面から拒絶していた。六道家がいたからこんな事になった………そんな思考で支配されてしまっていたのだ。真子は指先を理央に向けると、鋭い氷の刃を無数に放つ。理央は間一髪でかわし続けるが、かなり苦しそうなものであった。

 

「(あ、危ねぇ………! 攻撃の密度が激しい………!)」

 

理央は真子が放った攻撃の密度の濃さに驚いていた。

 

「………ふーん、やっぱりこれくらいはかわすよね。分かってたよ」

 

真子はそう言うと、氷のエネルギーを右手を纏わせ、そのまま高く挙げる。

 

「じゃあこれはどうかな?」

 

真子は次の技を放とうとしていた。だが、その直後に真子の右腕が突如として何者かに切断された。

 

「………?」

 

真子は突然右腕が切断された事に首を傾げる。彼女が後ろを向くと、そこには左手で刀を奮った無錆隼人がいた。

 

「無錆隼人………!?」

 

ビリジアンは、隼人が意識を取り戻してここにやってきた事を直感で察した。隼人は真子の右腕を落とした事に喜んでいた。

 

「………ふーん、不意討ちで私の腕を落とすとはやるね………でも、相手が悪かったかな」

 

だがその直後、斬り落とされた真子の腕は紫色のエネルギーを纏ってひとりでに宙へ浮くと、真子の右腕にくっついた。

 

「な、何っ!? 腕がくっついただと!?」

 

真子の右腕が復活した事に隼人は驚いていた。だがその直後、真子の右手から放たれた氷塊によって隼人の身体は串刺しにされてしまった。

 

「ぐああっ………!!」

 

真子の氷塊によるダメージは即死に追いやる程の強烈なものだった。隼人が死んだ事に理央や『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーは戦慄する様子を見せる。

 

「馬鹿な人だよね。私に手を出しちゃうからこんな事になるんだよ」

 

真子は隼人の死を愚弄するように呟いた。

 

「う、嘘だろ………!? 君がそんな事をするなんて………ユウや春香がこの場にいたらなんというか………!!」

 

理央は真子の行為に引く様子を見せていた。今の真子の行為はユウや春香の望まない行為である事を彼は語っていたが、それを聞いた真子は苛立つ様子を見せると、目にも止まらぬ速さで理央に接近し、彼の左頬をぶん殴った。

 

「ぐおっ!?」

 

理央は真子に殴られた事に驚いていた。続けて真子が追撃をかけようとしてきたが、理央は何とか距離を取った。

 

「貴方なんかがお父さんとお母さんの名前を言うな………!! 全部、全部貴方のせいでこんな事になったんだよ! 今すぐここでその罪を償ってもらう………死を持ってね!!」

 

真子はそう言うと、自身の身体から氷のエネルギーを解放。真子の周囲一帯にとてつもなく冷たい冷気が襲いかかった。

 

「さ、寒いよ………!!」

 

その場にいる者の中には寒さに凍える者もいる中、真子は目を赤く光らせる。

 

「………変身」

 

真子はその掛け声と共に自らの氷の力で、氷の騎士の時とは違う形状の鎧を生成。彼女の力を最大限に解放する姿へと変身した。

 

「私の力で、天国のお父さんとお母さんに謝ってもらう………そして、地獄に落ちろ!!」

 

真子はとてつもない数の氷を放つ。その密度は先程の氷塊とは比較にならず、理央は距離を取る形で回避し続けるしか無かった。

 

「(くそっ………! 普通の悪人なら全然殴りにいけるが………相手はユウと春香の子だ………そう簡単に危害は加えられねえ………!!)」

 

理央は真子がユウ達の娘なのもあってそう簡単に攻撃出来ずにおり、真子の攻撃をかわし続ける事しか出来なかった。『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々も真子の恐ろし過ぎる攻撃に度肝を抜かれていた。だが、真子が理央への攻撃を優先している関係で、ブルー達は近くに倒れていたUの元へ近づく事が出来た。

 

「………ダメージは大きそうだけど致命傷にはなっていない………今すぐ戻って手当すれば大事には至らないはず………皆、撤退よ!!」

 

ブルーは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーに対し、撤退を指示する。ブルー達はバイクに乗り、Uをブルーの後ろに、ブラックをピンクの後ろに乗せる。そしてグレーとビリジアンの2人はバイクを1台タイヤのパンクで失っている為走る事となり、グレーが灰色の煙を発生させながら撹乱する形で逃亡を図る。

 

「(このままだと逃げられる………止めるべきかな………?)」

 

真子はブルー達が逃げようとしている事に気付き、それを阻止するべきか考えていた。しかし、そんな彼女に理央は接近してきた。

 

「(………いや、今は目の前にいる六道理央の撃破が優先かな。どうせお父さんはすぐに戦える状態じゃ無いだろうし)」

 

