収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第六話 「Web会議」

 メールを見た小森君が学校に駆け付けたのは、僕が謎の熊を倒してから20分ほど経ってからだった。

 息を切らしているので、余程急いで来てくれたのはわかる。

 

「旧校舎へ行くにしても俺が来るまで待ってくれよ」

「だってこんなにすぐに来るとは思わなかったし」

「俺も自宅は学校に近いんだから呼ばれたらすぐ来たよ。どうせ予定は全部キャンセルで調査優先になったから家で待機してたのに」

「予定?」

 

 思い当たるのは例の赤土さんと上戸さんだ。

 もしかするとデートの予定だったのだろうか。

 

「予定って昨日いた2人と一緒に? どこへ行く予定だったの?」

 

 綾乃が小森君に尋ねた。

 

「ランドとシー」

「急いでないんだから行けば良かったのに。遠距離恋愛中の彼女と会える、またとない機会なんでしょ」

「でも、昨日の今日で放置は出来ないだろ。案の定、2人だけで勝手に旧校舎に突撃しようとしてるし。怪我をしたらどうするんだ?」

「彼女さんに悪いと思わないの? 彼女より私たちを取るとか? もしかして私に気があったりする?」

 

 軽口を叩いてみせた綾乃に対して小森君の表情は微動だにしなかった。

 

「目の前で困ってる人がいるなら助けないわけにはいかないだろう。恵理子もラビ……上戸さんもそういう事情なら納得してくれる」

 

 小森君のその言葉も目もあまりにまっすぐだった。

 からかうつもりで気軽に言った綾乃もあまりに真面目に返されたので逆に困惑している。

 

「え? あっ……はい……うん、ありがと」

 

 今の短いやり取りで確信が持てた。

 小森君が異世界帰りというのは超能力なんかを抜きにして本当の話なんだろう。

 

 何度も自分が生命の危機に瀕し、そのたびに何を優先すべきかを見てきたからこそ、今のような表情が出来るのだと。

 

 その時、電話の着信音が鳴った。

 小森君のスマホだったようで、今からちょっと話してくると少し離れた場所へ移動していった。

 

「からかったりしない方がいいよ。僕たちのことを心配してくれたんだから」

「うん、私たちを心配してくれてるってのは分かった。いい人だよ小森は」

 

 綾乃と小声で話しながら電話をしている小森君を見る。

 何やら頭を下げながら電話をしており、どうやら今の状況を昨日会った2人に説明しているようだ。

 

 そしてしばらく待つと、スマホの通話画面を開いたまま戻ってきた。

 

「矢上君に電話。上戸さんから」

「僕に?」

 

 電話を受け取ろうとすると、小森君が先にスマホのスピーカーのボタンを押した。

 

「会話の内容は全員で聞いた方が良いってさ。だからスピーカーホンで再生する」

 

 やはり僕が使った能力について何か言われるのだろうか?

 まずは「もしもし」と呼びかける。

 

『上戸です。矢上君は今のところ体調に変わりはないですか? 怪我など負っていませんか?』

 

 第一声は体調を心配するような声で、僕たちが取った行動を咎めるものではなかった。

 

「はい、今のところは」

『それは不幸中の幸いです。契約が済んでしまったものは仕方ありません。今はその手のことに詳しい友人にクーリングオフの方法がないか調べて貰っています』

「クーリングオフ?」

『あなたはどうやら邪神と呼ばれる存在と契約してしまったようです。しかも悪質詐欺のような内容で』

 

 邪神と聞いてあの神父の顔が思い浮かぶ。

 確かに怪しい人物だったが、あの神父の力を借りなければ切り抜けられない状況だった。

 

 それに事件を解決出来るように……綾乃や自分を護りたい力が欲しいと思ったのは事実だ。

 その点だけは後悔はない。

 

「僕が使い魔……ジャ……」

 

 名前を呼ぼうとした時、長くて呼びにくいことに気付いた。

 もう少し省略した方が良いのだろう。

 

「ジャッコと契約したのがまずかったと?」

『いえ……って、携帯2つで中継するのはまどろっこしいな。小森くん、一度電話を切ってWeb会議システムに切り替えて。カーターも直接会話に参加してもらった方がいい』

 

