ダンモン掲示板 作:睡眠不足野郎
【人形姫と牛野郎、その1】
アイズは焦っていた。
いつもは簡単に倒せるミノタウロスが、倒せない。
そればかりか、押されている。
剣を振るうが、拳で止められる。
「皮膚が…硬い?」
見た目は他のミノタウロスと変わらない。
だが、両腕が黒くなっていた。
「なら…それ以外を狙う。」
相手の大振りな攻撃を躱し、アイズは胴体に剣を叩きこむが…。
またもや金属同士の衝突音が響く。
見えたのは、両腕のように黒くなっていた胴体。
「とても…面倒。」
1つの予測が、アイズの中で生まれる。
あのミノタウロスは、身体を鋼鉄化できるのでは?
一部だけなのか、全身なのか。
後者だと最悪である。
そして、あり得ない能力と身体的強さから、強化種と判断した。
「はあああっ!」
斬撃を浴びせながら考える。
今の自分では、鋼鉄化した身体を切れない。
勝機があるとすれば、鋼鉄化する前に斬ること。
しかし、それも難しい。
「はあ、はあ、はあ。」
数十分も戦い続け、息が上がってきた。
撤退の2文字が思い浮かぶも、強い意志で追い払う。
「逃げない…負けない。」
次の一撃で決めると、身体に力を入れる。
「タイム!ちょっと休憩!休戦しようぜ!」
「ふえっ?」
アイズの口から驚きな声が漏れる。
人形みたいな無表情も、年相応の吃驚顔になっていた。
それもそのはず。
ミノタウロスが喋り、腕でバツを作っているのだ。
「あー、疲れた。」
「っ!?っ!?っ!?」
混乱するアイズをよそに、ミノタウロスは地面に寝っ転がる。
これが、人形姫と牛野郎の出会いだった。
【とある闇派閥の会話】
闇派閥A「大変だ。顔無しが
闇派閥B「顔無し?」
闇派閥C「お前、知らないのかよ。」
闇派閥A「協力しているの闇派閥の幹部で、顔無しは二つ名だ。」
闇派閥D「名前は確か…ヴィトー様。破綻者とも呼ばれているな。」
闇派閥B「なるほど。その方が行方不明か。冒険者に倒されたのか?」
闇派閥A「そんな報告は届いてない。」
闇派閥C「だとすれば、モンスターに殺された?」
闇派閥A「しかし、レベル4だぞ。そう簡単に死ぬとは思えん。」
闇派閥B「レベル4!?」
闇派閥D「一体ヴィトー様の身に何が…。」
闇派閥A「………(まさかとは思うが、最近噂のモンスターに)。」
【人形姫と牛野郎、その2】
無防備に、大の字で寝っ転がっているミノタウロス。
アイズは戸惑っていた。
他のモンスターと違って、人間に対する殺意がない。
何よりも人語を話し、態度が人間臭かった。
「すーはー。」
剣の構えを解き、アイズは深呼吸して、体力の回復に専念する。
勿論ミノタウロスから警戒を切らさない。
じーっと観察する。
普通のモンスターではない。
身体の一部を鋼鉄化するなど異常だ。
以前リヴェリアから聞いた強化種について、思い出すべく頭をフル回転させる。
「…うぅっ。」
「大丈夫か?」
勉強嫌いなアイズは、何も思い出せなかった。
それどころか、うんうん唸る姿を、ミノタウロスに心配されてしまった。
ちゃんと勉強しよう。
そう心に誓った。
「貴方…何者?」
「ボク、わるいミノタウロスじゃないよ!」
「モンスターは絶対悪…人間の敵…ぶっコロス。」
「ちくしょう!このネタが通じない上に、幼女アイズこえええっ!」
起き上がり、瞳をうるうるさせて答えるミノタウロス。
それは問答無用で、ぶった斬られた。
モンスターを憎悪するアイズに、容赦の2文字はない。
「あれ?どうして…私の名前を知っているの?」
「や、やべえ。」
ミノタウロスの身体から、大量の汗が流れ出た。
顔など、やっちまったという感情が丸分かりである。
この態度に、アイズは見覚えがあった。
隠し事がリヴェリアにバレた、
「…教えて。」
「せ、せ、戦術的撤退!!」
猛ダッシュするミノタウロス。
全力全霊の逃亡だった。
「へっ?…あっ、待てーっ!」
突然の事に、一瞬ポカンとしていたアイズだが、慌てて追いかける。
攻防は1時間も続き、アイズが息切れしたところで、軍配はミノタウロスに上がった。
「逃げられた…。」
辺りを見渡すも、気配を探るも、標的は捕捉できない。
完全に見失った。
追いかけたい気持ちは強い。
しかし、そろそろ帰らないと、ファミリアの仲間達が心配する。
「…むう。」
アイズは渋々、
彼女は知らない。
あのミノタウロスとの付き合いが、長く続く事に。