真子は理央の撃破を優先。理央は接近と同時に鋭い突きを放つが、真子はそれを右手で受け止め、蒼炎を身に纏う。

 

「ぐっ………!」

 

理央は咄嗟に離れる形でこれを回避する。

 

「………流石にお父さんが無様にやられるのを見た後じゃ通用しないよね。知ってたけど」

 

真子はそう言って目の前の次元を捻じ曲げてゲートを生成。そのゲートの中に入るとその場から姿を消した。

 

「………! (ど、どこに消えた………!?)」

 

理央は真子が姿を消した事で警戒する様子を見せる。だがその警戒も虚しく、理央の後ろの次元が捻じ曲げられ、ゲートが生成されると、彼の背に蹴りを放ち、理央を吹き飛ばす。

 

「うあっ! (く、くそっ………! 次から次へと………!!)」

 

理央はすぐに体勢を立て直すが、真子の手数の多さに驚かされていた。真子はキックの後に地面に着地すると、今度はブラックが使う闇のエネルギーを纏う。

 

「このまま消えてもらうよ。貴方がいたんじゃ、私は幸せになれないから」

 

真子はそう言い放つと共に、自身の右手にエネルギーを集束させると………

 

「………{ブラックホール}!!」

 

ブラックの大技、ブラックホールを理央に向けて放った。

 

「(まともにくらったらタダじゃすまねえ………! ここは俺も引くか………!!)」

 

理央はこの場を不利と判断すると、ブラックホールをかわすと共にそのまま走り去る形でその場から撤退した。それからブラックホールはしばらく発生したが、技の手応えが無い事と理央の姿が消えていた事から逃げられた事を直感した。

 

「………逃げられた………まあいいけどね。例えお父さんだろうと六道理央だろうと私には勝てないから………そうだね、また時間を改めて行けばいいや」

 

真子はUでも六道理央でも自分には勝てない事を呟き、追撃をしない事を選択。自身の目の前の次元を歪め、目の前にゲートを出現させると、自身の異次元空間の中へと消えていくのだった………

 

 

 

そして、負傷したU達を連れて撤退していた『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は、途中、フレイミー・アルコールを拘束して道を戻っていた六道舞雪一行と合流する。

 

「………! 皆さん!!」

 

舞雪は車を止めてブルー達と合流する。その直後、舞雪はUが蒼炎によるダメージを負っている姿を目にする事となった。

 

「ゆ、Uさん!? どうしてそんな大怪我を………!?」

 

Uの様子に慌てる舞雪。ブルーは冷静にバイクからUの身体を抱えると………

 

「………事情は帰り道の中で話す。とりあえず彼をそっちの車に乗せて貰えないかしら?」

 

1番の怪我人であるUを車に乗せるよう依頼した。

 

「わ、分かりました! 病院………は指名手配していた時期もあってマズイか………じゃあ、私達六道家の屋敷に行きましょう!」

 

舞雪はUを車に乗せる事を受け入れると共に、ひとまず六道家の屋敷へと向かう事を口にするのだった………

 

 

 

………後に六道家の記録ではこの時の戦いは『邪島戦争』と名付けられる程の大きな戦いとなり、死者はグラヴィティと無錆隼人と邪島管心の3人。残る幹部格のフレイミー・アルコールは逮捕という形で邪島四天王を事実上壊滅に追い込む事に成功した。しかし、Uに協力していたディメンが白三谷真子という事が同時に判明し、世界はまだ脅威の下に晒される結果となったのだった………

 

 

 

『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』と六道家の協力を得て、邪島を倒す事に成功したUだったが、協力者として立っていたディメンが白三谷真子である真実は、Uや六道家にとってとてつもない事態であった。六道家殲滅を行おうと本格的に動き始めようとする白三谷真子に対し、立ち向かえる者は果たして存在するのだろうか………?

 

 

 

To Be Continued………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………遂に正体がバレちゃったか。まあ、言われてみれば私も感情的になって演じるのを忘れていたから、バレるのは仕方の無い事なのかな………まあ、六道家を滅ぼすと決めた今、最早そんな事はどうでもいいや。お父さんとお母さんの仇の1人である邪島は殺せた。後は六道家を根絶やしにすれば白三谷真子の不幸は晴れる………待たせたね、お父さん、お母さん………いよいよ最後の戦いの始まりだよ………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5章に続く………




次回予告
負傷したUの前に再び現れた真子は彼に対し、自らに付く事を要求する。Uは真子の事をどうすればいいかを考えていると、とある人物達と奇跡的な対面を果たす。その後、Uは真子との対決を行う覚悟を決める。Uと真子、2人の最強が激突する戦いの果てには何が残るのか? そして、Uが真子と戦う覚悟を決めたのは果たして何が関係しているのだろうか………?
次回「白神大決戦」
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