邪島管心と六道家、そしてUが所属する『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の対決が行われた大きな戦い『邪島戦争』。U達は六道家と手を組む道を選択し、手分けして邪島四天王と邪島の討伐に成功した。しかし、ディメンの正体が白三谷ユウと白三谷春香の娘であり、行方不明になっていた白三谷真子である事が発覚する。Uは真子に大怪我を負わされ、六道理央も攻撃が出来ずに撤退を選択。今や白三谷真子は邪島に変わり、世界の脅威となってしまうのだった………
そして、大怪我を負ったUは六道家の屋敷に連れて行かれ、手当を受けた。元々致命傷では無かった為、処置の後にダメージは回復する傾向となった。
「………取り敢えずUさんの怪我はしばらく時間を置けば治ると思います」
舞雪は医者を介してUのダメージ状況をブルー達に説明する。丁度その頃、真子に能力をコピーされた際のショックで気を失っていたブラックが別の部屋からブルー達の元へやってきた。
「総帥………! お目覚めになられたのですね!」
ブルー達は嬉しそうな様子でブラックの元に駆け寄る。
「うん、大丈夫だよ。別にどこも痛くは無いし。ブルーだって同じ攻撃受けてたけど大丈夫?」
ブラックはコピーをされた時には特にダメージを受けておらず、同時にブルーは大丈夫であるかを問いかける。
「私も特に外傷はありませんでしたし、能力にも支障はありません。恐らくただコピーされただけだと思います。」
ブルーも特に外傷は無い事を語る。しかし、能力をコピーされた点は、白三谷真子に新たな戦術を与えてしまった事と結びついてしまった。
「………しかし、あの子が春香の娘の白三谷真子とはね………あの子、元からあんなに歪んでいた子なの?」
ブルーは目の前で見た真子の人物像を舞雪に問いかける。
「いえ………普通のいい子だったはずです。六道家を恨んでいる言葉なんて一度も………」
舞雪曰く、元々は普通の少女だった事を語る。それを踏まえると、真子の性格が変わった事はどうやら六道家側にとっても想定外な事のようだった。
「………兎にも角にも参った事になったわね。あの子の狙いは間違いなく六道家の人間。貴女も狙われるわ」
ブルーは舞雪に対し、真子の事を警戒するよう警告する。
「分かってます。お兄ちゃんがダメージ負って帰ってくるなんてまずないですから、とても強いって言ってましたし………」
舞雪は既に六道理央に警告されたのか、真子と戦えるなど微塵も思っていなかった。
「それを理解しているならいいけど………まあ私達も正面から太刀打ちするのは難しいものね………」
ブルーはそれに安堵しつつも、同時に自分達もまず敵わない相手である事を認識させられた。
「………もし敵うとしたらU殿しかいない………けど………」
ビリジアンは唯一Uだけが真子に敵う可能性を感じていた。しかし………
「あの大怪我じゃそうそう復活は出来そうにないよね………」
グレーの指摘通り、今のUは大怪我を負っている為状況は最悪だった。
「………ともかく、私達も対策を考えてみます。皆さんもしばらくはお部屋をお貸し致しますのでそちらで滞在しててくださいね」
舞雪は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々に滞在を依頼する。
「………分かったわ」
ブルー達は舞雪の言葉に頷く様子を見せたのだった………
一方その頃、意識を失っていたUだったが、突如として縁側の方から足音が聞こえると、身体が本能的に危機を訴えたのか、意識を取り戻した。
「う、ううっ………! 何の音だ………うぐっ!!」
この時のUは包帯を身体中に巻かれ、その上に着物を着用していたが、身体中の痛みに苦しみ、布団から出られなかった。そんな中で響く足音は縁側の襖を開けた。そこには髪をツインテールに括った白髪の少女が立っていた。
「真子………!?」
Uは目の前にいるのが白三谷真子である事にすぐ気付いた。真子は部屋の中に足を踏み入れ、布団に横たわるUの前で座った。
「無様だね。まあ、そんなお父さんも嫌いじゃないけど」
真子はそう言って、痛々しい姿のUを小馬鹿にしているが、嫌悪感は全くと言っていい程無かった。
「ここは六道家の総本山だぞ………! どうやって入ってきた………!?」
Uは六道家の懐に真子が入って来た事に動揺していた。
「簡単な話だよ。異次元からゲートを開いて入ってきたんだ。どうせ私対策でセキュリティとか置いてるんだろうけど、そんなもの私からしたら玩具でしか無いよ」
真子は次元を操る能力によって入ってきた事を語る。どうやらこの能力による侵入はセキュリティをも無意味にしてしまう程らしい。
「………何しに来た」
Uは真子の侵入理由を理解するや否や、真子に対し目的を問いかける。
「今回は話に来たんだよ。別に私はお父さんに恨みは無いし………感謝しにも来たんだ」
真子はそう言って話し合いに来た事を語る。
「感謝だと………?」
Uは真子が感謝しに来たと口にした事に対し首を傾げた。
「邪島を倒してくれた事だよ。あの男は私達の人生を壊した元凶だからね。そんな男を倒した事は感謝しかないよ」
真子が真っ先に語ったのは、邪島を倒した事だった。
「………感謝されるものじゃない。今考えたら熱くなりすぎたかもしれない」
Uは邪島を殺した事について後悔はしていないが、気持ちが熱くなりすぎた事を悔いていた。
「私はそうは思わないけどな。お父さんらしい本質だよ」
真子はUの行為を否定せず、逆にUらしいと評した。
「………どういう意味だ」
それを言われたUは少しムッとした表情を浮かべる。
「お父さんは家族や仲間さえいれば世界はどうでもいいんだよね? その気持ち、痛くわかるよ。私だって今は同じ気持ちだもん」
真子が言うように、Uの優先する価値観は世界の平和よりも自身の家族や仲間の無事である。それを言われたUは言い返す言葉が見つからなかった。
「………そんなに六道家が憎いのか?」
Uは目の前にいる真子も自分と同じ価値観を持つに至った事を受け入れる他無く、六道家の憎しみが本当であるかを確かめるように問いかける。
「憎いよ。この世から消えてしまえって思うくらいにはね」
真子は緑色の目を黒く濁ったように光らせながら、六道家への憎しみを語る。
「………それに何の意味がある?」
Uは六道家殲滅の意味を問いかける。
「意味なんて無いよ。強いていえば私達の幸せを奪った事に対する罰かな」
真子は意味など無いと吐き捨てた。強いていえばという理由も語りはしたが、結局彼女には理由など無かった。
「お前はそんな事の為に戦えるのか………!?」
Uは真子の言葉に驚いていた。しかし、真子はUに顔を近付けると………
「………お父さんだって人の事言えないくせに。過去に自分の奥さんや娘が攫われたり危害を加えられそうになったら、なんだって壊そうとした。結局同じなんだよ、お父さんも私も………家族や仲間第一で、大切な存在を傷付けられたら果てしなく憎悪する。それが私達の宿命なんだよ」
真子はUも今の自分と同じである事を突き付ける。それを聞いたUは嫌という程心当たりを思い出すと身体を震わせ、真子と同じく、自身の青い目を黒く濁ったように光らせていた。
「………恥じる事は無いよ。それはお父さんが誰よりも人間らしいと思える証なんだから」
真子はUの本質を責める気は微塵も無く、寧ろそれがUを人間らしいと示す根拠だった。しかし、Uは自身の闇を深堀されたかのように動揺していた。
「あー………傷口を抉っちゃったかな………それはごめん」
真子はここまでの言葉がUの傷口を抉る結果となってしまった事を謝る様子を見せると、Uの事を優しく抱いた。しかし、Uは思わず真子を突き飛ばしてしまった。
「っ………! ………ごめん」
Uは反射的に突き飛ばしてしまった事を思わず謝罪する。
「………そうだよね。幾ら姿形が一緒とはいえ私は貴方の娘の別人だもん。抱き着かれても嫌だよね」
自身は白宮真子では無い。それを突きつけられた白三谷真子は理解するようにそう呟くと、これまで見せていなかった緑色のエネルギーを放出しながら優しくUの身体に触れた。
「………! ………身体が軽い………?」
Uは自身の身体中の痛みが消えていくのを感じていた。
「回復魔法を操る能力を前にコピーしていたんだ。それでお父さんの傷を回復させたんだよ」
真子は自身が既にコピーしていた能力である、回復魔法を操る能力を使ってUの傷を治した。Uが身体中に巻かれた包帯を解いてみると、Uの傷は先程までの痛々しさが嘘のように治っていた。Uが傷の治りように困惑していると、真子はUが愛着している服と全く同じ物を渡してきた。
「………ここで長々と話すとバレそうだし………一旦外に出よう」
真子は話し合いの場所を変える事を提案し、目の前の次元を捻じ曲げてゲートを作り出した。この時のUは真子の事をもう少し探りたかった為、真子から手渡された服を着用すると、真子が作り出したゲートへ真子と共に入るのだった。そしてその直後にUの様子を見に来た舞雪が部屋に入って来たが、一足遅くUはいなかった。
「………え? Uさん………!? ど、どこですか!?」
舞雪はUがいなくなってしまった事に慌てる様子を見せたのだった………
U達が出て来たのは、六道家の屋敷から少し離れた公園だった。この時は夜なのもあって誰もいなかった。
「………今日はお父さんに1つ提案しに来たんだ。私と一緒に六道家を滅ぼしてよ。そうしてくれたら先の事は全部許すから」
真子はUに対し、自身と共に六道家を滅ぼす事を提案してきた。
「馬鹿言え。そんな事をする意味が分からん。それに………仮に戦う事になった場合タダで済むはずが無いぞ」
Uは六道家殲滅には全く興味が無い為、彼女の提案を跳ね除ける。仮に戦う事になった場合、タダでは済まない事を付け加えて。
「そうだろうね。六道理央の親やそれより上の世代もいるし、彼等もかなり強い。でもお父さんにとって不可能って訳じゃないはず。お父さんの中には月の神の力と数え切れない年月の経験がある。お父さんなら六道理央だって殺せるし、本気でお父さんが勝てるって信じてるもん」
しかし、真子は苦戦こそ考慮しているが、Uにとっては不可能な事でもない事を指摘する。
「………それはお前単独でも出来る話じゃないのか?」
それを聞いたUは、真子単独でも六道家は滅ぼせるのでは無いかと問いかける。
「出来るよ。私本来の力による効力は無限大だしね」
真子はUの問いかけに頷いた。それを聞いたUはこの時に、真子本来の能力を確信した。
「………そうか。お前の能力は氷を操る能力でも次元を操る能力でもない………能力をコピーする事がお前本来の能力だったって訳だ………だからリーダーやブルーの能力をコピー出来たし、それ以前に僕の娘の方の真子の能力をコピーしていたから似たような能力が使えた訳だ。そして、次元を操る能力も………」
