友情努力勝利鬼人正邪 作:MC下剋上
天魔が気を失ってから、私達は祝勝会を開いていた。
重症を負っていたり心に深い傷を負っていた奴らもいたが、妖怪というものは単純なのですぐに傷を癒して祝勝会という名の宴会に参加していた。
「おーい正邪ー? 飲んでるかー!?」
宴会を開く事に反対する奴は全くいなかった。
天狗の中には、というか、山全体には天魔に反発して捕まった奴らと、天魔に従い続けた奴がいたらしいから、こうやって宴会を開いて今までの事は水に流しましょうという魂胆なのだろう。
「ダメだすげえ無視してる」
だが、天魔は流石に許されなかった。
今は武装解除されて、力を無くす
もしかしたら天魔の代わりに天狗の里を治める奴が出てくるかもしれない。
それはそれで混沌としていて、私には心地の良い結果だった。
「よし! ここは私に任せなさい!」
そして今。私は馬鹿騒ぎしている奴らを冷笑している。
このくだらない連中を見ておつまみを頂くくらいには冷笑していた。
「オラー!! 飲めや──!!」
「!?」
姫海棠が何かを口に突っ込んできた!? 何すんだお前マジで!?
口の中に苦味が広がる。刺激も広がる。あまり飲み慣れないお酒の味だった。
「うげッゲホッゴホッ!」
「私の酒が飲めないのかー!? あーん!?」
「ダメだコイツ酔ってやがる」
すると、遠くから姫海棠を窘める八坂の声がした。
「おいはたて! やり過ぎるとアルハラで干されるからな! 気をつけろよ!」
「おい誰か私の心配をする奴はいないのか?」
やはり神なんて碌なもんじゃない。すくわれるのは足元だけだ。
「やめないかはたて。正邪殿が困っている」
「あっ飯綱丸……殿!? 正邪に殿はやめた方がいいですよマジで」
「しかし、命の恩人……」
「おいやめろ! 敬意を持つんじゃない吐きそうだ!」
「……わかったやめよう」
お酒も相まって私のことを吐き気が支配した。
少し頭が揺らいで、フラフラしてしまう。倒れそうになった時、飯綱丸が私を支えた。
「大丈夫か? えっと……」
「普通に正邪でいい」
「わかった正邪。先程は、あー」
お礼を言ってきそうな雰囲気だったので睨みつける。
「ていうかさー! 正邪が飯綱っちを助けたってどゆこと!? 私そんなんミリも聞いてないんですけどー!」
「酔いすぎだろ、飯綱っちて……」
「まあいいさ、無礼講だ。先程の戦いで、打ち出の小槌を使って私を助けてくれたんだ」
「それマジ!? ウケるー!」
「若い言葉を使っても若くはならないからな」
「あ? 殺すぞ……」
私は飯綱丸を盾にしてその場をやり過ごす。
「打ち出の小槌ですか、やはり幻想郷にきていたんですねー! 取材させてもらってもいいですか?」
いつの間にか背後に回ってきていた射命丸が私に声をかけてくる。
「断る、その辺の草にでも聞いてろ」
「あややや、これは手厳しい……」
「打ち出の小槌は小人や鬼にしか扱えないと思っていたのだが、天邪鬼でも扱えるのだな」
「いや、無理だ」
「また嘘ついてるよコイツ」
今回は本当なんだけどな。
私はそう思いながら、気分を紛らわすためにお酒を飲んだ。
暗い、暗い部屋の中に、一人の女性がいた。
女性は天魔と呼ばれ、妖怪の山で天狗達を率いていた。
彼女はただ一人、静かに牢の中で座っていた。
『おーい天魔』
背後から、知っている人物の声が聞こえるまでは。
「隠岐奈、か」
『正解』
「なんのようだ?」
『ぼっちで可哀想なお前を憐れんでやろうと思ってね』
「失せろ」
天魔は言葉では強く言ったが、真逆の想いがこもっていた。
『今頃、あいつらは楽しく宴会中だぞ。どうだ? 私がお前に飲ませてやろうか?』
