友情努力勝利鬼人正邪   作:MC下剋上

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空も飛べぬはず

 百足に吹き飛ばされた天魔は、この世の終わりのような顔をしていた。

 

「どうしてみんな私に敵意を向けてくるんだろう」

 

 氷漬けにされた家屋の上に着地する。

 そして、百足に乗っている人物に顔を向ける。

 

「お前は確か、姫虫百々世」

「そういうあんたが天魔か」

「何故、こんなことを?」

「先に手を出したのはそっちだろ」

 

 百々世は天魔を睨みつける。天魔は怯えた。

 

「鉱山勤務の邪魔をした罪は重え!!」

 

 百々世がツルハシとシャベルを持って天魔に飛びかかる。

 それを回避しようと天魔は横に飛ぶ、だが、そこに邪魔が入る。

 胸ぐらを掴まれて、そのまま空中に静止する。

 

「お前は……飯綱丸! ……か?」

 

 それを成したのは、怒りの形相をしていた飯綱丸であった。

 

「天魔様、私達(・)はあなたを止める!」

「貴様も融合したんだな……」

「あなたが何に恐怖を持ち、狂ってしまったのかは知らないが、今のあなたは里にとって『害』だ」

「……」

「だからあなたを止める!!」

 

 天魔は理解した、目の前の天狗は、自分を慕い従ってきた大天狗達は、己を倒すために心を一つにしていると。

 

「やってみろ」

 

 ならば自分は目の前の外敵を撃ち倒し、前に進むだけ。そう心に決めて、戦いは始まる。

 胸ぐらを掴んでいる飯綱丸を引き離し、熱線を手から放つ。

 至近距離からの攻撃は回避不可。飯綱丸は体の周りに星型の結界を張って身を守る。しかし、攻撃が終わらない。天魔は結界が焼き切れるまで熱線を放とうとしている。

 

「まず一発!」

 

 が、それは大きな隙となっていた。百々世が天魔をツルハシでぶん殴る。

 当たった部分は少しだけ穴が空き、血が滴る。

 

「硬いな〜妖怪の山より硬いんじゃねえの」

「血だ、お前、私に傷を付けたな」

「ああ付けたよ、だからどうした?」

「お前は融合していないのに……危険だな、殺そう」

 

 天魔は思いっきり百々世向かって突進する、そして天魔は百々世に膝蹴りを放つ。

 百々世はシャベルでガードする、しかし、勢いを殺すことはできず、吹き飛ばされる。

 そして、里の家の壁に叩きつけられる。そんな百々世に止めを刺そうと天魔は弾幕を放つ。

 回避は許されない、殺すための弾幕だ。

 

「死ね」

「百々世!」

「助けることは許さん」

 

 天魔が、動こうとする飯綱丸を牽制する。そんな天魔に三脚で殴りかかる、天魔は団扇で捌く。

 そして、派手に爆発したような音が聞こえる。

 音の方を見ると、天狗の里の一画が崩壊していた。百々世の姿は見えない。

 

「……お前」

「私は悪くない、正当防衛だ!」

「どこまで堕ちる気だ……」

 

 飯綱丸は呟くようにそう言ったが天魔は大きく反応した。

 

「堕ちる!? 私は今、飛んでいるだろう!! 自由なんだ私は!!」

「……」

 

 飯綱丸は何も言わずに三脚を構える。

 そして、空に飛んでいく、天魔もそれを追って空高く飛んでいき、高度を上げていく。

 すぐに雲にまで届くほど高く飛んだ。飯綱丸は上昇するのをやめて、三脚を天魔に向ける。

 下から恐るべき速度で飛んでくる天魔に向かって、三脚から波動砲が放たれる。

 

「遅い」

 

 天魔は目の前に飛んできた波動を回避する。そして団扇を振るう。

 飯綱丸を極寒の風が襲う。それでも飯綱丸は平然としている。そして、天魔を睨んでいる。

 

