収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第25話 「幼馴染」

 図書館で司書に話を聞くと、何点か学校が建っていた場所の歴史について記した本を案内してくれたので、それらを柿原と一緒に学習テーブルへと運んだ。

 

 区の開発史、高度成長期の開発計画と言った横浜市が刊行している冊子。

 他には地元の歴史などについて書かれた郷土学の本などである。

 

 一部は昨年の文化祭の出し物として町の歴史を調べた時に見たものもあったし、完全に初見のものも混じっていた。

 

「柿原はこういう資料のまとめは慣れているのか?」

「私を誰だと思ってんの? 新聞部の部長よ」

「それは頼もしい」

 

 褒めるとすぐに柿原は本を立ててその後ろに顔を隠した。

 

「実はこういう調べ物は恵太に任せていて……」

「それでも俺1人じゃこの分量の本を読んで要約するには限度がある。手伝ってもらえるとありがたい」

「そういうことなら、手伝わなくもないけど」

 

 ここでようやく柿原が通学鞄から授業で使っているタブレットを取り出した。

 テキストアプリを起動させて、そこに関係ありそうな部分のメモを取っていく。

 

 流石新聞部だけあってこの手のメモは得意のようだ。

 

 これならば俺が資料の読み込み。

 柿原がそのメモで役割分担する方が良いかもしれない。

 

「小森はやっぱり本を読んだりするのが得意なの? 勉強出来るみたいだし」

「いや全然。俺が成績を上げたのはラビさん……上戸さんに点の取り方のコツを教えてもらっただけだよ」

「あの中学生は何者なの? やたら色々なことを知っているみたいだけど」

 

 ここでラビさん……上戸さんについての説明を柿原達に一切していなかったことに気付いた。

 確かに見た目だけだと何か勘違いされていてもおかしくない。

 

「上戸さんはサラリーマンだよ。12月が誕生日で24歳」

「嘘でしょ!」

 

 柿原が大きな声を出して立ち上がったので図書館の周りにいる人達からの視線が集まった。

 人差し指を立てて静かにするよう伝えると無言で椅子に座った。

 

「異世界へ喚ばれた時に姿が変わったんだよ。そこから全然成長してないのは謎だけど」

「老けない体質か何か? それとも正体は実は異世界のエルフか何かだったりする?」

「一応本人の前では言わないであげてね。体型については色々と気にしているみたいだし」

 

 どうやら日本に帰ってからは毎日豆乳を飲んだり、背が伸びる体操などを試したりして努力しているらしい。

 

 その結果として「朝に身長を計測すると身長が1mm伸びていることもある」という微妙な成果についても聞かされたことがある。

 それでも調子の良い日は朝に2mmほど伸びているらしい。

 

 ちなみに体操には副作用があり、夜になると身長が元に戻るとか。

 

「破廉恥な話で悪いが」という前置きで「調子が良い時は胸が0.5mm増えていることもある」と朝からメールで報告された時は、学校を早退してスマホの電源を切って家で寝ようと考えたこともある。

 

「ということは小森も何か変わってる?」

 

 ここでどう答えるべきかは少し悩んだ。

 

 俺の場合は外見については顔も含めてほとんどそのままだ。

 体格が少し良くなって身長が何センチが伸びたくらいというのは、「成長期だから」で説明がつく程度にしか変わっていない。

 

 もちろん、身体能力は大きく変わった。

 恵理子ほどではないけど、人間離れしたかなりの超人的な動きを出来るようにはなっている。

 

 ただ、それ以上に人間的に大きく成長出来たという自覚がある。

 

 辛いことや悲しいことも多かったけど、あの世界で会った多くの人達のおかげだ。

 

 もちろん、まだまだ足りない点は感じている。

 だけど、足りない部分に気付けたのも、そこを乗り越えるために努力するきっかけを貰えたのも成長だと思う。

 

「変わったよ。昔の俺よりも大きくなれた……そう思う」

「じゃあ、やっぱり昔と別人なんだ……」

 