「いらん」
『釣れないな、だから部下にモテないんだ』
「なんのようでここにきた?」
『さっき言ったじゃん。ぼっちで可哀想なお前を憐れんでやろうって』
はあ、天魔はため息をついた。
そこには少しだけ安心感が含まれていたし、疲れも含まれていた。
「……少し聞いてくれないか?」
『なに』
「私は怖いんだ」
摩多羅隠岐奈は何も言わない。
「今も、怖くて怖くて仕方がないんだ。私は、恐怖を紛らわせるために妖怪の山を支配しようとして、失敗した。多くの妖怪の恨みを買ってしまった。きっと殺される」
『誰も死んでないらしいし、大丈夫だろ。妖怪って奴はだいたい図太いんだ』
「だが、保証はできないだろう?」
『面倒だなおまえ』
「……すまない」
『ガチで謝るなよ』
隠岐奈は明るく努めようとしたが、天魔はそれでも暗い気分のままだった。
『気になったんだが、どうして妖怪の山を支配すれば、恐怖が紛れると思ったんだ?』
「……妖怪の山を支配して、影響力を上げれば、私に手出ししにくくなると思ったんだ」
『あんなに強いのに誰が手出しするんだよ』
「……お前が手出ししたじゃないか」
『あ、バレた?』
隠岐奈が正邪達を送ってきていた事に、天魔は気付いていた。
「お前が動くなんて、そんなに事態は重いのか」
『重くはない。重くはないが、私が動かなかったら全て水の泡だ』
「重いじゃないか!? 言ってくれれば私も少し考えたのに……」
天魔は少しだけ恐怖を忘れた。
『許してくれよ。聞く耳持たなさそうだったし』
「……時と場合によるが、聞いていたとは思う。お前は意外と思慮深いからな」
『そうだろう?』
「あと、優しい」
『は? 優しくないが。今ここで天狗を滅ぼしてやってもいいが?』
「ははは」
天魔はくだらなく思ってしまい、笑ってしまった。そして少しだけ恐怖を忘れることができたので隠岐奈に心の中で感謝した。
『まったく、私の事を優しいとかほざく奴は頭と目が腐っていると思う』
「そんなにか?」
『そんなにだ。もしくは馬鹿だな。おい馬鹿』
「なんだ隠岐奈」
『……理解できない。何故そんなに恐怖を感じるんだ』
隠岐奈は心底わからないと言った声で言った。
天魔は間を置いて、そして答える。
「六日前、だったか? 八雲紫が我々に文書を送ってきた日」
『正確には一週間、だな。さっき一日が経過した』
「その日に、私は八雲紫に真意を聞きに行くために幻想郷中を飛び回った」
『出会えたのか?』
「出会えた」
『どうだった?』
天魔はゆっくりと息を吐く。覚悟を決めるように口を開いた。
「会わなければよかった」
『どうして?』
今までよりもずっとずっとか細い声で天魔は言った。
そして隠岐奈はそれに対して疑問を持つ。
「八雲紫は」
天魔が言いかけたところで、紫がそれを止めた。
『おい、どうした? 八雲紫がどうしたんだ?』
隠岐奈は声をかけるも返事は返ってこない。
『死んで……はいないか、意識が切断されている? 口封じというわけだな』
声だけが牢の中に響く。
『……ゆっくりおやすみ、天魔』
摩多羅隠岐奈は、意識をなくした天魔の瞼を閉じさせ、そこから姿を消した。
私は誰かの背中におぶられていた。暖かくて、大きくて、安心するような。
その人の背中には、翼があって。それがとても触り心地が良くて。
くすぐったいと怒りながらも、笑いながら私にずっと触らせてくれて。
わがままばかり言ってた私の事を邪険に扱わず。嘘ばかり吐いてた私を許してくれて。
ずっと、そばにいると思っていた。
「母さん……」
そう言って私は眠りから覚める。
いま、私は何を見ていた?
