ダンモン掲示板 作:睡眠不足野郎
【人形姫と牛野郎、その3】
「強化種のミノタウロスと戦うな。」
団長であるフィンから、団員達に下された厳命。
特にアイズは、リヴェリアに何度も言われ、渋々戦わないと約束した。
他の団員と同じように、
主神ロキによるステイタスの更新。
初戦で戦った時より、アイズは強くなった。
「…足りない。」
叶えたい願いが、彼女にはある。
その為には力が必要不可欠。
強化種を倒す事が近道になるのでは?
そう1度考えると、もう我慢できなかった。
「…戦いたい。」
アイズは約束を破った。
遭遇するモンスターは、全て切り伏せた。
返り血を浴び、全身を真っ赤に染めて。
「ひいいぃっ!」
「ロ、ロキファミリアの人形姫か。」
「こっわー。」
同じ冒険者達に怖がられるも、アイズの表情は変わらない。
なんと言われようが、気にしないから。
「うぜええええええええええええっ!」
「「「「「ブモオオオオオオオオオッ!」」」」」
「っ!?」
耳を打つ怒声と咆哮。
更に激しい戦闘音が聞こえてきた。
急いで向かうと、異様な光景が視界に入る。
50体以上のミノタウロスが、1体のミノタウロスを襲っているのだ。
「くそったれが!
「あの黒い腕…見つけた。」
孤軍奮闘していたのは、強化種のミノタウロス。
武器を使うミノタウロス達に対し、素手で応戦していた。
数の暴力という不利な状況。
しかし、
強化された身体は、武器の攻撃を
反撃とばかりに拳で殴り、肉を潰し骨を折り魔石を砕いた。
次々とミノタウロスが灰に変わっていく。
まさに無双。
そんな戦場に、血塗れの少女が参戦する。
「
「「「「「ブモオオッ!?」」」」」
剣の一閃。
ミノタウロスの首が飛ぶ。
「げっ、アイズ。」
強化種のミノタウロス…長いので、牛野郎でいいだろう。
牛野郎は人間のように表情を変える。
厄介な女に見つかった!
そんな表情に。
「一先ず、ミノタウロス共が先だ。」
「…邪魔。」
「「「「「
アイズと牛野郎の攻撃は止まらない。
奇しくも2人の共闘。
僅か数分で、ミノタウロス達は全滅した。
【ロキファミリアのとある団員、その2】
おっぱいだ…いや、違う違う。
視線を戻せ!
目の前には、モンスターが1体。
川の中から上半身を出していた。
ここは
探索と修業を兼ねて、先輩冒険者達とパーティを組んで来た。
「ノアールさん、あれは…。」
「おうよ、マーメイドだ。しかも、とびっきりの巨乳だな。」
「ですね。」
真剣な表情で呟く先輩に、力強く頷く。
モンスターなので、当然服は着ていない。
彼女いない歴=年齢の俺には眼福…もとい目の毒だ。
無表情だが、芸術作品のような美顔。
リヴェリア様や女神様達に匹敵する。
本当にモンスターか?
いかんいかん、しっかりしろ俺!
川の流れで、マーメイドが揺れる。
それに合わせて、巨乳も揺れる。
「くっ、なんて恐ろしい罠だ。」
「まったくだ。若いの、心を奪われるな。」
「はいっ!」
手に持っていた武器を強く握りしめ、先輩の隣に立つ。
惑わされるな。
あれはモンスターだ!!
「真面目な顔で、まともな事を言っているが…。」
「2人とも目が釘付けじゃないか。あたしは情けないよ。」
す、すみません。
ダインさん、バーラさん。
おっぱいに勝てませんでした。
「冒険者の方々、敵対するつもりはありません。」
なっ!?
人語を話した!?
「噂の喋るモンスターか。」
ノアールさん!?
それって、強化種のミノタウロスじゃないんですか!?
「確認されているのは3体だったか?これで4体目だな。」
ダインさん!?
何体もいるって、初耳なんですけど!?
「どいつもこいつも、強化種の可能性ありだったわね。」
バーラさん!?
マジで言ってますか!?
今すぐ回れ右して、地上に帰りたい。
強化種の相手なんて勘弁だ。
でも、敵対しないと言っているし、様子をみるか。
「あれ?貴方達は…ああ、特攻の。」
俺達を知っている?