 柿原が少し寂しそうな顔をした。

 この場合は、旧友が自分の知らない別人のようになっていて、再会を素直に喜べないということだろうか。

 

「根っこの部分は昔と同じだよ。柿原……アヤちゃんが昔に俺や結依と一緒に遊んでいた遊んだ頃と」

「えっ?」

 

 俺の言ったことを理解出来なかったのか、柿原が一瞬口を開けたままの状態で動きを止めた。

 そのまま掠れそうな声で返してきた。

 

「……もしかして覚えていた?」

「ごめん、つい最近まで忘れてた。酷いやつと思ってくれていい」

「じゃあいつ思い出したの?」

「流石にこれだけ共通項があれば鈍い俺だって気付くよ。柿原も矢上君も前から気付いていたんだろ」

 

 柿原は素直に頷いた。

 

 高校に入ってからは何度か廊下ですれ違ってはいるが、お互いに気にも留めなかった。

 

 柿原と矢上君が昔に遊んだ子供だという確証を持てたのは2人が旧校舎で結依の話を始めた時だ。

 流石にそれだけのヒントを貰えれば鈍い俺だって気付ける。

 

「小学校の頃だよな。バレンタインの時にチョコをくれたのは覚えてるよ。あの時はびっくりしたけど、実は心の中では嬉しかった」

「嬉しかったならなんで?」

 

 柿原の疑問も当然だ。

 俺はアヤちゃんから好意を示されたのに、それに答えず逃げ出してしまった。

 

 小学校の頃からだから、もう6年近い逃走だ。

 

「急にカズくん……小森が酷いことを言った後に無視するみたいに姿を見せなくなって。何度も理由を考えて……どこかで、私が嫌われたんだって、自分で納得するしかなかった」

「違うんだ。本当に、ただ……俺がガキだった。女子と一緒にいるのが恥ずかしい。しょうもない理由で。情けないけど、そうだった」

 

 俺は言葉を選びながらたどたどしく語り始めた。

 

 恥ずかしさと自分の情けなさに対する怒り、謝れずに今まで放置してしまったことへの慚愧の念。

 

 様々な感情が押し寄せて来た。

 

 だけどここでまた逃げるわけにはいかない。

 

 謝って許されることではないとは思うが、それでもこんな気持ちを残したままでは先へ進めない。

 言葉は伝えられるうちに伝えておかないと、その機会はいつ無くなるか分からない。

 

 あとで後ろを振り返るのはもう止めたんだ。

 

「結依も同じだった。幼馴染なのになんとなく照れくさくて避けて――あのとき、ちゃんと向き合ってればって、今でも思ってる」

「ユイちゃん……品田結依さん……小森の隣にいた女の子」

 

 優しくて、寂しがり屋だったあの子。

 昨年の秋、彼女は突然この世界からいなくなった。

 

 俺はいくつか偶然と奇跡が重なって結依に届けられなかった想いを告げることは出来たが、普通はそんなことは出来ない。

 二度目の奇跡はもう起こらないだろう。

 

 だから、俺はもう後悔を残すようなことはやらない。

 

「品田さんと最後に何を話したの?」

「先週かな。両親に迷惑をかけたと。電話なら今日の昼休みに週末についての打ち合わせを」

「そう、先週……先週!?」

 

 またも柿原が大きな声をあげて椅子から立ち上がった。

 流石に驚くのは分かる。

 

 結依は亡くなったはずなのに先週話したというのはおかしいという話だろう。

 俺も割とおかしいと思う。

 

「いや待って。ちょっと待って。それよりも品田さんに先週会ったってどういうこと? 電話は昼って更に意味不明なんだけど?」

 

 柿原が俺に詰め寄ってきた。

 確かに今のはあまりに説明不足だった。

 

「俺もよく分からないんだけど、細かい説明を省くと上戸さんが結依なんだ」

「待って、間の説明を端折りすぎて意味が分からないんだけど」

 

 これは何から話せばいいんだ?