「なあ、お前達は何が不満なんだ?」

「……今のあなたの在り方です」

「ああ、話すだけ無駄だった」

 

 風が勢いを増し、温度は更に下がっていく。

 飯綱丸も天魔もまだまだ余力を残していた。

 雪が舞い、空が暗くなっていき、星が現れ始める。

 二人は全力を出し始める。

 

「ああ、お前は確か星空を眺めるのが好きだったな」

「あなたは風が好きでしたね」

 

 夜空から、星が降り注ぐ。実物ではなく、飯綱丸が妖力を使い作り出したものだった。

 星々は、天魔にたどり着く前に、風に削り取られ、形を失う。

 そして、二人は同時に動き出す。

 

「禍星「星火燎原乱舞」」

「威風「第六王の堂々」」

 

 おびただしい量の星が、飯綱丸から放たれる。しかしそれらは、天魔が起こした風によって凍らされる。そして砕け散る。

 飯綱丸の翼も凍らされていく、恐怖を感じるような風だった。

 

 だが、飯綱丸は三脚を構えて、天魔に向かってそれを放つ。

 

 夜空が明るくなる。黒かった空は明るくなり、氷も溶け始める。

 星は消え、たった一つだけがその場に残る。この星を見た誰もが口を揃え名を呼ぶだろう

 

「太陽」

 

 と。

 天魔はこの攻撃を受けるという考えは少しもなかった。

 よってすぐにその場を離れようとするが、太陽の持つ引力に引っ張られる。

 

「熱い……くっ」

 

 天魔が太陽に触れる……前に太陽はしぼんだ。

 そして、次の瞬間派手な爆発を起こした。超新星爆発のような。

 そして、星空が戻ってくる。

 

「これで終わるとは思えない……」

 

 飯綱丸は戦闘態勢を継続していた。いつ、どこからでも攻撃が来てもいいように。

 

「……神風」

「!」

 

 天魔の声が聞こえた瞬間、飯綱丸に大きな圧力がかかる。

 その圧力に潰されるように血反吐を吐く。

 天魔の姿は見えない、飯綱丸は次の手札を切る。

 

「月よ……」

 

 今度は月が現れる。

 妖怪にとって月とは大きな意味を持つ。昔、偽物の月を作るという異変が起こったこともある。

 そして、月の光は、道しるべとして使われていた。

 

「見つけた……」

 

 姿を風に変えて消えていた天魔の体が現れる。

 月光が真実を照らしたのだ。天魔は顔の右半分が焼けていた。

 そして、天魔に向かって星を放つ。放たれた星は天魔を衛星のように囲んでいく。

 

「邪魔だ……ッ!!」

 

 天魔が風を使って星を散らそうとすると、月光は強さを増していく。

 そして、月からレーザーが放たれる。

 衛星に囲まれた天魔は逃れることができない。

 極太の光が天魔を貫く。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 飯綱丸は、体力と力を大きく消耗していた。

 本来、仮初でも太陽と月を作るのは彼女の能力の域を超えている。とても負担が大きなものだった。

 

「終わってくれ……」

「まだ終わらない……」

「!!」

「恐怖したなッ? それともッ絶望が?」

 

 天魔は体全体を燃やしても未だに生きていた。

 咳き込みしていても意識は強く残っていた。

 

「さそり座よ……!」

「させぬ」

 

 飯綱丸が能力を使う前に天魔は風を送る。

 それは飯綱丸の体を引き裂く風だった。

 

「……」

 

 声も出なかった。それでもまだ生きているのは強力な妖怪だからか、それとも融合しているからか。

 飯綱丸の能力で作られた星空が消える。空はまだ夕暮れだった。

 

「もう諦めろ、そして死ね」

「……天魔様、私の遺言を聞いてくださりませんか」

「どうした、言ってみろ」

「もっと、近くに」

「断る。お前は狡猾な面もあるからな」

「……はは、ダメか……」

 

