収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第16話 「銀のメダル」

「時間は?」

「12時40分。戻る時間を考えたらギリギリかな?」

 

 再度旧校舎の地下に潜入して1時間が経過しようとしていた。

 現在は地下5階へと繋がる階段を下っている最中だ。

 

 道中では巨大な虫や人型になったヘドロなどが襲い掛かってきたが、僕達の連携攻撃で何とか無事に突破することが出来た。

 綾乃が喚び出したヤマンソも今のところ暴走せずに扱えているようだ。

 

 2番目の能力によるユニットの補充は必要だが、1分半のチャージで強力な熱線を放つことが出来るのは強い。

 

「学校に溢れてる虫の発生源はここってことになってるんだよね」

「はい。アル君の調べによるとそうみたいですね」

 

 友瀬さんが映し出したコンソールにはB5の表示がある。

 階段を降りている途中も天井などを多数の虫が這い回っている。

 

 地下一階から階を下ることにこの虫の数は増えているので、おそらく間違いはないだろうという確証を与えてくれた。

 

「この下にボスがいるとして、どうやって解決する?」

「倒せる敵なら全員で集中攻撃して倒してしまおう。倒せなさそうならば、天井を崩してこの階段を埋める。それでマシにはなるはずだ」

 

 小森君が天井を見ながら言った。

 

「石造りだけど、一部崩れそうなところがあるから、一斉攻撃すれば壊せなくはないと思う」

「それって下手したら私達も生き埋めにならない?」

「最後の手段だよ。なるべくならしたくない。でも、もし俺達が地上へ出られなくなっても、半日以上経てば上戸さんが異変に気付いて駆けつけてくれる」

「小森の上戸さんへの信頼は何なの?」

 

 綾乃がいぶかしげな顔で尋ねた。

 確かに小森君と上戸さんの関係はよく分からない。

 

 異世界にいた頃は仲間だったらしいが、言動からはそれ以上の親密感みたいなものがあるように感じる。

 

 だからと言って恋人とかそういうのではない。

 なんというか言葉では表現出来ない。

 

「上戸さんは……なんというかな……恩人?」

「なんで疑問形?」

「俺達が閉じ込められていた時に助けに来て、実際頼りになる人なんだけど、やっぱり見た目通りで頼りにならない時もあって」

「頼りにならないんじゃダメじゃない」

「でも期待は裏切らない。そういうところも含めて仲間……友達なんだと思う」

 

 上戸さんについて語る小森君は良い顔をしていた。

 本当に心が通じ合っているという感じだ。

 

「私達は仲間じゃないって?」

「そんなことないよ。柿原も矢上君も友瀬さんも仲間だ」

「じゃあ、私達の友情パワーでさっさとこの事件も解決しちゃいましょう」

 

 長い階段を降りていくと、今までの狭い迷宮と異なり、円筒形の広場が視界に広がった。

 

 石段を降りていくごとに空気はカビ臭い湿り気を増していった。

 淀んだ空気を迂闊にも吸い込んでしまい、激しくむせる。

 

「マスク持ってきてなかったかな。これは吸い込み過ぎると体に悪そうだよ」

「ここは私に任せてみて……ヤマンソ!」

 

 綾乃の叫びと共に炎の花弁……ヤマンソの色を体表の色が赤から橙色に変化した。

 それと共に周囲の温度が一気に上がる。

 

 温度差で発生した風によっておおよそ健康的とは言い難い空気が流されていき、代わりにドライヤーから噴き出されるような熱風が吹き付けて来た。

 気持ち悪い湿気も飛んで空気そのものは浄化されたようだが、これはこれで辛い。

 

「ちょっとした空気清浄機気分かな」

「それにしては温度は高すぎる気がする」

 

 温風を直接受けるのは辛いが、流石にカビ臭いよりはマシかと我慢しながら石段を下りていくと突然に視界が広った。

 

 そこは、全てが石で構成された広大な空間だった。

 

 天井はゆるやかなドームを描いており、驚くべきことにその内側には星のように光る石が無数に散りばめられていた。

 人工のはずなのに、プラネタリウムのように常に光り輝き、本物の夜空が閉じ込められているようだった。

 

 壁面にはかつて色鮮やかな絵が描かれていたのだろう名残がうっすらと見て取れる。

 

