アビドスユメモドキ 作:泡沫のユメ
アンケートの結果の差があまりにもすごかったのでホシノ視点投稿です。
日常、と言うよりは前話のホシノ視点ですがご容赦を...
この話だけだとちょっと短いのと、前回の焼き増し感が否めないのでもう1話更新してます。よければそちらもどうぞ
私の通うアビドス高等学校の唯一の先輩である梔子ユメ生徒会長。私が中学生の頃、たったひとりで学校を守り続けていると噂で聞いていたので、とても聡明な、或いはとても強い先輩なんだろうと勝手に予想していました。
ですが、私の予想に反して先輩の第1印象は変な人、でした。先輩が入学式で挨拶をしていた時に目が合ったんですが、目が合ったと思った次の瞬間には泣いていました。全く意味がわかりませんでした。しかも当の本人は泣いていることに気づいていないのか何事もなかったかのように挨拶を続けていましたし····
その後先輩と初めて会ったのは、先輩が街中で署名を募る活動をしていた時でした。私は偶然通りかかっただけだったんですが、先輩は私を見つけた瞬間笑顔で近づいてきました。更に、名前を知られていたので少しだけ驚きました。ですが、その日は用事があったので特に会話することなく別れてしまいました。よく考えるとちょっと失礼だったかもしれません····
次の日同じ場所を通るとまた先輩がいました。今度は治安維持強化方針の説明会? とやらのプリントを配っていました。しかし市民たちは興味がないのか全然受け取っていませんでした。そんな姿を見ながら去ろうとしたのですが····
「あ、ホシノちゃん!」
また先輩に見つかりました。そして私を追いかけようとしたのか走りだそうとして転けていました。なんだか申し訳なくなったので起こしに向かいました。
「ありがとう、ホシノちゃん」
まっすぐな笑顔でお礼を言われてなんだか気恥ずかしかったのを覚えています。
「握手しちゃった····」
そんなことを言いながら自分の手を見つめている先輩を見て、やっぱりこの人は変な人だと改めて思いました。
「どうして私の事を知ってるんですか?」
せっかく会話したのでついでにこの前気になったことを聞いてみました。
「すっごく強い新入生がいるって噂になってるよ?」
「それにこの前、暴力集団の喧嘩を止めたのって、ホシノちゃんだよね?」
知られているとは思っていませんでした。そしてこの後もまたお礼を言われました。先輩はさっき転けてたし、ちょっと申し訳ないけどあまり戦えるようには見えなかったので早めに帰るよう警告してから私は帰りました。
ですが警告した時の先輩があまり帰ることに乗り気ではなかった様に見えたので、夜に先輩がいた場所を見に行ったのですが、案の定不良達に絡まれていたので助けました。なんで帰らなかったのか聞いても謝るばかりですし、それにどうして戦わなかったのか聞いたのですが
「なんでも武力で解決するようになったら、いつか自分を見失っちゃうと思うの」
そんなことを言われましたが、私は理解ができませんでした。だって戦わなければこっちがやられてしまうし、問題の解決だってできやしないじゃないですか。それにこんなことを言った先輩本人が
「それに相手に攻撃されてからだと大義名分を得られて気持ちよく相手を撃てるからね!」
なんて言うから余計に意味がわかりませんでした。なんだかやっちゃったって顔をしながら忘れて欲しい、なんて言われましたが。やっぱりこの先輩変な人です。
次の日私は報復がくると思ったので先輩に付いていきました。そんな中先輩に
「私を守るために来てくれたの?」
なんて事を言われたので
「いえ、会長に釣られたところをまとめて倒した方が楽かなと」
こう返しました。でもなんだか先輩が思っているよりもショックを受けていてなんだか申し訳なかったので
「····アビドス生徒会を狙う人は多いですから」
誤魔化すように言いました。すると
