収穫祭の魔女   作:れいてんし

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Chapter 13 「残る者」

 フラニスの町を出て2日。

 

 現代の地球ではニューオーリンズにあたる場所へ到着したのは日が沈む直前だった。

 

 予想通り、ミシシッピ川に近づくにつれて湿地帯が増え、路面状態が極端に悪くなってきた。

 今のところ8輪の装甲車は普通に走れてはいる。

 

 だが、いつ泥にタイヤが潜り込んでスタックするか分からない。

 

 そのため、湿地帯を迂回せざるを得なくて、この時間になってしまった。

 

 運転は俺、カーター、ハセベさんの3交代制にすることで、一日運転席に座りっぱなしから解放されたので、楽にはなっている。

 

 現在はハセベさんの運転だ。

 

 現在の懸念点は2つ。

 先のサンドワームは1匹だけとは思えず再襲撃の可能性があること。

 

 そしてもう1つの問題は、付近から発せられているビーコンらしき信号だ。

 

 装甲車の無線機能に一定の間隔で発せられている単調な信号は、海岸近くから発せられている。

 フラニスのように魚人の無限湧きが起こるというのならば無視はできないが、あまり時間を掛けていられないというのも事実だ。

 

 最悪、俺が「魔女の呪い」によって焼き払い、スピード解決させる必要もあるだろう。

 どうせ無人の地域なので、周辺への被害は無視できるのが有り難い。

 

 そう考えていたのだが……

 

「ラヴィ君、まずいぞ」

 

 運転をしているハセベさんから不穏な発言が出た。

 

 何があったのかと運転席へ駆け寄ると前面モニターにその理由が映し出されていた。

 

 陽が暮れ始めて、赤く染まる沿岸部にぽつぽつと人工の明かりが灯り、木造家屋のシルエットを浮かび上がらせている。

 

 家の数はそれほど多くない。人口は多くて100人程度だろう。漁村なのだろうか?

 

「集落? 現地民……ネイティブアメリカンたちの集落なのか、それとも異世界から転移してきたのか……」

 

 ニューオーリンズ近くにそのような集落があったという話は聞いていない。

 小さい集落のようなので、フラニスから出ている船の寄港地としても使われている雰囲気がない。

 

「キューバ辺りからの移住者ということも考えられる」

「でもまずいですね。あまり近くに民家があると、うかつに大規模攻撃はできないし、魚人が大量発生すると集落に流れ込む危険もある」

「可能ならば今晩中に片付けたかったが、夜間人々が寝静まっている最中に魚人が現れても迷惑もかかる。時間の余裕はないが、ここは明日の朝まで待機するしかない」

 

 悔しいが、住民の人に迷惑をかけないようにとなると、それしかないだろう。

 うっかり魔女の呪いを放つと、集落を巻き込む可能性もある。

 

 ハセベさんは車を水気の少ない丘の上に停車させた。

 

 海岸からも川からも離れているので、増水しても水に浸かるということはないはずだ。

 どのみち、装甲車の図体では小さい村の中に入って行くことはできない。

 ここに停めて歩いていくしかないだろう。

 

「さて、ここからどうするかだが」

「一応、集落の人と話をしてみましょう。もしかしたら集落の人たちもモンスターに襲撃されて困っているかもしれません」

 

 モリ君の意見は正論ではある。

 

 時間に余裕があるならば、フラニスのように1日かけてモンスター討伐をしてもいいだろう。

 ただし、今は時間に追われている状況だ。

 

 最悪は、何人かここに調査チームを残して、他のメンバーでフロリダを目指す必要があるかもしれない。

 

「一度、集落の様子を見に行った方がいいかね?」

「まずは情報を入手するという方針は賛成です。情報次第ではここでチームを分けることなくスピード解決できるかもしれません」

 

 時間がかかるならばチームを分けることも視野に入れてはいたが、住民から情報を得られるならば話は別だ。

 