Uは、白三谷真子が得意とする氷を操る能力と次元を操る能力はコピーによるものである事を口にする。それを聞いた真子はUに対し顔を近付ける。
「それは私の本当のお父さん、白三谷ユウの能力をコピーしたんだ。と言ってもあの時は無意識だったけどね。自覚するのには少し時間がかかったし、それから長々とした旅と調査続きだった。正直、私もこの見た目をしているけど、実際は長く生きてるんだ。多分、本当のお父さんの年齢をゆうに上回っているんじゃないかな」
真子はUの言葉に頷くと共に、彼女自身の年齢はUと同じく見た目に合わない長寿であった。
「………そりゃ強いはずだ。幾ら能力が強い奴でもそう簡単には高みには行けないしな」
Uは真子の圧倒的強さに納得させられていた。
「警告しておくけど、私と戦うなんて選択肢はやめた方がいいよ。お父さんも能力者としては十二分に化け物だと思うけど、私はその比じゃない。前に六道理央と戦った時は少し本気を出したけど、あれもまだ私の全力じゃない。六道理央も私の全力を引き出させる可能性が高いけど、そうなって仮に彼が私に勝ったとしても六道家の半壊は免れられないし、六道家を倒そうとする政府の連中はそこにつけ込んできて第2の争いが生じる。結局、彼では私という悪夢を壊す事は出来ても、他の悪夢に呑まれてしまう事だろうね………まあ、私としてはそれも望ましい結末だけど」
真子はUに対し、自身と戦う道は選ばぬよう警告し、仮に理央が真子を止められたとしても第2の争いが生じてしまうなど、事は真子の思い通りに動いていた。Uもそれを嫌々察知しており、近くのベンチに腰掛けて溜息をつく。
「………いや、仮にあの若いのが戦ってもお前は倒せないだろうな………お前、自分の身体に能力による細工を施しただろ。そうじゃなきゃ右腕が飛んであそこまで落ち着ける訳が無い」
Uは理央でも真子を倒せないと口にする。それは、無錆隼人の攻撃で右腕を斬られてもなおすぐに再生した上に、斬られた時に真子はまるで動揺していなかった事が関係していた。
「………あはっ、お父さんの観察眼は鋭いね。そうだよ、あれは次元を操る能力の拡大解釈による効果だよ。私が操れる次元。その次元の認識を私の肉体に向ける事で、私の身体を1つの次元として解釈し、それを壊されてもすぐに細胞単位で復活出来るよう私という次元の完成系を予め固定しておく。これによって私は擬似的な不死身となっているの。次元を肉体年齢ごと固定しているから老いる事も無いね」
なんと真子は自身の身体を1つの次元として解釈する事で実質的な不死身を獲得していた。それこそが無錆隼人に右腕を斬られても動揺しなかった理由である。
「やっぱり能力の仕業か。という事は肉片レベルで粉々になっても無意味って訳だ」
Uは疑問が解けると共に、仮に真子の肉体を粉々にしても意味は無い事を察する。
「それと私自身に能力封印系の耐性を施しているから、能力封じて勝つなんて馬鹿馬鹿しい真似は通用しないよ。それに、そっちのリーダーの………ブラックデーモンだったかな? あの子の闇を操る能力を獲得した事で実質的な能力中和対策も獲得出来たから、余計に隙は無くなったかな」
更にダメ押しとばかりに能力封印耐性やブラックの能力による能力中和耐性を獲得している事も語る。それを聞いたUは………
「もういい、お腹いっぱいだ。結局はお前を倒せないって話だろ?」
最早倒せないと判断したのか、話の結論を口にした。
「物分りが良くて助かるよ」
真子はUの諦めた様子に嬉しそうな様子を見せた。
「………でも一概にお前の味方も出来ないな。確かにあの若いのにお前を止める事は出来ないだろう。他でもない憎悪の対象なんだから。でも、僕ならお前の憎悪を止められるのか?」
Uは真子に勝てないと分かっていながら、自分なら真子の憎しみを止められるかどうかを問いかける。
「………六道理央よりはマシかもね。でも、私は例えお父さんと殺し合いになってもなんの躊躇いもしない。ああ、死体だけは再生した後に洗脳して私のモノにするよ。本当のお父さんじゃないとはいえ貴方の事は気に入ってるから」
真子は六道理央よりマシと答えつつも、負ける気は無い事を言い放つ。それを聞いたUは真子の憎悪の本気を知り………
「………1日くれ。明日の夜に1人でまたここに来てその答えを語る。ただしどんな答えでも責めたりはするなよ。僕と殺し合いになったとしても………」
Uは1日の猶予を真子に求めた。それを聞いた真子は………
「………分かった。明日の夜にまたここで集合だね。いい返事を期待しているよ」
真子はそう言うと、Uの目の前の次元を捻じ曲げてゲートを生成。Uはゲートの中に入り、その場から消えた。
「お父さんが私の味方になるか、私と殺し合いをするか………どっちを選ぶのか非常に楽しみだよ」
真子は、Uの選択を非常に楽しそうに待つ事に決めたのだった………
Uはゲートをくぐって六道家の寝室に戻ってきた。そこにはUを探していた六道舞雪がいた。
「うわああっ!? Uさん!?」
Uか突如として目の前に現れた事で舞雪は腰を抜かした。
「舞雪ちゃん………?」
Uは寝室に舞雪がいた事に首を傾げていた。しかし、舞雪はUが現れた事に驚いてしまい………
「ど、どこ行ってたんですか!? あれだけの大怪我で動けるはず無かったのに………!」
大怪我を負っていたUに対し、これまでの事を問いかけた。
「………それについて真面目な話をしたい。舞雪ちゃん、インベーダーの連中とレイピア使いのレディ………あと若いのを集めて貰えないか?」
Uはそれを話す為に、理央達を集める事を舞雪に求めるのだった………
その後、大広間に六道理央、六道玲花、六道舞雪、そして、Uと『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々が集結した。
「………さっき、真子と会話をしてた。あの子は間違いなく六道家を滅ぼす気だ。そしてあの憎悪の強さを考えると………僕がなんとかする以外に手段は無いだろうな」
Uはその場にいる者達に、真子に接触した事と真子が六道家を滅ぼそうとしていた事を伝える。
「………あの子を説得する道は無いのか?」
理央は真子を説得出来ないか問いかける。
「無理だな。僕もあの子としっかり話してみたが、あれじゃ言葉の説得は無理に等しい………」
Uはそう言って、言葉での説得は不可能である事を突きつける。それを聞いた理央は残念そうな様子を見せる。
「なら真子ちゃんと戦っても止めるって言うんですか!?」
その直後に舞雪はUに対し、真子と戦う気なのかを問いかける。
「………その線もあまり現実的では無いかな。あの子は実質的に不死身だ。エネルギーか体力切れの勝ちを狙う方法も無くはないが………もしその量が莫大なら、僕が全力で戦わなければならない前提上勝てる未来がない………今のままでは事実上策は無いな」
Uは俯きながら対策は無い事を言い放つ。
「………俺はまだなんとか出来ないかを考えたい」
理央は諦めない様子を見せていたが、Uは理央に背を向けると………
「若いの。お前に真子を止める事は出来ない………あの子が言ってたよ」
真子が語っていた事を理央に語る。しかし、聞いた理央は………
「そうだとしても俺は諦める気は無い」
Uの言葉を聞いても全く諦める気は無かった。それを聞いたUはどうしようもない気持ちになり………
「すまん、今のままではどうしようもない」
そう言って、その場の空気から逃げるように廊下へと出て行ってしまった。
「………Uですら頭を抱える相手ともなると厳しいものでしょうか、総帥?」
ブルーはブラックに対し、今回の事態が厳しいものであるかについてをブラックに問いかける。
「………それでも、世界征服の為には避けて通れない。例えUが動かなくても私達は戦う道を選ぶよ」
ブラックは世界征服の理念を崩す事はなく、真子と戦う事になっても己の道を進む事を口にする。
「無茶よ。貴女達が束になった所で彼女には勝てない」
玲花は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーが束になっても真子には勝てない事を言い放つ。
「勝ち負けの損得感情で世界征服なんて出来ない。それはインベーダーズの誰もが知っている事。六道家が動かないなら動かないでいいよ。私達は独自の道を行くだけだから」
しかしブラックは負けると分かっていても引き下がる気は無かった。それを言い放ったブラックは、ブルー達と共に大広間を出て行ってしまった。
「馬鹿が………あの連中に行かせたら間違いなく殺されて犠牲が生まれる………やっぱ俺達が動くしか無さそうだな………」
理央は『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーでは何も出来ないと考え、やはり自分達が動く他無い事を、舞雪と玲花に語るのだった………
その頃Uは縁側にて、白三谷春香の形見であるロケットペンダントを片手に1人考え事をしていた。
「………真子を殺す事も説得する事も出来ない上に、この世界に六道家が存在する限りはあの子は間違いなく復讐を諦める事は無い………あの子の気持ちは僕が復讐感情に支配されている時と同じくらいにぐちゃぐちゃなものになっている事には違いない………」
Uは真子の心情を察し、思わず同情してしまっていた。ディメンとして協力関係と結んでいた時には途中で不信感を抱いていたUだったが、その結果が復讐であったと知ったUは、過去に何度も復讐に心を支配されていた経験から、真子の行動を間違っているとは言えなかった。
「どうすればいい………春香、せめて君が………本当の母親の君がいてくれたら何か変わるかもしれないのに………」
Uはロケットペンダントを手にし、縋るように春香の助けを求めていた………するとその直後、Uが持っていたロケットペンダントが突如として光り輝いた。
「………さん、Uさん………!」
ペンダントを手にしたUは、突如として自身の頭の中に声が響くのを耳にする。
「………春香? 春香なのか………!?」
Uは突如として聞こえた声に驚いていた。
「………貴方が今持っているロケットペンダントを首にかけてください。詳しい話はそれからです………!」
白三谷春香と思わしき声の主は、Uに対してロケットペンダントを首をかけるよう指示する。それを聞いたUはロケットペンダントを首にかける形で身につける。するとその直後、Uの意識は突如として吹き飛び、視界が真っ白になったのだった………
Uが次に意識をはっきりさせた時には、目の前に春香が立っていた。
「春香………!?」
Uは目の前に春香が立っていた事に驚いていた。
「お久しぶり………という程でも無いでしょうか。Uさん、またお会い出来ましたね」
春香は、Uと再会出来た事が嬉しそうな様子を見せる。
「………今程君に会いたかった時は無い………真子が………君の娘が六道家を滅ぼそうと動いている………何か手はないか教えてくれ………!!」
