アビドスユメモドキ   作:泡沫のユメ

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6:夢のおわり

 朝、目が覚めた私は生徒会室に向かいました。昨日のことは、素直に謝ろう....勢いで色々言ってしまったが心の底からそう思っていたわけじゃない。私のことを希望だとか幸せだとか言ってくれるのだって嬉しかったはずなのだ。

 

「ユメ先輩、戻りましたよ。次、気をつけてくれればいいですから」

 

 素直に謝るとはなんだったのか。こんな時ですら素直になれない自分が少し嫌になります。

 

 先輩はいつも早めに学校に来てるから今日も生徒会室にいるものだと思っていました。

 

「先輩....?」

 

 ですが、私の予想に反して先輩はいませんでした。····私があんなことを言ってしまったから、なのでしょうか。きっとそうです。

 

 そこでふと、気がついたことがありました。

 

「こんなメモ....あったかな?」

 

「『いつもありがとう!! ホシノちゃん元気でね!』?」

 

 なんでしょうか...このメモは....なんだか嫌な予感がします。とにかく、先輩に連絡を。

 

 そう思っていた矢先、ちょうど先輩から電話がかかってきました。

 

「ホシノちゃん、ごめんね。&#^@聞こえる..」

 

「先輩! どこにいるんですか?」

 

「ごめんね、ホシノちゃん@&#砂漠にい^&@砂嵐に巻き込まれて....コンパスも失くしちゃ@&^♯」

 

 ノイズが混じった先輩の声が聞こえます。砂漠にいた、という状況から察するに電波が通っていないのでしょうか。

 

 いや、それよりも砂嵐に巻き込まれた....? しかもコンパスを失くしたって....いったいどうして....それになんで砂漠なんかに....

 

 

「ホシノちゃん....ごめんね、助けに来て欲しい」

 

「それと、メモは残したけど、ここでも伝えて&@#。私の手帳は、あそこに置いてある#^@&」

 

「ホシノちゃんもよく知ってい^#@&#@&^@。すぐにわかると思う」

 

「ホシノちゃん、私は」

 

 そこで先輩からの電話は切れてしまいました。電波が届かなくなって切れてしまったのでしょう。

 

 そんなことを考えている場合じゃない。砂漠で砂嵐にあって、コンパスも失くした。他の細かい情報はわからないが、どう考えたって遭難しているのだろう。それに『助けて』と、言っていた。なら急いで行かなければユメ先輩が....

 

「ッッ!!? ユメ先輩!!」

 

 その嫌な考えを振り払うかのように大きな声を上げて生徒会室から飛び出し、先輩を探しに出かけました。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ユメ先輩!!! どこにいるんですか!! 先輩!!」

 

 

 初日、色んな所を探しましたが先輩を見つけることはできませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユメ先輩!!!」

 

 捜索を始めて10日経っても先輩を見つけることはできませんでした。嫌な想像が止まりません。私の、私のせいで先輩が....でも、諦めるわけには....先輩だって.....『助けて』って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユメ....先輩..」

 

 1ヶ月経っても私は先輩を見つけることができませんでした。もう無駄だって、諦めろって、お前のせいで先輩は死んだんだって、頭の中で声が聞こえてきます。なんで、どうして....私は先輩を....

 

 

 

 

 

 

 

 探し始めてから33日が経過しました。素人の私でもこんな長期間砂漠にいたらどうなるのか、簡単に想像できてしまいます。でも、それでも...

 

「!!」

 

 少し先の方に人がいました。あれは、あれは!! 