「ホシノちゃんは素直じゃないんだね! 実は心配してくれてるんでしょ?」
突然こんなことを言ってきました。恥ずかしかったのでその後も反発していたのですが
「ホシノちゃん、いつも顔をしかめてるけど····こんなに可愛いんだからもったいないよ?」
「····ありがとうね、ホシノちゃん。こんなに頼もしくて可愛い後輩が力になってくれるなんて、心強いよ!」
何を言っても褒められるし、私と喋っているあいだずっとニコニコしているしで、なんだか反発するのが馬鹿らしく感じてしまいました。変だけど優しい人なのかもしれないと、そう感じました。
◇ ◇ ◇
その後もしばらくの間先輩を手伝っていたのですが
「ホシノちゃん! お宝探しに興味はない?」
「昔のアビドス生徒会はお金持ちだったからさ! アビドスの色んな駅に高価な展示品を置いてたと思うんだよ。だからそれを探しに行くの!」
突然こんなことを言われました。全くユメ先輩は····
「そんなのがあるんだったら早く言ってくださいよ!」
ユメ先輩はなんでもっと早く教えてくれなかったのか。ちなみに呼び方についてはずっとユメ先輩って呼んでほしい、と言われ続けたので諦めてそう呼ぶことにしました。初めて呼んだ時、なんだか今にも踊りだしそうな雰囲気でニコニコしながらお礼を言われました。呼び方ひとつでこんなに喜ぶってどういうことなんでしょう?
その後宝探しに行ったのですが結局何も見つかりませんでした。なのに何故か先輩はずっと笑顔で、世界で1番幸せだって、そう疑ってないような顔でした。
「もう帰りましょうユメ先輩。宝探しなんて時間の無駄ですよ」
思わずこんなことを言ってしまいましたが、私もなんだか少しだけ楽しかったのです。この気持ちすらユメ先輩にはバレているような気がしました。帰ろうとしたその時ユメ先輩がメモ帳? のようなものを落としていたので指摘したのですが····
今まで見たことがないような焦燥しているような表情をしていました。あんなに余裕のなさそうな顔の先輩を見るのはこの時が初めてだったのでかなり驚いてわけを聞いたのですが
「この手帳無くしちゃったら死んじゃうかもしれないし····」
と、とても真剣な表情で、冗談には聞こえないような雰囲気で言ってました。いったいあのメモ帳には何が書いてあるんでしょうか?
◇ ◇ ◇
それからしばらくしたある日、ユメ先輩と買い物をしていてふと気になったことがあったので聞いてみました。
「先輩ってどうやって生徒会長になったんですか? ひとりしかいない生徒会なんて聞いたことがありませんよ」
すると先輩は
「挙手投票で私を会長に選任して、ほかの役員とか先輩達は全員いなくなっちゃったんだよね」
「あの時のアビドスはもうまともな状態じゃなかったし、1番やる気のあった私に押し付けたって感じだったんだと思う」
こんなことを言ってきました。なんだか怒りが湧いてきました。先輩ひとりに面倒事を全て押し付けて自分達はアビドスから去るなんて。しかもこんな酷い扱いをされたのに、それでも先輩は····
「私は望んで受け入れたの」
「生徒会長としての権限があればアビドスを守りやすくなると思ったからだよ。それに私はひとりになったとしてもアビドスを諦めたくなかったんだ」
なんでこの人は····こんなにも強くて優しいんでしょうか。今私がもし仮にたったひとりになってしまったら耐えられる気がしません。そんな状況ですらアビドスを守るために奮闘していたのですからやっぱり強いひとです。私の第1印象は間違っていたようです。
そう思ってたのに
「じゃじゃーん! 生徒会長手帳だよ!」
この前落としていたのとは違う、なんだか変なデザインの手帳を見せつけてきました。やっぱり先輩は変な人でした。
「いつかホシノちゃんに受け継いで貰うんだからね!」
いや、さすがにちょっと····
「そんな未来は訪れませんよ」