 上戸さんが急にフランクな口調に切り替えて小森君に呼びかけて来た。

 どうやら上戸さんの電話の先に別の人物……おそらく「その手のことに詳しい友人」がいて、複数のスマホで同時通話をしているのだろう。

 

「すみません、Web会議をやるにはギガが……」

『もしかしてスマホの契約プランは安いけど通信量に制限あるやつ?』

「それです。高校生はみんなそれだと思いますよ。恵理子もそれでしょう」

 

 僕も小森君と同じプランだ。

 綾乃も同じ店に行って一緒に契約したのでおそらく同じ。

 

 一部バイトで稼いでいる人以外の同年代の高校生は、みんな同じ学生プランを使っていると思う。

 

「うちの部室のPCを使って通話するのはどう? Webカメラも付いてるから全員映せるし、学校の光回線が使えるから遅延もないと思う」

 

 ここは綾乃の提案に乗るのが良さそうだ。

 上戸さんも同じことを思ったようだった。

 

『それが良さそうですね。柿原さん、皆さんの案内をお願いします』

 

 一度電話は切れた。

 

 直後に小森君のスマホからメール着信音が鳴った。

 どうやらWeb会議用の招待リンクが飛んできたようだ。

 

「このURLにログインして欲しいんだけど」

 

 小森君がスマホの画面を見せてきた。

 おそらくアドレスが載っているのだろうが、綾乃は目を細めてそのメールを見た後に、怒気をはらませて言った。

 

「そんな文字数が多いアドレスを手打ち出来るわけないでしょ! さっさと新聞部のメアドに転送して。うちの学校公式ページに載ってるから」

 

 綾乃はこういう仕切りは本当にうまい。

 さすが、先輩たちから部長ポジションを託されただけのことはある。

 

「ついてきて。部室に案内するから」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 綾乃が部室のPCを起動させてメールに記載されていたアドレスにアクセスする。

 すると、Web会議アプリが起動して上戸さんと赤土さん。

 それに初めて見るスーツ姿の若い男の姿が映し出された。

 

『高校生ばっかりだけど、誰か大人はいないのか? 顧問教師とか』

「顧問教師はいるけど名ばかりで部室の方にはあんまり来ません」

『まあ高校の文化系部活なんてそんなもんか。オレ……私は片倉秀則(かたくらひでのり)。一応は魔術の識者です。よろしく!』

 

 片倉さんが妙に高いテンションで自己紹介をした。

 

 ただ「一応」だの「オレ」と言ったのを言い直したりだの、あまり真っ当な人間には見えないのが少し気になる。

 小森君に念のために小声で耳打ちする。

 

「この人って信頼していいの?」

「酒が入らなければ良い人だよ」

 

 なんとも言えない答えが返ってきた。

 本当に信頼しても良いのか疑念が浮かぶ。

 

『まずは君たちに起こっている状況の話をしよっか。直接顔を見たわけじゃないので定かじゃないが、君達が会ったのはおそらくナイ神父と呼ばれている人物』

「何者なんですか?」

『邪神と呼ばれている人間よりもはるかに強い力を持つ存在がこの世界には存在している。その中の一体』

 

 突然に理解しがたいワードから始まった。

 急に邪神と言われても理解が追い付かない。

 

『矢上君と柿原さん。2人は、その神父と何かしらの契約を締結してしまったのは間違いない』

「そんなことした覚えないんですけど」

『だからクーリングオフする方法を調べてるんだ。契約書もなしで一方的に押し売りとか六法全書読んで出直してこいって感じだろ』

「契約というからには何か取られるのでは?」

『この場合は先払いと後払いがあるんだが……今回は後者だな』

「なんで分かるんですか?」

『先払いなら、君はもう死んでるからだよ』

 

 さすがに直球で「死んでいた」と言われると、驚きを隠せない。

 

 確かに昨日は埴輪、今日は熊に追いかけられて生命の危機に瀕したことはあった。

 たとえ命を賭けても守りたいとは思ったが、それでも命を捨てたいとまでは言っていない。

 

 ……いや、神父の前で宣言をした気がする。

 

「僕はまだ死にたくないし、綾乃だけは絶対に護りたい。そのための力が手に入るなら何だってやってみせる」

 