 

 

「せんぱい!! ユメ先輩!!」

 

 

 ついに、ついに先輩を見つけることができました。しかも、歩いている様子から見るに意識もあるようです。先輩が無事だと。そう思った瞬間安堵から泣き崩れそうになりました。

 

 でも例え生きていたとしても脱水症状やら熱中症やらで先輩はまともな状態では無いはずです。一刻も早く病院に連れて行かなければ。

 

「ホシノ.....ちゃ.....ん」

 

 そう思った瞬間、先輩の意識が消失し倒れました。

 

 

「......せ、せんぱい? ユメ先輩!!」

 

 私は急いで駆け寄ります。なんとか確認すると、先輩は息をしていました。ちゃんと、ちゃんと生きていました。

 

 ですが顔色は悪く体温もおかしなぐらいに高いです。

 

「いそいで、急いで病院に連れていかないと!!」

 

 そう決意した私は先輩を背負い、病院まで全力で走りました。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 病院についた私は状況を説明し先輩をお医者さんに託したあと、先輩の無事を祈りながら色々と考えていました。

 

 先輩はあの日いったいどうして砂漠に向かったのか。予報になかったはずの砂嵐に巻き込まれたのは何故なのか。あの日先輩に、何があったのか。

 

 

 そんなことを考えていると先輩の主治医の人が話がある、と言ってきました。

 

「落ち着いて聞いてくださいね」

 

 その言葉に、嫌な想像が止まりません。先輩は....まさか....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「梔子ユメさんは、一命を取り留めました。まだ予断は許さない状況ですが、一先ず命に別状はありません」

 

「よ、よかった.....ありがとう、ございます」

 

 零れ落ちそうになる涙を必死に抑え込みます。

 

「色々と検査をしましたがしばらくの間は水も食料も問題なく摂取できていたようでして。そのおかげで助かった、と言うべきですね。恐らく遭難する可能性を考慮して水や携帯食料をたくさん持参していたのでしょう」

 

 よかった....ほんとうによかった。これで先輩は....

 

「ですが....ひとつだけ伝えておかなければならないことがあります」

 

「な、なんでしょうか」

 

 

 引いていた冷や汗が、嫌な想像が浮かんできます。

 

 

「先程も述べた通り命に別状はないのですが、未だに意識は取り戻していません。それに加えていくら水分補給ができていたと言っても砂漠に1ヶ月以上いたので重度の熱中症でした。脳になんらかの障害が起こっていたとしても不思議ではありません」

 

 

「つまるところ仮に完治したとしても、意識を取り戻すかどうか....それに何らかの後遺症が残る可能性が高いです」

 

 その言葉を聞いた私は今度こそ崩れ落ちました。私の····私が見つけるのが遅かったせいでせんぱいが....私の····せいで....

 

 

 

 

 

 

 

 その後のことはよく覚えていません。気がついたら家の、ベッドの上でクジラのぬいぐるみを抱きしめて横になっていました。いったいどうしてこんなことに。

 

 いや、考えるまでもありません。私が自分勝手に先輩に怒りをぶつけたから、私が先輩を見つけるのが遅かったから。全ては私のせいです。

 

 先輩はなんで砂漠に....そういえば手帳を、生徒会長手帳を置いてある、とあの日の電話で言っていました。あれに何かが書いてあるのかもしれません。

 

「手帳....探さなきゃ..」

 

 そんなことを考えながら、私は眠りにつきました。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 気がつくと私はなぜか砂漠にいて、目の前に先輩がいました

 

「先輩!!」

 

『ホシノちゃん? ホシノちゃんのせいで私は死んじゃったんだよ?』

 

「え、な、何を····言って····私は....先輩を探してて····それに先輩は死んでなんか!」

 

『でも私はホシノちゃんのせいで目を覚ますことすらできなくなっちゃったんだよ? これって死んでるのと何が違うのかな?』

 

 

「そ、それは.....」

 

 

『否定できないよね? ねえホシノちゃん私は』

 

『私はずっとホシノちゃんを恨んでたんだよ?』

 

「え.....」

 

『いつも理想ばっかり高くて、私の話は否定するのに、自分だって何もできてなかったよね?』

 

『どうして私が何も感じないって、怒ったり恨んだりしないだなんて思ってたの?』

 

「そ、それは····」

 

『それに....私はホシノちゃんのせいで死んじゃったんだよ? 恨まないわけがないよね?』

 

 

 

 

 

 次の日、目覚めは最悪でした。理由はわかりきっています。先輩に責められる夢をみたせいです。

 

 

 わかっている、わかってはいるんです。先輩はあんなことを言うような人じゃありません。あれは私の妄想が生み出した偽物の先輩だって、あんなことを言うはずがないんだってわかっているんです。でも....それでも....