 飯綱丸は全てを諦めた。天狗の里の皆や信じてくれたものに申し訳ない気持ちになった。

 しかし、その瞬間

 

「うおおおおおおおおおおわああああああ!? 」

 

 下から、御柱と、それに乗った……? 鬼人正邪が飛んできた。

 天魔も飯綱丸も呆気に取られた、だが、この瞬間天魔に隙が生まれた。謎の存在である鬼人正邪、それが何故か御柱に乗ってきて何故か通過する。天魔を油断させるには十分だった。

 飯綱丸は、一瞬で、腰につけていた試験管を取り、そして、その中身を天魔にかける。

 

「くっ……なんだ?」

 

 水色の液体のようなものが天魔にかかる。

 

「おい! お前今、何をした! 私に何をかけた!!??」

「知らないッ……」

「お前ッあああああ!!??」

 

 突然、天魔が叫び出す。

 

「頭が! 割れそうだ!? あああああ怖い怖い怖い!?」

「……典(つかさ)は私に何を持たせたんだよ」

「お前えええええ!! 殺してやる!!」

「……やばいな」

 

 天魔が、鬼のような形相を浮かべながら、飯綱丸に向かって団扇を振るう。しかし、焦っているのか風が届かない。

 

「どうした……? 当てないのか……?」

「ハァ……ハァ……」

「……まさか、当てられないのか」

「黙れッ! 黙れッ!! 今すぐ、殺してやる!!」

 

 ゆっくりと天魔は飯綱丸に近づいていく。

 

「そうだ……何も焦る必要はない! 私は自由だ! 誰にも縛られぬ!!」

 

 そして、飯綱丸の前に浮く。

 

「飯綱丸龍……!! 死「おおおおおお!! 」ッ!?」

 

 天魔の上から鬼人正邪が降ってきた。避けようとしたが、恐怖で体が動かなかった。

 そして、頭を何かで殴られる。次の瞬間

 

「ぐっ……なんだ!? 体が、動かん……ぐああああああああ!!??」

 

 天魔は、体制を崩し、地上に落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひええええええ!!」

「うるさっ」

「なんで貴方はそんなに落ち着いていられるんですか!?」

 

 確か、射命丸文? とかいう姫海棠の仲間の天狗が、姫虫百々世とかいう百足女を騒ぎながら助け出していた。

 

「あっぶねー、まさかあんな硬いとは思わなかったぜ」

「いや、普通の状態であの人に傷をつけられるのも大概だと思いますけど」

「そうか?」

「よっし! 無事に助けられたみたいね!」

 

 遠くから念写をして手助けしていたらしい姫海棠が帰ってくる。

 多分あんまり効果はなかったと思われるが。

 

「文! お疲れー」

「マジで後でしばく」

「そんなっ!?」

「で? これからどうするんだ? 俺としては今すぐに戦いに戻りてえが」

「……あれに混ざるのか?」

 

 私は空に飛んで行った天魔と大天狗を目で追っていたが、突然空が色を変えて、星が煌めく暗さに変貌した。先程まで夕暮れだったのにも関わらず。

 

「天魔ってのは空を夜にすることもできるのか」

「無理よ! だからあれは多分、飯綱丸様の能力だと思うけど……強すぎる」

「飯綱丸様も融合したんでしょう? だったらあれぐらいできて不思議じゃないわ」

「おおーすげえ! 俺ワクワクしてきたぜ」

「ていうか、綺麗ねー」

「おい、現実逃避している場合ではないぞ」

 

 私達はなんとなく現実逃避をしていたが、後ろからかけられた声に振り向く。

 そこには、東風谷と、東風谷が慕っている神様どもがいた。

 

「ま、あれを見て嫌になる気持ちも分かるけどねー」

「次元が違うのは認めよう、だが諦めてはいけない。我々も勝率を上げるためにできることが少なからずあるはずだ」

「そうですよ、あの天狗の方に任せっきりにしてはいけません」

 

