収穫祭の魔女   作:れいてんし

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Chapter 9 「廃ホテル」

 ホテルの施設はほぼ無事なことが分かった。

 

 埃が溜まってはいるが、棚に保管されていた新品のシーツやブランケットと交換すれば問題はない。

 

 ただフロアを分けると何かあった時に緊急対応が取れないということで、全員が2階の部屋へ泊まることにした。

 何かあればすぐに1階に戻って対応できるからだ。

 

「それで1階の設備は?」

「無事だった。大鍋や食器類はこれからの旅で使えそうだから活用したい。アルミだから強いぞ」

 

 ウィリーさんが嬉しそうに鍋の底をお玉でカンカンと打ち鳴らしていた。

 

 人力だとこのサイズを持ち運ぶのはほぼ無理だが、今は馬車がある。

 

 金属の器は活用できそうだ。

 いただいていこう。

 

「あとは調理設備だが、残念ながら、ここはガスコンロだ。ガスの供給がストップしているから使えない」

「薪を焚けそうなところは?」

「木炭オーブンもあったが、煙突が生きているかどうかが不明だ。下手に火を点けたら、一酸化炭素中毒か火災事故になるかもしれない」

 

 それは残念だ。

 調理は外でやるしかないだろう。

 

「そういうわけで、食事は倉庫に置きっぱなしになっていた乾燥パスタを使うことにした」

「パスタがあったんですか?」

「缶詰もな。量も種類も少ないし、賞味期限的なものが何も分からないので、チェックは必須だが」

 

 ウィリーさんはそう言うと、乾燥パスタの束と、いくつかの缶詰を置いた。

 

 パスタは完全に乾燥しているので、賞味期限については大丈夫だろう。

 

 ただし、オイルサーデン缶は半ば爆発しており、悪臭が漂っている。

 これは元の場所に戻してもらった方が良さそうだ。

 

 トマト缶やほうれんそう缶はとりあえず開封して中身を見てからだ。

 最悪、ゴミ箱直行になる可能性も高い。

 

「でも、食べ物が残っていたんですね」

「そこだよ。もしも誰かが避難するならば、食料品は全員持っていったはずだ」

「茹でるのに水が必要なパスタはともかく、缶詰が残っているのは謎ですね」

 

 もし住民が町を逃げ出すならば、常温で日持ちする缶詰は持っていくはずだ。

 なのに置きっぱなしになっている理由が分からない。

 

「調味料はありましたか?」

「塩と胡椒は使えそうなのでもらっていく。オリーブオイルは分離して変な臭いがするし、ビネガーは乾燥しきってただの空瓶になっていてダメだった」

「野菜なんかは……当然ないですね」

「冷蔵庫の中がどうなっていたか聞きたいか?」

「いえ、いいです」

 

 聞かなくてもわかる。

 完全に腐って溶けたか、乾燥して干物になっているかのどちらかだ。

 どちらにしろ食べられる状態ではないだろう。

 

「部屋にはシャワーも備え付けられているが水道も水タンクも死んでるので無用の長物と化してる。1階はそんなもの」

「それだけじゃないですよ。なんと倉庫の中には未使用の歯ブラシやタオルやカミソリがありました」

 

 ガーネットちゃんが嬉しそうに歯ブラシを見せてくれた。

 

 それは朗報だ。

 歯ブラシやタオルなどは嵩張らないし、いくら予備があってもいい。

 

 無精髭が目立つカーターにもきちんと髭剃りをさせたいところだ。

 

 ありがたくいただいていこう。

 

 その後に俺とエリちゃんに手招きをした。

 何事かと近寄ると小声で囁きながら小さい袋を渡してきた。

 

「未使用の生理用品もありました」

「それは助かる」

「マジ助かる」

 

 あとで男性陣に見つからないようこっそり3人で回収に行きたい。

 月のものは毎月やってきて困っているので本当に助かる。

 

「未使用の避妊具もありましたけど」

「自重しろ中学生」

「それはダメ。絶対ダメ」

 

