収穫祭の魔女   作:れいてんし

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Chapter 4 「モスマン」

 目を瞑り、全神経を4方向へと飛ばした鳥の使い魔から中継される映像に集中させる。

 

 東方向……すぐに海のために異常見当たらず。

 西方向……森の内部までは確認できず。

 南方向……同じく森の内部は不明。

 北方向……ワシントンDCやボルチモア方向には砂漠が広がっており、特に何もなし。

 

 同時に4方向、半径2kmの調査を行ったところ、流石に頭痛がしてきたので一度能力を解除する。

 

「北と東は異常なし。調べるなら西か南の森だな」

 

 捜索中なのは集落の人達から話を聞いた「蛾人間」なる謎の存在だ。

 

 今の所、人的被害は出ていないようだが、農作物に多大なダメージが出ているというならば無視は出来ないだろう。

 

「それにしても蛾人間ってなんなんでしょうかね?」

「一応考察はある。おそらく正体は現代の地球、ウエストバージニア州で目撃例があるモスマンとか言われているUMA(ユーマ)

 

 俺は適当な木の枝で地面に絵を描いていく。

 

 大きな2つの目。その周りに付いた巨大な羽、丸い胴体、そして鉤爪のような足。

 

「ラビさん、これって全然蛾の絵じゃないですよ。フクロウですよ」

「そうだよ、フクロウだよ」

 

 チョイチョイと嘴などを描き足してフクロウの絵にする。

 

「メンフクロウというブサ可愛いフクロウがこの辺りに棲息してるんだけど、モスマンはこいつの見間違いだと言われてる」

 

 更にもう一つメンフクロウの絵を追加する。

 頭の形は同じだが、今度は獲物を狩るために脚を前に突き出した絵だ。

 

「同じくウエストバージニア州で3mの宇宙人ことフラットウッズ・モンスターという謎のUMAの目撃例があるんだけど、こいつもモスマンとほぼ同じシルエットなので、やはりメンフクロウの見間違いだと言われている」

 

 フクロウの絵にやはり大きな目が2つ。それを覆う丸い頭、両手に爪を持った絵を描いた後に、やはり線を追加してフクロウの絵に変える。

 

「UFOブームの前に目撃例が有ったのがモスマン。UFOブームの後に急に出てきたのが3mの宇宙人」

「でも、この世界には実際に蛾人間がいるんですよね」

「それが気になるところなんだ」

 

 靴底を擦りつけてフクロウの絵を消した。

 

「今まで出会ってきたモンスターは『異世界だからそんなのも居るだろ』で納得しようとしていたんだ。だけど、冷静に振り返って考えると、何かおかしいと思い始めてる。スカイフィッシュといい、このモスマンといい、見間違いUMAまで再現されてるのはおかしくないかって?」

 

 俺はこの世界に来てからの現象を思い返していく。

 

「前に言っただろ。悪い夢みたいな世界……ドリームランドだって。まだ結論は出せてはいないけど、もしかしたら当たらずも遠からずじゃないかって」

「ここは夢の世界だと?」

「夢そのものではないと思うけど、人のイメージが実体化するとか、イメージと似たような存在が異世界から引っ張り出されるとか、そんな類じゃないかなと……まあ、ただの仮説なんだけど」

「なら、今は現実の話をしましょう」

「そうだな。現実に被害を出しているモスマン対策を考えよう」

 

 モリ君の言うとおり、証明も出来ない、ただの考察に時間をかけても仕方ない。

 現実の対策を進めていくべきだろう。

 

「モスマンの拠点を見つけたいところだけど、捜索範囲が広すぎてどうしようもない。集落の人は狩りには慣れているだろうけど、それでも蛾人間の拠点を発見出来ていないくらいだ。それを狩りの知識も土地勘もない俺達が足で稼いだところで……」

「まあ無理ですよね」

「なので他の対策を考える。何か案はない?」

 

 1人で考えても煮詰まるだけなので、ここはみんなの協力を仰ぎたい。

 

「蛾なら光に寄ってくるんじゃない?」

 

