アビドスユメモドキ 作:泡沫のユメ
1年生のノノミの口調が全くわからなかったので、2年生のノノミを参考に書いています。
登場人物が増えると急に書くのが難しくなりますね。今後がとても不安です。
起きた日から2週間が経過した後私は無事に退院することができた。後遺症が全く無かったことについては奇跡だ、とお医者さんに言われた。ユメ先輩、ほんとうにありがとう
後遺症は全くないのだが、8ヶ月も寝ていた代償は大きくて、まずは留年してしまった。だがこれについてはむしろ何も考えることなく1年追加でアビドス高等学校に通えるようになったため好都合だった。
しかし結局先生が来る前には卒業しなければならない。その問題を解決するため生徒会長の権限を使って無理やりもう1年追加で留年することにした。
ホシノちゃんにありえないものを見るような目で見られたが、世界が滅びるのを防ぐためなの、そんな目で見ないで····
さらにもうひとつ、私の戦闘の要であった身体能力が落ちてしまったのだ。8ヶ月も寝ていたのだから当然のことなのだが。
それでも日常生活で全く支障が出ないのはさすがキヴォトスの人間ということなのか。前世の感覚でいえば歩くためのリハビリとかも必要になりそうだし。
そしてさっきのとは違ってこれは大問題なのである。
私という存在のせいで原作からはかけ離れた状況になってしまったため、原作に介入して世界が滅びないようにしなければならないのだ。そうなった場合に戦えない、というのは大きなデメリットになってくる。取れる手段が大幅に減ってしまうからだ。
というか原作知識書いてるメモ帳遭難してた時に紛失したんだよね····
探そうにも今から広大なアビドス砂漠の中から見つけ出す、というのは現実的では無いし····私の記憶が正しいことを祈るしかない。
来年には先生を中心として様々な事件が起こるだろうから急いで前の感覚を取り戻さなければならない。まず当面の目的は強くなること、である。
盾····IRON HORUSはホシノちゃんが持って帰ってくれていた。
これについてはホシノちゃんにそのまま使ってもらうか悩んだのだが、ホシノちゃんは盾がなくたってありえないほど強いから原作とかに影響はないだろうし、それよりも私が弱くなることの方が問題だと思ったので返してもらった。
というよりも私が何かを言う前から返してくれた。
『もともと先輩のものですから』
とのこと。もとはアビドス生徒会のものなんだけどね····
そういえば柴大将にも心配をかけてしまっただろうし今度元気になったことを報告しにいかなきゃいけないな。そんなことを考えながら私は久しぶりのアビドス高等学校に向かっていった。
◇ ◇ ◇
「ノノミちゃんとシロコちゃん、改めてよろしくね〜」
「はい☆よろしくお願いします〜」
「ん、よろしく」
私達4人はいつものアビドス生徒会室····ではなく対策委員会の教室に集まっていた。原作のようにホシノちゃんが新しく部活を作っていたのだ。
ちなみにノノミちゃんとシロコちゃんだが、何回かお見舞いに来てくれていたため初対面ではない。
「じゃあ今日も借金を返すための会議を始めるよ〜」
ホシノちゃんはこの時から緩い感じになっていた。私と喋る時だけは敬語になっているが
「任せて。計画ならたくさんある」
「銀行強盗は却下だよ」
「ん····」
シロコちゃんはこの頃から銀行強盗系メインヒロインだった。ケモ耳が下がっていて明らかに落ち込んでる。来年には銀行強盗できるから····
1年生のシロコちゃんは小さいというか幼いというか····ここから1年であそこまで成長するの凄すぎない? しかもとんでもない野生児だし。初対面の時に
『私は自分より強いひとの言葉しか聞かない。だから勝負しよう』
と、言われた時はかなり驚いた。あの頃の私はまだ病院のベッドで寝てたんだけどな····
ちなみにその後ホシノちゃんにボコボコにされたらしく、次に会った時怯えながら謝られた。私のことを大切に思ってくれるのは嬉しいけどやりすぎはよくないよ?