 そう言った。

 

 勢いで啖呵を切ったのもあるが、あまりに勢い任せ過ぎたことを少し後悔する。

 

「もしかすると後払いの場合でも死ぬんですか?」

『最終的には。ただ、それまでは能力を使いまくっても死ぬことはないと思う』

「どういう根拠なんですか?」

『そこの小森やネット通話してる上戸や赤土も死んでいないだろ。一度能力者になれば基本的には使い放題のはずだ。もちろん体力や気力を使いすぎて衰弱死ってのはあるだろうが』

 

 確かに小森君はもちろん、昨日会った上戸さんや赤土さんも元気そうだった。

 今すぐ死ぬという感じはなかったので、僕も似たようなものかもしれない。

 

「ならどうやって取り立てを?」

『さすがに伝聞だけじゃ判断も取り消し方法も分からないから直接会いたい。2月の土日祝日でどこか空いているスケジュールを教えてくれ。早い方がいい』

 

 急に言われてもカレンダーを見ないと何日が土曜日なのかすら分からない。

 

「2月は何か予定があったっけ?」

「2月末には学年末テストが」

 

 綾乃に確認すると、すかさず小森君の方から飛んできた。

 

「うっ」

「うわぁ……」

 

 忘れていた……忘れたい存在がここに来て現実感を持って現れた。

 

 試験の頃までこのおかしな現象の話を引っ張りたくはない。

 普段でも良くない成績に悪い影響が出て来てしまう。

 

 正直な話、まだ実感のないダンジョンや能力よりも「学校の成績」という現実問題の方が刺さってくる。

 

『大丈夫、赤点を取らなければ良いんだから』

 

 その点、赤土さんは強い。

 僕たちが口に出したくても言えないことをハッキリ言ってのける。つよい。

 

「恵理子、ちゃんと勉強はやろう」

『赤点はダメ! 一緒に勉強しよう』

 

 もちろん赤土さんの発言には友達の小森君や上戸さんから即ツッコミが入った。

 

「試験直前と最中は無理! 2月まで待ってられないので、1月……来週にお願いします」

『今日言って週末とか……まあ人命がかかわっているし、何とか都合付けるか。じゃあ次の土曜日で』

 

 試験のこともあるけど、見てもらうのは早い方が良い。

 片倉さんには来週の土曜日に来てもらうよう頼み込んだ。

 

 無理を言って申し訳ないが、あとは何とか都合をつけてもらいたい。

 

『じゃあ次の問題だ。そっちのJK……柿原さんだっけ?』

「私ぃ?」

 

 まさか自分が話を振られると思わなかったのか、綾乃が片倉さんに素っ頓狂な声で返事をした。

 

『矢上君と一緒にいた君も能力が発現する可能性は高い』

「私も……恵太みたいなカボチャ怪人を?」

『能力は人によって違うものが出ると思うのでカボチャ以外だと思うが……問題は召喚に失敗して暴走させることだ。何が起こるか分からない』

「待って。もしかして僕も危険だった?」

『喚び出した使い魔の制御が全く効かなくて自分に攻撃してきた場合を考えてくれ』

 

 深く考えなくても分かる。

 

 カボチャ頭が繰り出した攻撃は「細い体に見合わぬ握力」「パンチの連打」「着弾すると炎の柱になる火の玉」

 何をどう受けても僕が無事でいられるとは思えない。

 

 綾乃も今の話を聞いて不安そうだ。

 突然謎の超能力に目覚めて、それが暴走すると言われて困るだろう。

 

「私はどうすれば……」

『暴走させなきゃいい。とにかく能力が発動しても平常心を保つこと。オレが行く来週土曜まではなんとか持たせてくれたら、応急でも対処はする』

「土曜までですよね」

『信じてくれ』

「……わかりました。なんとかします」

 

 綾乃も来週末と期限を切られたことで少し安心したようだった。

 

『矢上君。それに小森くん、柿原さんのフォローをお願いします。特に小森くんは回復能力(ヒール)でのサポートもあるんですから』

「もちろん。それは任せてください」

 

 僕は上戸さんに応えた。

 綾乃は何があっても護るつもりだ。

 