 それについては、俺とエリちゃんで断じてノーを突き付ける。

 

 何を見つけてくるんだ中学生。

 まさか自分で使うつもりか中学生。

 ウィリーさんが逮捕されるから本当に自重しろ中学生。

 

「でもエリスさんはモーリスさんと」

「違うから。絶対違うから」

「ならラヴィさんがカーターさんと」

「冗談でもやめて」

 

 生物学的に避けられないところもあるが、それ以外については女に染まったつもりはない。

 本当にやめてほしい。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 夕食は茹でたパスタに、中身は無事だった缶詰ホールトマトで作ったトマトソースをかけたなんちゃってイタリアンだ。

 オリーブオイルがないので、画竜点睛を欠くが、それでも十分に美味い。

 調味料は塩と胡椒だけだが、味つけが絶妙だ。

 

「ウィリーさんは料理人を目指していたんですか?」

「いや全然。たまたま中華料理店でバイトをしていただけだよ」

 

 俺の疑問にウィリーさんは淡々と答えた。

 

「実は、大学を出てすぐに就職したんだけど、会社員は自分が一生やりたいことじゃないと思って辞めて、バイト生活をしてたんだ」

「何かやりたいことがあったんですか?」

「いやない。全然ない。ただ、会社員を一生続けるってのは何かが違うと思った」

 

 ウィリーさんは手を広げて頭上に掲げた。

 

「だけど、ハセベさんは商社マンだろ。そっちのカーターさんは公務員だ。それに対してオレは何をやってるんだろうかって」

「今の私はただの旅の侍だよ。日本での肩書なんて忘れていい」

「オレも同じ。まあ、世の中色々あるさ」

 

 名前を呼ばれたハセベさんとカーターが淡々と返した。

 

「気を使わなくていい。日本にいた頃のオレは、何かやりたいことがあるわけでもない。パッとしない人間だ……人間だった」

 

 ウィリーさんは深呼吸をした後に続けた。

 

「この世界に喚ばれてすぐの頃は、かなりテンションが上がっていたさ。自分は選ばれた人間で、ここはオレが本当に求めていた世界なんじゃないかなって」

 

 ウィリーさんは拳を握って、それをゆっくりと下ろした。

 

「だけど違った。この世界は日本以上に残酷な世界だ。オレの判断ミスで、せっかく仲間になってくれたマークも死なせちまった」

「ウィリーさんの責任じゃないですよ。あれは避けられませんでした」

 

 ガーネットちゃんが慰めの言葉を言うも、ウィリーさんは首を横に振った。

 

「もしかしたら、もっといい方法があったんじゃないかって。遺跡の最後の扉で転移させられた時も、またやらかしちまったって何度も後悔した」

「ウィリーさん……」

「だけど、ガーニーもハセベさんもオレを頼ってくれる。だから、その期待に応えたい。もう後悔はしないよう、この世界で全力で生きたいって決めたんだ」

 

 ウィリーさんは笑っていた。

 すべて吹っ切ったような淀みない笑顔だった。

 

「というのが、オレのつまらない身の上話だ。せっかくの食事時間をオレの辛気臭い話で空気を悪くしてすまなかった」

「今の話を隠さずに言えるだけで立派だよ。私がウィリーさんの年齢の頃には、悩みを人に打ち明けるなんてできなかった」

 

 ハセベさんが何かを思い出すように何度も頷きながら言った。

 

「ありがとう。オレはこれからも全力で生きていくつもりだ。手を抜くつもりはない。みんなの期待に応えられる男になってみせる。だから、よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いしますよ。ウィリーさんの料理の腕は頼りにしています」

 

 モリ君がウィリーさんの宣言に最初に応えた。

 

 今のような少し重い話にもすぐに返せるあたり、モリ君は本当に強くなった。

 

 ただ、今の話で少しだけ気になるところがあった。

 

 ハセベさんもウィリーさんも、この世界で生きていくという意気込みの話はした。

 だけど、日本へ帰るという話を一度もしていない。

 

