アビドスユメモドキ   作:泡沫のユメ

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更新遅れて申し訳ないです。書き終えた後本当にこんなのでいいのか?って何回も書き直してたら時間がかかってしまいました。

ようやくリアルも落ち着いてきたので次話からはもう少し投稿頻度が上がるはず····です。

追記

投稿前に間違えて最後の部分を消してしまったせいで中途半端なところで終わっていました····修正したので読み直して頂けると幸いです····



18:誓い

 

 部屋に戻ってベッドの近くにあった椅子に座り、ホシノちゃんと喋っているとあるものを見つけた。

 

「あっ。これって····」

 

 あの時生徒会室に残していたメモだ。ホシノちゃんは原作通り自分の部屋に貼っていたらしい。

 

「今思うともうちょっと別のことを書いておくべきだったよね····『いつもありがとう! ホシノちゃん元気でね!』って。お別れの挨拶みたいだし····」

 

 原作通りにしようとしすぎてたせいでもあるんだろうけど、流石にもう少し言葉を選ぶべきだったと思う。

 

「····そういえばあの時の電話で言っていた手帳はどこに置いてあったんですか? どうしても見つけられなくて····」

 

「·········へ?」

 

 手帳·····バナナとりの手帳のことなんだろうけど、見つけられなかったってどういうことなんだろう。だってあれは····

 

「生徒会室····というよりこのメモのすぐ傍に置いてあったんだけど····」

 

「ほ、本当ですか? 生徒会室は隅々まで探したはずなんですけど····」

 

「そうだよね····一番置いてある可能性が高い場所なんだから探していないわけがないし····ならどうして····」

 

 なんでこんなところも原作再現されてるの····? 私に何かがあった時のためにわかりやすい場所に置いておいたのにこれじゃ意味が無いよ。

 

 それにあの手帳のせいで私はセトに狙われたわけだし·····バナナとりの手帳って呪いのアイテムかなにかなの····? 

 

「今度ホシノちゃんの体調が治ったらふたりで生徒会室の中を探してみる? もしかしたら見つかるかもしれないし」

 

 ユメ先輩の神秘が教えてくれたことから考えると、神話の再現だとかのせいでどこかに消えてしまった可能性もあるけど····

 

「そうですね····お願いしてもいいですか?」

 

「もちろんだよ! そのためにも早く治さなきゃだね」

 

 手帳とかは関係なくホシノちゃんには早く元気になって欲しいんだけどね。

 

「ホシノちゃん、私と喋りたいって言ってくれるのは嬉しいけど、ずっと喋るのだって体力を使うだろうしそろそろ寝ちゃったら?」

 

「それは····そう、なんですが····」

 

 ホシノちゃんは何かを言いたいけれど躊躇して言葉に詰まっているような、そんな様子だった。

 

「ホシノちゃん····何かあったの?」

 

「····今朝、悪夢を······ユメ先輩やノノミちゃん達がいなくなる夢を見て目が覚めたんです。最近はこういうこともあまりなかったはずなんですけど····」

 

 最近はあまりなかった、ということは悪夢を見たのは風邪をひいてしまったせいなのかもしれない。熱があると悪い夢を見ると聞いたことがあるし。

 

「実は、さっき喋りたいって言ったのも少し怖くなったからなんです。寝ちゃったらまた悪夢を見るんじゃないかって····また、ひとりになってしまうんじゃないかって····」

 

「そっか·····」

 

 そういうことなら納得だった。ひとりきりになることの辛さは私もよく知っている。不安と恐怖で押しつぶされそうになる。そんな状態でまともに眠れるはずがない。

 

 でも、風邪を治すにはたくさん寝た方がいいだろうし····何かをしてあげたい。ホシノちゃんが安心して眠れるような何かを·····

 

「·······もしも嫌だったら言ってね」

 

 そう言いながら私はホシノちゃんの手を握った。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「ユメ先輩·····?」

 

 私の悩みを聞いて何かを考え込んでいた先輩に突然手を握られた。別に嫌だとかは思わないけれど、急にどうして····

 