 珍しくエリちゃんから効果が高そうな案が出て来た。

 

「それで行きましょう。装甲車のヘッドライトで照らして、集まってきたところを一網打尽にすればいい」

「試してみる価値はありそうだ。手間もかからないし採用で」

 

 案が出るとこちらも動きやすくて助かる。

 

「蛾はそれで全部駆除出来るでしょうか?」

「さすがに無理だろう。だから、蛾人間はあえて逃がして一度巣に逃げて帰らせよう」

「そして巣穴を見付けてそこへ攻撃と」

 

 作戦としてはそれが良さそうだ。

 

 作戦方針は決まった。

 後は夜を待つだけだ。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 18時を過ぎて日が暮れてきたのでモスマンの撃退作戦を開始する。

 

 まずはタルタロスさんに大きめの岩を運んでもらい、エリちゃんに真っ二つにしてもらう。

 

 岩の断面は綺麗な平面なので簡易スクリーンとして機能するはずだ。

 

 光だけでも十分だとは思うが、念には念を入れるために、まずはそこらに自生していたオレンジを擦り付けて果汁で匂いを付ける。

 

 更に装甲車のヘッドライト照射することで、匂いと光による相乗効果で蛾を集める作戦だ。

 

 流石に外で待っている最中、蛾に襲われるのは嫌なので、全員車内で待機することになった。

 

 いざ敵が襲来すれば、車から飛び出して攻撃を開始する手はずだ。

 

 ライトを点灯すると、早くも小さい羽虫などが灯りに誘われて集まっている。

 後は本命を待つだけだ。

 

「今日は何時くらいまで待ちます?」

「子供達は夜の9時まで。俺達は日が変わるあたりまで続けよう」

「でも、動きがなくて退屈じゃない?」

「こればっかりは時間との戦いだからな。あと何時間か辛抱だ」

 

 ひたすら敵の動きが有るのを待つ。

 

 

 作戦開始から3時間後の21時。

 

 集落の灯りが消え始め、光源は月や星のわずかな灯りと装甲車のヘッドライトだけという状態になった時、異変は起こった。

 

 周囲からブブブブと不愉快な虫の羽音が聞こえ始めた。

 その羽音は音量を上げながら段々と車へと近付いてくる。

 

「みんな、起きてるか! 本命が来たぞ!」

 

 外部のスピーカーからは絶え間なく羽音が鳴り続けている。

 そろそろ外に出て迎え撃つ準備をと思った直後に突然にモニターの表示が消えて真っ暗な画面になった。

 

 ――否。

 

「これってもしかして、蛾がカメラの周りを覆い尽くしているから、真っ暗なのか?」

「そうみたいです。よく見たら真っ暗じゃなくて、たまにドアップの蛾が映っているのが見えるので」

 

 モリ君が青い顔をしながらモニターから目を逸らしている。

 

 虫が怖いのに、モニター全面に映し出された蛾を見てしまったのだろうか?

 

「マズいな、これほどの数がいるというのは想定外だった」

 

 当初の予定ではある程度数が集まってきた段階で車から飛び出して迎撃予定だったが、流石にこれでは車から飛び出すどころではない。

 

「仕方ない。車内から迎撃する」

「車内から? どうやって?」

「俺達のスキルはある程度遠隔で発動出来るだろ。それの応用でこの車を体の一部と見立てて、車両先端からスキルを発動させる」

「出来るんですか?」

「やるんだよ」

 

 ハンドルに手を置いて目を瞑り、意識を集中させる。

 

(これは箒……車体は自分の身体の延長……箒の先から出せるのだから、当然車からも出せる)

 

 スキルはこちらが思っている以上に自由度が高い。

 イメージの拡大解釈次第ではいくらでも能力を拡張出来る。

 ようは出来て当然と思えば、必ず実現出来る。

 

「極光!」

 

 意図通り、極彩色の閃光は俺の体からではなく、車体全体から360度全方位へ照射された。

 