Uは春香に対し、縋る思いで対抗策が無いかを問いかける。
「………ごめんなさい、私もそう簡単には思い付きません………」
しかし、春香にも真子を止める術は何も無かった。Uが打つ手無しかと考えかけたその時………
「………手はある」
突如として、Uと同じ声と思われる男性の声が聞こえた。Uが声の聞こえた方を向くと、なんとそこにはUと全く同じ顔の人物が立っていた。
「アンタは僕………では無いな………?」
Uは目の前に立つ自分と全く同じ顔の人物に首を傾げていた。
「………俺は白三谷ユウ。そこにいる春香の夫だ」
Uと同じ顔の人物………もとい白三谷ユウは名乗った。それを聞いたUはこの上なく驚いた。
「アンタが白三谷ユウ………僕のパラレルの存在か………!?(ま、まさかこんな形で邂逅するなんて思ってもなかったな………)」
Uの驚きようとUの言葉を聞いたユウは、その様子からUの事を察した。
「成程………異なる次元の俺がお前なのか。本当によく似ている」
ユウはそう言って呑気な様子でUの顔を見ていた。
「………って、そんな事言ってる場合か。今は真子を止める方法を求めてるんだ。手があるとは言ったが、果たしてそれはなんだ?」
Uは白三谷ユウの言う手について問いかける。
「………俺達の声を聞かせる事だ。恐らく今のあの子には誰の声とて響きはしない。しかし、俺や春香の声なら話は別だ。恐らくそれしか手は無い」
ユウの考えた策は、自分達の声を真子に聞かせると言ったものだった。
「そうは言ったって、死人の声なんざどうやって聞かせるんだよ………?」
Uは策が物理的に不可能であると考え、当時に首を傾げる様子を見せた。
「………出来る。お前が今身につけているそのロケットペンダントがあれば可能だ」
ユウはUの首元にあるロケットペンダントを指差す。
「………これがか?」
Uは首を傾げながらロケットペンダントを手にする。
「その中には俺と春香の魂が未練を残す形で宿っている。あの子を助けられるなら俺達の力など幾らでも貸してやる」
ユウはロケットペンダントの中には、2人の未練という形の魂が宿っている事を語る。
「………分かった、アンタらの力を借りる事にするよ。何とか僕があの子にこれを渡してみせる。もし真子がこの世界に来たら………その後は頼む」
Uはそう言って、首にかけていたロケットペンダントを外す。すると、目の前の空間が突然薄れ、Uの意識はまたしても飛んでしまうのだった………
Uの意識は途端に現実に戻ってきた。
「(………! ………今のは夢か? それとも………)」
Uは混乱しながら意識が戻った事を確認する。そして視線を下に向けると、そこにはブラックが立っていた。
「え? ………うわあああっ!?」
Uは情けない声を上げながら驚く様子を見せた。
「うわっ!? ビックリした………! 急に驚いてどうしたの………!?」
ブラックはUの様子に驚きを隠せずにいた。Uは我に返る様子を見せながら周辺を見回すと、そこには『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々が立っていた。
「いや………ちょっとね」
Uはそう言うと、ロケットペンダントに目を向け………
「でもお陰で一か八か………策に出る事は出来そうだ」
Uはとある覚悟を決める様子を見せる。ブラック達はUの様子に首を傾げていたが………
「今後の事を改めて話したい。でも正直賭けの混じった話だ。インベーダーズの皆にだけ先に話をしておくよ」
Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々には自身のこれからの計画を語る事に決めたのだった………
その後、Uは寝室代わりに借りていた部屋にて自身のやろうとしている事を伝える。
「………という策を持って、僕は真子と戦おうと思う」
Uが決めた答えは真子と戦う事だった。
「………褒められた策ではないわね。まず間違いなく貴方が死ぬ」
しかし、策が危険過ぎるのか、ブルーから真っ先に反対された。
「覚悟の上さ。そもそもあの子を物理でも説得でも止められないならもう奇跡に賭けるしか方法は無い」
Uはロケットペンダントを片手にそう言い返す。
「でも、本当にその中に春香殿の魂は宿っているの………?」
ビリジアンはUから聞いた話の中で、春香の形見のロケットペンダントに魂が宿っているなどという、Uの話を疑っていた。
「………真意は分からないさ。でもやらないよりマシだと思う。どうせ、僕が全力出しても殺せない相手なんだ。間違いなく真正面から戦ったら僕にあるのは死だけだ。ならやるしかないだろうに」
Uは確信こそ無かったが、真正面からの解決が無理な以上試す価値はあると考えていた。
「でも、仮に成功したとしてもUくんはタダじゃ済まないよね………?」
ピンクは仮に策が成功しても、Uが無傷で帰れる保証が無い事を問いかける。
「間違いなくな。しかし、これをあの子が素直に受け取るはずも無い。渡すにはもう不意を突く………言うなればあの子の隙を作り出すしかない。その為なら何度だって死の淵で耐えてみせるさ」
Uはそう言って、ロケットペンダントを懐にしまう。
「皆には万が一の場合を考えてここに残っててほしい。僕に気を引かせる必要があるとしても、あの子は六道家を今すぐ滅ぼそうとすればそれが出来る可能性が高い。だからこそ、時間稼ぎでもいいからここを守って欲しい。頼む………これ以上あの子を復讐という闇に取り憑かせたくないんだ………!」
Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーに対し、頭を下げてまで自らの策に乗るよう依頼する。ブルー達はどのように答えるべきかと悩んでいたが、そんな中でブラックが口を開いた。
「………分かった、Uの作戦で戦う事にしよう」
ブラックはUの策に乗る事を言い放つ。
「総帥………!?」
ブラックの言葉にブルー達は驚いていた。しかし、着後にブラックは続けて言い放った。
「ただし! ………絶対に生きて帰ってくる事。貴方は私達の仲間………6人目の戦士、ホワイトソードマンなんだからね。死んだら承知しないから………!!」
策に乗る条件として、Uの生還を求める言葉を。それを聞いたUは再び頭を下げると………
「………恩に着る、リーダー………!」
ブラックに対し、強い感謝を向けたのだった………
その後、Uは六道理央達にも真子との対決を決めた事を伝える。但し、伝えた内容はUに危険が及ぶ事に違いない事は伏せたものであった。
「………お前1人でそれが出来るのか?」
理央はU単独で真子と対決する事に疑問を感じていた。
「やるさ。それが僕に課せられたやらねばならない事だからな」
Uはそう言って理央に対して背を向ける。
「………もし真子の刺客が来ても手を抜くんじゃないぞ。いいな、若いの」
それと同時に警告をかけると、Uは理央達のいる大広間を後にした。
「………Uさんを1人で行かせて大丈夫かな………?」
舞雪はU単独での戦いになる事について疑問を感じていた。
「大丈夫さ………アイツの目は真っ直ぐだった。それに、アイツの雰囲気は俺から見ても底知れなかった。止めてくれると信じてみるのも悪くないかもな」
理央はUになら任せられるのではないかと、この時考え始めていたのだった………
翌日、Uは朝から夕方にかけてまで睡眠や食事などで休息を取り、夕日が落ちようとする頃、Uはいよいよ約束の公園へと向かう事になった。Uの旅立ちには理央を始めとした、留守を託された面々が玄関で見送ろうとしていた。
「………行ってくる。後は任せた」
Uはそう言うと、バイクに乗って目的の公園へと走り出した。Uの背を見送った理央達は、Uの姿が見えなくなったと共に、身構える様子を見せる。
「………奴の言う通り………何かがこっちに来ようとしているな………」
理央はこの場にいる者の中で、真っ先に敵の気配を感じとった。その言葉に舞雪と玲花、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバー達が辺りを見回す。すると、六道家の屋敷周辺の次元が次々と捻じ曲げられ、無数にゲートが出現し、その中から、氷の騎士に似た氷の鎧を身に纏った兵士が無数に出現した。
「Uの言う通りの展開になりましたね総帥………」
ブルーは、目の前の危機的状況を前にそう呟く。
「それでもやるしかない。Uの帰りを信じてね………!」
しかし、ブラック達はUが帰ってくる事を信じており、既に戦闘態勢に入っていた。
「………行くぞ!!」
そして、理央の声と共に理央達は走り出し、氷の鎧軍団との戦闘へと突入するのだった………
一方、バイクで例の公園に向かったUは、公園のブランコを真子が漕いでいるのを目にする。
「………待っていたよ、お父さん」
真子はブランコを止めると、待ち侘びていたかのようにそう呟く。Uもバイクを下りて公園に入ると、公園の砂場を中心に、両者は顔を合わせた。
「約束の時間になったね、答えを聞くよ」
真子はUに対して答えを求める。Uは懐に手を伸ばすと、素早い手つきでSOCOMピストルを取り出し、真子の心臓目掛けて弾丸を放った。
「………この通りだ」
SOCOMピストルから放たれた弾丸は真子の胸を貫き、間違いなく心臓を貫いた。しかし、真子の心臓を始めとした胸はすぐに元の形へと戻った。
「やっぱり愚かしい選択を取ったね。まあ、薄々そうなんじゃないかって思ってたけどさ」
真子はそう言うと、自身の身体から氷のエネルギーを解放。真子の周囲一帯にとてつもなく冷たい冷気を発生させる。
「私の最強の形態………ディメンションブリザードって名前にしようかな。その姿で貴方を殺す………!」
真子はそう言って、Uへの殺意を明確にした。
「………容赦はしない。例えお前が何度甦ろうと、僕は殺し続けるだけだ………!」
Uはそう言うと、自身の身体に宿る月の神の力を解放。これにより白い触手が出現する。
「そのエネルギー………それがお父さんの最強形態の力………ムーンシロミヤって名前の形態だったかな………望む所だよ………貴方を殺して、私好みの人形にしてあげる………!!」
両者が対決の覚悟を語る中、互いの放出したエネルギーがぶつかり合い、中間で小さな爆発を起こした。そして爆発を契機に真子は目を赤く光らせ、Uは右目を青、左目を緑に光らせた。
「「変身………!」」
互いに変身の掛け声を口にした事で、同時に力が解放。真子側はダイヤモンドのような透明さが目立つ氷の鎧を生成し装着。それと同時に真子の右手に紫の刀身と水色のグリップである剣、ディメンションソードが生成される。一方、U側は白い触手がUの身体を多い、白い光の鎧を形成し装着される。そして、Uの身体を覆っていた触手が彼の背中へ収まる形で変身が完了し、右手に愛用のビームサーベル、ZEROセイバーが装備された。