 ただの気のせいかもしれない。

 なにしろ、わざわざ俺たちとの約束を守って、日本へ帰るための情報を手に入れるためにはるばるサンディエゴまで旅をしてきてくれたのだから。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 寝室は1人1部屋をとることにした。

 最近は大人数で1つのテントで並んで寝ることが多かったので、少し寂しいような、逆に落ち着くような妙な感じだ。

 

 もちろん全員が一斉に寝るわけではない。

 敵の襲撃がいつあるか分からないので、二交代で休みを取ることにした。

 

「それじゃあおやすみ。明日は朝からまた調査なのでよろしく」

「おやすみなさい」

「おやすみー」

 

 みんながそれぞれの部屋に入っていたのを確認して、俺は部屋の扉を閉じる。

 

 この世界にやってきて、ついに誰にも邪魔されない1人だけの時間がやってきた。

 

 こういう機会がなければとても恥ずかしくてできないことをやってしまいたい。

 召喚されてからずっとやりたかったものの、今まで機会がなく欲求だけが溜まっていた。

 

 ただ、これをやっていることは絶対に他人には知られてはいけない。

 

 やっているところを人に見られたらさすがに恥ずかしくて死んでしまうし、今まで積み上げてきた俺の信用も崩壊する。

 

「防音はそれなり。隣の部屋の音が聞こえることはなし! 窓の外に誰かいるということもなし!」

 

 ついに、ついにアレを試せるのだ……

 

 あまりの緊張に激しく心臓が激しく脈打つのを感じる。落ち着くために唾を飲み込む。

 

「ではやるぞ。本当にやるぞ!」

 

 まずは手を前に伸ばして一言。

 

「ステータスオープン!」

 

 しばしの沈黙。

 

 やはり何も起こらない。

 まあ、これは分かっていたので特に問題はない。

 

「アイテムボックス! クリエイション! ショップ! アイテム合成! アイテム強化! この際なんでもいいからウインドウオープン!」

 

 何も起こらない。

 

「セーブ画面出ろ! ロード! 検索! ヘルプ! メニュー画面! マップ出ろ! あとは何だ? デバッグウインドウ! チートコード入力画面! 昔のOfficeに付いてきたウザイルカ! イルカ! キモイルカ! 人差し指の絶対時間(ステルスドルフィン)!」

 

 思いつく限りゲームでありそうなコマンドを一通り叫んでみたが、やはり何の現象も起こらなかった。

 

 これで心の奥底に溜まっていたモヤモヤは晴れた。

 

 この世界はゲーム世界ではないので、それっぽいシステムコマンドを叫んだところで、基本的に何も起こらないことは分かっている。

 

 それでも、もしかしたらという気持ちだけはあった。

 

「あとはランクアップ系か。限界突破! 上限解放! 才能開花! 聖杯転臨! レベルアップ!」

 

 俺たちはおそらくソシャゲのキャラがモデルになっている。

 

 ならば、様々なゲームに実装されている、レベルMAX状態のキャラのレベル上限値を上げるシステムもランクアップと同じように実装されていてもおかしくはないはずだ。

 

 そう思い、右手をかざしながら色々と声に出すが、何も起こらない。

 

「ダメか。伊原さんのようにランクアップを繰り返せということか」

 

 実に無駄な時間を使った。

 

 明日も朝は早い。さっさと寝てしまう。

 

「あっ、そういえば、こんなのもあったな。限界超越」

 

 そう言葉を発した瞬間に、脳内に2つの映像が流れ込んできた。

 

 環状列石の祭壇の中に立つ白いドレスを着た少女、その後ろに舞い踊る無数の鳥と虹色の球体。

 

 死に装束のような純白の着物、日の丸の付いた鉢巻きを巻いて刀を構えた金髪の侍少女。

 

 そして……一瞬だけ、学校の屋上らしき光景が映ったところで映像は止まった。

 

 身体をまさぐってみるが、特に何が変化したということはない。

 

 まるで「限界超越」を実行しようとしたが、条件が足りていないせいで、処理が途中でキャンセルされたような、そんな感覚がある。

 

「レベル上限解放機能自体は存在するのか……」

 

 映像だと、白いドレスを着た少女が(ラヴィ)の進化系。

 もう一つの映像は侍少女、オウカちゃんの進化系だと考えていいだろう。

 

 相変わらず2人分が混じっているところは問題ではある。

 

 いや違う。

 俺の中に2人分……否、3人分の映像が出てくることが問題なのか?