あまりに怯えていたので事情を聞いたあとに慰めていたら普通に懐かれたし言うこともきいてくれるようになった。····言うことを聞いてくれるのはホシノちゃんを恐れているからかもしれないが····
シロコちゃんはこれから肉体的な成長だけでなく精神的にもかなり成長するのだろう。この野生児が汗の匂いを気にするような少女になるのだがら驚きだ。ノノミちゃんとホシノちゃんの情操教育が凄すぎる。
そんなシロコちゃんは記憶喪失で家もないから今はノノミちゃんの家で暮らしているらしい。情操教育を行ったのはノノミちゃんなのかもしれない。面倒見のいい性格だし
「私にもいい案があります! このゴールドカードで────」
「それもダメ」
「·····ですよね」
ノノミちゃんはまだアイドルに目覚めていないらしい。ハマったらすぐにでも教えて欲しい。全力で支持してなんとしてでもホシノちゃんをアイドルにするから
「うーん····平和でいい光景だね!!」
「ユメ先輩も真面目に考えてくださいよ」
「えー···そうは言ってもなあ····」
正直なところ指名手配犯を捕まえるか、割のいいバイトを探す、くらいのことしかやっていなかったからこういう会議で出すような案は思いつかないのだ
「まあそんな感じでコツコツやっていくのが結局1番だよね····小さな積み重ねがいつか大きな奇跡を生むことを信じてさ·····」
「まあそうなっちゃいますよね····去年も宝探し以外は全部そんな感じでお金集めてましたし····」
「「··········」」
「どうしたのふたりとも?」
ノノミちゃんとシロコちゃんが驚いたような顔でこちらを見ている。どうしたんだろうか
「ええと····なんというか、意外だなって思いまして·····」
「意外?」
「ユメ先輩はもっと変な案を出すと思ってた。なんかいつもぽわぽわしてるし」
「そうですね····すごく現実的な話でしたのでなんだか驚きました」
「えぇー私のイメージってどうなってるの? 私はいつも真面目な感じだよね? ホシノちゃん」
心外である。ホシノちゃんならばわかってくれるだろう。後輩ふたりに私のことを伝えてもらわねば
「大丈夫だよふたりとも。おじさんもこのギャップに最初はびっくりしたから。ユメ先輩は普段は変なのに借金の話になると急に現実的な話をし始めるんだよね」
「ホシノちゃん!?」
「やっぱりそうですよね?」
ホシノちゃんにも裏切られてしまった。私はいつだって真面目なのに····
ここは私のイメージを改善しなければならない場面だろう。ホシノちゃんは兎も角としてまだ出会ったばかりの後輩達にまで変だと思われる理由は無いはずだ
「ん、だってユメ先輩はホシノ先輩と一緒に宝探しをよくやってたって言ってたし、そういう突拍子もない案を出すのかと思って」
「この前私がお見舞いに行った時『よく見たらホシノちゃんポニーテールじゃん!? ありがとうございます』ってよくわからないこと言ってましたよね?」
「そういえばさっき退院祝いってことで4人で一緒に写真撮った時にも『家宝にするね! ありがとう!』とか言ってましたねー?」
「···········」
どうしよう。困ったことに否定できる材料が一切ない。私は変な人だった。こんな人間が急に現実的な話をし始めたら誰だって驚くだろう。
ポニーテールのホシノちゃんについては原作でみた頃から好きだったのだが、あの時のホシノちゃんの状況があまりにも悲惨すぎて素直に楽しめなかったのだ。だからそういう憂い無しで見れた嬉しさで思わず感謝してしまった。
「ま、まあ私の話は一旦置いといてさ」
「ん、逃げた」
「逃げましたね」
「はいそこ! お静かに!!」
勝てない戦いからは逃げるべきなのだ
「ねぇ、ホシノちゃん? ひとつ聞いてもいいかな?」
「な、なんですか?」
「おじさんっていうのは····?」
ホシノちゃんが固まって動かなくなってしまった。動揺しているのか視線だけは泳ぎまくっているが。
実はまだ私の前ではおじさん、と一度も言っていなかったのだ。うへうへおじさんにはならないのかなって思っていたから少しだけ安心? した。いや別にならなくてもいいとは思うんだけど少しでも原作再現を、という話だ。
······この考えで痛い目にあったばかりではあるのだが流石に大丈夫だろう。大丈夫だよね?