「………はあっ!」
2人が同時に走り出すと、互いに剣をぶつける。Uはセイバーによる攻撃が止められてまもなく、左手から衝撃波を放つ事で、真子の右手をぶっ飛ばす。これにより、ディメンションソードごと真子の右腕が吹っ飛んだが、すぐにディメンションソードごと右腕の形に戻って真子の右手にくっついた。しかし、Uは攻撃の手を休めず、セイバーに赤いエネルギーを纏わせる。
「{オメガセイバー}!!」
Uはセイバーによる斬撃を真子に直撃させると共に、真子の身体に触れたと同時に起こる爆発で、真子の身体を跡形もなくぶっ飛ばした。しかし、真子は次元を操る能力による拡大解釈によって、身体はすぐに完全に再生させ、ディメンションソードを振るって、Uの左頬を軽く斬った。
「………やはり跡形もなくバラバラにしても意味は無いみたいだな………分かってた事だが………」
Uは斬られた左頬を左手の甲で軽く擦りながらそう呟く。真子は持っていたディメンションソードのグリップを斜めに傾ける。それによりディメンションソードの紫の刀身は鏡のように割れ、水色の銃ブリザードガンへと変化。更に氷のエネルギーをブリザードガンへ集束させた。
「私より自分の身体を心配した方がいいよ………{ブリザードヘルブラスト}!!」
真子はブリザードガンから、氷のエネルギーを集束させたレーザーを放つ。
「止める!」
Uは背中から生えている触手を1つ切り離すと、Uの目の前に動かし盾替わりにブリザードガンから放たれたレーザーを受け止める。これにより、盾替わりになっていた触手は完全に凍結し、地面へと落下して破壊された。Uの切り離した触手の根元から新たな触手が生えると、Uは触手全てを小型ドローンのように切り離し、触手から光のレーザーが放つ。これにより、真子の身体を次々と貫通した。
「そんな使い方もあるんだ………それは凄いけど………どれも私への決定打にはならないよ!」
しかし、真子の身体は次々と再生し、ブリザードガンから氷の弾丸を放つ事で、触手を絶対零度の氷で凍結させ、触手は地面に落下してガラスのように割れる。
「そんな事はとうの昔に分かってるんだよ!!」
Uは真子に向けると共に、自身に発破をかけるかのように声を上げると、背中の触手を全て再生させ、セイバーの光の刀身に宇宙を想像させるようなエネルギーを生成させる。
「本命は銀河をも斬り裂くこの一撃だ! {ギャラクシーセイバー}!!」
Uは銀河を思わせる斬撃を真子に向けて飛ばす。Uの飛ばした斬撃は真子を大きく吹き飛ばすと共に、身体を上半身と下半身に分断させ、多量の血を吹き出させた。
「うあああっ!! ………なーんて。しかし、えげつない一撃を叩き込んできたね。私じゃなきゃ間違いなく死んでたよ」
真子は1度悲鳴をあげたが、Uを小馬鹿にするかのようにわざとやったものであり、真子の身体はすぐに元の形へと戻った。だが、Uは真子の身体が元に戻るこの隙に背中の触手を操作し、真子の手足を拘束する。
「………何度か再生する様子を見て分かったよ。その再生には少しラグがあるらしいな」
Uはそう言って、不死身である真子の数少ない弱点に気付く様子を見せる。
「………そうだね。私の身体を元に戻す力はあくまで次元を操る能力の応用。肉片レベルで再生する事は出来るけど、元に戻るまでにはどうしても時間がかかってしまう問題もある」
真子は冷静な様子で自身の不死身を形成している能力の弱点を語る。
「………まあ、結局はそれも織り込み済みなんだけどね………!」
しかし、真子はそう言うと、突如として自らの身体を爆発させた。これにより、Uの触手が炎上し、Uは反射的に触手を切り離す事で難を逃れたものの、爆発に怯む様子を見せた。
「なあっ!? (自爆………!?)」
Uは真子が何の躊躇いも無く自身の身体を自爆させた事に愕然としていた。その直後、真子の身体は復活。ブリザードガンのグリップを元の直線上に戻す事で、紫の刀身が再生され………
「{ディメンションヘルスラッシュ}!!」
Uに向けて紫の斬撃を飛ばす。怯んでいた事で足が止まっていたUは斬撃を止めるだけの反撃が間にあわないため、右に飛んで回避。結果として斬撃は左肩にぶつかったものの、切断は免れる事が出来た。しかし、左肩から開いた傷は大きなものであり、血が次々と流れ落ちていた。
「私の身体を次元に見立てているという事は、私という次元を爆発させる事も容易ってわけなんだよ」
どうやら、今の爆発もまた真子が得意とする次元を操る能力の応用とも言えるものだった。
「本当の意味で死なないとはいえ無茶苦茶な攻撃をしやがって………自身の生命が惜しくない所は本当に僕に似ているらしいな………」
Uは、白三谷真子の中で生命に対する惜しさがUと同じでまるで無い事を悟っていた。
「最低でも私に負けが無い以上、これは有効な攻撃の1つだよ」
Uの言葉に対し、真子は自爆すらも自らの有効的な攻撃手段であるという、常軌を逸した考えを口にした。Uは一瞬言葉を失っていたが………
「………なら、僕も遠距離から攻めるなんて甘ったれた策は捨てよう」
Uも自身の生命を捨てる覚悟を強めるかのように、大きく跳躍し………
「{ワイルドソニックアタック}!!」
ドリル状の回転キックを真子に向けて放つ。真子は氷の壁を生成するが、Uのキックによって軽々と貫通され、そのまま真子の身体に風穴を開けるキックを直撃させる。真子の身体はすぐさま再生されるが、Uは地面に着地して間も無く真子の右手に右足の回し蹴りを決め、真子の手からディメンションソードを取り落とさせると、そのままセイバーによる斬撃を連続で叩き込み、真子を細切れにするかの如く斬り続ける。
「(お父さんの手が止まらない………私に何もさせないつもり………? でも甘いよ………!!)」
しかし、真子は右手を再生させるなり、Uの左手首を掴み、そのまま自身の身体に蒼炎を纏わせる。
「おわっ!?」
Uは月の神のエネルギーによって大幅にダメージを軽減するが、それでも怯んだ為に隙を生み出してしまい、Uの左頬へ鋭い右ストレートを炸裂させ、更に蒼炎による追加ダメージをUにくらわせる。
「ぐっ!?」
Uは一瞬視界が揺らいだ。真子がすかさず左拳によるアッパーカットを狙ってきた。Uは反射的に右腕で防ぐが、蒼炎のダメージはUに襲いかかった上に、攻撃を受けた際の衝撃でセイバーを取り落としてしまった。
「ううっ!? (くそっ………!)」
真子は右回し蹴りを放ってきたが、Uは後ろへ下がって回避を行う。
「(何発も攻撃をくらうと嫌でも分かる………正直言って、神と相手にしてるみたいな強さだ………人間の強さの域を遥かに凌駕している………!)」
Uは真子の強さを神クラスのものであると考えており、自身と同じ域に立っている事を嫌々感じさせられていた。
「(………でもそれを分かってこの喧嘩を買ったんだろうが………!!)」
だが、Uは自らを奮い立たせる事で、右手に月の神のエネルギーを収束させると、目にも止まらぬ速さで真子の懐に潜り込み、鋭いパンチを真子の左頬に炸裂させた。
「ぐうっ!?」
真子は一瞬姿勢を崩した。その隙にUは右足にエネルギーを纏わせた後ろ回し蹴りで真子の右脇腹へ直撃させ、真子を大きく吹き飛ばすと共に、右脇腹に穴を開けた。
「(一瞬で格闘戦に勝負を変えてきた………やっぱり踏んできた場数が私よりも多いのは苦しいかな………)」
真子はUの戦闘経験の多さを強く実感していた。真子の右脇腹はすぐさま再生されたものの、Uは取り落としていたセイバーを拾い、自身の月の神の力を全て集束させる。
「{アルティメットセイバー}!!」
Uは月の神のエネルギーを纏った極大の斬撃を飛ばし、真子の身体を再びバラバラにした………
「………! いや、違う………あれは他次元へのゲート………!?」
………と思われたが、なんと真子は目の前の次元を捻じ曲げる事でゲートを生成し、Uの飛ばした斬撃はゲートの中に吸い込まれた。Uはまんまと攻撃をかわされた事に動揺していたが、直後にUの腹部に刃物が突き刺さり、そのままUの背中へ貫通する感触がUの身体に襲いかかった。
「があっ………!?」
Uは一瞬何が起きたか分からなかった。Uは視線を下に落とすと、Uの足元にはゲートが開かれており、最初にディメンションソードが現れ、続いて真子がゲートから出現した。
「油断したね………! 私の根本の能力を忘れてもらっては困るよ………!!」
真子はそう言うと、ディメンションソードを伝う形でUの身体へ自身のエネルギーを放出してきた。
「うああっ!? おま………え………!?」
Uは真子がコピーを狙っている事を察して青ざめていた。しかし、Uの力は人間の手に余るどころか、適合出来ないものは死ぬ程のものであり、コピーの段階で真子の身体から電撃と火花が散らされている様子から、流石の真子もとてつもない負担を負っていた。
「うあああっ………!!」
真子は痛みによる声を漏らしており、今回ばかりは本当に言葉に出来ない負担を感じているようだった。真子の常軌を逸した行為を目の前にした、Uは腹部に刺さる痛みや、コピー時に発生するショックを無意識に忘れてしまう程に、目の前の光景に戦慄する様子を見せていたのだった………
一方その頃、六道家の屋敷にて理央達は、無数の氷の鎧と戦っていた。その数は少なく見積っても万単位であり、舞雪と玲花、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々はキリのない数の氷の鎧を倒しては、追加軍勢を呼び出されるという無限地獄に陥っていた。
「数が多すぎるよー!!」
ピンクやグレーは不満を漏らしていた。
「文句を言わないの! これでも六道理央がいるだけ助かっているんだから………!!」
ブルーは2人を叱責する様子を見せる。2人が理央に目を向けると、理央は息を切らさぬまま、まるでドミノ倒しの如く氷の鎧数百体を一瞬で蹴散らしていた。
「………ギャグ漫画の如く敵が吹っ飛んでいくね………」
ピンク達は理央の圧倒的強さと、無双する様に言葉を失っていた。実際、氷の鎧はゲートから無数の追加兵を出しているから何とかなっているだけであり、この時点で既に数千体は倒されているという、六道理央無双が起きていた。
「六道理央が味方にいるだけでこんなに頼もしい事になるなんて………!」
ピンク達の中で、六道理央がいる事への安心感が生まれた事からモチベーションを取り戻し始め、次々と氷の鎧を倒していく。こうして氷の鎧の勢いが弱まってきたタイミングにて、ゲートの中から巨大な氷の鎧が出現した。
「で………でっか!?」
巨大な氷の鎧の登場に、その場にいた六道理央を除く全ての者が驚いていた。ブルーが試しにコルトパイソンによる狙撃を行うが、放たれた弾丸はまるでビクともしなかった。
「これは………大きさに比例して防御力も相応に高くなっていますね………」
