アビドスユメモドキ   作:泡沫のユメ

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初投稿です。


1章 アビドス生徒会編
プロローグ


 転生した。そう思ったのは3歳になった頃。いわゆる物心がついたころだった。転生した、と言うよりも前世の記憶を思い出した、というような形だったことから察するに、少し成長した脳が前世の記憶を理解できるようになった、ということなのだろうか。

 

 前世の記憶と、今までの3年間の記憶が混濁して、少し混乱しながらも周りを見ていると、ふと気付いたことが2つあった。

 

 ここでまず知っておいて貰いたいのは、前世の俺は日本人の男だったということだ。

 

「な、なくなってる··?」

 

 そう、前世で共に生きてきた相棒が、息子がなくなっていた。つまり女の子になっていたのである。そして更には

 

「こ、これ、ヘイロー?」

 

 自分の頭の上辺りにヘイロー、模様付きの天使の輪があったのである。これだけ聞けば天使にでも生まれ変わったのかと思われるのだろう。

 

 だが模様付きの天使の輪、そして女の子という2つの要素から自分の前世の記憶に1つ思い当たるゲームがあった。

 

「まさか、」

 

 近くにあった窓から外の景色を、空を見る。透き通るような綺麗な青空、そして空に浮かぶ巨大な光輪。

 

「ブルアカの世界にTS転生!?」

 

 そうブルーアーカイブ、透き通るような世界で送る学園物語である。ここだけ聞けば特に問題ないように思えるが、実態として、銃を持たない人は裸で歩いてる人より珍しいというレベルの銃社会であり、治安が最悪。更にブルーアーカイブの主人公である先生が1歩間違えるだけでバッドエンド、そして世界が滅びてしまうというふざけた世界である。

 

 前世では、ブルアカが好きだったのでこのことに気づいた時嬉しさもあったのだが、それ以上に世界が滅びたりその過程で死んだりするのは嫌だった。

 

 しかし少し周りの状況や混乱している思考を整理しているとある事実に気付いたのだ。そう既に原作の時間軸は通り過ぎた、或いは原作よりも昔の時間軸であるという可能性だ。というか冷静に考えればむしろそっちの可能性の方が高いだろう。

 

 ブルアカの世界は所謂サザエさん時空だが、そんなのはゲームの中の話で、現実になったのならばあれは1年で過ぎ去る物語であり自分が生きている内にその1年が来る可能性はかなり低いと言える筈だ。ブルアカの1ファンとしてキヴォトスに転生したのに原作キャラに会えない、というのは少し、いや、かなり悲しいが、世界が滅びる瞬間に出会うかもしれないというリスクを考えれば許容範囲だ。

 

 治安が悪いというのはキヴォトスに生まれた以上どうしようもないのだろうが、ヘイローがあるならば銃弾で簡単に死んでしまう、なんてことにはならないはずだ。

 

 これらの事実に気付けたことで少しだけ冷静になることができた。そこでふと自分の容姿や、ヘイローの形はどんな感じなんだろう、と思い部屋にあった姿見の前まで移動した。ヘイローの位置的に自分についてることはわかるのだが詳しい形は見づらかったのだ。

 

 まずヘイロー。ふむふむ、中心に太陽を想起させるような模様があり、その模様を囲うような菱形。そして更にそれら全てを囲うような光輪。綺麗だがなんだか前世で見たことがある形のような···? 

 

 そして自分の顔も初めて見たのだが、かなりかわいい。幼いながらも整っていておっとりしたような顔に、緑がかった薄い水色の綺麗な髪に特徴的なアホ毛……? 

 

 少し、嫌な予感がしてきた。冷や汗が止まらない。

 

 先程窓から見えた外の景色は少し砂がかかったような都市群だった。この情報と前世の記憶から推察するに今いる場所はアビドス自治区である可能性が非常に高い。

 

 この太陽のようなヘイロー。おっとりとした顔。そしてこの髪色に特徴的なアホ毛。極めつけにアビドス自治区出身。

 

 これら全ての特徴に当てはまる生徒を1人だけ知っている。

 

「まさか····いや他人の空似のはず……」

 

 現実逃避するかのように彼女との違いを探す。

 何か確かめる方法は·····そうだ! 名前。名前さえ確認できれば! 