 極光自体の火力は低く、等身大のモンスターでは火力不足ではあるが、流石に普通サイズの蛾くらいならば簡単に焼き払えるくらいの火力は備えている。

 

 車を中心に爆発的に放たれた熱と圧力を兼ね備えた光は次々と蛾を焼き払って落としていく。

 

 真っ黒で何も表示されていなかったモニターに映像が戻ってきた。

 

 モニターにはまだ周辺には無数の蛾が飛び交う姿が映し出されていたが、相当数が減っている。

 これならば外に出られない程ではない。

 

「群鳥! 鳥を5羽召還!」

 

 車体の周辺に5羽の青白く光る鳥を召還した。

 

「鳥よ! そこらの蛾を全部喰ってまわれ!」

 

 コントロールを放棄して、スキルで喚びだした鳥を自由に飛び回らせる。

 以前に蛙の神が喚びだした眷属の蛙を駆除するために使用した手だ。

 

 鳥は「蛙は食べるが虫は食べない」などと言う偏食ではないので、この手段も使えるはずだ。

 

「師匠、あとは僕にやらせてください!」

 

 レルム君が自信あり気に前に出てきた。

 

「よし任せた。この車の周りに飛び交っている蛾に電撃を食らわれてやれ!」

「任せてください!」

 

 お互い手を出し、ハイタッチで手を鳴らして攻撃担当を交代する。

 

「電気ショック!」

 

 レルム君が無駄に洗練された無駄だらけの動きでケープを翻して杖を振った後に装甲車の表面から放電が放たれた。

 周辺を飛び交っていた蛾の大半が焼き焦がされて地面へと落下していく。

 

「次はうちが行く!」

「ドロシーちゃん、任せた!」

 

 今度はドロシーちゃんの攻撃だ。

 

「水鉄砲!」

 

 今度は車体から水流が放出され、周辺を僅かに飛んでいた蛾が軒並み地面へと落ちていく。

 攻撃力で撃ち落としたというよりも、水で羽根が濡れてまともに飛行できなくなったようだ。

 

 俺達3人の連続攻撃により、モニターを見る限り、普通サイズの蛾はほぼ残っていない。

 

「エリス! タルタロスさん! 近接攻撃チームの出番だ!」

「任せて!」

「蛾人間を適当に痛めつければ良いのだな」

 

 モリ君の指示でエリちゃんとタルタロスさんの2人がポキポキと指を鳴らす。

 

「殺さないでくださいね。適度に痛めつけて、巣に逃げ帰らせる必要があるので」

「羽根をもぐのはなし?」

「なしなし、飛んで帰れなくなるので!」

「足くらいは折っても良いのだな」

「……うん、まあそれくらいは。任せます」

 

 3人がドアを開けて飛び出していく。

 俺も箒を掴んでそれに続く。

 

「オレは行かなくてOK?」

「カーターは子供達と留守番。そもそも戦うのは近接チームだけで」

「ならラビ助は何しに行くんだ?」

「追跡だよ。鳥を飛ばしても2kmまでしか追跡できないから、それ以上となると直接追跡するしかない」

「そうか、気を付けろよ」

「もちろん!」

 

 近接チームとモスマンとの戦闘は早くも始まっていた。

 

 モスマンは人間の下半身に巨大な翼を持ったフクロウの上半身が生えた不気味な形状の怪人だった。

 

 そこだけを見るとフクロウ怪人なのだが、頭部には巨大な2つの複眼が月の光を受けてギラリと光っている。

 更に口の位置にあるのは嘴ではなく、蝶や蛾のような口吻が生えている。

 

 翼も生えているのは鳥のような羽毛ではなく細かい産毛であり、そこにはギラギラと光る鱗粉が付いており、完全に蛾の羽だ。

 

 これらが蛾人間の名前の由来だろう。

 

 そのモスマン2体が息も付かせぬ連係攻撃で近接チーム3人へ迫っていた。

 

 攻撃手段は足によるキック中心のようだ。

 

 低空高速飛行からの飛び蹴りや回し蹴りなど巧みな攻撃を次々と放っている。

 