「俺も協力させてもらうよ。短い付き合いになるかもしれないけど、よろしく」

 

 小森君も協力を約束してくれた証に綾乃へ握手を求めるべく手を伸ばした。

 綾乃はその握手を受けた。

 

「短い付き合いはおかしいでしょ。そこは嘘でも長い付き合いと言わなきゃ」

「そうだな。末永い付き合いになるかもしれないけど、仲良くしていきたい。よろしく」

 

 小森君がそう言うとWebの向こう側にいた女子2人がざわざわと騒ぎ出した。

 

『小森くん、そういうとこだぞ』

『また裕和が何も考えずに……これで何度目?』

「俺って今、何かおかしなことを言いました?」

 

 小森君が画面の2人に向かっていかにも異世界帰りのチート能力者みたいなことを言い始めた。

 それを聞いていた綾乃も意味が分かったのか小森君から手を離した。

 

「小森、やっぱりあんたってバカでしょ」

「誰がバカなんだよ!」

「彼女さん、何かこのバカに言ってやって」

『女子に「末永くよろしく」と言うのはおかしい』

『ねぇ、わざとやってる? わざとやってるの?』

 

 ……なんだこのやり取り?

 

   ◆ ◆ ◆

 

 上戸さんと赤土さんは自宅が西日本なので会議が終わればそのまま帰宅。

 

 僕と綾乃、そして小森君は魔術などの知識に詳しいという片倉さんが来るまでの1週間はなんとか持たせるという方針が決定した。

 

『県議会と学校関係者については私と片倉の方でも調べてみます。ただ、遠方からネット経由ですので制限があります。なので、矢上君たちには色々と調査をお願いすることになります』

「そうは言っても僕達は高校生なのでたいしたことは出来ませんよ」

『調査と言っても図書館で昔の新聞や書籍を調べたりといったことです。ネットで手に入る情報には限界がありますので』

「そういうことなら……」

 

 旧校舎に近寄らずに学校の図書室や図書館で資料の調査だけならば危険はないだろう。

 

 昔の書籍を調べたりは普段から新聞部の部活でもやっていることだ。

 

「ついでで悪いんですけど、上戸さんたちの方で調べて欲しい人がいるんですけど。僕達の高校の先生……折戸善行(おりとよしゆき)という人なんです」

 

 僕は上戸さんに折田先生から聞いた話を簡単に説明した。

 

 昔は歴史学の教授をやってたらしく、そこで学校の地下と同じものを見たと言っていたこと。

 ネットオークションに先生の著書があったことも含めてだ。

 

 僕の話を聞いた上戸さんが鞄からタブレットを取り出して何やら検索を始めた。

 

『貴重な情報ありがとうございます。役に立つかどうかは不明ですが、その本を落札しました。読んでから要約をメールで伝えます』

「早っ」

「最近の中学生は金持ってるな……」

 

 僕たちが1100円+送料に躊躇した挙句、諦めたのは何だと思いたくなってくる。

 どこの世界にも小金持ちというのはいるものだとしみじみ思う。

 

『教授が発見したという奈良の遺跡とやらも興味深いので調べてみたいですね』

「自宅から奈良は近いんですか?」

『自家用車で2時間ってところなので、まあ日帰りもできますね』

 

 自家用車というワードまで出て来た。

 もしかして運転手付きだったりするのだろうか?

 

『最後に1つだけ。この会議が終わったら速やかに帰宅した方が良いと思います』

「どういうことですか?」

『気になるんですよ。矢上君が旧校舎に入りもしていないのに、どうして、ただ覗き込んだだけで襲ってきたのか』

 

 上戸さんが両手を組んで口の前に当てた。

 

「僕たちにまた調べられたら困るからでは?」

『窓から覗き込むくらいだと何も分からないでしょう。どのみち、カメラには霧のせいで何も映らないんですから』

 

 そう言われてみればそうだ。

 あの熊が襲ってこなければ僕達もそれ以上の深入りはせずに、そのまま引き返しただろう。

 

『建物を調べる人に対して自動的に攻撃をしたというのも考えにくいです。いちいち覗いただけの人に誤爆すると、逆に騒ぎが広がって、秘密にしたいのか広めたいのか分からなくなる』