 しかし、そのほとんどがまるでペンキをぶちまけられたように黒い斑点に覆われて消えかかっていた。

 先程の臭いからしてカビに侵食されているのだろう。

 

 部屋の中心には、石で組まれた祭壇のような構造物が鎮座していたが、こちらも黒いカビだか苔だかに覆われており、元の石の色すら判別がつかないほどになっている。

 

 そして、祭壇の中央には、タールのような黒い液体物質が地面から噴き上がり、それが円錐状に固まったような奇妙な物体が鎮座していた。

 

 円錐の頂点には、明らかに意図されたとしか思えない開口部が3つある。

 

 所詮はただの穴でしかない。

 ただ、シミュラクラ現象とかいうものなのか、それらの穴を見ていると、苦悶の表情を浮かべた人間の目と口のようにも見えてくる。

 

 円錐の表面からはドロドロとした黒い粘液を今もなお滴らせては床に染みを広げ続けていた。

 

 床にこぼれた液体はある程度集まると虫が生まれたり、そのままヘドロのような状態でのろのろと動き始めた。

 

 学校に溢れていた化け物はこいつらで間違いないだろう。

 

「でも何なんなんだろう、この近代芸術は?」

「分からないけど、壊さないとダメなものだと思う」

 

 堅そうだけどカボチャ頭で殴りつければ破壊出来るだろうか?

 

 近寄らせようとした時に突然に友瀬さんが必死な顔で叫んだ。

 

「ダメ、そいつ生きてます! すぐに防御を!」

「生きて!?」

 

 直観的にすぐに動かないと危険と分かったのでカボチャ頭を手元に戻した。

 

 その直後、黒い円錐の側面から「何か」が伸びた。

 

 まるで人の腕のようにも、異形の触手のようにも見える「それ」は、滑らかに、しかし異様な速度で空を裂きながらこちらに襲いかかってきた。

 

 回避は間に合わない。

 迂闊にカボチャ頭を移動させると本体である僕に攻撃が当たる可能性が大きい。

 受けるしかない。

 

 背筋を丸めて脇と締めて肘を曲げる。

 ボクシングのファイティングポーズのように体勢で顔面と胴体を護る。

 

 直後に鋭い音と衝撃がカボチャ頭の両腕に伝わった。

 相当な勢いではあるが、黒い「腕」の初撃は何とか両腕で受け止めることが出来た。

 

 だが、黒い「腕」の圧力は止まらない。

 粘性を帯びたその表面は、見た目以上に重く、圧も徐々に増していくのがはっきりと分かった。

 

 執拗に、持続的に、ガードの上からプレス機のように押し込んでくる。

 このままだとガードを突破されて相当なダメージを受けるだろう。

 

 まずは本体である僕がこの「腕」の攻撃範囲から離れる。

 その上で力による押し合いを避けて技術と速度で反撃にかかる。

 

「飛びついて避けろ!」

 

 カボチャ頭はガードの姿勢を保ったまま、フィギュアスケート選手のように上半身を大きく後方に反らせた。

「腕」は両腕の上を滑るようにして伸びていくが、極端に身体を反らせているために攻撃がどこにも当たることはない。

 

「このまま反撃だ!」

 

 ガード姿勢解除させて伸びてきた「腕」を掴み、更に全身で飛びついた。

 両足を絡ませ、腰の回転と腕力で「腕」を掴んで捻り上げる。

 

 腕ひしぎ逆十字。

 柔道やプロレスで使う関節技だ。

 

「そのままヘシ折ってやれ!」

 

 カボチャ頭が「腕」を折るべく腕に力を込める。

 だが、そのタイミングで「腕」は伸びてきた時と同じように高速で縮み始め、本体の方へと戻っていった。

 

 腕と足の固定(クラッチ)は解除されて、カボチャ頭は振り落とされる。

 

「伸ばせるんだから当然戻せるのか」

 

 カボチャ頭を再度手元に戻す。

 今のところはお互い軽ダメージというところか。

 

 円錐形の黒い塊は、その頂点にある……口に当たる部分から叫び声のような音を鳴らした。

 ガラスを引っ掻いたようなその不協和音は空間に反響して更に不快さを増す。

 

「友瀬さん、こいつは一体?」

「名前は『フォームレススポーン』と出てます。備考には奉仕種族って……奉仕って何?」

 