 なるほど、とても思いやりのある奴らしい考えだ、だが

 

「あいつらにどうやって近づいて、どうやって攻撃するんだよ?」

 

 私がそう言った時、ちょうど真上には太陽が輝いていた。

 

「うわあ……」

「なんか神様でもなかなかやらないことしてんね?」

「あれに近づく、かあ。……そうだ! 隠岐奈〜!」

 

 神様たちが引いてる時に姫海棠は、式神を取り出して摩多羅に連絡を取っていた。

 

『うわあ急に呼び出すな、びっくりしただろうが』

「上にいる天狗の背後に扉を出すのってできる?」

『できるけど、一瞬で消し炭になるよ?』

「使えねー」

『は?』

「隠岐奈ありがと! じゃあねー!」

『おい待て正邪てめ』

 

 姫海棠は容赦なく通信を遮断した。

 

「ダメだって!」

「……うん、聞いてたよ」

「今のが、はたてを手助けした奴ですか。便利な存在もいたもんですね」

「どうするんだよ」

 

 結局私達は何もできないまま、ここで上の戦いを眺めなければいけないのだろうか。

 

「私の御柱を飛ばせば近づけると思うが……」

「……正邪さんが上にいったらいいんじゃないですか?」

「は?」

 

 何言ってるんだお前

 

「だって先程私のことを助けてくれたじゃないですか」

「そうなのか? ……正邪よこの度は早苗を救ってくれてありがとう。礼を言う」

「てかお前ら誰?」

 

 そういえば私はまだこいつらの名前を知らなかった。

 

「こちらの青い髪の方は神奈子様、八坂神奈子様です。そしてこちらの帽子をかぶっているのは洩矢諏訪子様です。神奈子様、諏訪子様、こちらは鬼人正邪さん。天邪鬼らしいです」

「よろしく頼む」

「よろしくね、私からもお礼を言っておこう。早苗を助けてくれてありがとう」

「あ──吐きそう──」

「天邪鬼ってのは難儀だね」

 

 早苗が心配して八坂がなんか言ってるが気にしない。

 

「それで? そこの正邪ってやつはどうやって天魔からそこの……早苗だっけ? を救ったんだ」

「……能力だよ、なんでもひっくり返す程度の能力を持ってるんだ。文字通りなんでも、な」

「強いな……だが、力の消費が激しいんだろう?」

「そうだけど、なんで知ってんだお前」

「経験則だ」

 

 八坂がそう言ってドヤ顔で佇む。うざかった。

 

「で、私のその能力で妨害しろって?」

「まあ、我々の能力は通用しませんでしょうからね。今は飯綱丸様の支援をすることが重要でしょう」

「お前らのカメラで弾を消せばいいだろ?」

「あんな遠くには届かないし、回避されるわよ」

「使えねー」

「文、あんたは右から、私は左からこいつを殴る」

「落ち着けよ」

 

 姫虫が興奮する姫海棠を落ち着かせている。射命丸は苦笑していた。

 ……本格的に私がやらないといけなくなってる気がする。

 

「私の命は?」

「ヤバかったら逃げてもいいぞ」

「今すぐ逃げたいんだけど?」

「ヤバくないのでダメです」

「クソが……」

 

 ここにどっか行ったチルノでもいてくれれば、任せたのに。

 いつのまにか八坂は御柱とかいう柱を用意していた。

 

「……これでどうやって上に行くんだ?」

「打ち上げるから上に乗れ」

「えっ」

「打ち上げる」

「二回言うな、わかったよ! 行ってひっくり返せばいいんだろ!?」

 

 私は渋々御柱の上に立つ。

 

「正邪」

 

 姫海棠が私に声をかける。

 

「なんだよ」

「健闘を祈るわ!」

 

 私は少しだけ鼻で笑いながら。

 

「まかせ「御柱! 「ライジングオンバシラ」!!」ろおおお!?」

 