周りを見渡すと、私の上に飯綱丸の顔が、近くには口元を手で押さえながら必死に笑いを堪えている様子の姫海棠。カメラを構えている射命丸の姿があった。
「か、母さん……って」
「……無礼講だし、今だけ私が母親になろうか?」
「あややや、飯綱丸様が出産していたとは、知りませんでした」
私は、何も考えず、飯綱丸の翼を持ったまま眠りについた。
そして、次に目を覚ました時、私は布団の上にいた。
だからこそ理解する。今までの事は夢ではないのだと。
目を覚ましたら、いや、目を覚ます前に針妙丸に叩き起こされて、いつも通り朝ごはんを作って……
そんな風に考えていると、私に声をかけてくる存在がいた。
「起きたか、正邪」
飯綱丸だった。という事はここはコイツの家なのだろうか。
「いいところに住んでるな、お前」
「皮肉か?」
「いや、本音だ。布団があるだけ羨ましい」
「どんな場所で過ごしていたんだ? ここは仮の家だっていうのに」
そう言われてみれば、ところどころが布で覆われていて、住居といわれれば、少し心許ない作りになっている。
「朝ごはん食べるか?」
「食べる」
いつも私が作っていた朝ごはんを、誰かに用意されるなんていつぶりだろうか。
私は意気揚々と椅子に座った。
「よーし典。頼む」
「お任せください」
「……誰?」
「紹介しよう、私の忠実な部下の
「ふーん」
はっきり言って、どうでもよかった。問題はそいつの料理はうまいのか。
少し時間が経ってから、目の前に朝食が置かれる。
白米に目玉焼きに、漬物。あと味噌汁。
「「「いただきます」」」
三人で手を合わせて、食べ始める。
料理の味は悪くなかった。ただ、少し漬物がしょっぱ過ぎたと思う。
ご飯を食べている間に飯綱丸が菅牧に何か聞いていた。
「なあ、典。私が天魔に戦いを挑む前に試験管を持たせてきたけど、あれなんだったんだ?」
「ちょーっと心が揺らされる呪いを入れていましたが……何かありましたか?」
「……あーなるほど。いや、おかげで助かったよありがとう」
「礼には及びませんよ。私は飯綱丸様の忠実な部下ですから」
菅牧は一見冷静そうだったが尻尾がすごいぶんぶんしていた。それをうまく隠して飯綱丸に見えないようにしていたのは流石だが。
「「「ごちそうさまでした」」」
食べ終わった後の後片付けも全てやってもらって非常に楽だった。
私は少しだけ、自分の身支度をする。手元にあるのは打ち出の小槌と、針妙丸の持っていた針。
どちらからも魔力を感じる。
「……私の中にいるのか?」
針妙丸。
答えは返ってくるはずもなく。
少しして姫海棠が私を呼びにくるまで。私はずっと打ち出の小槌を眺めていたのだった。
「で? なんだよ話って」
正邪ははたてに呼ばれて天狗の里の集会所に来ていた。
チルノが唯一凍らせなかった建物だった。チルノ曰く子供達が見えたかららしい。
そしてそこには、チルノ、姫虫百々世、射命丸文、大天狗数名に多くの天狗がいた。
「それはもちろん、これからの事よ」
「はたてから聞きましたよーこの異変を解決しようとしてるって」
「だからこの場全員で行くって? 多すぎないか?」
「戦いは数だからね」
集会所は騒がしいほどに大勢の妖怪がいた。
みんな天魔の支配から逃れて喜んでいるようだ。
「氷漬けにしたのに意外と協力的だな」
「誰も死んでないし、みんなパワハラが嫌いだったのよ」
「ていうか、摩多羅にどうやって連絡するんだ?」
「……式神持ってないの?」
「天魔に撃ち抜かれたよ」
正邪がそう言った途端、はたては頭を抱えた。
「マジでどうしよう……私も撃ち抜かれたんだけど……」
「もしかしてまずい感じですか?」