「ほら、風邪をひいた時は心細くなったり、不安になったりするでしょ? そのせいでみんながいなくなる夢を見てるのかもしれないし·····だからこうやって手を握ってたら少しは安心できるんじゃないかなって····」

 

「········」

 

 たしかに····不思議と安心できる気がする。握ってくれている手から温もりを、繋がりを感じて。私はもうひとりじゃないんだって、実感できる。

 

「ど、どうかな?」

 

 ユメ先輩は少し不安そうな顔をしていた。こういう時はすぐに顔に出る人だ。本人は自覚がないみたいだけど。

 

「悪い気はしない········です。それになんだか落ち着くような気もしますし····」

 

 さっきまで浮き足立っていた心が落ち着いてくような、そんな気分だった。

 

「なら、よかったよ。明日の朝までずっとっていうのは難しいけど····ホシノちゃんが寝付くまではこのままでいるね」

 

 ずっと手を握られているのは少し恥ずかしかったけど、それ以上に心地良さを感じていたから気にしないことにした。

 

「········ユメ先輩、ありがとうございます。おやすみなさい」

 

「どういたしましてだよ! おやすみ、ホシノちゃん」

 

 目を閉じていると先輩は頭を撫でてくれた。すごく心地よくて、安心できる。

 

 気がつけば悪夢に対する恐怖なんてすっかり忘れていて、手から伝わってくるユメ先輩の温もりを感じながら、私は意識を手放した。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 風邪で寝込んでいた日から数日が経った。すっかり元気になった私はユメ先輩と一緒に生徒会室に向かっていた。

 

「ここに来るのも久しぶりな気がするね。去年は毎日来てたのに」

 

 そういえばそうだ。去年ここを閉めてからはほとんど来ていなかったし、ユメ先輩に至っては遭難したあの日から来ていないのかもしれない。

 

 ここにはもう不要な物を詰めたダンボールと最近は使っていない私の装備しか残っていない。そのことに少し寂しさを覚えた。もうあの頃とは違うのだ。

 

「わっ、思ったよりも綺麗だね。ホシノちゃんが片付けてくれたの?」

 

 私は黙って頷いた。だって理由が理由だから。ユメ先輩との思い出をそのままにしておきたかったから、なんて言えるはずがない。

 

「そっか····ありがとうね。よしっ! じゃあ手帳を見つけだすよホシノちゃん!!」

 

 ユメ先輩もやる気のようだった。先輩につられて前向きな気持ちなっていた私も今日こそは見つけられるような気がしていた。

 

 

 

 ·······しかしそんな気持ちとは裏腹に、4時間近く探しても手帳は見つからなかった。

 

「全然見つからないね····生徒会室に置いたはずなのに····ひぃん」

 

「そもそも私が隅々まで探したはずですし····というかここまで見つからないとなると誰かに盗まれたとか、ユメ先輩が置き忘れてたみたいなオチだったりしません?」

 

「実を言うと私も同じようなことを考えてたよ。でも盗まれたにしては手帳だけ盗んでいくっていうのが意味不明だし、置き忘れたってこともないはず····ないよね?」

 

 もしも記憶違いだったらどうしようもないけれど、盗まれたという可能性は0に近いと思う。だってユメ先輩と私以外にとっては価値のないものなんだから。

 

「手帳は見つからなかったけど、なんだか楽しかったね? お宝探しをした時の地図とか一緒に行った水族館のパンフレットみたいな、懐かしいものがたくさん見つかったよね」

 

 ユメ先輩の言う通りだった。色々と見つかるものだからふたりでずっとあの頃の話をしていた。喋っていたせいで手帳を探す効率は悪かったけれど、でもこれでよかった。

 

 それに先輩も手帳には日記のようなことしか書いていない、と言っていた。きっと手帳には今日話したような、私と先輩の思い出ばかり書いていたのだろう。

 