ブルーは大きさに加え、防御力の高さを直感する。しかし、理央だけはまるで怯んでいなかった。理央は近くにいた氷の鎧の頭を踏み台替わりに大きく跳躍する。そして、巨大な氷の鎧に接近すると………
「くらえ! {六道流岩突}!!」
理央は右拳の鋭い突きにより、巨大な氷の鎧のボディーに穴を開けて粉砕する。その光景を見た『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々は驚きを隠せなかった。
「いや………強いと言ってもここまで無双するんだね………やっぱりUくんとは違うベクトルで強い訳だよ………」
中でもグレーはドン引きしながら理央の強さを感じていた。しかし、これによって氷の鎧の軍勢が失速する訳では無く、寧ろゲートから出てくる数が増していた。
「………キリがねぇな」
これには理央も愚痴を漏らす。だが、個々を死守しなければならない以上、ここで戦いを投げ出す事は誰にも出来なかった。
「(確かにしんどい………けど、Uが目的を成し遂げてくれるまで私達は戦い続けるしかない………それが、Uとの約束だもん………!!)」
更に、ブラックを始めとした『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のメンバーは、Uの為に戦っていた。その為、理央達六道家の面々と、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のブラック達は、目の前の無限とも思える軍勢に挑むのだった………
そして視点はUに戻り………真子が負担を背負いながらUの力をコピーする光景に戦慄していたものの、少しして我に返ると、ディメンションソードの刃を掴み………
「やめろ!! 月の神の力はただの力じゃない! コピーして適合出来なきゃお前がどうなるか分かったもんじゃない!!」
Uは真子にコピーを止めるよう声を荒らげる。しかし、真子は引き下がる事は無かった。身体から電撃と火花を散らしながらもコピーを成功させた真子は右足でUの身体を蹴飛ばし、ディメンションソードを引き抜く。
「ぐあっ! ………ゲホッゲホッ!!」
Uは腹部と背部からの出血と、吐血により咳き込む様子を見せていたが、真子が月の神の力をコピーしたのを目の前にし、痛みに耐えながらセイバーを構える。
「ふはは………! お父さんの能力はコピーしたよ………!!」
真子は狂気じみた笑いを零しながら、コピーした月の神の力をディメンションソードに纏わせる。しかし、月の神の力を発動した瞬間、再び真子の身体から電撃と火花が散らされた。
「ううっ! あああっ!!」
月の神の力のとてつもない負担に苦しむ真子だが、真子もUと同じく必死に痛みに耐える様子を見せ………
「ぐうっ………! {フルチャージセイバー}!!」
Uの必殺技である{フルチャージセイバー}を発動し、斬撃をUに向けて飛ばす。しかし、Uもセイバーにエネルギーを集束させ………
「{フルチャージセイバー}!!」
真子が飛ばしてきた斬撃が、彼の持つセイバーに触れたタイミングにて、同じフルチャージセイバーを発動。これにより、Uが持っていたセイバーはUの手元から吹き飛ばされるが、真子の放った斬撃を防ぎきった。
「(月の神の力までコピーされた以上、もう互いに引けねぇ………!!)」
しかし、真子が月の神の力をコピーしたのはUにとって大きな事態だった。完全に後が引けない状況の中、Uは………
「こうなったらもう僕にお前は止められそうもない………だけど、月の神の力はただの力じゃない………! お前には扱いきれない事を教えてやる!」
Uは大きく跳躍すると、背中の触手を切り離し、Uの右足に触手が装着される事により、触手はドリル状の形を形成し………
「くらえ! {ムーンライトフィニッシャー}!!」
Uは必殺のキックを放つ。それを見た真子は………
「上等だよ!! お父さんだって私には勝てない!!」
Uの言葉に乗るようにそう言い放つと、真子も大きく上昇。キックを放とうと向かってきているUに対抗するかのように、右足に紫と水色のエネルギーを集束させ………
「{ディメンションブリザードエンディング}!!」
2つの能力のエネルギーを宿したキックを放つ。これにより互いに放ったキックが激突し、激突時にとてつもない衝撃を発生させ、2人を吹き飛ばした。
「「うあああっ!!」」
互いにダメージによる声を漏らした後、Uは地面に激突し、大きなダメージを負った。真子も衝撃によるダメージはタダではすまなかったらしく、地面に落下した際に右足が吹き飛んでいた。次元を操る能力の拡大解釈によって右足はすぐに再生したものの、月の神の力の負担も相まって、真子もかなり消耗していた。
「だいぶ消耗しているらしいな………これは僕の能力をコピーしたのが仇になったらしい………!」
Uは近くの木を支えに立ち上がり、真子を挑発すると共に、キックの時に失った触手の分を補填するかのように、背中の触手を再生させる。一方で、真子は足元がふらつきながらもなんとか立ち上がると………
「お父さんだってもう限界が近いくせに………!」
真子もUの限界が近いという図星を突きながらそう言い返す。
「………言ってくれるぜ」
Uは真子の図星に対して苦し紛れにそう言い放つ。
「(………くそっ、ここまで来ると何を言っても強がりにしかならないか………まあ、限界が近いのは事実だしな………)」
実際問題、この時点でUの体力は限界を迎えかけており、何を言っても真子に対しては強がりにしかならない事をUは嫌々感じていた。
「(僕の身体にあるエネルギーは後少ししかない………ブラスターに賭けるしかないか? 諸々考えて後2発しか撃てそうに無いが………僕の目的を果たすにはそれしかない………!)」
真の意味で後が無くなったUは、両手を組み合わせ、両手の中でエネルギーを生成する。
「こうなったら、思いが込められた僕のもう1つの切り札、{シロミヤブラスター}でケリをつけさせてもらう!!」
Uはそう言って、大技に全てを賭ける覚悟を決めた。
「(お父さんは残りの体力もエネルギーも少ない中でなんでまた大技を狙うの………? 私に幾ら致命傷を与えても殺す事は………いや、違う………! もしや、私の体力切れが狙い………?)」
真子は実質不死身となっている自身に、何故またしても大技を狙うのかが不可解だったが、自分の中で思考を繰り返す内に、Uが何を狙っているのかを予想し始めていた。
「(………確かに私にも体力切れの概念はある………お父さんの狙いは私の無力化? 確かにそれなら殺さずして私への優位は取れるかもしれない………お父さんが何を企んでいるのか読めない以上、私もただ攻撃を受ける事は危険かな………)」
真子はUの狙いが読めない事から、ただ攻撃を受ける方向性はやめた。そしてその直後、真子は持っていたディメンションソードを地面に突き刺すと、Uと同じように、自身の両手を組み合わせ、手の中でエネルギーを集束させ始めた。
「………! シロミヤ………ブラスター………!?」
Uは真子が自身の大技を模倣しようとしている事に大きく動揺していた。しかし、再び月の神の力を解放した事により、三度真子の身体から電撃と火花が散らされる事となった。
「………お父さんの狙いが何かは私にも分からない。けど、今の私にはお父さんが全ての力を発揮したとしても無意味であるって事を、この技で教えてあげるよ………!!」
真子はそう言って、自身へのとてつもない負担覚悟で{シロミヤブラスター}を狙う事を決めた。真子が真正面からぶつかり合いを選択してきた事に動揺するUだったが、既に{シロミヤブラスター}を選択したUは今更選択を変えられなかった。
「………そうか。やって見ろよ………!」
Uはこのまま対決する事を選択。それから間もなくして互いにエネルギーの集束が完了した。
「(この一撃で全てが決まる………私は絶対に負けない………!!)」
真子はこの一撃こそ決着をつける最後の激突であると考えていた。
「………行くぞ!!」
Uが声を上げたと同時に、2人は組み合わせていた両手の中にあるエネルギーを解放する。
「「{シロミヤブラスター}!!」」
2人の声と共に、2つの巨大なエネルギー波が互いの両手から放たれ、2つのエネルギーが中央で激突。これにより自らのエネルギーを相手にぶつける為の押し合いになった。
「ぐうっ………! ううっ………!!」
Uは汗をかきながらも両足で何とかその場に立ち止まるように耐えていた。
「くっ………ああっ………!!」
一方の真子は自身の身体から電撃と火花が散る中で、懸命に耐えていた。
「まだだ………{シロミヤブラスター}………連発だああ!!」
しかし、Uはそのまま{シロミヤブラスター}の2発目を放つ。これにより、真子の{シロミヤブラスター}が劣勢に追い込まれていた。
「ぐうっ………あああっ!! (重い………! このままじゃ押されて負ける………!!)」
真子はタダでさえ月の神の力の負担を背負っている為、このまま直撃を貰えば間違いなく体力切れを起こし、戦闘継続が出来なくなる状態だった。しかし、真子は自身に敗北の二文字が見えた瞬間、頭の中で自身の親である白三谷ユウと白三谷春香の事を思い出していた………
「(………ダメだ………このまま負けたら私は2人の仇を取れない………! 私は………本当のお父さんとお母さんの為にも………負けられない………!!)」
真子は、今自身がなんの為に戦っているのかを思い出すと、俯きかけていた視線を巨大なエネルギー波に向け直す。
「負けて………たまるかああ!! {シロミヤブラスター}、連発!!」
そして真子は負担など知らんと言わんばかりに2発目の{シロミヤブラスター}を放つ。これにより真子の身体から散らされる電撃と火花の量は更に増えており、この時には真子の負っているダメージはもう人間には想像出来ない域に達していた。
「私は六道家を滅ぼして、お父さんとお母さんの仇を取る!! 2人の為にも負けられない!! その為なら………私の身体なんてどうなってもいい!! ………{シロミヤブラスター}………3発目!!」
しかし、真子は自身の想いを貫き通す事を優先した。これにより、真子はUの放つエネルギー波すら上回る威力を形成する3発目を放った。Uは元々2発しか撃てないと見立てていた為、この状況は完全にマズかった。だが、Uはそれよりも、真子の中にある白三谷ユウと白三谷春香に対する想いが、自らの安全すらも捨てる程である事に驚きを隠せずにいたと共に、感心を寄せてしまってもいた。
「(………パラレルだとしても、やっぱりお前は家族想いな子なんだな、真子………)」
Uはこの時真子の強い想いを心の中で認めていた。そして、2人の放った{シロミヤブラスター}のエネルギーはUの方へと押されていった。Uは反射的に背中の触手を使って自身の身体を防御するが、そのダメージは触手の盾を持ってしても防ぎきれなかった。
「うわああああああっ!!」