 

 転生してからの3年間の記憶を何とか探る。前世の記憶と比べると、今世の記憶は穏やかに過ごしていただけの薄っぺらいものだからなのか、自分の中でも少し薄れつつあるのだ。

 

 そしてついに思い出した自分の名前は

 

「く、梔子···ユメ···」

 

 なんということだ。原作の時間軸に生まれたどころか原作でも登場した生徒である。どうやらただの転生ではなく憑依転生、というヤツだったらしい。

 

 いや、そんなことを言っている場合では無い。問題は原作に出てくる生徒の中でも梔子ユメに憑依していることだ。

 

 梔子ユメという生徒。死と言う概念からは程遠いはずのキヴォトスにおいて唯一正史でも死が明確に描写されている。しかも理由がおっちょこちょいでコンパスを忘れて砂漠で迷子になった末の衰弱死というあまりにもお馬鹿な理由なのだ。これで未来の後輩は心に大きな傷を負うのだから目も当てられない。

 

 そしてここで問題なのが原作登場時点で既に亡くなっている、ということだ。

 

 流石に世界が滅びないためとはいえ死にたくはないのだが、先程言った通りこのキヴォトスは先生が1歩間違える。或いはなんらかの要因で少し歯車がズレるだけで簡単に世界が滅びてしまうのだ。つまり俺が生き残ると世界が滅びるかもしれない、ということだ。

 

 あまりにもふざけている。が、しかし原作知識から考えるに自分が、梔子ユメが生き残ると言うことには1つ明確な利点があるのだ。

 

 俺が知っている1つのバッドエンドで、梔子ユメの死のトラウマにより反転、テラー化した未来の後輩が原因となるものがある。俺が生き残れば少なくともこのバッドエンドは回避できるはずなのだ。それに未来の後輩。いや、小鳥遊ホシノの結末は俺の知る限り完全に救われたとは言い難いものだった。

 

 ならばこの世界線では俺が、いや私が。小鳥遊ホシノを幸せにしよう。そしてなんとか世界が滅びないようにがんばろう。私はそう決意した。

 

 だが、それはそれとして1つ言わせて貰いたい。

 

 

「なんで憑依転生でしかもユメ先輩なんだよおおおおおおおおお!」

 

 そう、何を隠そう私は前世に置いて小鳥遊ホシノ推し、そしてユメホシの2人のやり取りが好きだったのだ。確かにキヴォトスに来れたし、高い確率でホシノとも出会えるのだろう。だかしかし、ブルアカの世界に転生したのを自覚した際、ユメ先輩とホシノの原作では語られなかったやり取りを生で見ることができるかもしれないと、そう歓喜したのに。私が梔子ユメでは見ることができないでは無いか。

 

 それに私は絶対に原作ユメ先輩の様な聖人になることができない。過去の尖っているホシノをのんびりおじさんにできるほどのいい影響を与えられるのだろうか。とても不安だ。

 

 ホシノがネットで「アビドスユメモドキ」なんて呼ばれていたが、私の方がよっぽど「アビドスユメモドキ」だ。というか、彼女にはなれないことを自覚しながらも目指すのだから、私の方がよっぽどユメモドキである。

 

 だが、それでも私が失敗すればホシノが来るまでにアビドス高等学校が廃校になってしまうだろう。それにそうなるとピタゴラスイッチ方式でそのまま世界が滅びてしまうため、がんばらないという手は残念ながら存在しない。

 

 とんでもない世界に生まれてしまったものだ。

 

「とりあえず原作の知識を忘れない内に何かに書き残さなきゃ」

 

 原作の知識、この場では未来の知識とでも言うべきか。これらが無いと私は絶対に上手くできないし世界が滅んでしまう。高校生になるまでの間全てを忘れないというのは無理があるだろうし何かにメモをしなければ。しかし誰にも見つからないようにもしなければならない。こんなものをゲマトリア等の悪い大人に見られれば狙われるに決まっているのだから。

 

 その後色々と考えた結果キヴォトスでの方針が決まった。

 

 1つ目は高校生になるまではとにかく強くなること、戦闘慣れをするようにしよう、ということだ。原作のユメ先輩は荒事が苦手な様だったので、既にユメ先輩からはかけ離れている。だがしかし世界が滅びないように色々と手を出す予定の身としては強くならない訳にはいかないのだ。それに日本人であった私が急に銃を持ったところで上手く戦えるわけも無い。とにかく経験を積まなければならない。

 

 2つ目、卒業した後どうなるのかはわからないがなんとかキヴォトスに残って原作の先生を手助けすることだ。梔子ユメが生き残る。つまり原作を崩壊させるのだから、その責任は負わなければならない。

 

 なんて、高尚な理由付けをしてみたが、本当の理由は私のせいでキヴォトスが滅んだら罪悪感でどうにかなってしまうから、というものだ。私は先生にはなれないよ·····。

 

 そんなことを考えながら私のキヴォトスでの生活は始まったのだった。




次回一気に時間が飛ぶと思います。原作キャラとの絡みが二次創作の醍醐味だと思ってますので···
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