 なら、わざわざ手帳を見なくても、もう大丈夫だ。だってあの幸せだった日々の思い出は確かにここに残っているのだから。

 

「ねえねえホシノちゃん。ここに置いてある装備ってもう使わないの?」

 

 ふと、ユメ先輩にそんなことを聞かれた。装備····防弾チョッキとサイドアームのことだろう。

 

「使う予定は今のところないです。最近はシロコちゃんやノノミちゃんがいてくれるおかげもあって不良達との戦闘も楽になりましたから。一応何かあった時のために整備だけはしてますけど」

 

「なるほどね····」

 

 この装備を使わなければならないような事態にならない方が嬉しいし。ユメ先輩の言う未来が本当に訪れるのなら来年は使う機会が多くなりそうだけど····

 

「·····ねえ、ホシノちゃん。一回この装備を着てみてくれないかな?」

 

「別に構いませんけど····何かあったんですか?」

 

 万が一ユメ先輩が危険な目にあっているのなら、そのときは····

 

「えっとね、全部装備したホシノちゃんはかっこいいだろうなって思って····見てみたくなっちゃって····」

 

 全然違った。いつも通りのユメ先輩だった。

 

「そ、そうですか····でも、去年の私とほとんど変わらないと思いますよ?」

 

「何を言ってるのさホシノちゃん!! そんなことは無いよ!! 髪だって伸びてるし、防弾チョッキも少し変えたでしょ? だから見てみたいの!! 絶対にかっこいいから!!」

 

「き、急に元気に···」

 

 手帳が見つからず項垂れていたはずの先輩は、勢いよく起き上がって武装した私が如何に魅力的なのかを力説し始めた。

 

 あまりにも恥ずかしかった。何がユメ先輩をそこまでさせるのか全くわからない。というか前から思っていたことだけど、この人には羞恥心ってものがないのかな····? 

 

「それにホシノちゃんは──」

 

「も、もう大丈夫です! わかりましたから! 着ますから!」

 

 いつまでも喋り続けそうな様子のユメ先輩を何とかして止める。あの装備を着るのも少しだけ恥ずかしいけど、現状よりは絶対にマシになるはずだった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「ど、どうですか?」

 

 少し袖を捲り防弾チョッキを装備して、長くなって動くには少し邪魔だった髪をポニーテールに纏めてみた。

 

「────」

 

 ユメ先輩はキラキラした瞳で私のことを見つめていた。返事こそなかったものの、その表情を見ればどう思っているかなんて簡単にわかってしまう。

 

「かっこいい! すっごく似合ってるよホシノちゃん!!」

 

「う、うへ········」

 

 ユメ先輩は見たこともないくらい喜んでいた。そんなにいいものなのかな····? 自分ではよくわからない。でも、ここまで喜んでくれるのなら悪い気はしなかった。

 

「そうだ写真! 写真を撮るよホシノちゃん!」

 

 写真············写真!? そんなものを残されてしまったらどうなるか。弄られるのか、褒められるのか。どちらにせよ間違いなく恥ずかしい思いをすることになる。撮らせる訳にはいかない。

 

「うへっ!?」

 

 しかしどうやら手遅れだったらしい。既にカメラをセットしていたユメ先輩に抱き寄せられてしまった。もう逃げることができない。

 

「ち、ちょっと先輩! 近いですって! それに····あ、当たってるんですが····」

 

「ほらほら、恥ずかしがってないでもっとこっちにおいで?」

 

 どんどん先輩との距離が近くなり、胸を押し当てられる。疑惑が確信に変わった。本当にこの人には羞恥心がないらしい。

 

「はいっ! チーズ!」

 

 シャッターの音が鳴り響く。抵抗をする暇すらなかった。

 

「見て見てホシノちゃん! すっごくいい写真が撮れたよ!お宝が増えた!」

 

 写真には満面の笑みを浮かべるユメ先輩と少し顔が赤くなっている私が写っていた。去年ふたりで撮った写真に、よく似ていた。

 

「········」

 