文がそう言っているが、当の二人には届いていない。
「どうしよう! あれがないと隠岐奈に連絡できない!」
「多分頃合いを見てコンタクトを取ってくれるんじゃないか? あいつどこから見てるかわかんねーし」
「だといいんだけど……」
「式神だったら、チルノが持ってるんじゃないですか?」
「「それだ!」」
文に言われた二人が、チルノの方を見ると、そこには式神を折って天狗の子供達と遊んでいるチルノがいた。
「よーく見ておけよ! これが紙飛行機だ!」
チルノが式神を使って作り出した紙飛行機はよく飛んだ。それに対して天狗の子供達は楽しそうに色々な反応を示していた。
「キャッチ!」
「ああ〜!? 何するんだよはたて!」
「ごめん借りるわ!」
空中を飛んでいた紙飛行機を捕まえるなど、はたてにとって造作のないことだった。
そして式神に妖力を通す。
「隠岐奈ー! おはよう!」
『うわあ急に呼び出すな。びっくりしただろうが』
「コイツそれしか言わないのか?」
式神から摩多羅隠岐奈の声が響く。
「天魔をやっつけたけど、次はどうすればいいのかしら?」
『ああ、次は地底に行ってくれ』
「地底かー」
地底、その単語が出た瞬間。正邪とチルノと百々世以外が静まり返った。
「どうしたんだ?」
「いやあ、地底って……冗談きついわよ隠岐奈……」
『ん? 冗談を言っているつもりはなかったけどな』
「むりむりむりむり! 無理です地底は!」
文が大きく否定した。
「……我々も里の復興があるし、ここら辺で……」
大天狗はそう言ったのをはじめとして、ほとんどの天狗が集会所から姿を消した。
「おいおい……里の天狗使えないじゃん」
『はあ、やっと消えたか』
「ど、どういう事!? やっぱり冗談だったの!?」
『冗談じゃないが、私は秘匿されるべき存在なのだ。おいそれと声を出すことなどできん』
「なるほど、秘神でしたか」
隠岐奈の言葉を聞いて合点が言ったように文が発言した。
『まあ、地底はきついだろうから、はたてと文には永遠亭に言ってもらおう』
「永遠亭……迷いの竹林の?」
『そうだ。永遠亭でも異変の影響で何かが起こっているらしい』
「その程度、すぐに終わらせてやりますよ」
『気をつけろよ、私でも理解できないことが起こっている』
「じゃあ大丈夫だな」
『どういう意味だ正邪』
とにかく、はたてと文はこれから永遠亭に行くことになった。
「それで? 私はどうすんだ?」
『お前な……とりあえず、地底に行ってくれ』
「隠岐奈正気? 正邪死ぬわよ」
「なんでさっきからそんな地底にビビってんだ? 天魔を倒したじゃないか」
「私たちの元上司で天狗の山を支配してた鬼がいるのよ! 地底には!」
「へえ、鬼がいるのは知ってたが、上司だったんだな」
ま、大丈夫だろう、そう正邪は言って楽観的な態度を見せた。
『あ、そうそう姫虫百々世』
「俺か、なんだ?」
『正邪についていってくれ』
「いらねえよこんな百足女」
「は?」
『仲がいいな! そしてチルノ』
「なんだ!」
『待機で』
ズコッと音を立ててチルノは崩れ落ちる。
「あたいの出番じゃないのか!」
『まあ、どっちも相性悪いし、本当にお前が必要なのは他にいるからな』
「それって誰だ?」
「私ですわ」
いつのまにか人間が一人、集会所の入り口に立っていた。
髪色は銀髪で、青い目をしている端正な顔立ちだ。メイド服を着てそこに佇んでいた。
「お嬢様の命令により、チルノ。あなたの手を借りたいの」
「……誰?」
「申し遅れたわね。私は
「ふーん、いいぞ!」
「チルノの手を借りたいのか……腐りやすい食材でも仕入れたのか?」
「冷蔵庫じゃないんだから……」
『というわけで、この場にいる全員の目的地は以上だ!』