Uは{シロミヤブラスター}合計5発分のエネルギーをくらい、大きく吹き飛ばされた後に近くのブロック塀に激突。それから間も無くして、Uの触手は鎧ごと光となって霧散してしまい、Uは服がボロボロになる程の重症と、多量の出血をしながら、ブロック塀を背の支えにその場へ座り込んでしまい、視線を地面へと俯かせた。
「押し………切った………ぐああああっ!!」
一方の真子も負担によるダメージは尋常では無く、身に纏っていた鎧が鏡のように砕け散ったと共に、1度地面に倒れた。
「はあっ、はあっ………やっぱり………月の神の力による大技連発はかなり無茶だったのかな………」
真子は全身に走る負担に苦しみつつも、近くに突き刺していたディメンションソードを杖代わりに何とか立ち上がり、ふらついた足取りでUの近くへと近づいた。
「………まだ辛うじて生きてるみたいだね………残っていた力を全部防御に転用したから出来た事なのかな………まあでも、結局は私の勝ちみたいだね………」
真子はそう言ってディメンションソードをUに向ける。Uは朦朧とする意識の中で、自身の懐に手を当てる。
「(………生き………てる………辛うじて………)」
今のUに分かるのは、自身が辛うじて生きている事と、真子がディメンションソードを片手に自身の前に立っている事だった。真子はディメンションソードを持ち上げると………
「………どうせ後で傷は治すけど………お父さんには綺麗に死んで欲しいからね………心臓を一突きして葬ってあげるよ………!」
そう言って、Uの心臓目掛けて突きを放つ。最早生きているだけの状態であるUにはかわす事も防ぐ事も出来ず、ディメンションソードの突きがUの胸に刺さり、そのまま心臓を貫いた。
「があっ………!」
Uは口から血を吐きながら、懐に入っていた右手が握り拳を作りながら重力に従うかのように垂れる様子を見せた。
「(心臓を突いた感触………これで………!)」
真子はこれによってUを殺したと考えていた………
「………この時を………待っていた………」
しかし、Uは言葉を漏らすと、右手に光のエネルギーを纏わせ、真子の左胸に向けて拳を突き出す。Uを殺したという満足の感情が出てきてしまっていた事で、完全に隙を晒していた真子は、Uのパンチを防げず、自身の左胸を貫通する攻撃を受ける事しか出来なかった。
「えっ………!? な、なんで………!?」
真子にはUの行動の訳が分からなかった。そしてこの時にUは、真子と対決を決めた時に、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々に話した作戦を思い出していた………
話は前日へと遡り、Uは六道家の屋敷にある寝室代わりに借りていたとある一室の中で、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々に作戦を語り始めた。
「まず、前提条件だが………真子を殺す事は出来ないし、説得も不可能だ。しかし、真子の復讐を止められる鍵は1つだけある。それは………これだ」
Uは、春香の形見であるロケットペンダントをブラック達に見せる。
「それって………春香殿の形見のロケットペンダントだよね………? でも、それでどうやって………?」
ビリジアンは、春香の形見のロケットペンダントがなんの役に立つのかと首を傾げた。
「………信じられるかは分からないが、この中には春香と………白三谷ユウの未練とも言える2人の魂が宿っている。僕の説得でも無意味なら、本当の両親である2人しか、最早あの子は救えないだろう………」
Uはこの時に、ロケットペンダントの中には白三谷ユウと白三谷春香の魂が宿っている事を明かした。
「このロケットペンダントを身に付けた際に、僕は2人の魂と会う事が出来た。だから、これを身に付けていれば真子と会わせられるかもしれないって訳だ」
Uは偶然とはいえ、ロケットペンダントを身に付けた事が2人と邂逅したトリガーであると仮定し、これを真子に身に付けさせる事を考えていた。
「………しかし、白三谷真子がそれを受け入れるとは到底思えそうもないわね………」
だがブルーは、そんな事を真子が受け入れる訳が無いと反論する。
「だろうね。でも、さっき思い付いたんだ。真子相手なら身に付けさせる以外の方法で2人に会わせる別の方法がある事を………!」
Uはそう言うと、ロケットペンダントを右手に握りこんで、そのまま右拳で素振りのように突きをする動作を行うと………
「真子の次元を操る能力………それによる不死身の特性を利用する………!!」
Uは真子の次元を操る能力の拡大解釈によって起きている、真子の不死身の特性を利用する事を宣言する。
「い、いったいどうやってそんな事を………?」
ピンクは首を傾げながらUに問いかける。
「真子の不死身の特性は、真子の肉体を肉片や細胞レベルで1つの次元として解釈………ある意味でデータ化している状態なんだ。そこに僕の力でハッキングし、ロケットペンダントの中に宿る魂を真子という名の次元に混ぜ込む………! それが僕の見つけた攻略の糸口だ」
Uが答えたのは、真子の肉片や細胞レベルの再生力を利用し、自身の力でロケットペンダントの中に宿る2人の魂を真子という次元に混ぜ込むというものだった。
「ただ………それをやるには真子に致命傷を与え、かつ、あの子が無抵抗………言うなれば隙を晒している必要がある。そんな状況を狙えるとすれば………僕を完全敗北に追い込んで、そのまま殺そうとする時くらいだろうな………つまり………僕は真子との殺し合いに全力を出し切って負ける必要があるって事だ………死ぬかどうかは真子の技量と致命傷としてどこにダメージを与えてくるかによるが………そうする以外に道は無い………」
しかし、それには前提条件として、全力を出し切った上で真子に負ける必要がある事を、この時に明記したのだった………
そして、その前提は今成立した。Uは右手の中にはロケットペンダントが握り込まれており、Uが右手を広げて手前に引いてもなお、風穴となっている真子の胸の中には光を纏ったロケットペンダントがひとりでに浮いていた。
「これが僕の狙っていた………本当の策だ!!」
Uはそう言って右手にエネルギーを纏わせ、そのまま握り拳を作る事によってロケットペンダントを粉々に破壊。すると、ロケットペンダントの中から霊魂のような光の球が出現し、次元を操る能力によって再生する真子の身体に交わる事となった。
「うわあああ!?」
これにより、真子の中でとてつもないショックが走り、真子の意識は真っ白になる形で吹っ飛ぶのだった………
そして、意識が飛んだ真子が我に返ると、彼女の視界には真っ白で何も無い世界が広がっていた。
「ここは………?」
真子は何が起きたのか困惑する様子を見せていた。
「………真子」
しかし、真子は後ろから彼女を呼ぶ男の声を聞き、声の方へ振り向いた。するとそこには、魂だけとなっていた白三谷ユウが立っていた。
「お父さん………? な、なんで………!?」
真子は目の前の光景が信じられない様子だった。その直後に、ユウの後ろから白三谷春香も顔を出し、2人は真子の前に立った。
「お母さんも………2人とも確かに死んだはずだよね………?」
真子は目の前の光景に益々混乱する様子を見せる。そんな中で、ユウが口を開いた。
「俺達の肉体は確かに滅んだ。しかし、魂だけはロケットペンダントに宿る形で未練を残して、こうして今日まで生きてきた………」
ユウは自分達が真子の目の前にいる理由を語る。
「………そして今、パラレルワールドの俺………Uの命懸けの行動がこの状況を完成させた………真子、俺達はお前と再び会えるこの瞬間を待っていたんだ」
ユウはそう言って、真子の肩に手を当てると………
「真子、もういいんだ。俺達はお前が六道家に復讐する道を選んで欲しくはない………ロケットペンダントごしに話を聞く事になったが………俺はアイツらを恨んではいない。寧ろ、お前が悠久の時を間違って生きる事の方が俺は悲しい………」
真子に対して六道家への復讐を止めるよう説得をする。
「でも………! お父さんとお母さんが死んだのは………六道家なんかと関わったからでしょう!? それに、私は沢山の時間をかけてここまでやってきたんだもん………今更後には引けないよ………!!」
真子はユウと春香が死んだ理由は、六道家との関わりがあったからと言い放つと共に、長い歳月をかけていた事も、引き返せない理由である事を口にする。それを聞いたユウは、真子の心情を悟ったのか、真子を自身の懐に引き寄せ、強く抱きしめた。
「お父さん………?」
真子はユウの行動に首を傾げる。だがその直後、ユウの顔を見ると、彼が泣いているのを真子は目にした。
「ごめんな、真子………! 俺は………お前達に負担を背負わせ過ぎたのかもしれない………!」
ユウは真子に対して謝罪し始め、同時に責任を感じる言葉を口にした。
「俺はお前達なら幸せに暮らしてくれると思っていた………しかし、俺の見立ては甘かった………寧ろ、俺が死んだ事は完全な呪いとなってしまった………!」
ユウは真子に加えて、近くにいた春香も合わせて抱きしめる。そして、自身が死んだ事で2人の人生は狂ってしまった事を涙ながらに悔やんでいた。
「ごめん………ごめんよ、2人とも………!!」
ユウは2人に対して謝罪する様子を見せる。それを見た真子は、ユウが自身に対して責任を感じていた事を知り、驚きを隠せずにいた。
「………呪いなんかじゃありません。私達が死んだ事は確かに不幸な事かもしれませんけれど………でも、私達はこうして再び巡り会う事が出来たんです。もしやり直せるなら………転生する機会があったなら………私達は今度こそ幸せな家族を築きましょう………!」
春香はユウと真子に対し、もしやり直せるならばと幸せになる道を諦めない様子を見せる。しかし、それを聞いた真子は俯く様子を見せる。
「………無理だよ。私は復讐の道を進んでいたんだもん。一緒にはなれない………今、仮に死んだとしても私に待っているのは地獄での罰だよ」
真子は自らの罪を思い返し、2人とは一緒にいられない事を口にした。しかし、春香はユウの手と真子の手を合わせるように掴む。
「大丈夫。私達も一緒だから」
それは、真子と共に罪を背負っていく道を選択する言葉だった。それを聞いた真子は、2人の言葉に緊張の糸が切れる様子を見せると………
「うう………うあああああんん!!」
2人の中で泣く様子を見せる。長い時を生きてきた真子の心は復讐ではなく、2人がすっと真子のそばにいてくれるという安心の方が強まって行くのだった………
そして、その安心は現実世界の真子にも現れており、なんと真子の身体は足元から消え始めていた。
「あ………? (真子の身体が………消えていく………?)」
この時のUには、目の前で何が起きているかを考えられるだけの思考は出来なかった。しかし、真子の表情が、にこやかなものに変わっているのを目にし………