「見るからに小さい集落なので商店や宿などはなさそうですが、住民の反応なども見ておいた方が良さそうですね。実際に魚人に困っている話がどれだけあるかの情報も欲しいところです」

「全員で大挙して押しかけるのも逆に警戒させそうだ。4人くらいでごく普通の旅人を装って行こう」

「では私とラヴィ君、それにモーリス君も来てもらおう」

「じゃあ最後のメンバーは私が。久々に最初の4人が勢ぞろいってことで」

 

 話を聞いていたエリちゃんが名乗りを上げた。

 

 最初、あの地母神の遺跡を旅した4人組の再結成ではある。

 

「なら今晩の食事当番はオレに任せてもらおう。ここにある食材は好きに使って良いんだな」

 

 ウィリーさんが挙手した。

 

 もちろん拒否する理由などない。

 中華料理食堂でバイトしていたという経験がどれほど生かされるのか楽しみではある。

 

「フラニスの町で鶏肉も少し買っています。他にも葉物野菜なども仕入れていますので、日持ちしない物から優先して使ってください」

 

 ウィリーさんに説明すると、早くも収納庫の中から食材類を選り始めた。

 なんとも頼もしい。

 

「酢はあるんだっけ?」

「穀物酢ではなくワインビネガーならば。ただ、どうしても洋風の味付けにはなりそうですね」

「なるほど……まあうまくやってみるさ」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 集落が作られたのは比較的最近のようだった。

 

 建物は近くの木を伐り出して作ったのだと思われるが、汚れや劣化などが少ない。

 

 窓越しに俺たちの様子を遠巻きに窺っている住民も30代以下の若い世代ばかりで、年寄りの姿はほぼ見られない。

 

 人種はアメリカ大陸現住民系なので、異世界からの転移者ではなく、近くの島か集落から移り住んできた人たちなのだろう。

 

 ただし、建物はネイティブアメリカンというよりも、ログハウス風の家に、どこか欧州風の建築様式が混じっている。

 異世界人からの技術提供があったのかもしれない。

 

 分かりやすいのは、どの家の窓にもはめ込まれているガラスだ。

 サルナスやフラニスにもなかったガラス窓が、この集落では使われている。

 

 もしかすると現代日本人が国の成立にかかわっているタウンティンの技術が少しは入っているのかもしれない。

 

 そんな中、一戸の家の扉が開いた。

 中から若い夫婦らしき男女2人が俺たちの方に歩いてきた。

 

 どちらも綿を草木で染めたような質素な服を着ている。

 ただ、顔は現地人とは少し違う。

 

「もしかして……日本人か?」

 

 俺たちが尋ねるより先に男の方が声を掛けてきた。

 

 侍、騎士、繁華街にいそうな少女……それに箒を抱えた魔女。

 

 このわけの分からないコスプレ集団を見て「日本人」というワードを出すということからして、もしかして俺たちの仲間……元日本人なのだろうか?

 

 若い夫婦らしき男女の年齢はどちらも十代後半に見える。

 

 少なくとも「日本人」というフレーズを使う時点で、何かしら日本から召喚された俺たちのような人間と接点があるのは間違いないだろう。

 

「いや、何か見覚えがあるぞ……もしかして、あの最初の部屋で声をかけた……なんだっけ、信長みたいな感じの名前の人だ」

 

 男の方がハセベさんの方を見て言った。

 

「ああ、此方も覚えている。私はハセベだ。君は確かマサムネだったか? 前に見た時と姿が違うので気付かなかったが、無事だったか?」

「ええ、こちらは何とか。ハセベさんもお元気そうで」

 

 どうやらハセベさんの顔見知りのようだ。

 

 今の話から察するに、最初に50人が集められた時にハセベさんは、今の目の前にいるマサムネなる人物と出会っていたようだ。

 

「ハセベさんは確か侍3人でチームを組まれていた記憶が……そちらの女の子がオウカさんでしたっけ? 服装は変わっているようですが、雰囲気は同じなので」

 

 マサムネは俺の方を向いてそう言った。

 