 いつの間にか空へと打ち上げられていた。

 あいつ次会ったらぜってーぶん殴ってやる。私はそう心に誓って。

 

「ぐう……」

 

 体に圧がかかる、上昇する時にかかる圧力だ。いわゆる上昇負荷。

 とんでもない速度で夜空に近づいていく。月がビームを放っているのはなんなんだろう。あ、消えた。

 飯綱丸と呼ばれている大天狗の姿が見える、苦しそうな、疲れているような様子だ。

 そいつの目の前に天魔が現れる。

 

 次の瞬間、飯綱丸は切り裂かれ、夜空が消えた。かなりマズイ!

 クソッ間に合え……ひっくり返れ、ひっくり返れ! 落ちろ!!

 

「うおおおおおおおおおおおわああああああああ!? 」

 

 能力が作動するように私は大声を出していたが、天魔達の高さに到達した瞬間にも、御柱は止まることなく、さらに上空へと言ってしまった。

 私は慌てて御柱から離れる。そして、天魔目掛けて飛ぶ。

 

 何故か知らないが、私の能力が通用しなかった。

 今は、天魔の奴は、飯綱丸に集中しているようだ。

 ならば、私は奴に触れて能力を使う!!

 

「堕ちろおおおおおおおおお!! 」

 

 私は少しでも距離を近づけるために打ち出の小槌を握る。天魔に近づいていく。ゼロ距離だ。

 そして、天魔を小槌でブン殴り、そのまま能力を発動させる。しかし、何かが起こる様子がない。

 終わった……そう思った、次の瞬間。

 

 私の体から力が抜けていくような感覚がして、天魔は落下していった。

 

「……はあ???」

 

 私には、打ち出の小槌は使えないんじゃなかったのか。

 おそらく今日は幻想郷に来てから最も混乱している日だろう。

 そんな風に唖然としていると、声をかけられる。

 

「おい、少し肩を貸してくれないか?」

 

 嫌だと言おうとしたが、目の前のそいつ、飯綱丸は一目で酷いと分かる怪我をしていたので、私は渋々肩を貸した。

 

「すまない、助かった」

「大丈夫なのか? あんた……」

「大丈夫だ。これでも大天狗なのでな、それで。お前は何者なんだ?」

「……ただの天邪鬼だよ」

「それは、打ち出の小槌だよな?」

 

 飯綱丸は私に問いかけてくる。

 

「よく知ってるな」

「扱えるのか?」

「分からねえ」

「使えるんだったら、私の傷を治してくれないか?」

「……傷が治りますように」

 

 私は針妙丸の真似をして、今の私はどんな顔をしているのだろうか。とにかく、真似をして。願い事を言いながら飯綱丸をぶん殴った。

 弱者の救済のための道具をこんな強者に使うなんて笑えるな。

 

「おお……、傷が治っていく……なんで今ぶった?」

「いいだろ、治ったし」

「そうだな、さて、天魔を追わなくては」

「今すぐかよ!?」

「下には守矢の神々や、はたてがいるんだろう? 護らなくてはいけない」

「……私も連れてけ」

「いいだろう、だが、自分の身は自分で守れ」

 

 飯綱丸は私を抱えて、下へ、落ちるのではなく、進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天魔は落下し続けていた。

 大天狗と、天邪鬼が遠くなるまで、落ちていた。

 

「何故、体が動かせない……!!」

 

 体を上に動かそうとしても、何か重いものに引っ張られるような感覚がして、体を動かせない。

 落ちていく、落ちていく、このまま何もできずに落下していくのだろうか。

 恐怖が、体を支配していく。

 

 そして、クレーターを作り着地する。

 

 

 起き上がると、周りに六つの気配がする。

 

 

 

「天魔!!」

「なっ、なんだ」

「諦めて!! 投降しなさい!!」

 

 姫海棠はたてがそう叫ぶ。だが、天魔には意味がない。

 