「そうだとすると、考えられる理由は?」

『矢上君の能力を覚醒させるために、わざと倒せるレベルの敵を送り込んできたのでは? という疑念です』

「でも僕はもう能力を使えるようになったから、これ以上敵を送る必要は……」

 

 ここまで言って気付いた。

 綾乃はまだ能力に覚醒していない。

 

「綾乃も覚醒させたい?」

『そうです。柿原さんの能力を覚醒させるために新たな敵を送り込んでくる可能性があります』

「ラビさん、その話はもう少し早くして欲しかったです。手遅れです」

 

 小森君が椅子から立ち上がり、部室の出入り口の方へ視線を向けた。

 肉眼には何も見えないが、ドアの外から何か風が駆け抜けるような音が聞こえてくる。

 

 PCの上に乗せていたWebカメラを掴んでドアの方へ向けた。

 

「何が見えますか?」

『……霧だね』

『オレの方からもはっきり見える。ラビ助の方だけじゃない』

 

 上戸さんと片倉さんから同じ答えが返ってきた。

 

『部室自体が結界に隔離されたみたいです。矢上君も念のためにスマホのカメラアプリで確認してみて』

「まさか?」

 

 スマホを取り出してカメラをドアの方へ向けると、確かに黒い霧のようなものがドアの隙間から侵入してきていた。

 

「学校関係者か、それとも部外者が入り込んでいるのか……」

「柿原さん、日曜日に登校して活動している部活は他に何がある? 俺は帰宅部だから分からない」

「運動部は体育館か校庭を使うので、校舎の中には入ってこないと思う。だから、校舎内にいるのは文化系だけだと思う」

 

 綾乃がそう言いながら窓を開いて半身を乗り出し、スマホをあちこちの方向へ向け始めた。

 

「具体的には?」

「他所の部活の活動状況なんて知らないわよ!」

「分かるよ。土日に登校して活動するなら学校に申請を出してるはずだ」

 

 僕は部室PCを操作して、学校の共有フォルダを表示させた。

 学校内のネットワークに接続されているPCならば、誰もが閲覧できるフォルダだ。

 

 そこには各種申請書が保存されている。

 その中の「部活動休日活動申請書1月期」という名前のエクセルファイルを開いた。

 

 土日祝日に校舎を利用する場合は、事前に時間と目的を学校側に申請することが必要だ。

 今日の日付でフィルタをかけると、僕たちを含む3連休の中日に登校している奇特な部活の一覧が表示された。

 

「学校で活動しているのは4部活。うちを除けば書道部、調理部、写真部」

「外にはまだ霧は回っていない。そう考えると同じフロアの可能性が高い」

「調理部は1階調理室。書道部は2階。3階に部室があるのは写真部! うちの2つ隣り!」

 

 綾乃は窓から外に身を乗り出して、新聞部備品のカメラを2つ隣にある写真部の部室へ向けた。

 

「うわっ凄い霧……発生源は写真部で間違いないと思う。窓からどんどんあふれ出してる」

 

 それを聞いた僕と小森君も横から綾乃が持ったカメラのモニターを覗き込んだ。

 目には見えないものの、まるで火事でも発生しているかのように、窓の隙間から黒煙が噴き出していた。

 

 外は太陽が出てまぶしいくらいだというのに、写真部の部室周辺はそれらを遮る暗さで、しかも僕たちの部室の方にも流れ出している。

 

「というわけなので恵理子、ラビさん。続きは事件を解決してから」

「分かった。裕和も気を付けて」

『ああ、俺たちは助けに行けないけど十分注意して。後で結果は教えて欲しい』

 

 上戸さん達の回線はそれで切れた。

 

『オレも助けにはなれないけど、こっちにも結果報告を頼む』

「はい。カーターさんもありがとうございました」

 

 全員の退室を確認したところで小森君がWeb会議システムを終了させた。

 

「矢上君、行けるか? 俺1人だけでもなんとかするつもりだけど柿原さんを護り切れないかもしれない」

「分かってるよ。僕も戦える」

 

 まさかこれほど早く使い魔を使うことになるとは思わなかった。

 ただ、ここで頑張らないと綾乃を護れない。

 

 頼むぞ、ジャック・オー・ランタン。

 

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