 

 本来、俺という人間は1人だけだ。

 なのに、今は3人の魂が1つの体を動かしてるせいで、何をやるにも余計なエネルギーを使っている。

 

 魔女……否、巫女の正統進化系である俺。

 侍から進化したオウカちゃんの分。

 そして……。

 

 この壁を取っ払って一人の人間になれば……

 

 俺は2人分が混じったカードを見る。

 

「限界を越える……壁を取り払う……」

 

 まさかな。

 

 ベッドに潜り込んで布団を被る。

 

「ていうか、もう寝よう」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「ラビさん起きてください」

 

 誰かに揺さぶられるのを感じて目を覚ますとモリ君の顔が目の前にあった。

 

「急にどうしたんだ? 夜這い? そういうのはエリちゃんにしてあげなさい」

「冗談はいいです。早く起きてください」

「何があった?」

 

 さすがに3か月も一緒に旅をしていれば、モリ君の空気の読めなさは理解している。

 目が覚めた直後にドアップで迫ってきても、今更動じる要素などない。

 

 まずは状況確認だ。

 

「このホテルの周りを何かが取り囲んでいるみたいで」

「人?」

「違います」

 

 窓の外に目をやろうとしたところ、モリ君の手が素早く俺の目を遮った。

 

「見ないで。何が刺激になるか分かりません」

「分かった」

 

 事態の緊急性は理解できたので、服を着て帽子を被り、箒を持って部屋を出る。

 

 廊下に出るとエリちゃんとガーネットちゃんも部屋から出てきた。

 

「馬たちは?」

「やっぱり外の気配を感じ取っているのか、落ち着かないようでウロウロしています」

「興奮して暴れ出さないように、なだめた方が良さそうだな」

 

 俺は階下に降りて、抱き着くようにして馬の首筋を撫でた。

 

 しばらく撫でていると、馬たちは安心したのかようやく大人しくなってきた。

 

 リラックスさせるために、クッキーを食べさせて水を飲ませてやる。

 

 ハセベさん、ウィリーさんは臨戦態勢。

 ガーネットちゃんも寝ぼけまなこではあるが、既にフル武装済みだ。

 

 カーターは寝落ちしそうな雰囲気ではあるが、一応は服を着て武器も手にしている。

 

「俺は全然見てないんだけど、どんな敵なんだ?」

「巨大な口のような敵です。大きさは3メートルくらいの球状。窓から外を見ると、何匹かが町の上空を飛び交っていました」

「日中はそんなものを見なかったので、日が暮れると現れる敵か」

「おそらくは」

 

 単体ならば今の俺たちならば難なく倒せるだろう。

 

 だが、数が分からない以上は迂闊に手は出せない。

 

 どこから攻撃が来るのか、どれくらいの数がいるのかが不明だ。

 それに、もし俺たちは無事でも馬車や馬がやられてしまっては、ここで立ち往生になってしまう。

 

「このまま息を潜めて待つか、それとも討って出るか」

「まずは待ちましょう。相手がその気ならば、こんなホテルの窓ガラスくらい簡単に破れるはずです。なのにそうしてこないということは、攻撃の切っ掛けになる条件が何かあるんです」

「どれくらい待つ? 夜が明けるまで?」

「最悪は」

 

 ホテルでゆっくりするはずだったのにとんだ災難だ。

 

 馬に水を飲ませたり、さすってなだめたりしながらひたすら待ち続ける。

 

 なるべく音を立てないでじっとしているだけだが、相手の動きが直接見えないのが不気味だ。

 

 体感だと半日くらいだが、実際には6時間くらいは経っただろう。

 ようやく外が白み始めた頃に、窓ガラスに映り込む影はその姿を消した。

 