違う、視線は先輩達に向けられている。
何故だ。
特攻という言葉も気になる。
「どんな状況であれ、自殺の類は嫌いなんです。だから…。」
「「「「っ!?」」」」
マーメイドの雰囲気が一変する。
静かだった川の流れが、激流となった感じに。
全員が臨戦態勢に入る。
敵対しないと言ったくせに、結局戦闘になるのかよ!
緊張していると、マーメイドが言葉を放つ。
「命じます、生きて下さい。」
同時に目が赤くり、不思議なシンボルが浮かび上がった。
見ては駄目だ!
そう思ったが、時すでに遅し。
俺も先輩達も見てしまった。
身体が硬直して動かない。
何かが繋がったような…強制されそうな…あああああああああっ!?
「おい!若いの!しっかりせんか!」
「はっ!?」
気がつくと、ノアールさんに肩を掴まれ、揺さぶられていた。
え、えーと。
25階層に到着してから、何をしていたっけ?
思い出せない。
「まいったな、記憶があやふやだぞ。」
「25階層に入った辺りからね。」
ダインさんとバーラさんが、辺りを警戒しつつ、会話している。
どうやら俺と同じらしい。
必死に思い出そうとするけど…駄目だった。
一体俺達の身に何が?
【人形姫と牛野郎、その4】
大量の灰が散乱する中で、人形姫と牛野郎が対峙した。
片方は殺る気満々で、片方は頭を抱えていた。
「殺す…違った…灰になって。」
「言い直しても同じ!殺意が怖い!」
先手はアイズ。
牛野郎が鋼鉄化する前に斬るべく、最初から全力である。
正確には硬化。
この世界には無い異質の力だ。
耳をつんざく激突音と共に、激しい火花が飛び散る。
「防がれた!?」
「うおっ、危ねえええっ!」
双方驚いた。
初戦よりも成長した相手に。
「なら…手数で。」
重く速い斬撃の暴風が、牛野郎に襲いかかる。
しかし、硬化した拳で、全て受け流された。
「どうして、反撃しないの?」
「戦う理由ないし。そろそろ、お開きにしないか。」
「…そう。」
「ちょっ!?」
斬撃の暴風が、嵐に変わった。
舐められていると思ったアイズは、激怒ぷんぷん。
そんなつもりのない牛野郎にとっては、実に理不尽である。
受け流せなかった斬撃が、容赦なく身体を…斬れなかった。
全身硬化の完全防御。
傍から見れば、黒肌のミノタウロス。
「…まだ勝てない。」
今度こそ斬れると思っていたアイズ。
しかし、結果は前回と同じ。
意気消沈するも、自分の超えるべき壁と認識した。
だからこそ、本当の実力を知りたかった。
「本気が見たい。」
「ええー。」
少女は牛野郎を見つめている。
「本気と言われても困る。」
少女は牛野郎を見続けている。
「見つめるの、やめてほしいのだが。」
少女は牛野郎を凝視している。
「だあああぁーっ!分かったよ!やってやるよ!」
溜息と共に腰を下げ、前屈みの姿勢になる。
ミノタウロスの最終攻撃、
「俺様の攻撃で死亡はないし、行くぞ。怠惰。」
次の瞬間
そして、背後から聞こえる轟音。
「…えっ?」
目の前から牛野郎が消えていた。
何が起きたか理解できない。
恐る恐る後ろを振り返れば、
「うがあああぁ!抜けねえーっ!」
壁にめり込み、もがいている牛野郎。
間抜けな姿だが、アイズは戦慄した。
ワザと外したのか、失敗しただけなのか。
どちらかは分からない。
ただ命中すれば、自分は確実に死んでいた。
それだけは分かった。
冷や汗が止まらない。
「アイズ!!」
「予感的中じゃ!強化種と戦っておるぞ!」
「リヴェリアはアイズを!僕とガレスで、強化種を倒す!」
通路の奥から駆けつけて来る人物達が見えた。
九魔姫、重傑、勇者。
ロキファミリアの幹部達だ。
「やべえええええええええええええええっ!」
牛野郎は大慌てである。
なんとか壁から脱出し、全力で逃げた。
重傑の投げた斧が頬を掠め、勇者の投げた槍が脇腹を掠めるも、逃げ切ってみせた。
一方アイズは、
約束を破った罪は重い。
その間鍛錬も禁止で、リヴェリアとみっちりお勉強。
更に夜は、心配したロキと添い寝する罰も下された。
「ご、ごめんなさーい!」