 

 

 今の私には、それが先輩の本当の気持ちだったんだって、そう思うことしかできませんでした

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 なんとか体を起こした私はひとまず生徒会室に向かいました。手帳を置いている場所。電波のせいでわかりませんでしたが私がよく知っている場所、と言えば間違いなくここだったからです。しかし....

 

「ない····どこにも····なんで....」

 

 結局1日中探したのに、見つけることができませんでした。もしかしたら別の場所なのかもしれません。明日は校舎の中を全て確認することにしました。

 

 

 家に帰っても私は眠ることができませんでした。寝てしまって、またあの夢をみたら、また先輩に責められるって考えてしまうと眠気なんてどこかに行ってしまいました。どうせ寝れないなら、と私は外に出ることにしました。

 

 

 夜、アビドスにはなにもないので星空がよく見えます。あの日、水族館に行った帰りに見た景色と全く同じです

 

『ホシノちゃん...アビドスの夜空って綺麗だね』

 

 同じはずなのに私から見える景色は全く違っていて、綺麗だなんて、少しも思うことができませんでした。

 

 先輩は2年生の時はひとりだったと言っていました。この景色を知っていたから先輩は星空が綺麗な理由を『ホシノちゃんがいてくれるから』だって言ってくれたのでしょうか。それなのに····わたしは....

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 学校の中を隅々まで探しても手帳を見つけられなかった私は砂漠で手帳を探すことにしました。もしかしたら砂嵐に巻き込まれた時にどこかへ飛んでいってしまったのかもしれない、なんて考えたからです。そんなことは無いってわかっているのに、それでも私は縋るしかありませんでした。

 

「え........これって....」

 

 砂漠で探し始めて3日が過ぎた頃、私はあるものを見つけました。

 

「先輩の·····メモ帳?」

 

 先輩がいつも持っていた変なデザインの生徒会長手帳ではなく、初めて宝探しをしたあの日に初めて見たもの。落としているのを指摘したらとても焦燥していたのをよく覚えています。あんな先輩の焦った顔を見たのは最初で最後だったから。

 

 あの時『失くしたら死ぬかもしれない』なんて言っていたくらいです。もしかしたら先輩にとって大切なことが書いてあって、ひとには見られたくないのかも知れません。

 

でも私はもう限界だったんです。また、起きたら謝ればいいだなんて甘い考えで手帳を読み始めました。しかし....

 

「····これ····なんて書いてあるの?」

 

 見たこともない文字で書かれていたため読むことができませんでした。メモ帳1冊分全て書ききってしまうような文量なのに、全てのページを見ても私が知っている文字は数字くらいしかありませんでした。

 

 もしかしたら私の知らない古代語なのかもしれない。それに先輩があれだけ大事にしていたんです。先輩が目覚めた時に渡さなければならない。そう思った私は手帳を持ち帰りました。

 

 

 その後様々な辞書を探したり、調べたりしてみましたが先輩の書いている文字を見つけることはできませんでした。先輩はなんでこんな文字を知っていたんでしょうか? いったい何を書いていたんでしょうか? 

 

 

 ····先輩は····いったい何を背負っていたんでしょうか? その声に応えてくれる人は、未だ眠ったままでした。

 

 

 

 

 

 ユメ先輩、どうして砂漠に行ったんですか? 『用事』ってなんですか? 私がいない間になにが····先輩は何を知っていたんですか?

 

 ····手帳はどこにあるんですか? あの手帳には....あのメモ帳には何が書かれているんですか? ....私は、手帳を見れないんですか····? 

 

『最初からひとりでやっててください!先輩なんて知りません!』

 

 私のせい、なんですよね? あの言葉が、先輩を傷つけて、先輩を追いやった...だからまだ目を覚まさないんですよね? 

 

『ホシノちゃん、私は』

 

 あのメッセージの続きはなんだったんですか? 私には...わからなくて....

 

 

 ユメ先輩....どうして...私は....

 

 

 





こんなサブタイトルですがまだまだ続く予定です。よろしくお願いします。



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