 経緯か? 経緯からか?

 

「もう少し詳しく説明すると、結依はこっちで死んでから上戸さんのサポートユニットとして異世界転生したんだ。そこにもう1人、オウカさん……鹿島(かしま)さんだったかな? 3人で同居して一緒に旅をしていたんだけど」

「日本語で」

「その3人が強敵を倒すために限界超越ってので合体したんだ。鹿島さんは去年の年末に分離して自宅の九州に帰ったんだけど」

「日本語で」

「結依はまだ上戸さんと合体したままなので上戸さんが結依なんだ」

「小森、あんたバカでしょ」

「誰がバカだよ! 俺だって意味が分からないよ。なんでそんなおかしなことになってるのか!」

 

 思わず立ち上がって柿原に言い返すと、周りに座っていた人達の目線がこちらに向いた。

 2人で頭を下げて謝罪する。

 

「ちょっと表に出よう」

「確かに話をするならそっちが良いかも」

 

 柿原と一緒に一度図書室を出て入口のホールに移動した。

 

 端の方にソファーとテーブルが置かれており、そこでちょっとした会議などが出来るようなスペースがあった。

 そこならば少々声を出しても誰から何を言われることもない。

 

 幸いにも他の利用者はいないので使わせてもらおう。

 

「まず整理ね。品田さんのことは何をどうしても意味不明になるから、とりあえず横に置いておく」

 

 柿原は両手で荷物を横に運ぶような動きをした。

 

 これに異論はない。

 俺にも結依のことを全く説明出来る自信がないし、説明しているうちに自分でも何を言っているのか分からなくなってきたのは事実だ。

 

「それで、私に言いたいことがあるんでしょ?」

 

 俺は両腕をついて、額をテーブルに擦り付けるようにして深く頭を下げた。

 

「小学校の頃のこと……本当にすまなかった。俺が悪かった」

 

 謝って済むとは思っていない。ただ、今できることはこれしかなかった。

 

「反省してるの?」

「もちろんだ。流石に幼かったからだけで許されるとは思っていない。俺は柿原に対して許されないことをした」

 

 言い終えると、柿原は軽く俺の後頭部をペチンと叩いた。

 

「それで手打ち。さ、資料の調査に戻りましょ」

「え、もう終わり?」

 

 拍子抜けだった。もっと責められる覚悟はしていた。

 

「私はね、昔のことをいつまでも根に持つタイプじゃないの。それに、小学校の頃に会ったきりの相手を想い続けるような純情乙女でもないし」

 

 柿原は淡々と、けれど優しく言葉を続けた。

 

「小森が昔に遊んだ頃を覚えていて、楽しかったって言ってくれた。そして、私を泣かせたことをちゃんと謝ってくれた。それで、私はもう十分」

「……本当に、それだけでいいのか?」

「しつこいな……それとも、今の彼女と別れて、私と付き合ってくれるわけ?」

 

 最初は冗談だと思った。

 けれど、柿原の瞳は真剣だった。

 

「あの日の答えを」

 

 ただの軽口ではない。

 どんな答えが返ってきても俺の答えを真正面から受け止める……そんな目だった。

 

 だから、俺も真剣に答えなければならなかった。

 

「今の俺には付き合っている彼女がいる。罪滅ぼしみたいな気持ちで付き合うなんて、まず柿原に失礼だ。俺はこの件について嘘をついたり誤魔化す気はない」

 

 正直な気持ちを伝える。

 たとえ彼女を傷つけることになっても、それが誠意だと思った。

 

「悪いけど柿原とは付き合えない」

 

 それを聞いた柿原はただ大きく息をついて、俺の目を見つめた。

 