デザインがあまりにもあんまりだったので否定したんですが
「えぇっ!? ってそっか。ホシノちゃんは生徒会じゃないし····もう何回も断られてるのに、いつも一緒にいてくれるから勘違いしちゃった····」
なんだか泣きそうな、というよりもう半泣きの表情で先輩が落ち込んでしまいました。生徒会に入らないという理由で落ち込んでいる様子だったので、デザインを理由に断わったんですが
「そっか。ホシノちゃんはお魚が好きだもんね」
何故か先輩には知られてました。この歳でお魚が好き、というのがなんだか恥ずかしかったのでとぼけたんですが
「この前一緒に買い物した時、クジラのノートをずっと見てたでしょ? あの時のホシノちゃんの目、すっごいキラキラしてたよ?」
「き、気のせいです! あとクジラは魚じゃないですから!」
「ふふっ墓穴を掘ったねホシノちゃん。やっぱり好きなんだ」
先輩には全部バレてました。あまりの恥ずかしさから先輩を置いて帰ろうとしたのですが
「ふっふっふ、そんなお魚が好きなホシノちゃんのためにひとつプレゼントを用意したの!」
プレゼント、という単語が引っかかったのでちょっとだけ話を聞いてみることにしました。するとなんと
「なっ!? こ、これもしかしてアクアリウムの入場チケットですか!?」
いつからお魚好きなのがバレていたのか。かなり前から用意していたようです。ですがアクアリウムに行ける喜びで私の羞恥心は全てどこかへ行ってしまいました。先輩と一緒に行く約束をした後、少し落ち着いた頃にふと気になったことがありました。
「そういえばアクアリウムのチケットって結構高かったんじゃないですか? しかも2枚分ですし」
そう、私も行きたいと思ったことはあったので値段を見たことがあるのですが、簡単に2枚も買えるような値段ではなかったはずです。
「私のポケットマネーからだしてるから借金返済の分のお金は問題ないよ?」
なんだか的はずれな返答が帰ってきました。私が聞きたかったのは
「いや、そうじゃなくて。そんな高いものを簡単に人にあげてよかったんですか? 私、先輩に何も返せませんし····」
そう。私は何も返せないのだ。なのにこんなものを貰ってしまっていいんだろうか。
「返せないっていうか····むしろこれは私からのお礼なんだけどね....」
意味がわかりませんでした。だって私は先輩に何もしていません。たしかに生徒会の仕事は少し手伝いましたが、それだけです。学校に所属してる以上そんなのは当たり前のことで、お礼を、ましてやこんな高価なものを貰うのは釣り合っていません。そう伝えたんですが
「うーんまあホシノちゃんからしたらそうなのかもしれないけど····」
なんだか困ったような顔でユメ先輩は頬を掻きながら言葉を続けます。
「私はね、さっき言った通り去年ずっとひとりだったの。だからさ話し相手がいて、同じ仕事を手伝ってくれるってことが、例え当たり前のことであってもとっても嬉しくて幸せなんだよ? しかも手伝ってくれるのがこんなにも可愛くて強い後輩なんだし尚更ね。私はホシノちゃんのおかげで、今キヴォトスに生まれてから今1番幸せなの」
「だからその、幸せを貰った分の恩返しだと思って、受け取って欲しいな?」
「わ、わかりました。わかりましたからもうそれ以上喋らないでください」
なんでこの先輩は照れもせずにこんなセリフを言えるんでしょうか。言われたこっちだけ恥ずかしがるなんてなんだか不公平です。でも気持ちは伝わったし、これ以上断るのは逆に失礼にあたりそうですし受け取っておきます····
「あ、ホシノちゃんが照れてる!!」
「うるさいです先輩!! 早く帰りますよ!」
「えへへ、うん!」
アンケートに回答してくださった方々ありがとうございました。
ハーメルンって意外と?ユメホシ2人だけの作品ってあまりないですよね。なので自給自足します。まあ私のも正確にはユメ先輩じゃないんですが