隠岐奈はそう言った。
纏めると、正邪と百々世は地底に、はたてと文は永遠亭に、チルノと咲夜は紅魔館に行くことになった。
「で? いつ出発するんだ?」
百々世が疑問に思って聞いた。
『今すぐに決まってるだろ。さっさといけ……とは言わない、だができるだけ迅速に動いてくれると助かる』
「よーしゆっくり行こうぜ姫虫」
『扉を開いてやろうか?』
「……正邪は置いといて、どうせ私達には異変解決以外やることないんだから。任せてよ」
「そうね、はたての言う通りだわ。私達に任せなさい」
「あたいもやってやるぞ!」
全員の士気は十分だった。これからも彼女たちの戦いは続いていく。
宴会にて
「早苗さん……いや早苗。少し聞きたいことがあるんですが……あるけどいいか?」
「なんでしょうか椛さ……椛。」
二人してクスッと笑う。
「なんか不思議だ、早苗に敬語を使わないって」
「ふふっそうですね。椛が敬語を使わないところは初めて見ます」
「早苗も敬語を使わなくていいんだぞ?」
「私はこれがデフォルトなので、一番楽なんです」
「そうか……」
椛は少しだけお酒を飲んだ。
「今朝に早苗と私は殴り合いをしただろう?」
「しましたね」
あの時の強さのの秘密を聞きたかったんだ」
そう言われた早苗は手を顎に当てて、考える素振りを見せる。
「秘密ですか……」
「明らかに戦闘を経験しているような動きだった。そして、そちらの神奈子様が言及していたので……」
「秘密って言われても……そんな大したものじゃないですよ?」
「ぜひ知りたいんだ。私はもっと強くなりたい!」
「うーん、まあいいでしょう」
そして早苗は語り始める。
「外の世界で、私は……不良でした」
早苗が幻想郷にくるニ年前。
彼女は高校一年生になった。実家から近く、風祝としての仕事ができるようにアルバイト可(風祝がアルバイトになるのかは知らない)、そして髪色が自由という、まさに今の早苗にとって願ってもない高校に入学を果たしたのだ。
中学の頃は風祝としての仕事や、髪色で少しいじられていたのだが、高校生活ではそれもなくなると思い希望を胸に一歩を踏み出した。
高校に近づくほどに、金髪だったり、茶髪だったり、明らかに髪を染めている人が多くなり、周りの人間も特に早苗の髪色に反応しなかったので、早苗はとても嬉しかった。
きっとこれから、失った青春を取り戻すのだろう。
事実彼女は青春を謳歌した。しかしそれは、血に塗れた青春だった。
「あっあの、どうしてウチを助けてくれたんっスか?」
「困ってる人を見かけたら助けるのが私ですから!」
入学初日に、校門で困っている女子生徒を見かけた早苗。
訳を聞くと、先輩に脅されて焼きそばパンを買ってこいと無理難題を押し付けられたらしい。
それを聞いた早苗は奇跡をフル活用し焼きそばパンを買ってあげた。
女子生徒と一緒に焼きそばパンを献上しにいくと、面白くなさそうな顔をした先輩が殴りかかってきたので、早苗は先輩たちを一撃でのした。
気絶する寸前に名前を覚えたとかなんとか言っていた気がするが、早苗はそんなことどうでも良かった。
一緒に焼きそばパンを買いに行った。これは青春と言えるのではないか。
「あの!名前を教えてくれませんか?」
「あっえっと、ウチは
「姉御なんていいですよ。私の名前は東風谷早苗!早苗って呼んでください」
「いやっ早苗の姉御って呼ばせてもらうっス!」
早苗に舎弟ができた瞬間だった。
その後、無事に入学式を経験した早苗。校長が話している間にバイクの音が響き渡り、教師は注意せずにタバコを蒸す。そして早苗はようやく気づいた。
(この高校……ヤンキーばっかだ!)