「えぇっと····それはですね·····」
「ホシノ先輩は私が会った時からずっと一人称がおじさんでしたよ〜☆」
「の、ノノミちゃん!?」
ふっふっふ。さっき裏切られた報いだ。ホシノちゃんにも恥ずかしい思いをしてもらおうと思ってあえて指摘したのだ
·····別にホシノちゃんは裏切ってなんかなくて私が変だっただけの話ではあるのだが。それはそれ、これはこれである。
「ちょっとユメ先輩! なにニヤニヤしてるんですか!」
「ん〜? 恥ずかしがってるホシノちゃんがかわいいなーと思ってね!」
「そういえば先輩はこういう人だった·····」
ホシノちゃんが少し呆れた顔をしている。からかわれていることに気がついたのだろう。別に本気で気になった訳では無いし
「なんだかこんなホシノ先輩を見るのは新鮮ですね?」
「ホシノ先輩がここまでふり回されてるのを見るのは初めて」
◇ ◇ ◇
会議(?)を終えた私達はお昼ご飯、ということで柴関ラーメンに来ていた。柴大将に元気になったことを伝えるためでもある。
「大将! 久しぶり!!」
「おお! ユメちゃんか、久しぶりだな。遭難したって聞いたときは心配だったが元気になって良かったな」
「はい! ホシノちゃんのおかげでなんとかなりました!」
「そういえばホシノちゃんも大丈夫か? この前来た時はすごい顔してたが····」
「····はい、もう大丈夫です。ご心配おかけしました...」
「····ふたりとも大丈夫そうだな。よかったよかった」
「さっ、注文はどうする?」
「私はいつも通り柴関ラーメンで!」
「私はチャーシュー麺をお願いします〜!」
「ん〜おじさんは特製味噌ラーメンかな〜」
ちなみにホシノちゃんの気を抜いてる時の一人称、おじさんについてはもう癖になってしまったからユメ先輩にも慣れて欲しい、と言われた。私としては前世込みだとどっちも聞き慣れてるから特に違和感はない、というかむしろこっちの方が慣れてるかもしれない。
「ん·····」
「シロコちゃんどうしたの? 私が奢るからなに頼んでもいいよ?」
「その····ラーメンって食べたことがないから何を頼めばいいのかなって」
そういえばシロコちゃんは記憶喪失だった。知らない食べ物だから選ぶのに躊躇していた、ということだろう。初めてなら、ラーメンの中だと比較的あっさりしてる塩ラーメンとかの方がいいのかな?
「この塩ラーメンっていうのがオススメだよ!」
「わかった。じゃあ私は塩ラーメンで」
しばらくしてラーメンが来たのだが····
「ん!」
シロコちゃんが目をキラキラさせながら凄まじい勢いで食べている。お箸の動きが1度も止まっていない。どうやらかなりお気に召したようだ。
「シロコちゃん凄い勢いで食べてますね〜」
「ね〜。なんだか微笑ましいね....」
「ですね☆」
「ん、ご馳走様でした」
「シロコちゃん食べるのはやいね!?」
「ホシノ先輩、後で勝負しよう。今の私なら負けない」
どうやらシロコちゃんはまだホシノちゃんに勝つことを諦めていなかったらしい。ラーメンを食べて気合いが入ったのか、ふんすふんすと鼻息を荒くして宣言している。
「シロコちゃんは元気だね〜。いいよ、やろうか」
ホシノちゃんもなんだかやる気になったらしく私とノノミちゃんより先に食べ終えてしまった。
「すみませんユメ先輩、先にふたりで学校に戻ってますね」
「おっけーだよ! ふたりともがんばってね?」
「ん、今日こそは負けない」
そうしてホシノちゃんとシロコちゃんは先に学校へ戻って行った。
「····あ、そういえばユメ先輩、私が払いますよ? ゴールドカードもありますし····」
「いやいや、流石に後輩に奢られるのはなんだか情けないから大丈夫だよ!」
別にノノミちゃんがお金を持っているのは知っているのだが、それでもこれくらいは私が払いたいのだ。それに私がお金を払って食べたご飯でみんなが笑顔になっていると思うと、自尊心が満たされるのだ。
「そうですか···? ならいいですけど·····」
ノノミちゃんももしかしたら同じような考えを持っているのかもしれないが、ここは譲ってもらおう。