「今の彼女さんはそんなに良い人?」

「良い人ではないよ。バカだし、不満があればすぐに拗ねるし、怒るし、嘘つきだし、妙にうどんにこだわりすぎるところがあるし、バカだし」

「でも好きなんだ」

「俺も言うほど立派な人間じゃない。だから一生をかけて一緒に成長していきたい。護りたいと思った」

「そっか……こうもキッパリとフラれると逆にスッキリするっていうか、今日は昔みたいに逃げずに答えてくれて安心した」

 

 柿原はその後に何度か「そっか」と繰り返してうつむいた。

 

「ごめん。それでも……もしも許してくれるなら……昔からの友達、幼馴染として、これからも話をしたいと思ってる。その気持ちも嘘じゃない」

「手打ちって言ったじゃん。断るわけないでしょ」

 

 そう言うと柿原は握手のために手を出してくれた。

 俺はその手を取って握手をする。

 

「じゃあ……この話は、それでおしまい。今日からは私と小森はただの友達。その代わりにずっと友達。決して私達を裏切らないこと」

「もちろんだ。俺はもう柿原を……信じたい友達を裏切ったりしない。何があっても駆けつける。今日から改めてよろしく頼むよ」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「これなんて関係ありそうじゃない?」

 

 柿原が示した資料は町の開発の歴史だった。

 

 俺達の住む町が歴史に登場するのは西暦1200年、鎌倉幕府の頃。

 

 鎌倉に拠点を構えた北条氏は古墳時代に鉄が取れていたという話を聞いて「地元で鉄が取れるなら」と人を集めて製鉄を始めようとした。

 

 もちろん地元に鉄鉱石が取れる鉱山などはなく、ほんの僅かな砂鉄から作れるのは小さなナイフが精一杯。

 鎌倉幕府の滅亡と共に無駄金を費やした製鉄集落はあっという間に自然消滅した。

 

「この鎌倉時代の話は関係あると思う?」

「たたら炉があったのはうちの学校周辺だからあるようなないような。遺跡の地下から鎌倉武士が残した何かが出てきたら有りそうだけど」

「そう言えば、何年か前の大河ドラマ便乗でうちの部の隣にある隣の歴史研究会がそこらの歴史を何か調べていたような。明日にでも聞いてみる?」

 

 歴史研究会というと、友瀬さんのアルゴスが暴走した時にちょっと抜けさせてもらった新聞部の隣の部室の事か。

 今のところ鎌倉時代については関係なさそうだが、歴史研究会に話を聞けるならば、そちらの方が手っ取り早そうだ。

 

「歴史研究会って戦国時代にしか興味はないと思っていたけど、うちの町の歴史の調査なんてやってたのか」

「武将の話だけだと思うよ。今回の場合は足利尊氏。だから調べているのはうちの町じゃなくて隣の鎌倉」

「尊氏って地元の鎌倉を攻め滅ぼした奴なんだけど。敵なんだけど」

 

 今のところ流石に関係なさそうだ。

 新情報が出てこない限りは、歴史研究会に話を聞く程度で良いだろう。

 

 そこから次は明治時代の横浜開港まで飛ぶ。

 何かおかしいが、その間の記述がすっぽり抜けているのだから仕方ない。

 

 ともかく明治時代に横浜市の中心部、今の桜木町のあたりで「横浜天主堂事件」というキリスト教への弾圧事件が起こり、キリストが禁教されるという事件があった。

 これによって横浜市内にあったキリスト教徒たちは山間部へと身を潜め、そこにひっそりと教会を建てて信者達と隠れキリシタンのような生活を始めた。

 

「この時に弾圧から逃れるべくして外国人居留地から逃げ出してきた人達が今の学校のあたりに礼拝堂を建てたらしい」

「今回関わっているのが『神父』だから、何か関係していると思わない?」

「それがどうも怪しくて、どうもこいつなんだよな」

 

 俺が取り出したのはうちの地域の区史だ。

 ここには役場などに保管されていた古い写真がまとめられている。

 

 文字がないので読みやすいと思って持って来た資料だ。

 