 俺一人ならばそれなりに苦戦を強いられたかもしれないが、流石に戦闘慣れしたモリ君、エリちゃん、タルタロスさんを圧倒するほどではない。

 

 3人は危うげなところもなく連続攻撃を軽くいなすと、逆に反撃でモスマンを追い込んでいく。

 

「一体は倒してしまおう」

「了解!」

 

 エリちゃんが隙の大きな攻撃をあえて外して油断を誘う。

 

 モスマンは見事にそれに引っかかり、安易に反撃をしようとし飛び蹴りを出したところ、横から出て来たタルタロスさんがその足をガッチリと掴んだ。

 

 タルタロスさんはモスマンの足を掴んだままグルグルと頭上で何回転か振り回し、その後にモスマンの全身を力任せに地面に叩き付けた。

 

 仲間をやられて不利だと判断したのか、無事なもう一体のモスマンが大きく羽を広げた。

 

「くそにげるつもりだぞ」

「うわーとてもあいつにはおいつけません」

 

 モリ君とエリちゃんが酷い大根寸劇を始めて空へ逃げようとしているモスマンに向かって走るフリをする。

 学芸会かな?

 

 ただ、それでもモスマンにはこちらが空に逃げた敵に対して対処方法がないというのは伝わったようだ。

 空高く飛び上がり、僅かに残った蛾がそれに続いて空の彼方へと消えていった。

 

 俺は箒に跨がり、鳥を召喚する。

 

「じゃあ拠点を確かめてくる」

「早く戻ってきてね」

 

 手を振りながら空へと飛び立ち、気付かれないようにモスマンの後を追う。

 

 モスマンは南西方向の森の上空でぐっと高度を落とし、そのまま他の蛾と共に森の中ヘ入っていった。

 

 釣られて森の中には入らずにあくまで上空から様子を確かめると、森の中に一部立ち枯れした地帯がある。

 おそらく巣はその地帯だろう。

 

「『魔女の呪い』を打ち込めば壊滅出来そうだけど、今回は止めておくか。みんな心配してるもんな」

 

 モスマン発生源は突き止めたので、この日はすぐに引き返すことにした。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 モスマンの襲撃があった翌朝。

 

 俺達は早速集落の若者6人を連れてモスマンの棲息地である南西の森を訪れていた。

 

 現地人の若者6人に対してこちらの人数は最低限。俺とモリ君の2人だけで来て、他の仲間には待機をしてもらっている。

 

「なんで今日は俺達2人だけなんですか」

「俺だけでも良かったんだけど、怪我人が出る可能性を考えると、回復スキルを使えるモリ君にサポートで来てもらうのが一番かなって」

「巣の場所が分かっているんだから、全員で来て遠距離からスキルを連発して、すぐに倒した方が良いんじゃないですか?」

 

 俺は首を横に振った。

 

「それじゃあダメだ。俺達は明日にはいなくなるんだから、現地の人にモスマンの倒し方と、巣の駆除方法を教えておかないと、次に出現した時にまた困ることになる」

「それで2人だけなんですか」

「そういうこと。なので俺達は特に何もせずに現地の人だけで決着を付けてもらう。それが次にモスマンが出た時に自分達だけでも対処できるという自信に繋がる」

「なるほど」

 

 モリ君はウンウンと首を振っている。どうやら納得して貰えたらしい。

 

「それでモスマンはどうやって倒すんですか?」

「巣を燃やす。現地の人も既に似たような戦法で戦ってきた経験を生かせる上に、下手な武器を使うよりも効率が良い」

 

 実際、モスマンの巣を火で焼き払うと説明しただけで、集落の若者2人が樽に詰めた油を自主的に運んできた。

 

 巣の場所だけ説明すれば、後は彼らの技術と経験でうまくやってくれるだろう。

 

 しばらく歩くと、鬱蒼とした森がなくなり、広々とした空間が現れた。

 草が綺麗に刈られ、木が枯れたことで、広場が出来上がったようだ。

 

 もちろん、この広場を作り上げた原因は、蛾の幼虫である芋虫の大量発生だ。

 