 たしかに、お宝なのかもしれない。だってこの写真はユメ先輩が目を覚ましてくれた証なのだから。

 

 今はすごく幸せだ。だって、私には奇跡が起きた。

 

 ユメ先輩が目を覚ましてくれて、後輩も来てくれた。アビドスにも未来があるのだと、そう信じることができた。

 

 でも、この幸せが砂でできたお城のように、些細なきっかけで崩れてしまうことを私は身を持って学んでいる。

 

 だから、私は····

 

「あ、あれ? ホシノちゃん?」

 

 ユメ先輩は焦ったような顔をしていた。私がずっと黙っていたせいかもしれない。

 

「········ユメ先輩」

 

「どうしたの?」

 

「私····もっと強くなります。後輩達を守るために、ユメ先輩を二度と失わないために」

 

 ユメ先輩は否定してくれたけど、私は馬鹿で、役立たずな人間だ。強さしか他人に誇れるものが無い。

 

 だから、私がユメ先輩に恩返しをするにはもっと強くなるしかないのだ。私は戦うことしかできないのだから。

 

「うーん····ダメ!」

 

「え········」

 

 まさか否定されるとは思わなかった。私が強くなればユメ先輩の言う未来が訪れた時にも役に立つはずなのに。

 

 疑問に思っているとユメ先輩はこちらに近づいてきて私の頭を撫で始めた。

 

「せ、先輩?」

 

「もちろん強くなること自体は悪いことじゃないよ? 私やシロコちゃんだってそのために色々やってるし。それに、私を守るために強くなるって言ってくれたのも嬉しかったよ」

 

「なら、どうして····」

 

 わからない。どうしてユメ先輩やシロコちゃんはよくて、私はダメなんだろう。

 

 

「だって····ホシノちゃん、無茶をするつもりだったでしょ? 覚悟を決めたような、追い詰められているような、そんな顔をしてたよ」

 

「っ!」

 

 図星だった。

 

「でも····私は戦うことしかできませんし····少しでもみんなのためになればと思って····」

 

 なら、どうすればいいんだろう。何をすればみんなの役に立てるんだろう····

 

 そんなことを考えているとユメ先輩に両肩を掴まれた。よく見ると先輩は顔を膨らませていて、『私は不機嫌です』と顔に書いているような、そんな表情をしていた。

 

「ホシノちゃん、私は怒ってるよ。うん、すごく怒ってる。まだ自分の魅力を理解してなかったんだね」

 

「····えっ?」

 

 予想外の言葉が返ってきた。私は無茶をしようとしたことを先輩に咎められるのだと思っていた。

 

「戦うことしかできない、なんてふざけたことを言うホシノちゃんにはお仕置きが必要みたいだね」

 

「お、お仕置きですか····?」

 

「そうだよ。今から私が満足するまでホシノちゃんを褒めるから覚悟してね? 例えホシノちゃんが謝っても、怒っても、何を言ったとしてもやめないからね」

 

 それはあまりにも恐ろしい罰だった。ユメ先輩が満足するまで、なんて。何時間かかるのかわかったものではない。

 

「ゆ、ユメ先輩····」

 

「どうしたのかな?」

 

 ユメ先輩は笑顔だった。それなのにすごく怖い。だって目が全く笑っていない。見たこともないくらいに怒っている。

 

「ほ、他の罰にできたりしませんか····?」

 

「ダメだよ。ホシノちゃんが自分の良さを理解するまで絶対に許さないよ」

 

 それから6時間の間ユメ先輩に褒められ続けた。あれは、恐ろしい時間だった。どんなに否定しても、何を言っても説き伏せられて褒められる。

 

 今日が自由登校日だったおかげでノノミちゃんとシロコちゃんが学校に来ていないことだけが私にとっての救いだった。

 

 ユメ先輩は二度と怒らせないようにしようと、そう心に誓った。

 





先生のセリフの括弧をどれにするか悩みすぎて決められなかったのでアンケート。好み、或いは読みやすいものを回答していただければ幸いです。

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