アビドスユメモドキ   作:泡沫のユメ

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バレンタイン、ということで急遽書いたものなので短め且つ内容薄めです。



19:ハッピーバレンタイン

 

 数ヶ月の時が流れた。夏は過ぎ去り、冬がやってきて、年が明けた。最近は特に大きな事件もなく平和に過ごすことができている。

 

 ····もう感覚が麻痺しているから気にならないけど、高校生が毎月800万近く借金を返済をしながら治安維持を行っているのは平和····なのかな····? 

 

 まあでも、少なくとも去年のようなので事件は起こっていない。

 

 そして今日は2月14日。つまりバレンタイン。そう、バレンタインの日なのだ! 好きな人にチョコを渡す日! 

 

 去年の今頃は砂漠で遭難して昏睡状態だったせいでチョコを渡せなかったから····今年こそはホシノちゃんにチョコを渡さなければならない。

 

 もちろんホシノちゃんだけじゃなくってノノミちゃんとシロコちゃんにもチョコを配るつもりだ。あのふたりだってかわいい後輩に違いは無いのだから。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「あっユメ先輩! おはようございます〜」

 

「ノノミちゃんおはよう! なんだか今日はテンションが高いね?」

 

 それにいつもより荷物が多い気がする。もしやノノミちゃんも····? 

 

「ふっふっふ。わかります? だって今日はバレンタインですよ? 対策委員会のおやつ担当として今日のために色んなチョコレートを買ってきたんです!」

 

 そう言いながら鞄の中身を見せてくれるノノミちゃん。びっくりするくらい大量にチョコレートが入っていた。4人でも食べ切れるのか怪しい。しかもちょっと高級そうなチョコまで····

 

「の、ノノミちゃん? チョコレートをくれるのは嬉しいけど····ちょっと量が多くないかな····?」

 

「みんながどんなチョコレートなら喜んでくれるかなって考えながら選んでいたらつい買いすぎちゃったんです! たしかに量は多いですが、今日だけで全部食べ切る必要はありませんし大丈夫です!」

 

「それもそっか」

 

 ノノミちゃんはさっきおやつ担当、と自称していたように様々なお菓子を買ってきてくれるのだ。

 

 いつもたくさん買ってきてくれる上に、お金を渡そうとしても受け取ってくれないものだから、少し申し訳なさを感じてきて一度無理に買わなくても大丈夫だ、と伝えてみたものの····

 

『無理はしてないので大丈夫ですよ? それに私が買ってきたお菓子をみんなが嬉しそうに食べてくれるのを見ると幸せな気持ちになれるんです!』

 

 と、言われてしまった。

 

 その気持ちは大いに理解できるものだったため、お菓子に関してはノノミちゃんの好意に甘えることにしている。根底にあるのがネガティブな気持ちではないのなら私が無理に止める必要はない。

 

「そんなにたくさんあるなら必要ないかもしれないけど····はい! ノノミちゃんにプレゼントだよ!」

 

 いつものお返し、になるのかもわからないけれど。チョコレートをノノミちゃんにも渡しておく。

 

「ユメ先輩·····これ、もしかして手作りですか····?」

 

「そうだよ! 普段はお菓子なんて作らないからちょっと不格好になっちゃったんだけどね····味は確かだから!」

 

 手作りの方が気持ちを込められるような気がして挑戦してみたはいいものの、私は前世も含めてお菓子作りなんてほとんどやったことがないような人間なのだ。

 

 ネットに転がっていたレシピ通りに作ったから味は悪くないけど、見た目を綺麗に整えるのがどうしても難しかった····プロのパティシエさんの凄さを改めて実感した。

 

「ユメ先輩、ありがとうございます! 必要ない、なんてことはないですよ? バレンタインという特別な日に誰かにチョコを貰えるという事実そのものが嬉しいんですから! 手作りなら尚更です!」

 

 ノノミちゃんは本当に嬉しそうな顔をしていた。こんなに喜んでくれるとは思っていなかった。この笑顔を見られるのなら苦労して手作りした甲斐があるというものだ。

 

 その後もノノミちゃんと喋りながら対策委員会の部室へと向かっていった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

「シロコちゃん! チョコレートだよ!」

 

 対策委員会の部室にいたシロコちゃんにも手作りチョコを渡す。ホシノちゃんはいなかった。多分どこかでお昼寝しているんだろう。

 

 ホシノちゃんはもう夜眠れない、ということはないらしいんだけど、たまに夜のパトロールをしてくれているから原作のようにお昼寝をすることがある。

 