 確かに今の俺には少しオウカちゃんの因子が混じっているので、完全に間違いとは言えないところがややこしい。

 

「いや、彼女はラヴィ君という別人だ。こちらのモーリス君、エリス君たちの3人で旅をしているところに、私が参加させてもらった形だ」

「ということは他の2人は……」

「クリス君は少し離れた場所で待機してもらっている。オウカ君は残念だが……」

「まあ、こちらも似たようなものです。酷い話です」

 

 少し空気が重くなった。

 

 俺たちは最初の3人のうち誰も欠けることなくここまで来ることができた。

 だが、ハセベさんは仲間を2人喪っている。

 クリスさんはなんというか……オリジナルが喪われたことには違いない。

 胸中は複雑だろう。

 

「こんなところで立ち話もなんでしょうから、続きは家の中で話しませんか?」

「そうですね。ではご厚意に甘えて」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 俺たちはマサムネの自宅に案内された。

 

 集落の他の家と同じように、近くの木を伐り出して組んだログハウスのような造りの家だが、中は意外に広かった。

 

 広々としたウッドテーブルの周りには、丸太を流用した椅子が置かれている。

 そこに腰かけると、マサムネの奥さんらしき人が木のカップに何かを注いで出してくれた。

 

「お茶をどうぞ。大麦を煎って作った麦茶なので美味しいですよ。日本のものと同じ味がします」

「では遠慮なくいただきます」

 

 飲んでみると確かに麦茶だった。

 安心できる味だ。

 

 この女性も「日本のもの」と言ったことから、日本を知っている=元日本人と考えて良いだろう。

 

「ところでこの集落にどのような用件で?」

「単刀直入に言うと、この集落の近くにモンスターの発生装置のような物が仕掛けられているようだ。それを破壊しに来た」

 

 ハセベさんが歯に衣着せず目的を告げた。

 

「この集落にも何かモンスターが出現しているはずだが」

「はい……この辺りはアメーバのような化け物が1日1回、少し強い半魚人が週に1度のペースで現れます。私たちはこの集落に飛ばされてきてから3か月の間、そいつら相手に毎日戦い続けてきました……」

 

 マサムネはここで言葉を詰まらせた。

 毎日の戦いの中で何かあったのだろう。

 

 今は2人しかいないことも関係しているのかもしれない。

 

「倒せるんですか? 敵は大量に発生する上に強力ですよ」

 

 これはもっともな疑問だろう。

 自分たち2人で手を焼いていた相手を4人で全滅などできるのか疑問に思うのは当然の反応だ。

 

「私たちはここから少し南にあるフラニスという町で、同様に敵を倒してきた。それに仲間も大勢いる」

「4人だけではないんですか?」

「実は集落の外に他に数名を待機させている。敵を撃退する際には、全員で大量発生を食い止めるつもりではある」

 

 ハセベさんは窓の外に視線を移した。

 

 住民から情報を得られたらと思っていたが、同じ日本人がいて、しかも交戦経験があるとなれば話は早い。

 全員で戦えば、午前中には全て終わらせて出発できるだろう。

 

「むしろ、問題はここの集落の方ですよ。俺たちが戦っている間に、集落の方に敵が来ないかどうか心配で」

 

 モリ君の意見ももっともだ。

 目の前の敵だけを見ていると、別動隊が動いており、集落の方に被害が出たというのはシャレにならない。

 

「マサムネ君が、ここの集落の方たちに顔が利くならば、住民たちへの説明をお願いしたいところではあるが」

「分かりました。では、近所の方への説明は任せてください、町の防衛も普段やっていることなのでこなせると思います」

「すまない、助かる」

 

 ハセベさんとは顔見知りということもあり、話がスムーズに進んで助かった。

 これならば、明日の朝一から発生源を潰せば任務完了できそうだ。

 

「モンスターがどこから発生するのか、その発生源は以前から調べようと考えてはいましたが、集落の防衛を2人だけでこなすのは大変で、それ以外は何もできていなくて……」

 