 足元を見ると、それをやり遂げた何十、何百という巨大な芋虫がうねうねと地面を這い回っている。

 

「ひっ」

 

 モリ君は一瞬、俺に抱きつきそうな動きを見せたが、なんとか留まったようだ。

 

 以前までだと青い顔をして遠巻きに見守っているだけだったが、今は槍の穂先で芋虫を突いてなんとかしようとしているので、以前に比べると成長しているのが見える。

 

「こいつら、どうすればいい?」

 

 集落の若者が尋ねてきた。

 

 少し会話が出来るということは、昨日顔に泥を塗って潜伏していた男と同じ人物なのだろう。

 

「今回は準備期間がなかったので、私が芋虫を潰しますが、次回以降は対処をお願いします」

「どのように対処すれば良い?」

「燃やすのが効果的ではありますが、そこら辺に生えている草……ミントなどのハーブで虫除けの薬を作るのが良いと思います。これは蛾人間だけではなく、他のバッタやカメムシなんかにも効果があるので、農作物を守るのにも使えます。作り方は後で教えます」

「頼む」

 

 本当は芋虫の対策も住民にやってもらいたかったところだが、今回ばかりは準備の時間がなかったので仕方がない。

 

 第3のスキル「極光」による閃光で地面を這い回る芋虫をまとめて薙ぎ払い、進路を確保する。

 

「蛾の幼虫は毒を持っている場合もありますから、なるべく素手では触れないように注意してください」

 

 更に進むと、洞窟のような場所が見えてきた。

 

 遠目で見ても、洞窟の内部に人影のようなものが数体いるのが確認できた。

 

「日中は太陽の光を嫌ってこういう暗い場所に潜んでいるようですね。なので明るいうちに倒してしまいましょう」

 

 鳥を5羽召喚し、近くにあった立ち枯れしていた木にぶつけてバラバラに粉砕し、大量の木片を作り出す。

 

「まず、蛾人間があの穴から簡単に出てこられないよう枯れ木を使って出入り口を塞ぎます」

 

 ここからは集落の方々に作業をやってもらう。

 

 普段から柵を作るなどで木の扱いには手慣れているからか、手際よく動いてあっという間に枯れ木で洞窟の出入口を覆い尽くした。

 

「後は油を撒いて火を点けます。枯れ木の中に少し生木を入れると煙の量が増えて効果的かもしれません。しばらく燻してやれば、蛾人間は熱と酸欠に耐えきれなくなって飛び出してくるはずなので、そこを袋叩きにしてください」

 

 それ以降の動きは早かった。

 

 手慣れた動きで枯れ木の位置を調整した後に油を撒いて着火。

 

 集落の周辺でもモスマンの襲撃が有る度に同じような方法で火を付けて駆除を繰り返していたのだろう。

 

 瞬く間に火は燃え広がった。

 

 入口に積み上げた枯れ木全体に燃え広がり、火によって発生した熱と煙が洞窟の中へ流れ込んでいく。

 

「でも、これだと逃げられる可能性もありますよね」

「逃げたら逃げたでいいんだよ。巣さえ潰して、ここで酷い目に遭ったと学習すれば、二度とこの集落には近寄ることはなくなる」

 

 しばらく様子を見ていると、予想通り入口に積み上げた枯れ木を力任せにかき分けながら1匹のモスマンが飛び出してきた。

 

 だが、待ち構えていた男達が一斉に矢を射掛けたことで一瞬のうちに蜂の巣にされ、モスマンは燃えている枯れ木の上へ横たわった。

 

 羽に引火し、それをきっかけとして全身に火が広がっていく。

 

「敵だと分かっていても、こうも一方的だと何か可哀想になってきますね」

「まあ確かにそうなんだけど、やっていることは害虫駆除だから仕方ないといえば仕方がない」

 

 俺は燃え盛るモスマンの死骸を無言で見つめていた。

 

 火が消えて全てのモスマン、及びモスマンのサナギを駆除するまで5時間ほどかかった。

 

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