 (かんぬき)を外して扉を少しだけ開ける。

 

 その隙間から召喚した鳥を1羽、使い魔として先行で外に出して周囲の様子を確認する。

 

 ホテルの周辺をグルリとひと周りさせたが、モリ君の言うような敵の姿は確認できなかった。

 

「いないな。本当にどこから来てどこへ帰って行ったんだ?」

 

 今度は鳥をホテル周辺から移動させて射程距離2キロの限界まで町の上空を飛び回らせるが、やはりそれらしき敵の姿はない。

 あれだけの図体の敵がそこらの木や建物の陰に身を潜められるとは思えない。

 

 やはり魔術的な何かの力で隠れているのだろうか?

 全て幻覚という可能性も否定できないが、このままあてもなく探していてもキリがない。

 

「見える範囲にはいない。ただ、そこらに隠れているとも思えない」

 

 全員に使い魔から得られた情報を説明すると、エリちゃんが無言で階段を昇っていった。

 

 おそらく一番上、4階の部屋の窓から外を確認するつもりだろう。

 

「モリ君、一応エリちゃんの護衛を。必要ないだろうけど、念のために」

「分かりました……本当にうちの女性陣は思いつきで勝手に動くやつばっかりだな」

 

 モリ君は小声でボヤきながら階段を昇っていった。

 後半は誰にも聞こえないつもりだったのだろうが、しっかりと聞こえていた。

 

 ……もしかして、その勝手な女性陣に俺も含まれているのか?

 

 いや、俺は思いつきではなく、きちんと考えてから動いているので違うだろう。多分。

 

「さて、どうする? あいつらの正体を探るのか、それともこんな危険な場所なんて無視してエリア51へ向かうか」

 

 ウィリーさんが拳銃のシリンダーを振り出し、空なことを確認してから元に戻した。

 

 ウィリーさんの銃は実弾ではなく、エネルギー弾を発射するものだ。

 なので、今のようなリロード動作は必要ないはずなのだが、癖か何かなのだろう。

 

「心情的には無視したいところだが、謎の敵を放置というわけにはいかないな。そのうち、人が住んでいる町が襲われる」

 

 ハセベさんの意見としては、あいつらの発生原因調査と討伐ということだろう。

 モリ君が上階に行っている間に、俺たちの意見をまとめておきたいところだ。

 

「どうせなら、こいつらがエリア51に攻め込んでくれりゃいいのに」

「運営が仕込んだ敵の可能性もあるから、そこは微妙なところですね」

 

 ウィリーさんの意見には同意であるが、それは期待できない。

 出現している敵は、エリア51へ攻めこもうとしている俺たちへのカウンターとして送り込まれた可能性も否定できないからだ。

 

「今のところ分かっているのは、日が暮れたら謎の敵が出現する、ホテル内に潜んでいれば襲われることはないという情報だけか」

「つまり、日中の間にあいつらの発生原因の調査を行う……という解釈でいいでしょうか」

 

 調査方針を確認すると、ハセベさんは頷いた。

 

「まずは、あの役所を調べよう。ここの宿泊名簿や新聞だけで得られる情報はわずかだ。実際にこの町にいた人々が残した記録を知りたい」

「ついでに、新聞記事にもあった発電所も調べたいところです」

 

 俺はハセベさんに続いて発電所も調べるべきだと主張した。

 

「発電所の新設備へ出資した人物、レイナ=ロハとは、赤い女がパナマで使用した偽名です。無関係だとは思えません」

「つまり両方だな。チームを2つに分けるか?」

「いや、ここで戦力を分散するのは愚策だ。たとえ時間が掛かっても、全員で両方を調べよう」

 

 ハセベさんが方針をまとめてくれた。

 モリ君が戻ってきたところで、ホテルを出て全員で調査を行う。

 

 もし完全に解明できなくとも、後で魔術や運営に詳しい伊原さんに確認すれば、真実が明らかになるかもしれない。

 

「順序は、まずは役所だ。それから発電所を見に行こう」

 

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