「………そうか。あの2人の言葉を聞いて………復讐心が1番じゃ無くなったんだな………」
Uは、真子の中で復讐心が消えた事を喜んでいた。そして、真子の身体は次々と消えていき、最終的にはUの胸に突き刺さったディメンションソードを残して消滅したのだった………
そして、真子が消滅した事により、六道家を襲っていた氷の鎧達を排出するゲートが突如として歪み、消滅したのだった。
「………無数の鎧の軍勢を出すゲートが消えた………って事はまさか………Uがやってくれたって事だよね………!? やった!」
ブラック達は、Uが真子を止める事が出来たと解釈し、ブルー達と共に喜ぶ様子を見せる。一方、残っている氷の鎧については六道理央が相手取っており………
「くらえ! {龍火}!!」
理央は火を放つ形で氷の鎧を次々と倒していき、更に、近くに置いてあった刀を手にすると………
「{六道術・【等活式】千刀輪雨}!!」
続けて刀を振るう事により、千振りの刀剣が雨のように残りの氷の鎧に突き刺さり、粉々に粉砕した。そして、氷の鎧が全滅すると理央の元に、舞雪と玲花の2人が駆け寄り………
「………どうやら上手く行ったみたいだね、Uさんの作戦」
舞雪が理央に対して、Uが目的を果たした事を伝え喜ぶ様子を見せた。
「………どうかな。アイツが無事に帰って来なきゃこの戦いの意味は無い」
理央はまだUの生死が掴めていない事を指摘する。それを聞いたブラック達は嫌な予感を感じていた。そして理央は近くで生き残っている黒子達に向けて言い放った。
「車を出せ!! アイツの無事を確認するまで………この戦いは終わりじゃない!!」
それは、Uの無事を確認する為のものであったのだった………
そして、肝心のUはディメンションソードによって心臓を破かれてしまった為に致命傷を負っており、しかも、真子と白三谷ユウ達を引き合わせる際に全てのエネルギーを使い果たしたのか、Uは全く動けず、死を待つばかりだった。
「………このまま死ぬのか………僕は………」
Uは目の前に迫る死を前に、恐怖こそしなかったが、嫌そうな様子を見せていた。
「嫌だなぁ………リーダー達の元へ帰るって約束したのに………それに、このまま死んだら僕の奥さんの方………春香には会えないまま死んじゃうのかな………」
Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の面々との約束を破る事になる事、自身の妻である白宮春香と二度と会えなくなる事に対して、果てしない未練を感じていた。Uの目から光が消えようとした時………Uの胸に刺さっていたディメンションソードが突如として光へと変化し、その光はUの胸の中に消える。すると、Uの身体の傷は突然塞がり服も再生する。そしてこの時にUの目の色は輝きを取り戻し、緑色に変色した。
「………まだ私は死ねないのかな………」
Uは声を漏らす。しかし、Uの様子はまるで他人のようにどこか変だった………
それから数十分程経ち、理央達が乗った車は、Uと真子が対峙した公園に到着。理央達は車の外に出ると、Uが背を向けて立っているのを目にする。
「………! U!!」
ブラック達はUが立っていたのを目にし、安堵する様子を見せる。しかし、ブルーは何か雰囲気が違う様子に気付くと、ブラック達を止める様子を見せ………
「………おかしい。Uとは全く違う気配を感じます………!」
ブルーはそう言うと、コルトパイソンを手に取りUに向ける。それを見たUは突如として様子がおかしくなるかのように笑い始めた。
「………あはっ、バレちゃったみたいだね………そう、今皆の前にいるお父さんは私だよ」
笑いながら自身がUでは無い事を語るUではない誰か。それを聞いた者達は、誰もがその正体に気付いた。
「白三谷真子………!?」
そう、今目の前にいるUはディメンションソードに僅かに魂が残されていた白三谷真子だった。
「奴の身体を乗っ取ったのか」
理央は目の前にいるUの状態について察する様子を見せる。
「そういう事、お父さんは私の力で辛うじて生きている状態。今私が切り離されたら死んじゃうかもね」
真子はそう言ってUの現状を伝える。
「………Uの身体を使ってどうするつもりなの!?」
ブラックは真子の目的を問いつめる。
「別にもう六道家を滅ぼす気は無いよ。六道理央の事は嫌いだけどね」
真子はそう言って、理央に嫌悪感を向けつつも、自身の目的は最早六道家の殲滅では無い事を語る。
「私がこれからやるのは………邪島に奪われた白三谷家の幸せの構築。次元を操る力の応用で、私には世界を変える事も出来るんだ。疲れるからあまりやりたくは無いんだけどね」
真子はそう言うと、Uの身体から氷のエネルギーを解放。周囲一帯にとてつもなく冷たい冷気を発生させると………
「………変身」
変身の掛け声と共に、氷の鎧を身に纏う。その姿は真子の身体の時と同じディメンションブリザードだった。そしてディメンションブリザードへ変身した直後、真子は両手を広げると………
「………始めようか、失われた幸せを実現させる為に………!」
両手から紫色のエネルギーを発生させ、辺り一面に常人では視認出来ない光が放出される。
「この光は………!?」
理央達は目に映る極大な光から目を背けるように瞼を閉じるのだった………
そして少し経って理央が目を開けると、そこには先程までのUと真子の死闘が行われたのが嘘のように平和な光景が広がっていた。
「………!? 辺り一面が綺麗に直っている………!? そんなバカな………あれだけ大きく辺り一面に穴や破損の跡が残っていたはずだ。いったい何故………?」
理央は何が起こったのか分からない様子を見せていた。
「………あれ? おかしいな。私は記憶ごと世界を構築し直したつもりなんだけどなぁ………」
そんな中、突如理央の隣で声が聞こえた。それを聞いた理央は声の主が誰かを一発で理解した。
「お前か」
理央が横を向くと、そこにはUの身体に憑依すると共に、変身を解除した真子が立っていた。
「どうやら貴方にだけは記憶操作は効かなかったって事なのかな。まあいいけどね、貴方の記憶が残った事なんて今や些細な事。私の役目は果たせた」
真子はそう言うと、近くにあったブランコに向けて指を伸ばす。理央が真子の指差す方へ視線を向けると………
「あっ………白三谷ユウ!? それに白三谷春香に白三谷真子まで………って、あれ? お前も白三谷真子だよな? なんで2人いるんだ?」
そこには白三谷ユウを始めとした白三谷家の3人が幸せそうに遊んでいる光景が広がっていた。それと同時に理央は、何故白三谷真子が2人もいるのかを疑問に感じていた。
「私は確かに白三谷真子だけど、あくまで私は負の魂の方でしかない。白三谷真子を六道家復讐へ唆した悪意の権化、それこそが私。あの子は自らの罪と過ちを認めた事で死を選択したけれど、私は死を持って罪を贖う事は出来なかった。私は白三谷真子の記憶を持ちながら、永遠に家族と過ごす権利を剥奪された罪を持つ存在でしか無いって事」
真子はそう言って、自身がどのような存在かを語る。あまりの複雑さに理央はピンと来ていない様子だったが、とにかく目の前にいる白三谷真子は幸せを手にしている事は分かった。
「形は違うけれどあの子は幸せになった。今の私はそれだけで充分」
真子はそう言って、別人となってしまったとはいえ自分の幸せな様子を見て満足する様子を見せた。それと同時に、Uの身体の右手が微かに動き出した。
「………お父さんの復活はそう遠くなさそうだね。大きくズレた私の愚かな計画は、お父さんを失わずして解決する事が出来たみたい」
真子はそう言ってUの復活は近い事を語り、その場を去ろうとする。
「待て。お前、その男の事を殺そうとしていたはずじゃないのか? 何故今になって生かす気になった?」
だが、理央は待ったをかける。それは、真子が何故今になってUを生かす事を選択したのかという純粋な疑問から来ていた。
「………私が間違っていたと認められた事と………お父さんの計算を外してやろうと思ったからかな。お父さんは私が間違っていたと気付く事のイコールとして自らの死を計算していた事を頭の中で考えていたみたいでね。仲間達には生きて帰るとか言ってたけど、実際に生き残れる確率は0に等しい………というか、生きて帰る気なんて更々無かったみたいだよ」
真子はそう言って、憑依した際に閲覧したUの脳内の思考をついて理央に伝える。
「………なんて馬鹿な事を」
Uが自殺行為を最初から狙っていた事に戦慄する理央。
「そう、馬鹿な事だよ。私の場合は自身の能力の擬似的な不死身性に身を任せている所があるけど、お父さんは生き返れる保証も無いのに本気で死ぬ気だった。自分の死に全く抵抗が無い人なんているんだなって思わされたよ」
真子はUの死への抵抗の無さに呆れた様子でそう呟く。
「でも、そんな馬鹿な事をやれるからお父さんは強いんだなって思うよ」
だが同時にUの強さの秘密をそう呟いてその場を去ろうとする。そんな中、Uの姿をした真子と理央の2人を目にした白三谷ユウ達は、ユウとUの顔が全く同じ事に驚いていた。
「なあ、アンタ………俺と顔がそっくり………だな?」
ユウはUと瓜二つな顔に驚いていた。
「そうだね。そっくり」
目の前の男の中に娘の魂の片割れが憑依している事などこの時のユウは知る由も無い。だが、それでも瓜二つの容姿の男の事を不思議と放ってはおけなかった様子だった。
「ユウさんの親戚か何かでしょうか………?」
春香は首を傾げながらユウに問いかける。Uの顔を見て似ている以外の言葉が出てこない様子から、以前までの交流の記憶はさっぱり消えているようだった。
「親戚じゃないよ。わた………いや、僕は親戚なんか知らないね」
真子はUを装って親戚などではない事を語る。そして、真子は姿勢を少し低くし、目の前にいる白三谷真子………自身の片割れに目を合わせると………
「………嬢ちゃん、お父さんとお母さんと一緒に幸せなってね………?」
どこか涙ぐんた様子で幸せになる事を求めた。それを聞いた白三谷真子は首を傾げていたが………
「………うん、幸せになるよ。不思議と………3人で一緒にいないとダメな気がするんだ………それと、お兄さんも絶対に幸せになってね」
家族で幸せになる事の宣言と、Uの幸せを願う。憑依していた真子は感極まって一瞬涙を零すが………
「………約束する」
そう言ってその言葉を約束する事を語るのだった。そして、真子が背を向けてその場を去ると………
「よし、今日は外食でも食ってくか!」
ユウ達3人は幸せの為の生活へと戻り出した。それを見送った真子は………
「………私のやるべき事は済んだし、お父さんも目を覚ましかけている………後はお父さんに任せるよ。でもね六道理央………私は貴方を許した訳じゃない。それを忘れないでよね………」
そう言うと、真子の魂が引っ込んだかのようにUの頭が俯く。それから少しして、Uの目の色は青に戻り………