 何もできないと聞いてから、改めて室内を見ると、確かに室内には雑然と物が積み上げられている。

 住んで3か月程度とは思えない散らかりっぷりだ。

 

 毎日発生する敵を倒し、家に帰って寝ると、それだけで精一杯で、家事にまで手が回らないのだろう。

 

 大学卒業直後の俺も似たような経験があったので分かるところはある。

 

 仕事に疲れて家に帰った後にはすぐに寝てしまい、家事にまで手が回らなかったからだ。

 

 一歩間違えば、俺たち3人も同じように小さい集落に投げ込まれて、このように毎日敵と戦わされて擦り潰されていたかもしれないと考えるとゾっとする。

 

 ジワジワと体力と精神が削られた状態では中ボスどころかザコ敵を倒すのもギリギリ、もしくは負ける可能性もあるだろう。

 

 その場合、おそらく真っ先に死んでいたのは体力もなく近接攻撃もできない俺だったに違いない。

 

「それで気になっていたんですけど、お2人はどのような関係なんですか?」

 

 エリちゃんが、気になっていたが聞きにくいことを直球で投げ込んできた。

 

「実は……見てお分かりかと思いますが、昨日結婚しました。こちらは妻のレイナです」

「レイナです。よろしく」

 

 予想通りというか、見たままというか、そういう答えが返ってきた。

 エリちゃんがキャーと声を上げている。

 

 どちらも10代にしか見えない……が、それは見た目の年齢の話だ。

 

 中の人が成人しているなら別に良いだろう。

 

 中の人が成人していない場合でも……2人で助け合わないと生きていけない過酷さだったのならば仕方ないかもしれない。

 

「結婚されたということはここに定住予定ということでしょうか?」

「はい。慣れないことばかりで生活も大変ですが、近所の方も良い人ばかりなので、ここで二人で助け合って生きていこうと」

 

 俺はモリ君と顔を見合わせた。

 

「この町はもう助かりましたよね。やることはないですよね。だから同じ日本人なら一緒に日本へ帰ろう。行くぞ(ドン!)」

 

 くらいの軽い気持ちで、日本へ帰るための旅へ誘おうと思っていたのだが、「結婚しました。ここに定住します」という話の後では説明しづらい。

 

 だが、一生の問題でもある。

 今の時点で話しておかないといけないだろう。

 

「ここに定住されるという重大な決意をされた後で申し上げにくいのですが……」

「なんでしょうか?」

 

 さすがにいきなりは切り出さずにワンテンポ開けたい。

 

 一度大きく深呼吸をした後に話を続けた。

 

「実は日本に帰る方法があります。私たちはそのために旅をしています」

 

 一瞬、場が静まり返った。

 

 無理もない。

 マイホームをローンで建てた社員が「はい来月から転勤ね」と告げられたような、生活基盤の破壊報告なのだから。

 

「日本へ?」

「100%の確約ではないのですが、可能性はかなり高いです」

 

 またしばしの沈黙。

 空気が重い。

 それでも茶々は入れずにじっと待つ。

 

「本当なのですか?」

「今のところ12人がそれを信じて旅をしています」

「確証はないのに?」

「それでもです」

 

 それを聞いたマサムネはレイナと顔を見合わせた。

 その後にまたも目を閉じて深く考え込み始めた。

 邪魔なしない。

 

「……申し出は有り難いのですが、私たちはここで生きていくと決めました。ですので、お構いなく」

 

 マサムネが低く唸るように言った。

 

 簡単な言葉ではあるが、苦渋の選択だったのだろう。

 まあ、これは仕方ない。

 

 ここに来てからの3か月で、結婚や定住などを決めるのに相当な葛藤があったのだろう。

 

 それだけに、突然に見知らぬ連中がやってきて「日本へ帰れますよ」と言ったところで説得力に欠ける。

 

 それに、分の悪い賭けをしているというのは事実だ。

 今のところ、情報ソースは運営側の

 