自由な髪色、自由な制服、自由な校則、早苗の入った高校は無法地帯と化していた。
その後、入学式の前に倒した先輩が今度は大勢を引き連れてやってきた。
早苗はできれば戦いたくなかったが、高校でできた初めての友達である四乃木に危害を加えられると、容赦なく奇跡の力を使って、全員倒した。
しかし、それを見ていた高校の番長に目をつけられる。
早苗はできる限り喧嘩に触れないようにしていたが、ついに果たし状が届く。
そして、早苗は番長を苦労することなく倒した。
早苗は新しい学校の番長となったのだ。そしてもう普通の青春には戻れないのだと思った。
しかし、意外なことに喧嘩をすることで仲良くなった生徒たちと、一緒にツーリングしたり(早苗は自転車でバイクと並走した)、一緒に写真をとって思い出を作った。
この頃にはもう喧嘩など気にしなくなっていた。
早苗が高校二年生になった頃、県のヤンキーたちが一斉に集まる集会があった。
いわゆる裏の集会で、そこに集まることで結束を固めたり、県内で高校の序列を決める会だった。しかし逆に、来ないということは裏切ったか、舐めているということになる。
そして早苗はそんなの知らないし、青春を謳歌するのに忙しかった。
結果、早苗のいる高校は県全部の高校から狙われることになった。
最初は県内でも下の地位の高校が攻めてきた。早苗は余裕でこれを撃退した。しかし、日が経つにつれ、軌跡でのゴリ押しは許されなくなり、一人で戦うのも厳しくなってきた。
「はあ……はあ……流石に百人は厳しいですね……」
「早苗の姉御!!」
「あっ……四乃木ちゃん……」
「もう一人で戦わないでください!」
「大丈夫。私は強いんです……だから」
「ダメだ!一人で背負い込むんじゃねえ!」
「そうだぜ姉御!みんなの言う通りだ!」
「みんな……」
この日から早苗は自分が傷つく事でもみんなが傷つく事に気付き、みんなで傷つけば辛くても乗り越えられる事を学んだ。
そして、早苗は体を鍛え始め、自分の戦闘スタイルを獲得していった。
神奈子と諏訪子は最近傷をつけて帰ってくる早苗を心配して、こっそり学校についていったらガチガチの不良になっていた事がわかりショックだった。
そして二年生の三学期、多くの他校を倒してきた早苗達。ついに県最強の高校から果たし状が届く。
早苗は戦った。戦って戦って戦い続けた。
そして勝ち取った。最後の番長同士の戦いで、早苗はついにノーガード戦法に辿り着いた。
当たらなければどうと言うことはない。
三年生になり、県最強の番長となった早苗、そして日本全国最強のスケバンを決める戦いに巻き込まれる。
47都道府県の日本各地から最強を決める大会だった。
早苗はシカトしようとしたが相手の高校に仲間を馬鹿にされたため参加せざるを得なかった。
一戦目二戦目は快勝、三戦目も特に苦労することはなく勝ち進む。4回戦にて早苗は初めて自分以外にも神力を使う相手と対戦する。京都高の番長だった。
相手の方が神力の使い方は上手く早苗は追い詰められる。しかしその時に奇跡の力が覚醒する。
ノーガード戦法と奇跡がうまく噛み合わさり、相手の攻撃が全く当たらない最強の戦い方が早苗にできた。そして相手を打ち倒した。
五回戦目も辛く勝利する。
そして決勝。相手は東京の番長だった。
スケバンとしての闘い方を究極なまでに身につけた、スケバンオブスケバン。神力など使わず、己の肉体のみで勝ち上がってきた女だった。
激しい戦いは丸一日にも上り、早苗が勝利した。
彼女の姿を見た時誰もが彼女を、現代の喧嘩神と思った。
その後、早苗は新しくできた友達と、昔からの友達とみんなでパーティをしたり、盗んだバイクで走り出したり、守矢神社にお参りをしないと潰すという校則を作ったりして、最高の青春を過ごした。
「とまあ、こんな感じでしょうか」
「……なんか、すごいな早苗が幻想郷に来る前の話」
「大したものではありませんけどね、さてじゃんじゃん飲みましょう!!」
「なるほどな……友情と努力……そして、勝利するか。うん。私も飲むぞ!!」
あまりお酒を飲まない二人が二日酔いになったのはいうまでもない。