「………どうやら真子の目的は果たせたらしい」
そう言って真子の魂が役目を果たした事を口にする。
「らしいな。俺も気持ちの負担が降りた」
理央は冗談混じりにそう呟く。
「………真子以外にも恨む相手が出てきそうで大変だな、お前も」
Uは理央についてそう呟く。しかし、大して同情はしていなかった。
「まあその時はその時だ」
理央は苦笑しながらそう呟く。
「お強い事だ」
Uはそう言って理央の精神力の強さを感じ取る。そして、Uは背を向けると………
「今度こそお別れだ、若いの。恐らく僕達が会う事は今後無いだろうな」
そう言って理央とは今後会う事は無い事を示唆する様子を見せる。
「そうだな。俺もお前と会える機会はもう来ないだろうなあ」
理央も内心Uとは二度と会えないであろう事を語る。Uは背を向けたまま歩こうとしていたが、何かを考えたのか突然足を止めた。
「………六道理央、お前はまだ若い。だが、これからもっと成長し、いつしか神すら滅ぼす存在となるだろう………強くなれよ」
Uは最後に理央がもっと強くなる事を語る。
「………アンタももっと楽しく生きろよな………U」
理央はどこか嬉しそうに言葉を発する。それを聞いたUはフッと笑いを零すと、右手を挙げてその場を立ち去る。理央はUの姿が人混みの中へ消えていくのを目にすると………入れ替わるように六道舞雪が理央の元へ走ってきた。
「はあっ、はあっ………お兄ちゃん! こんな所で油売ってないで早く戻ってきて! 新しい裏の仕事が来たってお父さんから連絡があったよ!」
舞雪も真子の力で記憶を失っており、ここに来たのも理央へ仕事を持ってきた為だった。理央はどこか哀愁漂う様子を見せていたが………
「分かってるよ。舞雪、今回の仕事を説明してくれ」
気持ちを切り替え、舞雪の言う仕事へ向かう事となったのだった………
その頃、Uは秘密結社『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のアジトへと戻ってきた。
「あっ、U! 今までどこ行ってたの!?」
アジトに戻って間もなく、ブラックがUの元へ駆けつけ、彼を叱責する様子を見せる。
「すまないな。ちょっと六道家の当主と話してたんだよ」
Uはそう言って直前の事を語る。
「六道家の当主って………そう簡単に会える訳無いじゃん」
しかし、ブラックは世界改変の影響ですっかり記憶が抜け落ちていた。
「(………本当にここまでの出来事の記憶が抜け落ちてるのか………)」
Uは自身の記憶から真子の行動を把握し、ブラック達の状況を察する。そしてUはブラックの頭へ撫でるように触れる。
「(………いいよな、真子の翻した世界を少しは変えてしまっても………?)」
Uは心の中でそのように考える様子を見せる。ブラックはUの不可解な行動に首を傾げていたが、Uの身体から突如として紫色のエネルギーを流し込まれた瞬間、ブラックの頭の中に強いショックが流れ込む。
「ううっ!?」
ブラックの中で鎖のようなものがちぎれるような音が聞こえた直後、ブラックの記憶の中で、この世界から消えたはずの戦いの記憶が蘇った。
「六道家や邪島との戦い………あれ? なんで私忘れてたんだろう………?」
ブラックは何故過去の記憶を失っていたのか不可解な様子を見せていた。それを見たUも………
「………真子の魂と共に力が宿っているのも感じたからやれるかなと思っていたが………まさか本当にリーダーの記憶を戻せるとは思わなかったな………」
起きた事態に首を傾げると共に困惑しながらそう呟いた。
「白三谷真子………じゃなさそうだね………というか、え? 今の力ってUの力とはまた違う力なの?」
ブラックは、Uの身体に真子が憑依し彼女が世界改変を行う直前までの記憶を取り戻した。目の前に立っているUは憑依した真子でない事にはすぐに気づいたが、同時に彼の話についていけない様子を見せていた。2人がそれぞれ異なる疑問を浮かべる中、ブルー達が2人の元へやってきた。
「………取り敢えず皆の記憶戻してからか………」
Uは『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』全員の記憶を戻す必要があると考えると、右手をブルー達に向け、紫色のエネルギーを放出し、4人の頭の中の封印された記憶を戻す事に決めたのだった………
………それから少しして、ブルー達がブラックと同じ所までの記憶を取り戻した事と、Uの様子を見て、新たな世界での現状との違いに混乱していた。
「………つまり、真子の世界改変の影響で皆は記憶を失っていたって事だな。結果として僕が戻したから状況はややこしくなったが………取り敢えず、現状の『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』について説明して欲しい」
Uは、新たな世界においての『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の現状について問いかける様子を見せる。
「邪島との戦いが無くなった関係か六道家との対決も無かった事になったので………知名度や活動状況についてはUくんが加入した直後に逆戻りじゃないかな」
ピンクが『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』のインターネットサイトの確認を行い、活動状況がUの加入直後にまで戻っている事を語る。
「となると知名度も弱くなったってわけだ」
Uはそう言って、邪島との対決と六道家からのマークによって上がっていた知名度が逆戻りした事を語る。
「残念ながらそうなるわね………」
ブルーも現実に少し落胆するようにそう呟く。
「………それでも私達の野望は変わらない。私達のやるべき事は………世界征服だよ!」
だがしかし、ブラックだけは現実を前にしても落ち込まず、世界征服の野望を口にする。その様子を見て思わず感心する様子を見せたUは………
「………リーダーに提案がある」
ブラックに対してとある事の提案を思いつく様子を見せた。
「提案?」
ブラックは首を傾げながら提案について問いかける。
「僕が違う世界から来たのは前に話しただろう? 僕のいる世界の征服なんてどうだろうか?」
それは、この世界にやってくる前に元々Uがいた世界だった。
「えっ!? U殿の元の世界の征服を提案してるの………!?」
ビリジアンはUの言葉に驚く様子を見せる。
「驚くなよビリジアン。君達の目的は世界征服のはずだろ?」
Uはビリジアンに対し、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の目的はそもそも世界征服のはずであるからこその提案である事を遠回しに伝える。その言葉にブラックは頷く様子を見せると………
「………分かった、Uの提案に乗るよ!」
Uの手引きを受ける形で、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』はUの元々居た世界をターゲットに変える事となった。
「よし、そうと決まれば………まずはあっちでの新しいアジトの下見からだな!」
Uはそう言って、真子の力を借りる事で紫色のエネルギーを放出。これにより、アジトの入っている建物の下へゲートを出現させ、建物ごとゲートへ吸い込ませるのだった………
ゲートをくぐった建物は大きな音が鳴り、大きな揺れが生じた。その際に幾つか家具などが倒れたが、Uが入口の方へ向かい、ブラック達も入口の方へと向かう。するとそこに広がっていた光景は………
「凄い………! 全然違う世界に来ちゃった………!!」
Uが元いた草原の広がる世界だった。
「………やっと戻って来れたな。ざっと2ヶ月程度………長かったもんだ」
Uは久しぶりに目にした光景を喜ばしく思っていた。
「成程ね。この世界はかなり平和なようですね、総帥」
ブルーは世界の平和さについて言及する。
「その割にはカオスな世界だけどな。多分、征服は大変になりそうだが………それでもやるなら僕は手を貸すぜ?」
Uはこの世界の征服は一筋縄ではいかない事を語る。
「………やるよ。どんな世界でも私達の目的は揺るがないもん!」
それでもブラックの返答は変わらなかった。それはブルー達4人を見ても明らかだった。
「よし。それならまずはこの辺で生活する為に環境に慣れないとな」
それを聞いたUは、ブラック達への協力姿勢を改めて見せた。そして………
「(………しばらくはリーダー達に力を貸す為に滞在するとしよう。世界征服の過程の中で、新たな戦いに挑む為にもね………)」
ブラック達の為に、もうしばらく彼女達の傍にいる事を決心するのだった………
Uが2ヶ月余り経験した不思議な戦いはようやく終わった。六道家を巡る戦いは終わったものの、『漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)』の元で起きる戦いはもう少し続く事となった。だが、それはまた別の話であった………
………これは数日後、Uの肉体の中で起きた2人の会話である………
「………ねえ、お父さん。聞こえる?」
「………なんだ?」
「私は罪の権化でしか無い。そんな私に出来ることなんてあるのかな………?」
「さあな。これから考えていけばいいだろうよ」
「………こっちは真面目に考えてるんだけど」
「分かった分かった………まあそうだな………しばらくは僕の力になってもらうとするかね。今後、リーダー達の世界征服で僕達の力は絶対必要になるだろうからね。その時に真子の力も欲しいかな」
「私の力が………?」
「ああ。お前の力は僕も素直に認めちゃうくらいには凄い力だ。だから………お前の力を今後とも貸してもらいたいものだな」
「………分かった。私の魂がここに残ってしまった以上、消えてなくなるその日までお父さんの力になるよ。お父さんに迷惑をかけた償いにね」
「………償いだなんて………別に僕は怒ってなんかいないし………これからやり直していけばいいさ。僕達には悠久の時間があるんだから………」
『幻想転移録』完………
後書き
どうも、中の人ことUさんの部屋です。今回のコラボ小説はいかがだったでしょうか? 本作はヴィルヘルム星の大魔王さんからコラボ依頼を受ける形で執筆し、約2〜3ヶ月かけて執筆した作品となります。Uさんの部屋シリーズでは初の試みでしたが、いかがだったでしょうか? そして、今回から新登場した白三谷真子と「漆黒の支配者達(シャドーインベーダーズ)」ですが、もしかしたら今後の小説に登場するかもしれません。もし執筆する事になりましたら、またその際にお知らせしたいと思います。では、本日はここまでとなります! ここまで読んでくださった全ての方、ありがとうございました! そしてヴィルヘルム星の大魔王さん、今回はコラボ依頼、大変ありがとうございました!!