「断る! 私は、自由なんだ!! 何も恐れるものがないんだ!! 牢獄になぞ、縛られてたまるか!!!」

 

 天魔は、すべての妖力を解放する、だが、今までよりも明らかに弱っていることは明白だった。

 天魔の周りに風が渦巻き始める。

 

「やっべ! ……あれ。意外と大丈夫ね」

「どうやら弱ってるみたいだな」

「チャンスだ! 一気に畳み掛けるぞ!!」

 

 瞬間、蛇と百足が左右から出てきて、天魔に向かう。

 

「邪魔だ……!」

 

 団扇の一振りで消されるが、そこに、御柱が飛んでくる。

 まるで、機関銃のように連射されていく。

 天魔は飛んで回避しようとしたが、いまだに体は飛ぶことができない。

 脳裏に、もしかしたらこのまま、一生空を飛ぶことができないのではないか。と言う考えが浮かぶ、恐怖が体を支配するが、横に飛んで回避する。パシャッ

 

 痛みが体に走る。見ると、姫海棠はたてがこちらを念写していた。

 体が少しだけ痺れる。すると、今度は顔に痛みが走る、殴られた。

 

「前からあなたをこうやって殴りたかったんですよッ!!」

 

 射命丸文が拳を振り終えているのが見えた。

 

「おっ、いいねーじゃあこれは、私の分だ!」

 

 鉄の輪で腕を切られる。深くはないが、浅くはない。

 

「なんだその私の分って、まあいいや、俺も一発!!」

 

 スコップで頭を殴られる。ふらつき、足元がおぼつかない。

 

「これは、椛さんの分だッ!!」

 

 風祝にアッパーカットをされる。

 体が倒れそうになるが、持ち堪える。

 

「私はッ……」

「ッ!! みんな!! 離れろ!!」

 

 神奈子の声で、諏訪子は早苗を抱えて、文は百々世を抱えて、離れる。

 

「私は天魔だッ!! こんなところで地に堕ちていい存在ではないんだ!!!」

 

 天魔の意識が覚醒していく、そして同時に周りに弾幕を放つ。

 軌道も速度もバラバラのどこを狙っているかも分からない弾幕。

 威力だけは明確に殺意を感じる。天魔は狂っていた。

 

 全員が必死に避けて、天魔に攻撃を当て続ける。

 弾を、光線を避けて、御柱を、鉄の輪を、念写を、蛇を、風を、爆弾を当てても。天魔は倒れない。

 

「隠岐奈! ちょっと助けッ!?」

 

 はたてが取り出した式神が目の前で燃える。撃ち抜かれてしまった。

 はたては驚き、そして油断してしまう。

 

「マズッ……」

「はたて!!」

「凍れ!!」

 

 はたての目の前で弾幕は色を失い静止する。

 そして、生意気そうな妖精が姿を現す。

 

「やいテンマ!! あたいが相手だ!」

「チルノ! アンタ生きてたのね!」

 

 正邪と、はたてと共に行動していたチルノだった。

 

「目障りだ!! みんなみんな!! 何故私の邪魔をする!!??」

「あなたは間違ったんだ!!」

 

 上空から声がする。飯綱丸が戻ってきた。

 

「私は間違ってなどいない!! 自分を守るために!! 支配をする!! これのどこが間違っているんだ!!??」

 

 天魔がそう言った。そこに一人の声が響き渡る。

 

「無理やり支配しなくてもよかったじゃないですか!! 私たちを、もっと他人を頼ればよかったじゃないですか!!」

「……椛」

 

 早苗に肩を支えられて、椛が立っていた。

 

「天魔様も私と同じだったんですよ! 自分で抱え込みすぎて! 他人の事信じれなくなって!」

「お前のような下っ端に!! 何が分かる!!」

「わかります!!」

 

 椛は一呼吸置く。

 

「私も! 追い込まれてしまったから!! あなたという恐怖に!!」

「……」

 

 天魔は黙っていたが、静かに涙を流して

 