 コンソール上には名前と各種情報が表示されていた。

 

 (フォーム)無い(レス)は分かる。

 先程急速に「腕」を伸ばしたり、円錐のような胴体はスライム状で身体の形をある程度自由に変形出来るということだろう。

 見たままの意味だ。

 

「スポーンってなんだっけ?」

「ゲームでリスポーンとか言うだろ。出現するとかそういう意味がある。元の語源は魚や両生類が大量に卵を産むこと」

 

 小森君が解説をしてくれた。

 リスポーンのたとえは分かりやすい。

 

「量産型ってことか。じゃあ奉仕の方は?」

「奉仕って言うくらいだからメイドじゃないの?」

 

 綾乃が嫌な解釈をした。

 

「こんな特殊趣味対象のメイドは嫌だ」

 

 またも「腕」を伸ばして攻撃をしてきたが、今度は小森君のプロテクション……光る壁がそれを防いだ。

 綾乃のヤマンソによる攻撃を防ぎ切った実績に間違いはない。

 

 流石にこの戦闘メイドの伸びる腕が直撃したくらいではビクともしない。

 

 攻撃を防いでいる間に友瀬さんに確認をする。

 

「他にこいつの特徴は?」

「身体を自由に変形させる。再生出来る。物理耐性ですね」

「『ブフに弱い』は?」

「だからブフってなんですか!」

 

 本当にブフって何だろう。

 綾乃の言うところはたまに分からない。

 

「意外と敵は強そうだし、油断すると手痛い反撃が来るのは間違いない。反撃の暇を与えずに一気に仕留めるよ!」

「ああ、俺が壁を解除したら全員で一斉にかかろう」

「恵太と小森は接近戦を仕掛けて。友瀬さんはそのサポート」

 

 綾乃が友瀬さんのコンソールを見ながら指示を出していく。

 

「私はヤマンソのチャージを始めるから、2人で攻撃の隙を作って欲しい」

「分かった。友瀬さんは他に何か特徴が分析出来たら教えて欲しい」

「分かりました……あの延びる手は最大20本出せるみたいです」

「聞きたくなかった」

 

 分かったからと言ってどうなるものでもなかった。

 攻撃が苛烈だと言われてもどうしようもない。

 

「そ、その代わりに手を伸ばすタイミングはこっちで分かるので、それを大きな声を出して伝えます」

「それならまあ……頼りにしてるよ、友瀬さん」

「はい!」

 

 ともかくこれで仕切り直しだ。

 

「じゃあ私が合図するから! 今が総攻撃のチャンス!」

 

 綾乃が鋭い目付きを円錐に向けて叫んだ。

 

 初の全員による連携攻撃だ。

 僕が出来る最大の攻撃で最速で仕留める!

 

 小森君がプロテクションの壁を解除したと同時に戦闘開始だ。

 

 開幕直後に円錐が「腕」を6本伸ばしてきたので、そのうち3本を小森君が高速で青白い光を灯した槍を振り回して弾き、切り落とし、受け流した。

 

炎柱(フレイムピラー)!」

 

 カボチャ頭の放つ炎弾で残り2本を焼き払って迎撃。

 そのまま空中に残ったままの炎の柱に腕を突き入れる。

 

死神の鎌(グリムリーパー)!」

 

 炎の柱が消える前に死神の鎌を取り出して、襲い来る残りの腕を叩き切った。

 

「次、腕が5本来ます!」

 

 友瀬さんがコンソールを展開。

 表示されている予想進路は……全て僕のジャック・オー・ランタンだ。

 

「腕は俺が防ぐ! だから矢上君は攻撃に集中!」

「任せた!」

 

 小森君が防いでくれると信じてカボチャ頭を高く跳躍させた。

 直後に友瀬さんの分析通りに腕が延びて来るが、それは小森君が出現させた光の壁に阻まれてカボチャ頭には届かない。

 

 そのまま高い位置から落下の勢いを合わせて勢い良く炎の鎌を振り下ろし、黒い円錐に食い込ませた。

 

 口にあたる部分の穴から叫び声がほとばしる。

 効いている。このまま攻撃を継続だ!