 実際ハセベさんたちは「もし空振りになっても、往復で3ヶ月ならまあ無駄に終わってもいいか」くらいの考えで同行していただいている。

 

 なので、このマサムネたちに今の生活を捨ててまで無理について来てくれとはとても言えない。

 

「ただ、モンスターの発生源を叩くという作戦には協力させていただきます。これは私たちの生活に関係していますので」

「ありがとうございます。では作戦ですが――」

 

 あくまでも発生源を潰すのと魚人や中ボスとの戦闘は俺たちだけでこなし、マサムネたちは集落の住民たちへの説明と防衛だけに決まった。

 

 だからと言っても、夜の暗いうちに海に入っての調査はモンスター以前に波にさらわれるなどの危険が大きい。

 作戦決行は翌日午前中の明るくなってからだ。

 

 早朝から始めて、昼までには片付けたいところだ。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 車に戻るとウィリーさんが鶏の唐揚げを作っていた。

 揚げたての旨そうな匂いが流れてくる。

 

「醤油も酢もないから味付けは塩胡椒のみのシンプルなやつだ。その代わりにチャーハンを作ったぞ」

「チャーハン? 米もないのに?」

 

 盛り付けられた皿を見ると確かにチャーハンと鶏の唐揚げらしき料理が乗っている。

 

 食材もないというのに、どうやって作ったのかは気になるが、まずは食べてからだ。

 全員に料理を盛り付けた皿が行き渡ったところで食事を開始する。

 

「ではいただきます。まずはチャーハンから」

 

 まずは一口入れてみると、食感が米ではない。

 米ではないのだが、限りなく米の雰囲気には近づいている。

 トルコのリゾーニっぽさがある。

 

「これは刻んだパスタですか?」

「当たり。米のサイズに細かくカットすることで、米っぽい見た目にした上でクスクスのような食感にしてみた」

「それに大麦も混じっていますね。パスタのパサパサ感を大麦のもっちり感で打ち消すことで……やっぱり米じゃないんだけど、なんだこれ?」

 

 俺の説明を聞いた全員がチャーハンを食べながら首を傾げ始める。

 

「確かに米じゃないけど何これ?」

「キヌアの方が米っぽいんだけど何これ?」

「むしろ麦だけの麦飯の方が米に近いけどなんだこれ?」

 

 確実に言えることは、美味しいものの、決して米の味と食感ではない。

 

 味付けは良い。

 

 高級バターのような適度な塩分とコクが米(?)をコーティングすることで蕩けるような甘みが舌の上で広がる。

 

 旨味は鶏ガラスープか?

 

 具材に使用されているカリッカリの鶏皮の食感や、そこらへんの草の適度な苦味もアクセントに良い。

 

 ただ子供たちには「そこらへんに生えてる草」の苦味は苦手なようで横に除けている。ここは改良点かもしれない。

 

「味付けはヨーグルトの底溜まりでリコッタチーズを作って、それに塩を足してバター風味にしている。あとは唐揚げを作る過程でできた鶏皮と鶏ガラ出汁」

「臭い消しくらいにしか使えないと思っていた、そこらへんに生えてる草も良い感じですね」

「ああ。あまり長持ちはしないだろうけど、用途は多そうなのでそこらへんに生えてる草は取れるうちに取っておこう」

 

 ありがとう、そこらへんに生えてる草。

 今後も使わせてもらうぞ、そこらへんに生えてる草。

 

 美味しい食事で明日の作戦もやる気が出てくるというものだ。

 

「ところで、そこらへんに生えてる草というのは食べてよいものなのか? 毒があると怖いのだが」

 

 ハセベさんが心配そうに聞いてきた。

 

 確かにサンディエゴを旅立ってからは、俺たちはこのそこらへんの草を貴重な天然ハーブとして何度も利用している。

 それだけに素性が気になるという話も分かる。

 

 だが、安心して欲しい。

 

「大丈夫ですよ。そこらへんに生えてる草ってミントのことなので」

 

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