「·······ユメ先輩が目を覚ましてくれて本当によかったです···」
「急にどうしたのノノミちゃん?」
「ユメ先輩が元気になってくれて嬉しい、というのももちろんあります。でもそれと同じくらいホシノ先輩の笑顔が増えたのが嬉しくて····」
「去年の冬頃から何回かアビドス高等学校に行ってたんですが、その頃のホシノ先輩はなんだか追い詰められてるような顔をしてましたし·····それに悪夢に魘されていたようだったので····」
「シロコちゃんが来てくれてからはちょっとだけ笑顔が増えたんですけど、それでもたまに辛そうな顔をしてたので····」
「でも最近はそういう顔をすることが全くないんですよ。だからそれが嬉しいんです。私は結局ホシノ先輩になにもできませんでしたし····」
なるほど。たしかにあの頃のホシノちゃんを見ていたら心配にもなるだろう。それにネフティスの令嬢、という事で責任を感じているのかもしれない。でもそんな辛そうな顔をする必要は無いだろう。
「まあ、言いたいことはわかるよ。でもね、ノノミちゃんがなにもできてないなんてことは無いと思うよ」
「そうですか····?」
「私も経験したことがあるからわかるけどね、ずっとひとりっていうのは辛くて苦しいんだよ。誰にも相談できなくて、誰とも話せなくて、どんどん未来が見えなくなるの」
「········」
「そんな時に来てくれる人が、喋ってくれる人がいるって言うのはとっても嬉しいことなんだよ。まあホシノちゃんのことだからこんな未来が見えない場所に入学するな、って否定してたかもしれないけど····」
「そう、ですね。最初は追い返されてました···」
「それに多分だけどね、ホシノちゃんはノノミちゃんがいなかったらシロコちゃんを入学させてあげよう、なんて心の余裕を持てなかったと思うよ」
「シロコちゃんと初めて会った時の話は聞いたけど、追い返して終わりになってたんじゃないかな。自分が辛い時に人に手を差し伸べるのはすごく難しいことだから」
「ホシノちゃん自身にそういう自覚はないかもしれないけど、ノノミちゃんが諦めずにずっと来てくれてたのは多分嬉しかったんだと思うよ。ホシノちゃんはアビドスを見捨てるような人ばかり見ていたから····」
「だから、今があるのはノノミちゃんがいてくれたおかげなんだよ。ノノミちゃんがなにもできてないなんてことは無いよ。少なくともホシノちゃんとシロコちゃんを助けてるんだからさ」
実際のところノノミちゃんがいなければホシノちゃんの精神状態ってもっと悪いままだっただろうし。
原作でも特別目立ったような活躍はなかった気がするけど、でもノノミちゃんの存在で対策委員会全員が精神的に助けられていたのは間違いないはずだ。彼女がいなければもっと暗い雰囲気になっていてもおかしくは無いと思う。
「·····ありがとう、ございます。ホシノ先輩がユメ先輩を慕っている理由がわかった気がします····」
「そっか····少し元気が出たみたいでよかったよ。改めて言っておくけど、少なくとも対策委員会のみんなはノノミちゃんのことが大好きだろうしさ。ネフティスの立場だとかも気にしすぎなくてもいいと思うよ。そもそも全てがネフティスのせいって訳でもないし」
ノノミちゃんが驚いたような顔をしている。
「びっくりしました·····そこまでわかってたんですか? まだユメ先輩とは沢山喋ったわけでもないのになんだか全て見透かされてるような気がしちゃいますね?」
「ふっふっふ。伊達に年長者じゃないからね! 全部お見通しだよ!」
まあホントは原作知識も織り交ぜた推測なんだけどね!
「これからも何かあったら相談してくれていいからね? 困ってる後輩を助けるのは先輩の仕事だから!」
「はい!」
自信を無くしていたようだったが、元気になってくれたみたいでよかった。
「じゃあ食べ終わったし帰ろっか? ·····そういえば言ってなかったけどホシノちゃんやりすぎてないかな····なんだか張り切ってたし」
「あ、あはは·····」
同じことを思ったのか苦笑いしているノノミちゃんと一緒に学校へ帰った。
お気に入りが2000件超えてて驚きました。
皆様ほんとうにありがとうございます