 

「ジャッコ! アサルトラッシュ!」

 

 そのまま手を休めずに円錐の全身を切り刻む。

 

 炎柱を攻撃に使ってその残りで鎌を作ったからか、効果時間は短く、それで鎌は消えたが、僕の役目は既に果たした。

 後続の攻撃を当たるために回し蹴りを入れて、その反動でカボチャ頭を逆方向に跳び上がらせた。

 

「ホーミングレーザー!」

「モードチェンジ! 斬首刃(ギロチン)!」

 

 カボチャ頭と入れ替わりにアルゴスから放たれたレーザー、そして先程攻撃を防いだ壁が光の薄い刃の形に変化して、黒い円錐に突き刺さった。

 黒い円錐の本体のあちこちは大きく切り裂かれた上に焼かれてもはや死に体だ。

 

「真打ち登場。美味しいところは私がいただくよ! ヤマンソ! レイジングインフェルノ!」

 

 綾乃のヤマンソの周囲を漂っていた光の玉2つが消滅。

 同時に放たれた2本の火線は交わり、1本の熱線となって黒い円錐全体を包み込んだ。

 

 岩をも溶かす地獄の業火は黒い円錐……フォームレススポーンの全身を包み込み、一瞬で焼き尽くした。

 

 僕と小森君は熱線の余波を避けるために一足飛びで後退。

 後に残ったのはタールが焦げたような悪臭のみだ。

 

 ヤマンソの攻撃の余波により軽い爆発が起こり、周囲に爆風が吹き荒れたが、先程と同じく友瀬さんのアルゴスが尾羽を広げて爆風から僕達を護ってくれた。

 

「はい、全員勝利のポーズ」

「爆発をバックにポーズとか特撮かな?」

This concludes the matter.(これにて一件落着)。悪趣味なメイドカフェは本日で閉店よ!」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 謎の敵を倒して安全が確保された地下5階。

 

 敵を倒したというのに迷宮どころかそこらの虫やヘドロが消えることもない。

 

 確認のためにスマホのカメラモードを起動させてみたが、やはり黒い霧に覆われている。

 ボスを倒したというのに根本的な解決にはなっていないようだ。

 

「で、でも、新しい虫が出て来るのは止まってますよ」

 

 友瀬さんがコンソールにレーダーサイトを表示させて指差し確認を始めたようだったので、僕も横からそれを覗き込んでみた。

 

「せ、先輩……近いですよ」

「ああ、ごめん」

 

 恥ずかしがる友瀬さんと少し距離を取った後で改めてコンソールのレーダーを覗き込んだ。

 

 既に発生して這いだした虫が消えることはなく、まだそこらに這いまわっているようだが、それでも発生源の敵「フォームレススポーン」とやらを叩いたので新規発生は収まっている。

 これならば学校はもちろん、僕達のマンションにまで虫が溢れてくることはないだろう。

 

 最悪の事態だけは回避出来たと言える。

 

「じゃあなんで霧は消えないんだろう」

「みんな、こっちだ。下り階段があるぞ」

 

 小森君が黒いカビに覆われた祭壇の下の方を指差していた。

 慌てて駆け寄ると、そこには祭壇の陰に隠れて気付かなかったが、更に下へと降りていく階段が見える。

 

「ここが最下層じゃなかったの?」

「まだ下があるみたいだな。さっき倒したのはラスボスじゃなくて中ボスだったんだろう」

「じゃあまだ調査は続くってことか」

 

 僕は綾乃の顔色を見る。

 お世辞にも良好とは見えない。

 

 5階でボスを倒せば全て解決という前提で今までは気合で動いていたが、流石にそれも切れたので体力が限界なのだろう。

 

 ただ、体力が限界だから戻ろうと言うと綾乃は天邪鬼に「まだ諦めない。更に下に降りる」などと言い出しそうなので、引き返しを提案するための何か理由が必要だ。

 

「そういえば綾乃、今の時間は?」

「午前1時10分ね」

「例の3人は2時に引き返してくるんだっけ? 鉢合わせはしたくないな」

 

 僕が地下に潜入していた謎の3人の話題を出すと、綾乃は顎に手を当てて何やら考え始めた。

 

「それもそうね。更に仲間を連れて来るって話だし、ここで無駄な戦いをする意味はないか。一度引き返しましょう」

 

 綾乃の口から「引き返す」という言葉が出て安堵した。

 小森君と友瀬さんも賛成のようだ。

 あとは地上へ引き返すだけだ。

 