 写真下の注釈には「明治28年 建築記念」と記載されている。

 そこには「Starry Wisdom 星の智慧(ほしのちえ)教会」という立て看板が付けられた建物が写っており、その前には関係者であろう神父や地元の信者などが写っていた。

 

「俺は直接見ていないので確認して欲しい。旧校舎で柿原達が出会ったのはこいつか? 特徴はほぼ一致しているんだが」

 

 問題はそこに映っている神父だ。

 

 古いために黄変した白黒写真をデジタル補正せずに取り込んだからか、お世辞にも画質は良くない。

 ただ、写っている人物の顔や特徴、教会や背後の山の形などはなんとなく分かる。

 

 当時では珍しい褐色の肌の神父の首からは十字架ではなく赤い宝石が下げられている。

 

 柿原は俺から本を受け取るとしばらくそのページを凝視した後に結論を出したようだ。

 

「私や恵太が会った神父と同一人物だと思う……でも、これって100年以上前の写真よね。流石にこいつが写っているのはおかしくない?」

「子孫という可能性もあるけど……今までの不思議な事件のことを考えると、こいつは100年以上生きている本人なんだと思う」

「そうなると、計画のスタートは50年前じゃなくて100年前?」

 

 そこから2人で穴が開くように写真を覗き込んでみるが、元は古い写真の上にあまり質が良くない印刷なので、それ以上分かることはなさそうだ。

 

「ヒントはこの『星の智慧教団』という名前だと思う。これについてもう少し分からないだろうか?」

「特徴がある名前だからスマホで検索したら出て来るんじゃない?」

 

 柿原はそう言うとスマホを取り出して検索を始めた。

 俺も一緒に調べてみるが、どういうわけかネット上にあまり検索結果が出てこない。

 

 似たような名前のバンドグループくらいだ。

 

 どういうことだろうか?

 

 それでもしばらく粘って、俺の志望校の大学の教授が公開している論文のPDFを見つけることが出来た。

 どうやらこの教授が書いた論文の一部を抜粋して誰でもダウンロードして閲覧できるようになっているようだ。

 

 ただ、その容量はあまりに大きすぎる上に数が多い。

 学生プランの俺のスマホではあまりに負荷が大きすぎる。

 

「小森はダウンロードしないの?」

「月末が近いからギガがね……柿原は?」

「私も多分小森と同じプランだと思う。多分、これをタッチした瞬間に私のスマホは容量限界が来て死ぬ」

「この図書館は地域住民に優しいフリーWifiはないんだろうか」

「というか、この論文が全部入ってる本って図書館にないの?」

「それだ!」

 

 ダウンロードを諦めてスマホの画面を持ったままカウンターにいる司書さんのところに走って著者である学者の名前を見せると、すぐに著書を案内してくれた。

 本当にこの図書館の司書さんには色々と助けられた。

 

 著者は下條秀久(しもじょうひでひさ)という大学教授。

 建築と都市計画が専門分野らしくて、建築関係の本が並ぶ書架には何冊か教授の著書が並んでいた。

 

 適当にパラパラとめくってみるが、そんなあっさりと目的の記述が見つかるようなものではなさそうだ。

 

「今日のところはこれを借りて帰って家で読むというのは有りだろうか?」

「そんなに難しい本?」

「とにかく専門的な用語が多いのと、説明がくどいのと、ページが意外とあるのでどこに教団関係の話が書いてあるか分からないからな」

 

 PDFの論文ならば文字検索を使えるが、流石に紙の本にはそれが出来ない。

 ただ。PDFをダウンロードすると俺や柿原のスマホが月末まで死ぬ。

 

 恐ろしい強敵だ。

 

「今日のところはとりあえず教授の本を何冊か借りて帰ろう」

「うん、それは私も異論ない」

 

 この日は結局本を借りて図書館を出た。

 詳しくは明日の放課後だ。

 

 矢上君達の調査結果と合わせれば、きっと何かが分かるに違いない。

 

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