 無理をしているようなら止める必要があるけど、そんな様子は見られないし、もし無理をしたらまたたくさん褒めるからね? と伝えてあるため特に心配はしていない。

 

「ん····ありがとう。ユメ先輩からお菓子を貰えるのは珍しい」

 

 シロコちゃんはバレンタインを知らない様子だった。そりゃ記憶喪失だったんだから知っているわけが無いよね。

 

「2月14日はバレンタインデーって言って、友達とか好きな人にチョコレートを渡す日なんだよ!」

 

「バレンタイン····だから今日はチョコを売ってるお店が多かったんだ」

 

「ですです! 私もたくさん買ってきました!」

 

 シロコちゃんはノノミちゃんが持ってきた鞄を見て少し驚いたような顔をしていた。わかるよ。量が多くてびっくりするよね。

 

 ちなみにシロコちゃんはノノミちゃんの家を離れて一人暮らしをしている。記憶喪失だった頃から半年くらいで一人暮らしを始めているから驚きだ。この子は本当に成長が早すぎる。

 

「ノノミ、ユメ先輩。これ····」

 

 そんなことを考えているとシロコちゃんにチョコバーを渡された。

 

「シロコちゃん、これは····?」

 

「好きな人にチョコをあげる日って聞いたから····ライディング用のものしか持ってなかったけどみんなに渡したくて····」

 

 残念そうな声でそんなことを言うシロコちゃん。よく見るとケモ耳も少しうなだれている。自分だけ用意していなかったことを申し訳なく思っているのかもしれない。

 

「········ノノミちゃん」

 

「····はい。わかってます」

 

 ノノミちゃんと心が通じあっているのを感じる。もはや言葉は不要だった。

 

「ふたりとも····どうしたの?」

 

「シロコちゃん。そんな残念そうな顔をしなくていいんですよ? 私達は貰えるだけで嬉しいんですから!」

 

「そうだよ! シロコちゃんから貰えるなら例えチョコバーだったとしても、どんなに高級なお菓子よりも価値のあるものになるんだから!」

 

「ん····そっか。ノノミ、ユメ先輩。ありがとう」

 

 シロコちゃんはちょっといい子すぎるね? ノノミちゃんと一緒にシロコちゃんの頭を撫で回した。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 満足するまでシロコちゃんを撫でた私達は、チョコを渡すためにどこかでお昼寝しているであろうホシノちゃんを探していた。

 

 ホシノちゃんはすぐ近くの教室で寝ていたため割と早くに見つかった。

 

「ホシノちゃん! 起きて起きて! プレゼントがあるよ!」

 

「ん····ふわぁ·····ユメ先輩、ノノミちゃん。おはよ〜」

 

「はい! おはようございます。ホシノ先輩、チョコレートを沢山買ってきたのでみんなで食べませんか?」

 

「チョコレート····うん、食べよっか。ノノミちゃん、いつもお菓子を買ってきてくれてありがとね」

 

「好きでやってることなんですから気にしなくて大丈夫ですよ」

 

「ホシノちゃん、私からもあるよ! これ!」

 

 ホシノちゃんにもチョコを渡すことができた。一番苦労して作ったものだから喜んでくれると嬉しいな。

 

「あれ····ユメ先輩もチョコレートをくれるんですか? それにこれはクジラの····」

 

「バレンタインだからね! せっかくだから自分で作ってみたよ!」

 

 私の言葉を聞いたホシノちゃんは首を傾げていた。どうしたんだろう。

 

「バレンタイン····? ってなんですか?」

 

「「····えっ!?」」

 

 ノノミちゃんと言葉が被ってしまった。でも仕方がないことだと思う。

 

「ホシノ先輩? 嘘ですよね? 記憶喪失だったシロコちゃんは仕方ないですけど、ホシノ先輩も知らないんですか!?」

 

「え? ほ、ほんとに知らないの? 寝ぼけてるとかじゃなくって····?」

 

「? そうですけど····」

 

「そ、そんな!? 私の本命チョコが····」

 

 この後ふたりで説明した。ホシノちゃんはバレンタインのことを本当に知らなかった。

 

 ずっとこの時期になるとチョコレートを推し始める店が増えることを不思議に思っていたらしい。

 

 渡した時に理解してくれなかったのは少し悲しかったけど、本命チョコの意味を伝えた時のホシノちゃんの照れた顔がかわいかったから全てを許した。

 

先生のセリフの括弧をどれにするか悩みすぎて決められなかったのでアンケート。好み、或いは読みやすいものを回答していただければ幸いです。

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