「じゃあ私は帰る途中になるべく多くアル君のレーザーで虫を焼いていきます。明日学校がマシになると思うので」

「僕も付き合うよ。虫くらいならそんなに労力はかからないし」

「じゃあ私も」

 

 案の定綾乃が参加を表明してきた。

 

「柿原の使い魔は火力が大きすぎるだろ。虫相手には過剰出力だ」

 

 そう言うと小森君がオイルライターを綾乃に差し出した。

 

「これは俺より柿原が持っている方が良さそうだ。管理は任せたぞ」

「ちょっと、私がまた使い魔を暴走をさせると思ってる?」

「いや、柿原は部長でリーダーポジションだろ。だから管理責任者と見込んで渡すんだ。矢上君と友瀬さんの面倒も見なきゃだろ」

「確かにそうね。そう言われると流石に断れないか」

 

 小森君も綾乃の扱い方を少し分かってきたようだ。

 

 他人に自由を束縛されたり、何かを押し付けることを嫌がるが、頼まれると断れない。

 特に他人の世話を任されるとなると余計にだ。

 

 僕が世話になる庇護対象というのには少し納得がいかないところもあるけど、そこは仕方ない。

 

「じゃあ、連中が戻ってくる前に帰りましょう」

 

 綾乃は踵を返して上り階段の方へ向かう……その途中で金属製の何かを蹴るような音が聞こえて来た。

 音の大きさからして小さいコインのような音だった。

 

「誰かお金を落としてない? 今間違えて蹴飛ばしたみたい」

「お金って……こんな時に綾乃は」

 

 音のした方向へ歩いていくと硬貨ではなく銀色のメダルのようなものが落ちていた。

 カビだらけの床に直接触りたくはないので、カボチャ頭に代わりに拾わせる。

 

「お金じゃなかったよ。多分ゲームセンターのメダルか何かだ」

 

 500円くらいの大きさの銀色のメダルに「SR」の刻印が入っている。

 ただ、メダルの銀色は安っぽいメッキではなく本当に銀という感じがする。

 あまりおもちゃ感がないのだけは気になる。

 

「待った。ちょっとそのメダルをよく見せてくれないか?」

 

 その時、小森君が必死の形相で飛んできた。

 カボチャ頭に命じてメダルを小森君に手渡すと、それを裏返したり指でさすったりと執拗に確認を始めた。

 

「柿原、このメダルはどこにあった?」

「下り階段のところにいたから、この祭壇のところかな?」

「メダルが有ったのはさっきの謎のモンスターを倒した場所だよな」

「それは間違いないけど……どうしたの?」

 

 小森君は人差し指と親指で縁を摘まんで僕達にメダルを改めて見せて来た。

 

「これは俺達が召喚された異世界に有ったものと同じものだと思う。向こうの世界だとモンスターや……人が死ぬとこのメダルが出て来る仕組みだった」

「人が……死ぬ……?」

「今回の場合はさっき倒したモンスターが排出したものだと思うが、ここで人が死んでメダルが残ったままになっていた可能性はまだ否定出来ない。他にメダルは落ちてないか?」

 

 流石に人が死んだ可能性があると聞かされては無視は出来ない。

 手分けして周囲の床を靴で蹴りつけたりしてみたが、他にメダルは見つからなかった。

 

「先輩、もう1時20分です。30分で帰るにしても」

 

 友瀬さんがスマホの時計を見せて来た。

 確かにあまりここでもたもたしている時間はなさそうだ。

 

「流石にさっきのメイド長が落としたってことで良いと思うよ。でも、こんな何の変哲もないメダルで何が出来るの?」

「俺達はランクアップ……パワーアップに使っていた。だけど、他の用途もあるらしい。ショップとか」

「じゃあ、やっぱりこの遺跡は小森が召喚された異世界絡みってこと?」

「状況から考えてそうなんだろう。ただ、これについても再調査が必要だ。上戸さんや片倉さんにも相談してみる」

 

 僕達はこの後、30分かけて一度地上に引き返した。

 なんとか例の3人組と鉢合わせすることはなかったので、そのまま帰宅した。

 

 とにかく今日は疲れた。

 気になることはたくさんあるが、細かいことは明日に考えよう。

 

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