「私はッ……何をしていたんだろうなぁ……」

 

 地面に倒れた。

 そして、融合していた体が元に戻っていく。数十の天狗が、そこには残っていた。

 

「終わった……」

 

 正邪がそう呟いた途端、正邪を背中に乗せていた飯綱丸も体の融合が無くなる。

 大天狗達が出てくる。

 

「飯綱丸よ、よくやったな」

「ああ、疲れた……」

 

 天魔を止めたいという気持ちが一致して、大天狗一同は融合していたのだった。

 

「あ──ッ!! やっと終わった──!! このネタで新聞作りまくろ──!!」

「あっちょっと! 文だけずるい! 私も作りまくる! 皆さーん花果子念報をよろしくお願いしまーす!」

「なんかよくわかんないけど、あたいがテンマをやっつけたって事でいいか?」

「疲れましたー! 神奈子様、諏訪子様、帰りましょうよ!」

「そうだね、無事ハッピーエンドだったし!」

「残念ながらその前に二人には天魔との戦いで殴りにいくという行動をしたので、説教しなければならない!」

「はー結構楽しかったな、自分で飛べねえってのは癪だったが。俺も鉱山に戻るか」

 

 ひと段落ついて、それぞれが思い思いの日常に戻っていく

 

『おいお前たち何いい話風に終わらせているんだ』

 

 そこに声が響く。

 

「なんだ隠岐奈か」

『なんだとはなんだ』

「いいだろ少しぐらい、無事天魔は倒したんだし」

 

 正邪がそう言うが摩多羅は止まらない。

 

『あのな? まだまだ妖怪の山だけだからな? 異変解決には程遠いよ』

「水を差しやがって……」

「それに、まだ宴会もしていないじゃないか!」

 

 今度は神奈子がそう言った。

 

「ちょっと何言ってるんですか!? 神奈子様!?」

「私達はこの天狗の里を救うために行動した!! すこ〜しぐらいおもてなしを受けたっていいだろ!! なあ椛!?」「そーだそーだ!!」

「そうですね、宴会をしたいのも山々ですが、まずは天狗の里を復興しないと……」

「ッか〜〜! 椛は真面目だね!! そんなん後回しでいいだろ!?」「そーだそーだ!!」

「そろそろ切れそうですよ神奈子様、諏訪子様……」

 

 先程までの真剣な雰囲気は何処へ。神奈子は祭り好きの側面を出していた。

 

「宴会かーだったら俺も混ざろうかな」

「はーい! 私も私も!」

「ぜひ! 私にも宴会を取材させて楽しませてください!」

「あなた達はむしろ復興を手伝う側ですよね?」

「ふっ、復興なら私達に任せとけ!」

 

 自信満々な声が聞こえたので、全員がそちらを見ると、大勢の河童と山童がいた。

 

「はたてに助けてもらったからね! 一割引でサービスするよ!」

「あっ一割引なんだ」

「だって元々は天狗のせいじゃん」

「確かに……」

 

 そんな風にして、河童達は作業に取り掛かる。

 山童も一緒に仕事をしている。

 

「あれ、あたいが凍らせた天狗は?」

「それは、私と文で氷を溶かして拘束しといたわ」

「よし、貴重な労働力だ! 解放してこい!」

「あの、休ませてあげて欲しいのですが……」

 

 騒いで騒いで、空気が明るくなっていく。

 そんな様子を飯綱丸は上から見ていた。

 

「……そういえば、まだ名乗ってなかったな。私は飯綱丸龍。名を聞かせてもらえないか?」

 

 飯綱丸は自分の背中へと語りかける。

 

「私は鬼人正邪。生まれ持っての天邪鬼だよ」

「おそらくこれから宴会が始まるだろうな。あなたも一緒にどうだ?」

「いかない」

「……それは承諾か?」

「教えない」

「はは、天邪鬼も難儀なものだな」

 

 正邪は複雑な顔をした。

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